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ゼロのしもべ第3部-11

11話

 怨怨怨怨怨、と地鳴りとも鳴動ともつかぬ叫びをあげながら現れたのはポセイドンほどもある巨人。
 手は馬を握りつぶせるほどに大きく、足は並みの家ほどもある。
 血のように赤く、ギラギラと輝く目。大きく開かれた口。そして、右手に握られた巨大な鐘。
「なによ!これ」
 とつじょ現れた巨人を見上げてキュルケが叫ぶ。思わず足がすくむ大きさだ。
「命の鐘!」
 水の精霊がビンの内側に顔を寄せた。
「まずいぞ。あれは媒介としている単なるものを飲み込んでしまったのだ!」
「どういうことなの!?」
 モンモンが大声で問う。戦い向きではない水の魔法を得意とするため1人残っていたのだ。
「命の鐘は操者の生命を消費し力へ変えるというたのを覚えておるか?それの意味するところは、生命の消費量に応じて威力が変化
するということ。見よ、あの単なるものの周囲を!」
 護衛らしきメイジたちが、苦悶の表情を浮かべて立ち尽くしている。
「おそらく媒介となった単なるものの命残り少なく、出せる力が微弱であったのだろう。そしてそれを補うために、あのように他の単なる
ものから命を奪っておるのだ!ほれ、あの陣形を見るがよい。」
 クロムウェルを中心に、護衛の男たちは五芒星を描く陣形をとっていた。
「あのようにして複数の命を用い、強力な道術を発動させておるのだ。その力を受けた命の鐘が暴走し、核であるところの媒介である
単なるものを生きたまま飲み込んでしまったのだ。なにしろ命の鐘は生命が好物。それを食うことができる機会は数少ない。全ての
命を飲み込むまで、使用者となっている単なるものの命を失うわけにはいかぬからの。」
「えっと、つまり、ご馳走が目の前にあるからそれを食べ終えるまで自分が消えないように、あのおっさんの身体を守ってるってこと?」
「平たく言えばそうじゃ。」
 まるで雷電か、本部以蔵かという見事な解説者っぷりを見せ付けた水の精霊。なぜか威張っている。
 ドウン、という地面が揺れて波打つような大きな音がして、モンモンが慌ててそちらに顔を向けた。
 さきほどまでキュルケたちがいた場所を、巨大化したクロムウェルが踏みつけていた。その威力に地面が凹み、割れている。逃げ惑
っているギーシュたちの姿が見える。
「ああ、ギーシュ。愛してたわ…。」
 過去形でそんなことを呟くモンモンであった。

 大地が鳴動し、引き裂けた。
 大木がひき抜かれ、宙に浮く。
 岩や土砂が竜巻となり、あらゆるものを飲み込んでいく。
 地上に突如現れた2匹の竜が、当たるもの全てを巻き込みながら、相手の喉笛を噛み千切らんともつれ合っている。
 ここにおいてバビル2世と地球監視者は、精神動力を使って真正面からぶっつかったのだ。
 精神を集中し、超能力の力を最大限に使う、力と力の対決だった。
 ひるむことも、逃げることも許されない戦いだった。
 それは、波と波がぶつかり合い力のないほうはたちまち押し流される、そんな戦いだったのである。
 二つの力の渦が、あたりを阿鼻叫喚の地獄絵図に変えていく。あらゆるものが粉砕され、引き裂かれ、吹っ飛ばされていく。抗うこと
など誰ができようか、それは絶対無比の暴君なのだ。
 やがて、もつれ合う2匹の竜がウロボロスの蛇のごとく互いを飲み込みあい、一つに解け合って、ついには姿を消す。
 その中から、老人を背負った1人の少年が姿を現した。
 バビル2世だ。
 恐るべき能力を持つ地球監視者を真っ向勝負でねじ伏せたのであった。
「No.1!!」
 担ぎ上げられたNo.1を見て、No.3が叫び声をあげるNo.3。その隙をつきセルバンテスの拳がみぞおちを貫いた。身体をくの字に折り
曲げて、No.3が大地に膝をつく。
「ご苦労様です。ビッグ・ファイアさ…君。」
