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0080の使い魔  ~ポケットの中の召喚~

ヒラガサイトは彼女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの二人目の使い魔である。

彼は召喚された翌日から洗濯、掃除とあらゆる身の回りの世話を押し付けられ、その度に主人である少女に
小さな失敗を何やらと文句を付けられ鞭で打たれ、食事を抜かれる毎日を過ごしていた。
男子であれど典型的な現代人であるサイトにこらえ性というものは無いに等しく、ルイズとの衝突はすぐに起きた。
おたがい激情を内に秘めた性分であったことが災いし、売り言葉に買い言葉。
そして終いにサイトは彼女に対して、禁句であった一言を放ってしまったのだ。

お前に愛想を尽かして前の使い魔は逃げ出したんじゃないのか、と。

―――去っていくルイズの後姿をぼんやりと眺めつつ、サイトは自身が犯した取り返しの付かない過ちを悟った。
よく回らない頭を抱えながら、その時のルイズの顔は生涯忘れられないだろうなと思った。


0080の使い魔  ~ポケットの中の召喚~


ヒラガサイトは彼女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの二人目の使い魔である。
二人目、と名がつく以上は、自身の使い魔稼業であるところの前任者が気になるのは当然のことであった。
召喚され、ほどなく使い魔としての仕事に慣れたサイトは、前任者について聞き込みをしようと決めた。
しかしそのことを聞こうにも、ルイズ繋がりで顔見知りとなった知人である赤髪と蒼髪の女学生は
はぐらかすか、もしくは痛ましそうな顔をして同じセリフを言うだけであった。

ルイズが語らなければ自分が語る資格はない。彼女の誇りの問題である。

その時にはサイトは貴族と平民の差を理解していたので、あまりしつこい追求は諦めた。
ならばと、また知人となったメイドの少女にも質問したところ同じ反応を返されたので、
自分がまったく理解できない貴族の誇りとやらと関係しているのだろうと納得をせざるを得なかった。


その愚かな邪推が、後にルイズを深く傷つけることになるとは。
今となっては、サイトは己の愚鈍さをただただ呪うしかなかった。




召喚された当初、サイトはルイズに使い魔についての諸々の説明を受けていた。
新しい使い魔と契約を交わすには、前使い魔の死が条件である。
そう教えられていたはずだった。
ならば自分がここにいる理由など唯一つ、前任者が死んだからに他ならない。

このままルイズを追いかけても関係が悪化することは目に見えているので
とにかく逆上せた頭を冷やすために、少し時間を開けることにした。

その間サイトは、足りない頭を自覚しつつ前任者についての、なんとか知り得た情報を整理する。
幸い、人の口に戸は建てられずサイトの主であるルイズは良くも悪くも、
大抵は悪い意味でだったが様々な箇所でその名を囁かれることが多かったため、真偽は兎も角として彼女の情報だけは
耳に入る機会が多々あったのだ。
中でも『ゼロ』と呼ばれ詰られることが最も多かったのだが、それに次いで話題となっていたのは前任者、前使い魔のことであった。

曰く、巨大な緑の巨人を召喚した。
曰く、その巨人は一つ目であった。
曰く、何でも焼き切る巨大な斧を持っていた。
曰く、巨人かと思ったらゴーレムで、中には平民がいた。
曰く、土くれのフーケの正体は奴だった。
曰く、それは濡れ衣だった。
曰く、そのフーケと相打った。

曰く、曰く、曰く――――――


考えに沈む中、サイト君、と声を掛けられふと顔をあげる。
サイトの目の前にこの学校の教師―――名前はコルベールだったか―――が立っていた。


付いてきて欲しい、と言われそのままサイトはコルベールに誘導され歩き出した。
行き先は巨人の墓、らしい。
いぶかしみながら歩き続け、広大な仮設倉庫に着き、その扉をくぐり
―――『それ』が視界に入り足が止まった。

それは斧というにはあまりにも巨大すぎた。
大きく、ぶ厚く、重く、しかし精巧だった。
それは正に鉄塊だった。
いや、『それ』に比べれば巨大なだけの斧など取るに足らない代物だろう。

