あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

宵闇の使い魔 第弐話

私が呼び出した使い魔は、あろうことか平民。
しかも裸で出てくるという非常識っぷりの。
雰囲気と持っていた剣(あまり見た事が無い物だったけど)、身体中に刻まれている傷跡からして、
本当にただの平民を呼び出すという事態は回避できたようだけれど、剣が使えても所詮は平民だ。
やっぱり私は《ゼロ》なのか――
その時はまだ、そう思って悲嘆に暮れていた。


第弐話:異界の止り木


虎蔵が紫煙を燻らせながら、フレイムの頭を撫で回して遊んでいると、
ようやくルイズがキュルケと共に部屋から出てきた。
「なにやってんのよ、あんた」
「あら、フレイム――随分あっさりと懐いたのね」
キュルケが出てくれば、フレイムも彼女の元へと寄っていく。
虎蔵は肩を竦めて「丁度火が欲しかったんでな」と言って、
窓枠に押し付けて火を消してから、窓の外へと吸殻をポイ捨てした。

「でも意外ね。平民だから、もっと驚くかと思ったのに」
「傭兵だっていうんだから、サラマンダーくらいで驚かれても困るわよ」
喧嘩するほどなんとやらということなのか、その後は三人と一匹で食堂に向かいながら、
キュルケが呟き、ルイズがそれに答えねのが続く。
いちいち答えなくて済むのは楽だね、などと感じながら改めてフレイムを見る。

――まぁ、シホイガンでのアレらと比べればなぁ――

イドを発現させて"愉快なみてくれ"になった人間と比べれば可愛らしいものだ。
使い魔同士のシンパシーでもあるのか、向こうも速攻で懐いてきた事でもあるし。
とはいえ、フレイムを見ていると一つ懸念次項が浮かんでくる。
「傭兵ねぇ。確かに、昨日見た限りじゃ良い身体してたものね」
「ちょっと、朝っぱらから盛ってんじゃないわよッ」
なにやらまた盛り上がってきた二人に「なあ、ちょいと良いか?」と声を掛ける虎蔵。
今まで黙ってついて来ていた虎蔵に声を掛けられれば、
二人は「なによ」「あら、何かしら?」と振り返る。
「――まさかとは思うが、俺もコイツと同じもん喰わされるんじゃねーだろうな?」
だとしたらバックレよう。
そう心に決めながら問えば、
「流石に其処まではしないわよ。ちゃんと人間用の食べ物を出すわ」
キュルケの前でもあるし、主としての威厳とかそんな感じのものを示しておきたいルイズは、
ない胸を張ってそう答える。
「さよけ」
その尊大な態度から、だと良いんだがな、という言葉を飲み込んで肩を竦める虎蔵。


食堂。《アルヴィーズの食堂》などという大層な名前の付いた其処にたどり着くと、
キュルケはフレイムを使い魔たちを待たせる所に連れて行くとの事で別れた。
二人が連れ立って食堂に入れば、無数の視線がちらちらと向けられる。
堂々とからかってこないのは、パッと見の虎蔵の迫力のせいだろうか。
ルイズはもはや慣れたものであるし、虎蔵は無駄に長いテーブルと並べられた料理を見て辟易している様子で、
周りを気にしては居ない。
「朝からこれか?」
「礼儀作法の勉強でもあるの。この学院は魔法だけじゃなく、貴族たるべき教育全般をするのよ」
流石は貴族様だ、といった感じで肩を竦めるが、
「でもあんたはこっちだから。安心なさい」
とルイズに示されたのは、床に置かれた粗末なスープとパン。
「あ?」と、ルイズに嫌そうな視線を向けるが、彼女はさして気にした様子も無く椅子に座って
「当たり前じゃない。あんたは使い魔なんだから」
ツンとそっぽを向いてそう答えると、自分は優雅に食事をし始める。
なるほど、確かにその所作は貴族の物だろう。
それを見れば、虎蔵も肩を竦めてスープの皿を取り、さっさと飲み干してしまう。
パンは手に持って、先に出てるぜ、とだけ言い残して出て行ってしまった。
あまりの素早さ、手際のよさに、少し可哀想かなと思って自分の料理を分けてあげようとしていたルイズも声を掛ける事ができずに、
「あッ――」と呟くだけで見送ってしまったのだった。