 全身をズタズタにされたセルバンテスが、近寄ってきたバビル2世を見てにっこりと微笑む。
「あなたのおかげです。」
 バビル2世が微笑み返した。
「あなたがそちらの男を抑えておいてくれたから、ぼくはこの老人に集中できたのです。」
 うめき声を上げるNo.1。どうやら、まだ息はあるようだ。
「信じられぬ……われわれ地球監視者が、超能力勝負で敗れるとは。」
 バビル2世をねめあげながら呟くNo.3。よほどショックだったのだろう。これまでセルバンテスと地球監視者のNo.3は全くの互角であ
った。いや、わずかにNo.3のほうがセルバンテスを凌駕していた。それが先ほどの攻撃は今までにないほどまともに食らった。それ
だけでも、No.3の受けた衝撃の大きさがわかるというものだ。
 手を使って、ようやっと立ち上がるNo.3。よろよろであるが、眼光は鷹のごとく鋭い。
「まだだ……まだわしが残っている…。」
 ようやっとのNo.3が腕を前に突き出す。先ほどの攻撃がよほどこたえているのだろう、ジジジッと線香花火のような衝撃波がわずか
に発生する。
 だが、その衝撃波は強引に消されてしまう。セルバンテスだ。セルバンテスがNo.3の手を掴んで、タバコの火でも消すように衝撃波
を押さえ込んでしまったのだ。
「いけないなあ、アル…いや、君。もはや勝負は完全についているじゃないか。まさかその身体で、我々2人を相手にするというのか
ね?」
 フッフッフッと嗤うセルバンテス。No.3がそんなセルバンテスを睨みつける。
「貴様……何者だ。素手で岩をも砕く打撃を受け止め、弾丸をものともせぬ我々の身体をここまで痛めつけるとは……。」
 この世界に、いままで貴様のようなメイジはいなかったぞ。とNo.3が言う。だがバンテスは嗤って答えない。
「もう……よい、No.3よ……。」
 バビル2世の肩の上から、息も絶え絶えに声がする。
「どのみち……われわれではバビル2世を攻撃することはできぬ……。さきほどの戦いで、それを思い知った……。」
 ズタボロになった顔を起こすNo.1。
「もはや抗う力も、気もありませぬ。降ろしてはいただけぬか……。」
 バビル2世はその言葉に頷いて、No.1を地面に座らせてやる。No.1がぺこりと頭を下げた。
「No.3よ。先ほど、わしがバビル2世と戦っていて気づいたことが一つある。それは、我々はバビル2世を攻撃すること自体が苦痛であ
る、ということじゃ。」
「どういうことだ?」
 No.3が当惑した表情を浮かべる。
「そのままの意味じゃ。わしが精神動力で攻撃を始めると、まず背中に寒気が走った。次に脂汗が全身に浮かび始め、息が苦しくな
っていく。最終的には意識が朦朧とし、全身を虚脱感が襲ったのだ。その間中、頭の中で声が響いておった。この男を攻撃してはな
らぬ。矛を収めよ、とな。」
 No.3が、馬鹿馬鹿しいとばかりにハッと息を吐いた。
「信じては折らぬようだな。では試してみるがよい。」
 No.1が座ったまま後ろに下がった。そんなNo.1をNo.3はジッと見ていたが、やがて決心して腕をバビル2世に向けた。
「こんな小僧を攻撃することに苦痛があるだと?馬鹿なことを…」
 それまでの経緯をジッと見ていたバビル2世は、避けるそぶりすら見せず棒立ちのままである。
「我々は人類を消滅させるために作られた人造人間だ。苦痛など感じるはずが。感じるはずが……。苦痛など……。苦痛………。」
 No.3の顔が青ざめていく。腕が震え、息が荒くなってゆく。やがて耐え切れなくなり、腕を下ろし地に伏せた。
「どういうことだ……。なぜ、なぜこのようなことが。あのタルブの村でNo.1が抱いたという違和感というのはこのことか……」
 ふむ、と首を捻るバビル2世。心を読むが、嘘を言っているわけではなさそうだ。この2人は、本当に自分を攻撃してはいけないと
思っているようだし、苦痛を感じているようだ。いったいなぜなのだろうか?
