あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ディセプティコン・ゼロ-2


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召喚の翌日、ルイズは今までに無く爽快な気分で目覚めた。
一度伸びをして窓へと歩み寄ると外の風景を眺め、其処に巨大な鉄塊を認めるとその顔にじんわりと笑みが浮かぶ。

「・・・・・・夢じゃないんだ」

嬉しさを隠し切れない声で呟くと、堪えきれないといった様子で小躍りする。
その勢いのまま支度を済ませ部屋を出たルイズは、そこで仇敵ツェルプストーと鉢合わせする事となった。

「あら、お早うルイズ」
「・・・・・・お早う、キュルケ」

忽ち不機嫌となるルイズ。
その表情の変化を面白そうに眺め、キュルケはさも愉快そうに口を開いた。

「それにしても昨日は大変だったわねー。まさか空飛ぶ鉄の塊を召喚するなんて、前代未聞じゃない」
「ええ、そうでしょうね。で? 何の用なのキュルケ」

おや、とキュルケは意外そうに眼を見開いた。
予想ではここで激しく突っ掛かってくるルイズに自分の使い魔、サラマンダーのフレイムを見せ付けてからかうつもりだったのだが。
幾ら風竜を遥かに凌ぐ速さで飛ぶとはいえ、他に大した使い道も無いであろう使い魔に、ルイズは随分と入れ込んでいるらしい。
予想に反して素っ気無いルイズの反応に、キュルケは毒を抜かれたような表情を浮かべた。

「別に・・・・・・まあ、貴女が満足してるならいいけどね。私はやっぱり生き物の方がいいかしら。ねぇ、フレイム」

自分の使い魔に話しかけ、返される鳴き声に薄い笑みを浮かべるキュルケ。
ルイズはそんな彼女を褪めた眼で見ていたが、構っていられないといった様子で食堂へと歩き去ってしまう。
その背を見詰めながらキュルケは、昨日と同じように深い溜息を吐くのだった。

「ほんと・・・・・・アレの何処が良いのかしら」


一方アルヴィーズの食堂へと向かうルイズは、キュルケの言葉を反芻しながらふんと鼻を鳴らした。
その表情に自身の使い魔を遠回しに馬鹿にされたという憤りは無く、代わりに理解の及ばないキュルケを哀れむような内心が表れていた。

実際にあの使い魔に触れてみなければ、あの力強さは解らない。
風竜なんか目じゃない。
サラマンダーなんか、あれに比べれば野鼠のようなものだ。
私の使い魔だけが、皆と違う?
上等だ。
寧ろ一緒にされては困る。
私だけの使い魔を、他の非力な存在と同一視しないで貰いたいものだ。

目覚めた際以上の上機嫌で、ルイズは足取りも軽く食堂へと踏み入れる。
その上機嫌はミセス・シュヴルーズの講義で爆発を起こした後も変わらず、ギーシュがメイドの少女に難癖を付けているのを咎めた際も崩れる事は無かった。



2人の見慣れない人物が、ルイズの名を叫びながら食堂へと乱入するまでは。

「ヴァリエール! ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは何処だっ!」

突然響き渡った怒声に、アルヴィーズの食堂に居た者全てが動きを止める。
それは場を誤魔化す為にルイズへと決闘を申し入れようとしていたギーシュも例外ではなく、突然の闖入者を呆けた顔で見詰めていた。

それはトリステイン魔法学院3年生の間では、名の知られたトライアングルメイジ2人であった。
生徒ながら高いメイジとしての素質と、座学の優秀な成績から、教師陣も一目置く人物。
そして余り好ましくない意味でも有名な2人だった。

曰く、複数の生徒から金を巻き上げている。
曰く、気に入らない級友、後輩は2人掛かりで痛め付けた挙句、家名を盾に学院から追放する。
曰く、他人の恋人を奪おうとし、拒絶されるとやはり2人掛かりで闇討ちし、メイジとしての道を閉ざしてから学院を追い出した。
曰く、平民と見れば他の貴族が嫌悪を催すほどの暴虐さを見せ、しかもその手はその家族にまで及ぶ。

以上のように複数の悪名を持ち、しかもその殆どが事実であるのだから始末に負えない。
しかも頭だけは良いのか、自らの家名で『処理』できぬ家柄の者には一切手を出さず、立場が下の者にのみ非道な振る舞いを為すという下種である。

