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マジシャン ザ ルイズ 2章 (10)

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マジシャン ザ ルイズ (10)超肉弾戦

始祖ブリミルの像が置かれた礼拝堂で、ウェールズは新郎と新婦の登場を待っていた。
王族の象徴である紫のマント、帽子にはアルビオン王家の象徴である七色の羽飾りがゆれている。
その顔は式が終われば死に行く運命であることなど感じさせない、凪いだ穏やかな表情である。

扉が開き、ルイズとワルドが現れた。
ルイズは呆然とした様子だったが、ワルドに促されウェールズに歩み寄った。
「今から結婚式をするんだ」
ワルドはそう言って、アルビオン王家から借り受けた新婦の冠をルイズの頭に載せた。
そしてルイズの黒いマントを外し、乙女なる新婦にのみ許されぬ純白のマントを纏わせた。
この間もルイズは無反応であったが、ワルドはそれを肯定の意思表示と受け取った。

「では、式を始める
 新郎、子爵ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。
 汝は始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、そして妻とすることを誓いますか?」
ワルドは重々しく頷き、杖を持った左手を胸の前に置いた。
「誓います」
ウェールズはその言葉を聞き、にこりと笑って頷くと、次にルイズに視線を移した。
「新婦、ラ・ヴァリエール公爵三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」




止めて欲しかった。
止めて欲しかったから、あの夜のベランダでルイズはウルザに結婚すると宣言した。
けれど、彼が返したのは、いつもどおりの背中。
誰かに止めてほしかった、誰かに導いてほしかった。


なんて   甘ったれた自分。


止めてほしい、導いてほしい、魔法を使えるようにしてほしい、幸せにしてほしい、好きになってほしい。
何という甘え、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールはいつからこんなに弱くなったのだろう?
…多分、あの大きな背中を見たときから。
あの背中が自分を弱くした、あんまりに大きくて、寄りかかってしまった。
彼はそこにあっただけなのに、全てを決めるのは自分なのに。
強くならなくてはならない。
そう、あの背中にもう寄りかかってしまわないように、強くならなくては。

夜の晩餐会、死に行く貴族達。
その強さが、ルイズに小さな決意と覚悟をもたらしたのだった。

「新婦?」
「ルイズ?」
二人が怪訝そうな表情でルイズを見つめている。
そんな二人を見て、思わず笑いそうになってしまう。
決意したとたん、ルイズの中で心に圧し掛かっていた何かがすとんと落ちた。
「誓えません」
高らかなる宣言。
「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは誓えません。
 お二方には、大変な失礼をいたすこととなりますが、私はこの結婚を望みません」
それこそが始祖ブリミルに捧げる詔であるかの様に、堂々と謳い上げるルイズ。

流石にこの展開にはワルドも唖然とし、続いて顔を怒りで朱に染めた。
それを見たウェールズは最初は困ったように、続けて労わる様な目でワルドに語りかけた。
「子爵、誠にお気の毒だが花嫁が望まぬ式を、これ以上続けるわけにはいかない」
しかし、ワルドはウェールズを無視し、ルイズの手を取った。
「君は緊張しているんだ。そうだろう、ルイズ。君が僕との結婚を拒むわけが無い」
「いいえ、違うわワルド。私はあなたと結婚しない。
 確かに私はあなたに憧れていた、でも今は違うわ。あなたと一緒にはなれない」
はっきりとした拒絶の言葉に、ワルドがルイズの肩を掴む。
その目はつり上がり、表情は普段の優しいものではなく狂気を含んだものに変貌する。
「世界だルイズ、僕は世界を手に入れる!その為に君が必要なんだ!」
豹変したワルドに対しても、ルイズは正面から言い放つ。
「私は世界なんていらないわ!」
興奮したワルドは両手を広げ、ルイズに詰め寄る。
「僕には君が必要だ!きみの能力が!君の力が!
 ルイズ、いつか言ったことを忘れたか!君は始祖ブリミルに劣らぬ、優秀なメイジに成長するだろう!
 君は自分で気付いていないだけだ!その才能に!君の才能が僕には必要なんだ!」
「答えは変わらないわ。例え私にどんな才能があっても。
 それを利用するだけで、私自身を見ようとしないあなたに従うことは出来ない!」

