少女―――ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールはメイジであった。
魔法を行使し、その力をもって力を持たない人々、平民を治める特権階級。
この世界の大陸、『ハルケギニア』の「トリステイン」という国ではそういう制度であり、事実、メイジと平民の間に横たわる壁であった。
ここはその中にあるメイジを養成する魔法学院の進級試験を兼ねた使い魔召喚の儀式が執り行われていた。
魔法を行使し、その力をもって力を持たない人々、平民を治める特権階級。
この世界の大陸、『ハルケギニア』の「トリステイン」という国ではそういう制度であり、事実、メイジと平民の間に横たわる壁であった。
ここはその中にあるメイジを養成する魔法学院の進級試験を兼ねた使い魔召喚の儀式が執り行われていた。
(今度こそ、今度こそ成功してみせるわ・・・!)
しかし、彼女は魔法の発動と行使を今まで正しく行えたことは一度たりともない。
故に、「ゼロ」という不名誉な二つ名を与えられ、雌伏の時を過ごしてきた。
先程も使い魔召喚の魔法『サモン・サーヴァント』を幾度も失敗させ、爆発現象を起こし、周囲の同期の生徒達の笑いものになっている。
それでも、彼女は諦めなかった。
自身の「ゼロ」を否定し、乗り越えるために、今一度『サモン・サーヴァント』の呪文を唱える。
故に、「ゼロ」という不名誉な二つ名を与えられ、雌伏の時を過ごしてきた。
先程も使い魔召喚の魔法『サモン・サーヴァント』を幾度も失敗させ、爆発現象を起こし、周囲の同期の生徒達の笑いものになっている。
それでも、彼女は諦めなかった。
自身の「ゼロ」を否定し、乗り越えるために、今一度『サモン・サーヴァント』の呪文を唱える。
「宇宙の果てのどこかにいるわたしの下僕よッ。神聖で美しく、そして、強力な使い魔よッ! わたしは心より求め、訴えるわ……我が導きに、答えなさいッ!!」
その呪文に応え、現れる鏡にも似た次元の扉。
そこまでは今までとさして変わることはない。また爆発を起こし、失敗するだろう。
周囲の生徒達はそう思っていた。
しかし―――
そこまでは今までとさして変わることはない。また爆発を起こし、失敗するだろう。
周囲の生徒達はそう思っていた。
しかし―――
『私に呼びかける者へ、問います。』
「えっ!?」
「な、なんだ!?」
「声!?」
「嘘だろう!?」
「まさか、精霊かなにか!?」
「『ゼロ』のルイズが!?」
「ありえないわ!」
「な、なんだ!?」
「声!?」
「嘘だろう!?」
「まさか、精霊かなにか!?」
「『ゼロ』のルイズが!?」
「ありえないわ!」
『扉』の向こうから神聖さに満ちた声が聞こえてきたことで、ルイズと、周囲の生徒が驚きの声をあげた。
『私を呼び、望むものは何ですか?』
「嘘・・・。どうして、声が・・・?」
「嘘・・・。どうして、声が・・・?」
その問いかけに暫し呆然とするルイズ。
もし、神や精霊のような上位存在ならば、この契約は今までのようなただの使い魔とのものとは一線を隔する。
自身の返答次第ではこの契約は反故になるだろう。
だからこそ、少女は答えた。
もし、神や精霊のような上位存在ならば、この契約は今までのようなただの使い魔とのものとは一線を隔する。
自身の返答次第ではこの契約は反故になるだろう。
だからこそ、少女は答えた。
「我が名、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの名にかけ、ここに誓うわ! 私の望みはあなたと共に在り、共に生きること! だから、私の呼びかけに応えてッ!!」
自身の精一杯の誠意と敬意を込めて。
『そう。それが答えなのね。』
慈愛に満ちた『声』がこちらに返って来ると、『扉』がいっそうの輝きを増す。
『あなたの召致に応じましょう。』
その宣言と共に『扉』は一際強く輝き、その場にいたすべてのメイジ、彼らに呼び出されたであろう使い魔達はその眩さに目を閉じた。
光が晴れ、目を開けると、一人の女性が瞳を閉じ、そこに姿を現している。
白銀の髪は太陽の光を受け、その身にまとう装束と相まって、神話にある女神を彷彿とさせる。
双眸が開かれると、そこには闇夜を晴らすかに見える金色。
そして、『女神』はルイズを目に映し、名乗った。
白銀の髪は太陽の光を受け、その身にまとう装束と相まって、神話にある女神を彷彿とさせる。
双眸が開かれると、そこには闇夜を晴らすかに見える金色。
そして、『女神』はルイズを目に映し、名乗った。
「私はミカヤ。貴女の呼びかけに応えた者。
貴女と共に在り、共に生きることを誓いましょう。」
貴女と共に在り、共に生きることを誓いましょう。」
ファイアーエムブレム外伝 ~双月の女神~
第一部 『ゼロの夜明け』
序章 『召喚(ルイズの章)』
第一部 『ゼロの夜明け』
序章 『召喚(ルイズの章)』
「嘘だ・・・。」
「『ゼロ』のルイズが『サモン・サーヴァント』に成功した・・・。」
