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ゼロの使い魔消失事件-終末編

 レコン・キスタが王都を完全に包囲して十三時間。降伏勧告は数えて十五度。
 この行き詰った状況を打開するため、軍議をしなければならないのだが、厭戦気運はどこにでも満ち溢れていた。
 国内は言うに及ばず、王都内、城内、この議場内まで諦念と自棄が蔓延っている。
 無理矢理進行役を押し付けられたアニエス殿が促しても発言する者がいない。
 ある者は惰眠をむさぼり、楊枝で歯をすする者もいる。
 モット伯にいたっては猥褻な本を読みふける始末。誰も進行役の言うことなど聞いてない。
 無視、雑談、居眠り、手慰み。決戦を前にした貴族の態度とは思えない。
 くそっ、敗北主義者どもめ。アルビオン王党派のように雄雄しく散れとまでは言わないが、もう少し真面目に取り組むべきだ。
 ここは他国の長からガツンと言ってもらうべきだな。強く怒鳴りつけられなければ自分達の醜さに気づくまい。
 幸いというべきか恥を重ねたというべきか、この軍議にはゲルマニア皇帝アルブレヒト三世が同席している。
 彼にガツンと……おかしいな。どこへ行った。さっきまで皇帝が座っていた席には全裸のおっさんしかいない。
 ……全裸? あれ? なんでみんなスルーしてるの? ていうかあのおっさんゲルマニア皇帝に似てないか?
 目をこすってもう一度見直した。やはり全裸だ。正確には王冠があるため全裸とはいえないかもしれないが。
 おかしいな。どうやら頭ないし目が狂っているようだ。私が狂ったのか。そうかそうか。
 全裸のアルブレヒト三世が不敵な笑みを浮かべている。全裸の人間に許される笑いではない。
「すっぱだカーニバル!」
 ああ、やはり見間違いではなかったようだな。しかし何を叫んでいるんだ。意味がわからない。
「チンは国家なり!」
 えっ! ま、まさかこのネタのためだけに脱いだんじゃないだろうな!?
「トリステインとは情けないものだな。余がゲルマニア流を見せてやろう」
 むっ。全裸になったことに意味があるとでもいうのか?
「ゲルマニア流の自暴自棄を見せてやろう」
 ダメだこいつ……早く何とかしないと。

 そうだ、我らが姫殿下がいるではないか。
 アンリエッタ様なら婚約者の乱行と貴族達の惰弱さを叱り飛ばしてくれるはずだ。
 私はアンリエッタ様に視線を戻した。戻した。戻し……おかしい。アンリエッタ様がいない。
 さっきまでアンリエッタ様が座っていた席には、死んだ目を持つ阿婆擦れが一人いるだけだ。服装はアンリエッタ様と同じだが……どういうことだ?
「見てんじゃねェよクソワルドが……」
 えっ。あれ。声までアンリエッタ様なんだけど……えっ? あの人アンリエッタ様?
「なめるんじゃないよドチンポ野郎。すぐ裏切りそうな面しやがって」
「あ、いや、あの。すいません。しかしですね、王族がそのような口を……」
「いいんだよ。私は王女なんて言ってるけど実は庶子なんだよ」
「そ、そうなんですか!?」
「か……かまわん! それでも好きだ!」
 おおっ、ゲルマニア皇帝がここで絡んできた! 頑張れ、個人的には応援しているぞ!
「私アルビオンのウェールズ皇太子と付き合ってた」
「グフボウッ」
 ゲルマニア皇帝吐いたー! 分かる、分かるぞ! 婚約者にこんなこと言われたら私も吐く!
「ウェールズが近づいてきたの見てから湖で水浴び始めました」
「オボッホウッ!」
 さらに吐いたー! めっちゃくちゃ吐いたー! これはきっついぞー!
「戦争始めた理由もウェールズの敵討ちです」
「……」
 吐い……吐かない! ゲルマニア皇帝これは吐かない! そ、そしてあの笑顔! なんなんだあの人は!?
 今何か刺激するポイントがあったのか!? よく分からんが異常に嬉しそうだ! ゲルマニア人は奥が深い!
「盛り上がっているところすいませんが、アンリエッタ様には後ほど兵士達を鼓舞するため演説を……」
「誰がするかそんなメンドーなこと勝手に戦って勝手に死ねやゴミ虫どもが」
「……してもらえません。すいません」
 アニエス殿……どこまでも不憫な女性だ。
「そんな! 演説にさりげなく婚約者ののろけを混ぜてもらおうと思ってたのに!」
 皇帝陛下……あんた強いよ。変態だけど。
「それが楽しみできたというのに……なあアンリエッタ殿、個人的でもかまわぬから後でブグラバァァァッ!」
 ウッヒャ――ッ、潰れた! あれは確実に潰れた音がした!
 自分の婚約者で同盟軍の長でもあるゲルマニア皇帝にまさかの金的蹴り――!
「ふふ……ふ」
 この人潰されて笑ってるー! だ、ダメだ! 変態とかそういう次元じゃない! すっぱだかの時点で気付くべきだった!