流石にこの段になると、ワルドの剣幕を見かねたウェールズが間に入りとりなそうとする。
「子爵……、君は袖にされたのだ、こうなったら潔く…」
ウェールズがそう言いかけたとき、ワルドは『閃光』の二つ名に恥じぬ素早さで杖を引き抜き呪文を完成させる。
そして、風に舞うように身を翻らせ、ウェールズの胸をその輝く杖で穿ったのだった。
「き、貴様……」
ウェールズが床に崩れ落ちる、無惨に血で染め上げられる紫のマント。
「何をするのワルド!?」
「次は君の番だ!」
ウェールズの胸を貫いた杖、それでルイズの命をも奪おうとした、その時であった。



「あまり私の主人に手荒な真似はよしてくれないかな、若者よ」

中空から突き出された杖が、ワルドの杖を受け止めている。
不可解なる闖入者に、ワルドは距離を離す。
突き出された杖の先、そこから徐々に肉体が広がっていく。
腕、胴体、手足、白い髭に色眼鏡、左手に杖、右手にデルフリンガー。
多重世界ドミニアにあって、最も罪深きプレインズウォーカーの姿がそこにあった。
ファイレクシアに察知される危険を犯してまでプレインズウォーカーの力を行使し、空間を渡りルイズを助けたのである。


「貴様…なぜ分かった」
「感覚の共有。悪いとは思ったがミス・ルイズの目を借りさせてもらった」
「覗き見とは趣味が悪いなご老体!」

ワルドが呪文を唱え、その杖をしならせた鞭を打つように叩きつける。
「ウインド・ブレイク!」
風の暴風圏、その安全地帯―ワルドの懐。
そこに素早く飛び込むウルザ、杖による強打がワルドの腹を打ち、後退させる。
間を空けずに、火弾群が杖から放たれワルドを狙う。
その殆どをステップでかわしながら大きなものだけをエア・ハンマーで相殺する。
杖による強打は自ら後退することでダメージを減少。

「まさかこんなところで計画が邪魔されるとは思っていなかったよ!」
エア・カッター、不可視の刃がウルザを襲う。
杖を掲げ、ウルザは自身の周囲に魔法の皮膜を作り出す。
広範囲の皮膜では威力を減衰し切れずに、その頬を切り裂いた。
「僕の目的は三つあった!一つはルイズ、君を手に入れること!」
ウルザが杖を掲げ、弧状を描く稲妻が走る。
ワルドが横っ飛びに避ける、それを追いかけるように進路を変える稲妻。
咄嗟に剣を地面に突き立て避雷針とする。
「二つ目は、アンリエッタ姫の手紙!」
火弾で砕かれた床片を錬鉄、それらを宙に放りながら呪文を唱える。
「エア・ストーム!
 そして最後の目的はウェールズの命だ!」
巨大な竜巻、多数の鋭く錬鉄された石を含む風の獣が、ウルザを飲み込む。

ワルドの視界の隅、動く影。
咄嗟の防御体勢、間に合わない。
「これでも食らいなさい!」
ルイズ、渾身のファイアーボール、失敗。
普段の失敗魔法よりも一回り強力なそれがワルドに牙をむく。
「おおおおおお!?」
何とか直撃は回避、激昂、憤怒の面を被る。
「おのれぇ!大人しくしておればいいものを!」
ウインドブレイク、ルイズの体が10メイルほども吹き飛び、壁に打ち据えられる。
刹那、刃の竜巻から一条の閃光が走り、ワルドを貫かんとする。
判断以前の直感、倒れるように無様に身を伏せって大事を回避。
大竜巻がやむと、そこには杖から放たれる神々しい光を纏ったウルザの姿―無傷。
倒れたルイズ、ピクリとも動かないが、左手に輝くガンダールヴの共感作用で無事であることを察知する。


「さあ、これで邪魔者は消えたぞ!じっくりと嬲り殺しにしてやろう!」
「面白い、年季の違いを見せてやろう、小僧!」
激しい攻防、魔法接近を問わず、主導権のリレーが始まる。


ウルザは、今回の戦いも、以前の模擬戦も、通してプレインズウォーカーとしての能力を行使していない。
召喚を使わないこともその一つの表れである。
ファイレクシアの闘技場において、ウルザはプレインズウォーカーとしての力を封じられ、ジェラードとの戦いに臨んでいる。
しかし、ワルドとの二度の戦いは制限など無い。
確かに強力なクリーチャーの召喚は、この世界をファイレクシアに察知される危険性を孕むということがある。
しかし、召喚を行わずとも、そもそもプレインズウォーカーとは強大な魔法との親和性を持つ存在である、一つの魔法を取ってみても、ウィザードが使用するスペルとプレインズウォーカーが使用するスペルは何倍もの威力の差が存在する。
クリーチャーの召喚など行わずとも、プレインズウォーカーが単なる魔法使いに遅れをとることは無い。
それでもウルザはそれらの力を一切使用しないことを選んだ。
なぜならば 