――――――緑の、鉄巨人。

其処に横たわる、あまりもの強大な鋼の質量に気圧され知らず喉が、ごくりと音をたてた。
しばらく呆けてソレを見上げていると、コルベールが手紙を持って戻ってきた。
手紙というにはお粗末な、殴り書きをしただけの紙切れであった。
いずれルイズに召喚されるであろう新たな使い魔、自分に宛てた前任者からの遺書だという。
未知の文体で書かれているらしく解読が不可能であったとコルベールは言ったが
サイトにはその文字によく見覚えがあった。
自分の世界の文字、英語であった。
その手紙は、筆記体で記されておりまさに殴り書きであったが、文章自体は完結に締めくくられており
英語の不得手なサイトでも何とかニュアンスくらいは掴むことができた。

死んだはずの自分が生きている不思議。
魔法を見た驚き。
懐郷の気持ち。
この世界がどれだけ美しいか。
鋼の巨人の整備の難しさ。
それにともない鈍くなる巨人の動きと、濃くなる死の気配。

そして最後の一文。
『ルイズを守れ』

遺書はそう締めくくられていた。


手紙を読み終え、今はもう居ない人物のためにしばらくの間サイトは瞑目する。
気をきかせたのかコルベールは姿を消していたため、立ち入り禁止のロープを越え鉄巨人に近づいた。
同じ世界の言語体系であるというのに、このロボットに使われているテクノロジーの差はいったい何であるというのか。
息を吐きつつ、その巨体に手をつく。
何故か熱くなる左手が熱くなり、それに伴い脳裏にある戦いの光景が浮かんだ。

ルイズを守るために身を挺し、元から大穴が開いていた操縦席に、その体躯と同じく巨大な岩のゴーレムの拳を突き入れられ
地に倒れ臥す鉄巨人。
コクピットに広がる赤黒い染みと、ルイズの泣き叫ぶ声――――――


コルベールに、肩を叩かれ白昼夢が覚めた。
それからしばらくサイトは鉄巨人の話に華を咲かせていたが、いつの間にか消灯時間を過ぎていたためお開きとなった。
別れ際、その鉄巨人の名前は『ザク』というらしいですよ、と教えると嬉しそうに笑ったコルベールの顔が妙に印象的だった。

もう外は真っ暗で、双つの月が辺りを柔らかく照らしている。
初めは月が二つあることに違和感しか感じ得なかったというのに、今はこの大きな月が好きになれそうだった。
『彼』もこの月が好きだったのだと知ったからだ。
現金なもんだな、とサイトは苦笑する。

そうして足音を立てないよう塔を昇り、静かにルイズの部屋の扉を開けた。
案の定ルイズは寝ずにサイトを待っていて、サイトは即先の失言を詫びたのだが鞭による折檻は避けられなかった。
一通り暴れて気が済んだのか、ルイズはぱたりとベッドに倒れるとそのまま寝息を立てはじめた。
風邪を引かないよう毛布を肩口まで引き上げてやるサイトの耳に、ルイズの掠れるような寝言が聞こえた。


「……嘘だって、言ってよ……バーニィ……」


俺、使い魔やるよ。それでルイズを守るよ。
少なくともこの世界に居る間は、俺のご主人様のためにがんばるよ。

そう呟きながらサイトはルイズの頬を伝う涙を拭い
手紙の差出人、バーナード・ワイズマンに誓いを起てた。



――――――後年。
純学問団体として、解体・再結成されたアカデミーにより建てられた国立博物館に
虚無の使い魔ガンダールヴが駆りし鋼の体躯として、緑の鉄巨人が一画に佇むこととなる。
偉大な魔術師の一人、鋼鉄の機工師コルベールを筆頭に治療を施され復活した鉄巨人『ザク』は、
数多のスクウェアメイジにより固定化の魔法を掛けられ、幾つもの戦場を渡り歩いたとされる。
しかし鋼でできたその身体を完全に癒すことは出来なかったのだ。
鉄の腕は萎え、鉄の足は力を失い、光を失った一つ目は二度と輝くことは無い。
鉄の戦士は死んだのだ。
しかし、鉄の戦士は
いや、鉄の戦士の胸の奥に突き立ち、その鋼と一つになった一振りの剣は信じていた。
若者は今日も生き、今日も走っていると。

かつての主人の髪色と同じく、桜色の一つ目が虚空を見つめている。
その視線の先には、『ザク』の系譜に連なり、ガンダールヴの名を受け継いだ新たなる鉄巨人
『ガンダム』がその緑の頭蓋と一つ目を陽光の下に輝かせ、空を舞っていた。

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