 見ているだけで疲れた……。視線を落とすと、絨毯の上に豪奢な装飾のなされた杖が落ちている。あれはたしか……。
「ド・ポワチエ元帥、あれはあなたの元帥杖ではありませんか」
「……そうだな」
「どうされたのです。あれほど大切になさっていたのに」
「いや……なんかキモいし」
 どんな理由だよ?
「それにあの杖持ってると味方の不意打ちで殺されそうな気がするんだよね~」
 するんだよね~……じゃないだろ。クソッ、ダメだこのおっさん。
 ここはトリステイン影の実力者と呼ばれるあの方に締めていただかなければ。
「枢機卿」
「あん?」
「今こそ皆に喝を入れられる時ではありませんか。民を何より大切に考えているマザリーニ枢機卿であれば……」
「おいおい……何を言うとるのかねワルド子爵。わしが一番大切なのはコレじゃよコレ」
 人差し指と親指を丸めて作ったそのハンドサインはどう見てもマネーです。本当にありがとうございました。
 マザリーニ枢機卿のあんなに福福しい笑みは初めて見たが見たくなかった……!
「私はこちらの方が大切ですなぁ」
 モット伯のハンドサインは人差し指と中指の間に親指を……ってそれはまずい! 自重しろモット伯!
「お二人とも何を言っておられる!」
 おおっ、リッシュモン殿! さすがは法に生きる高潔の人!
「わしは両方大好きですぞ」
 ああ……帰れ。
「賄賂で懐を温かめ、その金で女を買い、気が向けば平民どもを虐殺してやる……たまりませんな」
 うわ……アニエスの姉さんがむっちゃこっち睨んでる。こ、こェェェ……!
「レコン・キスタが侵攻してきたあかつきにはアンリエッタも女にしてやろうと画策しております。ぐふふ」
 ぶっちゃけ過ぎです。それに今の王女を見る限り女にされる余地があるとは思えません。
「これで面倒な仕事さえなければ貴族ほどいいものはないんだが。困ったものだ」
 あんたが困ったものだよ! もう貴族やめていいよ!
「法院とか考えたやつマジで死ね」
 何言ってんの!? いやホント何言ってんの!?
「国庫考えたやつも死ね。管理すんの面倒なんだよ」
 財務卿……トリステインの財政が火の車って噂は本当なんですね。

「皆様、一つよろしいでしょうか」
 むむっ。あれは僕のかわいい婚約者、愛しのルイズじゃないか。
「露悪合戦になってきたようなので、せっかくだから自分の秘密を告白したい……」
 ええっ!? そ、そんな! ルイズの秘密だなんて聞きたいけど聞きたくないぞ!
「……と、わたしの使い魔が申しているのですが」
 あ、使い魔か。なーんだ。ワルドがっかり。
「私は今日告白したいことがあってここへ来ました……」
 ルイズの隣でうつむいていた使い魔が立ち上がった。
 見た目は禿げたしょぼいおっさん、そして卑屈な所作。だがそれに見合わぬ強力な魔法の使い手だ。
 そんな彼がいったい何を告白するというんだ? ちょっと楽しみになってきたぞ。
「実は……私はメイジでも何でもないんです」
 ええええ!? いやいや、あんたアルビオンで散々魔法使ってたし。俺もそれ見てたし。
 あんまり強力な魔法使うから怖くてウェールズ殺せなかったのも今となってはいい思い出だ。
 そのせいでクロムウェルからものすごく怒られた。
「私が今まで使ってきた魔法は、魔法じゃなくて超能力だったんです」
 は?
「ファイアボールは発火能力で……風の遍在は念動力で超高速移動して分身していました」
 す……すごい! そういえばあんたの遍在、音がうるさくて妙だと思ってたよ!
「回復魔法は、傷ついたオリジナルを消滅させてから全く同じコピーを作ってました」
 怖えぇ――っ! 普通に殺人じゃねえか!
「あと錬金はどっかにあるお金持ちの金や剣を瞬間移動させてました」
 どっかにいるお金持ちがかわいそう!
「し、しかし使い魔殿。そんなことができるのならわざわざメイジのふりなどしなくとも……」
「そんな! とんでもない! そんなことをしたら官吏に掴まって研究所で解剖されてしまいます」
「いやアンリエッタ姫殿下はそんな方じゃ……」
 横目でチラっと見る。当のアンリエッタ様はおっさん使い魔の言うことなど耳に入らないらしく、倒れたゲルマニア皇帝を踏みつけながら鼻の穴に小指を突っ込みリズミカルに動かしていた。
「……ないと思う……思いたいんだが……」
「ほほう。本当にメイジではないというのなら証拠を見せてもらおうか。できなければかわいいメイドを連れて私の屋敷に来い」
 モット伯、前後のつながりが分かりません。