「美味いことは美味いんだがな――喰うか?」
固いパンを齧りながら食堂を出ると、丁度フレイムを見かけたので、
パンの残りを押し付ける。
もふもふとパンを食べるフレイムを見ながら、2,3食は抜いたところでどうという事も無いが、
これからの事も考えるとどうしたものか――と悩んでいると、
「あら、トラゾウさん?どうかされましたか?」
と、背中に声が掛けられる。
振り向いてみれば、今朝のメイド――シエスタであった。
「あぁ、今朝の。いや、飯が足らんと思ってな――此処から街は遠いのか?」
「馬にでも乗らないと――それよりも、賄いでよろしければ如何ですか?」
「良いのか?ありがたいッちゃありがたいが、洗濯といい――」
「えぇ。と言っても、賄いですから、そんなに大した物じゃありませんよ?」
そう言って厨房へと向かうシエスタの後を追う虎蔵。
それほど律儀な性格では無いが、流石に何らかの形で返さんとな――などと考えたいた。


食後、厨房から出て紫煙を燻らせながら、在庫が少なくなってきたことに気付いた虎蔵。
さて、どうやって煙草なり葉巻なりを調達するか――と考えていたところをルイズに捕まり、教室へと連行されてきた。
真面目に講義を聞く気なんぞさらさら無いので、ルイズに言われるまでも無く教室の後ろの窓際を陣取っては、
窓を僅かに開けて煙草を咥える。
暫くすると、教師らしき女性が入ってきて講義をはじめる。
まずは復習のようで、この世界の魔法について――属性とメイジのクラスについて簡単に説明し始めた。
この世界でも荒事に関わるなら覚えておくべきかもしれないのだが、四大元素説についてはあまり詳しくは無い。
火、風、水、土。
一方は虎蔵は五行思想の方が馴染みが深い。木気、火気、土気、金気、水気。彼は木気だ。
であるから、気にしなければいけないのはどの属性が金気になるか、だが――
――答えられる奴ぁ居ないだろうしなぁ――
もっとも、生物としてのポテンシャル次第では、相性の悪さも越えられる。
この世界の生物、そしてメイジが実際の所どの程度の強さなのかは解らないが、
「ま、なんとかなるか――」
と呟いて、《赤土》と名乗った教師からルイズへと視線を変える。



我侭ではあるが、真面目でもあるようで、講義は真剣に聞いている。
今までの知り合いには居なかった――しいて言えばどこぞの大陸マフィアの女香主が近いかもしれないが――
タイプであるだけに、多少は興味がある。
先程は《ゼロ》とからかわれて居たようだが、二つ名なのだろうか。
ゼロ、無属性?虚無は失われているとの事だから違うだろうが―――

などと窓の外に煙草の灰を落としながら考えていると、教室が俄かに騒がしくなる。
なにやら、ルイズが《錬金》を実践させられるようで、周囲から野次を受けながらも前に出て行く。

「なんだ――?」

ルイズの《ゼロ》を知らない虎蔵は、貴族の坊ちゃま方にしちゃ随分とガラが悪いね、
などと感じながらも、教室の後ろからは動かず、壁に背中を預けたまま眺めている。
一瞬、ルイズが視線をよこしたようにも見えたが、彼女は既に教卓の上の石に向けて意識を集中させている。
それに首を捻っていると、いつの間にか近くに今朝の女――キュルケがやってきていた。

「貴方、悪いことは言わないから、少し身を屈めているべきよ」
「は?」
「直ぐにわかるから、まぁ騙されたと思って。ね?」
なんのこっちゃねん、と心中で突っ込みながらも、今朝の様子とこの教室にルイズと訪れてからも、
少なくとも野次は飛ばしていなかったことを思い返して、一応従っておく。
「こっちの《錬金》は、そんなに派手な事になるのか?」
「まさか。ルイズだからよ――それより、こっちって何の」
キュルケが耳聡く聞きとめ問うが、その声を掻き消すように――爆発が起きた。