そんな下種2人がルイズの名を叫びながら食堂の中を足音も荒く歩み寄る姿に、周囲の者達は心底震え上がった。
当のルイズは顔を顰め、礼儀のなっていない2人を咎めるように苦言を呈する。

「食堂ではもう少し静粛にして頂けませんこと、先輩方?」

その言葉に神経を逆撫でされたのか、2人は元々紅くなっていた顔を更に紅潮させ、唾を飛ばしながら怒鳴り声を上げた。

「黙れ! ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、貴様に決闘を申し入れる!」
「トーレスの仇! この恨み、杖にかけて晴らす!」

トーレス? と聞き覚えの無い名に首を傾げるルイズ。
彼女がその名を知らないのも無理は無い。
それは目の前に居る下種の片割れ、その使い魔の名なのだから。
何が何だか解らない、といった風情の周囲に、彼等は声高に決闘の理由を語り出した。


そもそもその『事故』は、2人の自業自得といえるものだった。
昨日、学院へと降り立ったルイズの使い魔を目にした2人はそれに興味を持ち、先程になって自身の使い魔を従え見物へと向かったのだ。
そして、2人はうんともすんとも言わぬ『ただの鉄屑』に嘲笑を浴びせ、使い魔達をけしかける。

ミミズクのトーレスとオオワシのイルミー。
それぞれが鉄屑の其処彼処を突き、引っ掻き、更には糞まで浴びせ掛けた。
当然ながら鉄屑は無反応。
それに気を良くした彼等が下種特有の残酷さを発揮し、魔法で目の前の鉄屑を引き裂こうとした、その次の瞬間だった。

風を切る音と共に甲高い鳴き声と何かが弾ける音が響き、2人の周囲に赤い血が降り注いだ。
見れば、鉄屑の尾の部分に当たる位置に付いた4枚の板が高速で回転し、周囲に無数の羽根と細かい血を飛び散らせているではないか。
そして回転が収まった頃、彼等は漸く思い出す。
その板の上で、一仕事終えたトーレスが羽を休めていた事を。

「貴様が、貴様の使い魔がトーレスを殺したんだ! 償いをして貰うぞ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!」

その叫びに、ルイズだけでなくキュルケやギーシュ、果ては常に無表情である筈のタバサまでもが呆れを滲ませた視線を向ける。

どう考えても、これはルイズの落ち度ではない。
況してやその使い魔の非でもない。
己の使い魔に馬鹿な命令を下した、目の前の2人の非ではないか。

そしてルイズはその考えを隠す事も無く、正直に意見を述べた。

「それは先輩方自身の過ちではありませんの。御自身の非を私に擦り付けられても困りますわ」

ルイズのその言葉に、周囲から賞賛と賛同の声が上がる。
その声は徐々に大きくなるかと思われたが、それは2人の片割れがテーブルへと叩き付けた杖の音によって終止符を打たれた。

「いい気になるなよ、ヴァリエールの出来損ない風情が。少しは情けを掛けてやろうかと思っていたが・・・・・・止めだ」
「お前は四肢の腱を切ってから僕等が直々に可愛がってやる。後は豚の相手でもして貰おうか」
「ヴェストリの広場に来い。そこが処刑場だ」

下卑た笑みを浮かべ、決闘の会場を告げる2人。
そのまま身を翻して食堂を去ろうとした時、余りの事に凍り付いていたシエスタの肩が彼等の片割れに僅かに触れた。
それだけ、だったのだが。

「邪魔だぁっ!」
「あっ!?」

僅かに肩へと触れた彼は苛立ちもそのままに彼女の頬を杖で殴り、更にもう一人がエア・ハンマーで彼女の身体を壁へと叩き付けた。
呆然とそれを見詰めるギャラリーの眼前で、シエスタは壁に血の跡を残してゆっくりと崩れ落ちる。
次の瞬間、ルイズ、キュルケ、そしてギーシュが叫んだ。

「何をっ!?」
「あんた達、何考えて・・・・・・!」
「レディにこんな・・・・・・よくもっ!」

言葉の内容こそ異なるものの3人が同じ怒りを秘め、背を向けて歩み去る外道どもに向かって吼える。
しかし足を止めて振り返った彼等は薄笑いを浮かべ、心底馬鹿にした様子で侮蔑の言葉を吐いた。

「何だ? 平民を罰しただけで何をそこまで吼えるんだ?」
「無礼を働いた平民に正当な罰を与えるのは、貴族の務めだろう? 出来損ないはそんな事も解らないか」
「出来損ないに付き合う連中も同じ出来損ないのようだ。つまらん事で騒ぐんじゃないっ!」