人間として、この男を叩きのめしたいと思ったからだ。



魔法戦闘、接近戦闘、その複合。
ありとあらゆる戦い方で、二人は戦う。
魔法、斬激、刺突、牽制、偽攻、連激、騙討。
己が持ちうる限りの殺人技術を用い、目の前の敵を抹殺しようと試みる。



既にお互いの魔法の手札が尽きて、何十合目か分からぬ剣戟が交差した。
「死ねぇ!死ね!大人しく死ぬがいい!」
「それは!こちらの台詞だ!」
憎悪。
憎しみが己の限界を超える力を生み出し、疲れきった肉体に活力を供給し続ける。

更に何合もの剣戟。
その中の一合、一際力を込めた一撃がお互いを捕らえる。
そしてそれをお互い振り払う。
結果、血ですべり、握力から開放された二振の剣が宙を舞い、離れた場所に転がった。


両者、既に手に杖は無く、徒手。



聖なる礼拝堂に乾いた音が響きわたる。
振りかぶったワルドの拳がウルザの顔面に炸裂。
仰け反りつつウルザも反撃、お返しの拳がワルドの顔面を捉えた。

「私は/僕は お前が気に入らない!」

拳と拳、人間の最も原始的な闘争の形、殴り合いが始まる。

「気に入らない気に入らない!お前の顔が、目が、行動が気に入らない!」――ワルド
「そっくりそのままお前に返そう!お前の全てが気に入らない!」――ウルザ

両者は理解した。
目の前の男に執着する理由。
それは、同属嫌悪。

模擬戦闘の後、落ち込んでいたような自分、原因の分からない苛立ち。
そう、それら全ての元凶こそは目の前の男、自分の鏡面存在、ワルドであったことをウルザは理解する。

「お前はミス・ヴァリエールを利用するだけだ!」
「ルイズは僕が利用してこそ価値がある!そういうお前こそ、ルイズを利用しているのではないかな!?」
「その通り!私もミス・ヴァリエールを利用しようとしているさ!」
「認めたな!それなら僕がしようとしていることを非難する資格はお前に無い!」
血しぶきが飛ぶ、壮絶な拳闘。




ウルザの目の前にいる男、それは彼自身でもある。
いや、正確には彼の過去を映す鏡だ。
カイラを利用し、国中の資源を消費し、弟ミシュラとパワーストーンを奪い合った。
サイリクスの力を解放し、アルゴスの大地を消滅させ、敵味方、そして弟ミシュラの命を奪った。
聖なるセラの次元を崩壊させた、トレイリアの時間移動実験では多数の被害者を生んだ。
その他数々の悲劇を自らの手で生み出した自分が、目の前にいる。
己の罪を自覚もせず、目的の為に手段を選ばず、ただ己の理想に邁進する道化。
それが目の前の男。
憎い、憎い、憎い、憎い、目の前のこの男が憎い。



一方のワルドも、目の前の男が自分と鏡合わせの存在であると気付く。
この男は全てを利用し、どのような方法を用いることも躊躇してこなかったのだろう。
自分自身の延長上の存在、そう思えばむしろ尊敬さえ出来るのかもしれない。
だが、この男は折れている。
自身がこれまで達成してきた偉業の数々に疑問を持っている。
利用すべきただ一つのものに執着している。
そのような姿を、ワルドは到底認められない。
全てを利用し、全てを手に入れる、それがワルドの未来の姿のはずなのだ。
憎い、憎い、憎い、憎い、目の前のこの男が憎い。



決して引くことが出来ぬ、お互いの過去・未来を否定する殴り合いは続く。

「お前のような男ではルイズは守れない!」
「だがお前はミス・ヴァリエールを守ることをしない!」

ウルザは、何もガンダールヴのルーンに刻まれた洗脳効果によってルイズを守っているわけではない。
既に悠久の時を、目に収まった二つのパワーストーンに封じられたグレイシャンの苦悩の呻きに晒され続けた彼に、その程度の小さな声など届かない。
ルイズを守るということ、それは正しくウルザの意志である。
少女を利用し、また今度も殺してしまうかも知れないことへの、小さな、ほんの小さな心の引け目。