「ほらね――成功率《ゼロ》ってこと。っと、でも貴方を呼び出したんだからゼロではなくなったのかしら」
教室の後ろで、更にしゃがんでいた事で殆ど被害を受けなかった二人は、煙がはれるのを待ってからゆっくりと立ち上がる。
虎蔵はキュルケに、さてな、と答えながら教卓に視線を向ける。
ルイズは無事のようだが、そのすぐ傍に居た教師はぶすぶすと煙を上げながら気絶している。
教室も滅茶苦茶だ。
「大した威力じゃないか」
「でも失敗よ?」
「――なあ、《魔法》ってのは、失敗すると皆ああなるのか?」
「まさか。ルイズだけよ、あんなの」
キュルケは肩を竦めると、じゃまたね、と言って自分の席へと戻っていった。
彼女の席の周りの生徒の被害をみるに、此処まで逃げてきたのは正解のようだ。
見た目どおり――と言うのは彼女に失礼かもしれないが――要領が良い。

その後、爆発を聞きつけてやってきた別の教師によって場が納められ、生徒たちは解散。
ルイズは罰として教室の掃除を命じられ、使い魔である虎蔵も渋々ながらそれに付き合っていた。
無言で掃除をするルイズ。
当初は虎蔵に全てをやらせるつもりで居たようだが、彼がそんな作業をやるつもりがある筈も無く、
数分にわたる睨みあい――もっとも、虎蔵が本気で睨んだらルイズは怯えてしまうだろうが――の末、
ルイズは僅かに涙声で「もう良いわよッ」と言うと、自ら掃除を始めたのだった。
「んむ。自分のケツは自分で拭かんとな」
虎蔵はそれを見ると、ルイズの細腕では処理の難しそうな所だけ手伝い、それ以外は窓際に立って相変わらず紫煙を燻らせる。
失敗魔法を見られ、挙句に睨みあいでも負けてたっぷりとプライドを傷つけられたルイズだが、
僅かながらの助力と、部屋を出て行かないではいることを見ると「ふんッ」と鼻を鳴らして掃除を続ける。



そして長々と時間を掛けて掃除を終える頃になると窓の外は夕焼け。
それを見て思わず感傷的になってしまったのか、
「――何も言わないのね――」
そんな言葉がルイズの口から漏れた。
「――大した威力じゃないか、って言ったら怒るだろ?お前」
笑うでもなく同情するでもなく淡々と答えられれば、僅かに鼻白むルイズ。
くくっと肩を揺らして笑う虎蔵。
「まぁ、そもそもだ――俺には魔法っての自体良く解らんからな。
 ご主人様、の使い魔やんのに差し支えなけりゃどーでも良いさ。それともなんだ。
 笑って欲しいのか?同情して欲しいのか?慰めて欲しいのか?発破掛けて欲しいのか?」
ニヤニヤ笑いながら、畳み掛けるように言葉をぶつけられる。
だが――
「そんな訳ッ!あるはずないでしょッ!」
言われっぱなしは彼女のプライドが許さない。
相手が自らの使い魔――唯一の成功事例――であるなら尚更だ。
手にしていた石の破片を思いっきり投げつけてやる。
「なら良いじゃねえか。言わせたい奴には言わせとけよ。
 あぁ――さっきの爆発をお見舞いしてやるってのも愉快かもしんねーな」
視線を向ける事も無く片手で石をキャッチしては窓の外にポイ捨てすると、
にやっと意地の悪い笑みを浮かべて煙草を咥える虎蔵に、
ルイズは「ふんッ」と鼻を鳴らして顔を背けては、
「今日の夕御飯は抜きよ。手伝わなかった罰だからねッ!」
と言って教室を出て行く。
虎蔵は「へいへい」とおざなりに答えながらも、相変わらずニヤニヤと笑ってソレを見送るのだった。



夜。
夕食抜きを宣言された虎蔵だが、当たり前のように厨房で賄いを味わい、
更にはマルトーが持ってきたスコッチを酌み交わしている。
普通にしていれば割りと親しみやすい性格である虎蔵は、マルトーともあっという間に馴染んでいるようだ。
しかし、暫くするとなにやら食堂の方が騒がしくなってくる。
互いに「見てこいよ」といった感じで顔を見合わせた二人だが、食堂に入るならばコックのマルトーよりも
使い魔の虎蔵の方が最適なのは当たり前なので、渋々と立ち上がり、グラスを片手に食堂へと出て行った。