「では何をしましょうか……うーん。あ、そうだ。思い切って……レコン・キスタの軍勢を吹き飛ばしてみましょうか」
「ええ!? あんたそんなことできるの!?」
 おーい、主人が誰よりも驚いてるぞー。
「いやムリとは思いますけどせっかくだからやってみます」
 せっかくだからっておい。
「え……まさか本当にできたりはせんだろうな」
「ま、まさかとは思うけどあんまり本気出さなくていいですよ」
「そうそうトリステインは滅ぶ運命なんだよきっと……」
 ダメな人たち、隠していたダメッぷりをあらわにした人たちが慌てている。お前らなんのために軍議やってたと思ってるんだ。
 ルイズの使い魔は腕を曲げ、腰を曲げ、それらを思い切り伸ばすと同時に
「えいえーい!」
 金切り声で叫び倒した。なんて間抜けな掛け声だ。白眼むいてるけど、大丈夫かあれ。
「あ……成功しました」
 えええええ!? 今ので!?
「どういうことだこれは!」
「嘘だよな!? 嘘なんだよな!? 嘘だと言ってくれ!」
「誰か! 誰か確かめてこい!」
「ちょ、ちょっと確認してみます! しばらくお待ちください!」
 偉い人たちの命を受け、アニエス殿が使いを出してから数分後。
「えー確認がとれました。レコン・キスタ全軍は竜巻に巻き込まれ彼方に吹き飛ばされていったそうです」
 そんなのありかよ……。
「目撃者によりますれば『死ぬ~!』と叫びながら飛ばされていったとか」
 レコン・キスタ、意外にノリが軽いんだな……。
「ええと……トリステインは救われたということで……この軍議どうしましょうか」
 どうするも何も……どうするんだ?

 気まずい空気が立ち込める中、枢機卿が立ち上がった。懐から紙の束を取り出し、すでにやさぐれることを止めていた王女に差し出す。
「御目を通していただかなければならない書類です」
「……これは?」
「こたびの戦での、戦死者の名簿です。貴族、平民、将軍仕官、兵隊……、貴賎を問わず、わかる限りの全ての名前が記されております」
 うわ、何か小芝居始まってる。
「おおお……」
 泣き崩れるアンリエッタ様。あなたさっき兵士達のことゴミ虫どもとか言ってましたよね?
「お忘れめさるな。ここに書かれた名前の数だけ正と義があったことを。ここに書かれた名前の数だけ、守らなければならないものがあったことを」
 そういう枢機卿は金が一番とか言ってませんでしたか?
「覚えていらっしゃらないと存じますが、アンリエッタ様がお生まれになったときの先王両陛下のお喜びといったら! おそれながら、その小さなお体を抱き上げ、あやす光栄に浴したことも、一度や二度ではありませぬ」
 リッシュモン殿は何を言っても引き返せない気がします。
「先ほどの言葉とて、祖国を思えばこその苦言でございます」
 あんな苦言どこの世界探したって存在しねえよ!
「きゃああああ! 皇帝陛下、なぜそのように破廉恥な格好を! お召し物はどうされたのです!?」
 いや、さっきまで平然と踏み倒してましたよね? それどころか蹴り潰してましたよね?
「ち、違う……これは誤解だ」
 そんな誤解はないだろ。
「これはあくまでもゲルマニア流の外交術だ」
 あんたいつか自国の国民から刺されるぞ。
「ううっ……もうお終いだ。研究所に連行されて解剖されてしまう……標本にされる……」
 いやいやいやいやいや、君救国の大英雄だから。爵位の二つや三つじゃ足りないから。
「こおのハゲ犬! 主人であるわたしにまで隠し事するってどういうことよ!」
 ルイズ、ここは怒るべき場面ではないんじゃないか?
「で、でも……ちょっとだけ見直してやったんだからね!」
 おおおお、ツンツンしていると思いきやデレデレに移行! さすがは僕の婚約者、ナイスコンビネーションだ!
「……皆様お疲れ様でした。とりあえず本日はこれで解散の運びとさせていただきます……」
 アニエス殿もお疲れ様でした。今日一番大変だったのはあなただったと思うよ。本当に。

 ああ……場の空気に流された挙句、レコン・キスタについてたことをバラさなくて本当に良かった……。

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