だが、そんなことすらもワルドは許せない。
自分ならルイズを正しく利用しつくす。そこに良心の呵責などあるはずが無い。
目の前の老人は、正しい道から外れた、汚らわしい存在であるように感じられた。



激しい殴り合いが続く中、ルイズの可愛らしい瞼が弱々しく開いた。
頭を打ったのか、ぼうっとして頭が混乱している。
なぜ自分はベットではなくこんな所で寝ているのだろうか?
その答えを思い出そうとした途端、全てを思い出した。
慌てて飛び起きて周囲を見回す。
ここはアルビオン、ニューカッスルの城、礼拝堂。
ワルドに連れられて、結婚式を執り行おうとしていた。
そして突然、豹変したワルドがウェールズ皇太子を…
「そうだわ!?殿下!」
ルイズは部屋の片隅で倒れているウェールズを見つけると、一目散に駆け寄った。
倒れたウェールズ、その周囲には赤い染みが広がっている。
一目見て分かる、ウェールズは、もう……
「ウェールズ殿下…」
ルイズはウェールズを抱き起こすと、母のように優しい手つきでその瞳を閉じさせた。
自分にはこんなことしか出来ない、せめて…
そう思い、残された者の為に、ルイズはウェールズが薬指に嵌めている指輪を外すと、それを懐にしまった。


「次は……」
ルイズが首を向けた方向、そちらでは恐ろしい形相のウルザとワルドがいまだ格闘戦を繰り広げていた。
どうしてあのようなことになっているか分からないが、ここは自分の出番である。
礼拝堂の外も騒がしく、反乱軍の大攻勢は既に始まっているらしい。
長くここに留まれば、やがては彼らに捕まってしまう。
ここは杖を持つ自分が、ウルザを援護してワルドを倒さなくてはならないと考えた。


「大丈夫、やれる…やれるわ、やってみせるんだから!」

眼を閉じて、精神を集中する。
ただ一度だけ成功したあの魔法。
あの感覚をもう一度…


自分の中、奥深くを見つめる。
そこには以前と変わらず、うねる混沌がある。
その中から、白と黒を分離・抽出してゆく。

意識の覚醒。
自分自身を覗き込む刹那の時間を体験し、ルイズは確かな手応えを感じて瞳を開いた。
しかし、最初に目に入ったのは驚くべき光景であった。

「な、何で私飛んでるの!?それに指輪!指輪が!?」
まず、ルイズは地上1メイルほどの高さに浮いていた。
もう一つの異変、それはルイズの指にある水のルビーが輝き、懐の風のルビーと虹のアーチを作り出していることだった。
そして、新たな変化が生まれる。
水のルビー、風のルビーが一瞬瞬くように強い光を発したかと思うと、ルイズに何かが強烈に流れ込んできたのである。
急激な圧迫感に、呼吸することが出来ないルイズがぱくぱくと口を動かす。
ルイズという風船に、多すぎる空気が吹き込まれたように、その内側では膨らみ続ける力が出口を求めて暴れ始める。

(もう、駄目……っ!)


ルイズを中心に発生した、天を突く巨大な光の柱。
それによってニューカッスルの城の礼拝堂の上に位置していた万物は等しく消滅した。

平衡感覚が狂う、立っていられない、その場で座り込むルイズ。
「何よ…これ………」
ルイズは、城をクッキー型で切り取ったかのような円形の孔を見つめて戦慄する。

「ミス・ルイズ」
いつの間にかルイズの隣には、傷だらけで厳しい顔をしたウルザが立っていた。
「わ、ワルドは!?」
「先ほどの光で何処かに消えてしまったようだ」
「そ、そう…」
「立てるかね?手を貸そう」

ルイズがウルザの手に掴まって、立ち上がろうとしたとき。
突如ルイズのいる隣の地面がぽこりと盛り上がった。
ウルザが警戒して杖を構えようとしたところ、床石が割れ、茶色の生き物が顔を覗かせた。
「あ、ああああ!あんたギーシュのところのモグラじゃない!?」
―勿論僕もいるよ!―
モグラのヴェルダンデの下からはギーシュの声も聞こえる。
ルイズとウルザはお互い頷くと、ヴェルダンテを蹴落として、その通路を開けさせた。
―きゅー―
―おおおおお!なぜヴェルダンデが転がってくるんだ!?―
―おじさま!助けに来ましたわ!―

こうして、ルイズ達は頼もしい仲間達の救援によりアルビオンからの脱出に成功したのであった。


                     いいわ、じゃあ今度は拳で分からせてあげるわ!
                             ―――虚無魔道師ルイズ


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