「どうしてくれるんだ?君のせいで二人のレディの名誉に傷がついたんだぞ!」

食堂へと出てきた虎蔵の耳に届いたのは、ヒステリックに叫ぶ少年の声だった。
発生源を探せば、人だかりの中心で身を縮こまらせては何度も謝っているシエスタと、
なぜか頬を軽く腫らした金髪の少年が見える。
人だかりの仲から口の軽そうな女生徒を見繕って話を聞いてみれば、
シエスタが少年――ギーシュというらしい――が落した香水を拾い届けたことで二股がバレてしまったらしい。
内容が内容なだけに、女生徒はギーシュに否定的であるようだが、かといって平民を庇うような真似をするはずも無く、
結果としてただ只管にシエスタが叱責を受けては、怯えているという図式になっているようだ。
全くもってあほらしい。が、彼女には借りがあるし、洗濯や食事の事を考えれば借りは増える一方だろう。
であるならば――

「おい、みっともないぞ、童貞――プレイボーイを気取るなら、もっと上手くやんねえとな?」



ギーシュの背後から近寄り、持っていたスコッチを頭から掛けてやる。
強いアルコール集が漂い、周囲の生徒たちが一歩引いた。
ギーシュも、彼に掛けられた言葉で虎蔵に気付いたシエスタも、その余りにもな内容と行動に呆気に囚われ、何も言えないでいる。
「――ほら、見世物は終わりだ、終わり」
虎蔵はパンパンっと手を叩いてそう言い、シエスタを連れて厨房へと戻ろうとするのだが、流石にギーシュもそれを見送るわけには行かずに声を掛ける。
「き、ききき、キミぃ。なんて事をしてくれるんだ――うわ、臭ッ」
「おう、酒臭ぇからさっさと風呂にでも入ってくるんだな。女の子も近寄ってこないぜ?
 滴ってるのが水じゃなきゃ、色男も台無しだからな」
薔薇を模した杖を持ち出して怒鳴りつけるギーシュに、シエスタは一層の怯えを見せるが、虎蔵は気にした様子も無くニヤニヤ笑いながら軽口を返す。
周囲の生徒には多少なりとも受けたようで、笑いが漏れる。
しかし、ギーシュにはそれが溜まらなかったようで、カッとした様子で大声を叩きつけた。
「君は確か、ゼロのルイズが呼び出した平民だったね――
 最近の平民は貴族に対する礼儀を知らないらしい」
と、スコッチの滴る髪を気取った様子でかきあげる。
「貴族だろうが平民だろうが、不実はいかんよ。なあ?」
「不実ではないよ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」
「いやいやいや――」
思いっきり呆れながら突っ込むも、彼は自分の世界には言って言ったのか気にする様子も無い。
虎蔵はフェミニストでこそ無いが、自らの失態を女に――しかも実質濡れ衣も同然――
被せるというのは腑に落ちるものではない。
とはいえ、ルイズの使い魔であることを別にしても今の所は平民の傭兵という体で通っている以上、
この場でずんばらりんという訳にもいかないだろう。
どうしたものかと考えながら、ガクガクと震えているシエスタの頭をぽんぽんと撫でては、面倒そうな口調でギーシュに答えていた。
しかしそれも長く続けばうざったくなってくる。

――めんどーだなぁ。やっぱ適当に痛めつけるか?――

などと考えて始めたところで、適当過ぎる虎蔵の対応にギーシュの堪忍袋が限界を迎え、
「良いだろう、平民―――決闘だ」
パサ、と音を立てて、手袋代わりのハンカチが投げつけられた。
「決闘で君のその無礼な態度と口調を正してあげよう。
 もっとも、最後まで無事で居られれば、だがね」
「おー、はりきっちゃってまあ」
決闘。その言葉を聞いて更に顔色を悪くするシエスタ。
倒れるんじゃあるまいな。
ギーシュにおざなりに答えながらシエスタを見る虎蔵にギーシュは更に血圧を上げて、
「《ヴェストリの広場》で待つ。昨日持っていた剣でも持ってくると良い!」
そう吐き捨てると、肩を怒らせて食堂から出て行った。

「あぁ――トラゾウさん――なんてことに」
「ん?あー、ま、適当にうっちゃってくるさ。餓鬼の相手は苦手なんだがね」
と肩を竦めて、《ヴェストリの広場》とやらに案内してくれそうな生徒を探して辺りを見回す。
するとタイミングよく、人垣を掻き分けるようにルイズがやってきて、
「説明、してくれるんでしょうね。この状況」
実に不機嫌そうに睨みつけてきた。

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