「メイジ? いや、あれはきっと女神様よ・・・。」
「いや、いずれにしてもありえない・・・。」
「『ゼロ』のルイズが『サモン・サーヴァント』に成功した・・・。」
「メイジ? いや、あれはきっと女神様よ・・・。」
「いや、いずれにしてもありえない・・・。」
ルイズの召喚したミカヤと名乗る女性を見て、騒然とする生徒達。
彼らの監督役としてその場にいた壮年のメイジ、コルベールも前代未聞の事態の収拾をはかりかねていた。
『扉』越しに対話をしたことも、人間の姿をした―――神聖な気配を漂わせているが、おそらく人間のメイジであろう彼女。
いずれにしても、人間を召喚したことは前例にないことであった。
彼らの監督役としてその場にいた壮年のメイジ、コルベールも前代未聞の事態の収拾をはかりかねていた。
『扉』越しに対話をしたことも、人間の姿をした―――神聖な気配を漂わせているが、おそらく人間のメイジであろう彼女。
いずれにしても、人間を召喚したことは前例にないことであった。
「ミ、ミスタ・コルベール。」
おずおずとした口調でうかがいを立てるルイズの声にコルベールは意識を戻す。
「何かね? ミス・ヴァリエール。」
「わ、私、あ、あのお方と『コントラクト・サーヴァント』しても良いのでしょうか?」
「わ、私、あ、あのお方と『コントラクト・サーヴァント』しても良いのでしょうか?」
ミカヤの雰囲気に当てられ、動転しているのか、彼女を『あのお方』と言ってしまうルイズ。
「う、うむ。確かに恐れ多いとは思うが、決まりだよ。」
コルベールもまた、ややどもりつつもルイズに説いて聞かせる。
「二年生に進級する際、君達は使い魔を召喚する。それによって今後の属性を決定し、それにより専門課程へと進む。一度呼び出した使い魔は
変更することはできない。何故なら春の使い魔召喚は神聖な儀式だ。好む、好まざるに関わらず、あのお方、ミス・ミカヤを使い魔にするしかない。」
「で、でも・・・。」
変更することはできない。何故なら春の使い魔召喚は神聖な儀式だ。好む、好まざるに関わらず、あのお方、ミス・ミカヤを使い魔にするしかない。」
「で、でも・・・。」
ルイズは恐縮しつつ、ミカヤを見る。
すると、二人の話を黙して聞いていた彼女は、鈴を転がすような美声で、口を開いた。
すると、二人の話を黙して聞いていた彼女は、鈴を転がすような美声で、口を開いた。
「事情は概ね理解しました。」
二人、否、その周囲を取り巻く生徒達もがミカヤと正対する。
あたかも、神の啓示を受けるかのように。
あたかも、神の啓示を受けるかのように。
「ヴァリエールさん、いえ、ミス・ヴァリエールと呼んだほうがいいでしょうか? 私は貴女の呼びかけに応え、ここに現れました。私が貴女と共にあることに使い魔になることが必要であるならば、それに応じます。」
「で、ですが、ミス・ミカヤッ。い、い、いいのですか?」
「ええ。私は先程の誓いを必ず果たします。」
「・・・・・・。」
「で、ですが、ミス・ミカヤッ。い、い、いいのですか?」
「ええ。私は先程の誓いを必ず果たします。」
「・・・・・・。」
ミカヤの言葉に沈黙するルイズ。
そこへコルベールが言葉をかける。
そこへコルベールが言葉をかける。
「ミス・ヴァリエール。ミス・ミカヤがこう申しているのだ。それに、これは伝統であり、例外は認められない。何回も何回も失敗しつつも、ミス・ミカヤのようなお方を召喚できたことは、まさに僥倖。儀式を続け、契約を。」
「そうだそうだ!」
「叶うなら僕が契約したいぐらいだ!」
「ミス・ミカヤとの契約拒否なんて始祖ブリミルの罰が下るぞ!」
「『ゼロ』のお前には勿体無いんだ!早くしろ!」
「そうだそうだ!」
「叶うなら僕が契約したいぐらいだ!」
「ミス・ミカヤとの契約拒否なんて始祖ブリミルの罰が下るぞ!」
「『ゼロ』のお前には勿体無いんだ!早くしろ!」
コルベールの促しに続き、周囲―――主に男子生徒からそんな野次が飛ぶ。
もはやこうなっては、ルイズも後には退けない。
もはやこうなっては、ルイズも後には退けない。
「・・・わかりました。ミス・ミカヤ、屈んでいただけますか?」
「分かりました。」
「分かりました。」
ルイズの言葉に従い、彼女の背と同じ高さに屈むミカヤ。
「では、目を閉じてください。」
「ええ。」
「ええ。」
ミカヤは目を閉じ、ルイズの次の行動を待つ。
それを見たルイズはミカヤにほんの木の棒程の長さの杖を振り、使い魔との契約の魔法、『コントラクト・サーヴァント』の呪文を唱える。
それを見たルイズはミカヤにほんの木の棒程の長さの杖を振り、使い魔との契約の魔法、『コントラクト・サーヴァント』の呪文を唱える。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔と為せ。」
そしてミカヤの頬に手をそえ、契約の口付けを交わした。
そしてミカヤの頬に手をそえ、契約の口付けを交わした。
―――後に、『双月の女神』と呼ばれることになる、二人の伝説のメイジはここに契約を果たした。