言いたい事を言い終え、食堂を後にする2人。
その背を睨む3人の眼には、危険なまでに苛烈な敵意の火が灯っていた。

「ヴァリエール」
「何よ」
「相手は2人。私もその決闘、受けるわ」
「いいや」

キュルケの言葉が終わるか否かという所で、別の声が放たれる。
それは他ならぬギーシュのものであった。

「その役目、僕が引き受ける」

毅然と言い放ったその言葉に、ルイズとキュルケは眼を見開いて驚く。

「・・・・・・一体どういう心境の変化かしら? 最初に決闘を申し入れようとしたのは他ならぬ貴方なのに」
「だからだよ。僕はもう少しで、あいつらと同じ立場に堕ちる所だったんだ」

そう言ってギーシュは、いち早く駆け付けたタバサに治療を受けるシエスタへと目をやる。
どうやらあの血は壁にぶつかった際に切れた頭皮から出たものらしく、思ったほどの重傷ではなさそうだ。
今は他にも何人かの水系統のメイジが付き添い、シエスタの傷を癒している。
どうやら彼等も、あの2人の所業に腸が煮え繰り返っているようだ。

「僕は何の非も無い彼女に僕自身の過ちのツケを擦り付け、挙句の果てに君に決闘を挑もうとしたんだ。あいつらと変わらないよ」

そう語るギーシュの目は怒りに燃えていたが、どうやらその怒りは彼等だけでなく自分自身にも向けられているらしかった。
余りにも醜い彼等の振る舞いに自身の姿を重ね、自己嫌悪の念が浮かんでいるらしい。
そしてそんなギーシュへと見定めるかのような視線を送っていたキュルケであったが、根負けしたように溜息を吐いた。

「分かったわよ、ギーシュ。この役目、貴方に譲るわ」
「・・・・・・有難う、ミス・ツェルプストー」
「ただし!」

キュルケはルイズとギーシュの肩を取り自分の方へと向かせると、きょとんとする2人の目を覗き込むようにして語り掛けた。

「やるからには絶対に負けない事! あの自惚れの過ぎる忌々しい馬鹿どもを、徹底的にのしてやりなさい!」

その貴族らしからぬ激励にぽかんとした顔を晒す2人であったが、その顔に徐々に笑みが浮かんでくる。
遂には3人、声を上げて笑い出し、自信に満ちた表情でキュルケへと言葉を返した。

「当たり前よ! ギタギタにして保健室送りにしてやるわ!」
「フ・・・・・・僕のワルキューレに掛かれば、トライアングルメイジの1人や2人・・・・・・」

その時、意気込む2人の服の裾を引く者があった。
シエスタの治療を終えたタバサだ。

「何かね、ミス・タバサ」
「あの2人は風のトライアングル。遍在に気を付けて」
「遍在?」

首を傾げるルイズだが、続くタバサの言葉にギーシュ共々驚愕の表情を浮かべる。

「魔力を用いた分身。多分、2つは出る」

冷静に放たれた言葉に、2人の顔は見る見る内に青褪めてゆく。
それはキュルケも同様で、このままでは2人が嬲り殺しにされると、必死に打開策を考えていた。
しかしそれよりも早く、ルイズとギーシュの声が食堂に響き渡る。

「だからって今更退ける訳無いじゃない!」
「その通りだ! 行こうじゃないか、ミス・ヴァリエール!」
「ちょ、ちょっと待ちなさ・・・・・・」

キュルケの制止も空しく、止める間も有らばこそ2人はヴェストリの広場へと向かい食堂を出て行ってしまう。
既に頭に血が上り、引っ込みがつかなくなってしまった2人に、キュルケは苛立たしそうに叫ぶ。

「待ちなさいったら! ああもう!」
「私達も行く」

そんなキュルケの腕を掴んで走り出すタバサ。
キュルケは驚いたようにそんな彼女を見る。

「・・・・・・珍しいわね、タバサ。貴女がこんなに誰かに関心を持つなんて」
「・・・・・・ただの気紛れ」

それだけを語り、2人はヴェストリの広場へと向けて駆ける。
前方から娯楽に飢えた生徒達の歓声が上がり、2人は更に走る速度を上げた。



同じ頃、学院の一画で学院全体に対し集音を行っていた存在がその行為を中断し、耳障りな音と共にその巨大な6枚の羽を稼動させ始めたが、それに気付いた人間はほんの僅かに過ぎなかった。



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