「地球監視者と言っていたが、それはいったいなんなのだ?」問うバビル2世。
「……はるかな昔。地球を訪れた宇宙人は、地球人の性質を調査しおののき震えた…。」
「極めて残忍であり、攻撃的。しかも進化速度が速い。」
「そのため、いずれ宇宙に進出すると考えた。」
「じゃが、このような性質を持った生き物。進出すれば他の惑星に悪影響を及ぼすことは間違いない。」
「進出しなくても、宇宙に悪影響を及ぼす可能性は高いと考えられた。しかし場合によっては宇宙に進出しない、または性質が穏やか
になるかもしれない。」
「そこで、じゃ。調査の結果、宇宙人はある結論を下した。」
「将来、万一にも地球人の性質が変わり、正しい方向へと変化するかもしれない。そこで地球を破壊できる威力を持った爆弾と、その
起爆スイッチである人造人間を1対(いっつい)製造し、海底に沈めたのだ。」
「地球人のように残虐でない宇宙人は、まだ罪が確定したわけでない人間を、他の生き物もろとも葬り去るのに抵抗感を抱いてい
た。そこでこのような方法をとったのじゃが…」
「まず、我々を含む6人の監視者が作られた。それぞれには1体ずつ神体と呼ばれる兵器を与えられた。」
「監視者の役割は3つ。人類の性質が穏やかなものに変化するか、あるいは宇宙へ進出するかどうか、についての監視。二つ目は、
危険性がなくなったときに、鍵である人造人間が目覚めないようにすること。最後の3つ目は…」
 少し躊躇をするNo.1。だがやがて観念をして、
「三つ目は、数千年経っても危険性が変わらなかった場合に、何があろうとも爆弾で地球を破壊することだったのじゃ。」
 なんだって、と息を呑むバビル2世。
「じゃあ地球はどうなったんですか?」
「まだ爆発はしておらぬ。」
 憎憎しげにはき捨てるNo.3。
「鍵となる人造人間『マーズ』が我々を裏切り、人類を守るために歯向かってきおったのじゃ。」
「あやつは狂っていたのだ!」
 ダン、と地面を拳で殴るNo.3。
「目覚めたときに海底火山の影響で狂ったのだ!さもなければ人類を守るなどという結論に達するはずがない!」
 怨念ここに極まれり、というオーラを発する2人の地球監視者。鬼気迫るとはこういうことをいうのだろう。
『どんな手段を用いてでも、地球を破壊する』というプログラムをされ、そのために誕生した生命体だ。任務達成こそがアイデンティティ
であり、存在理由なのだ。それ以外のことは考えないようにできている。それを阻むものは、憎悪の対象でしかないのだ。
「それはわかった。じゃあ、なぜぼくに対して攻撃を躊躇ってしまうのだ?」
自分が宇宙人の子孫である、ということと関係があるのだろうか。あるいはバビル1世とは、その調査にきた宇宙人だったのだろうか。
「では、その先は私が説明いたしましょう。」
 涼やかな、風のような声がした。
 奇妙な従者を引き連れて、孔明が現れたのだった。

「孔明!」
 なぜここに?と訊こうとしたバビル2世であったが、よく考えるとここに来るように指定したのは孔明である。別に不思議ではないか。
 むしろ不思議なのは孔明の後ろにつく従者である。1赤尽くめの鎧男なのだ。怪しいにもほどがある組み合わせだ。100人が100人と
も、「怪しい」と答えるであろう。
「孔明。その、後ろは…」
 あんまりにも目立つのでついバビル2世が訊いてしまう。
「この鎧男は、まあハッタリですな。なにしろ、王宮とは伏魔殿。魑魅魍魎の集まりゆえ、ハッタリの効く護衛が欲しかったのですよ。」
「……ロデム?」
 様子を見て確信し、バビル2世が鎧男に問いかける。その言葉を受けて、鎧男が頷こうとする。
「いや、ロデム様ではございませぬぞ。いや、正体は秘密なのです。ゆえに、そう思っても言わないでいただきたい。肝に銘じていただ
きたい。」
 慌ててそれを制止する孔明。オフィシャルではございませぬぞ!と今更ながらに弁明をする。ものすごく必死だ。
「こほん……だいぶ話がわき道にそれましたな。そろそろ本題に入らせていただきます。」
 誰のせいでそれたかといえば、孔明がそんな目立つ男を連れてきたからなのだが。
「地球監視者のおふた方。これはどうも。はじめまして、というべきでしょうな?」
 うっふっふっと孔明が嗤う。あっという間に調子を取り戻すところはさすがだ。
「どういう意味だ?」
 怪訝そうな表情を浮かべる監視者。
「そのままの意味ですよ。わたくしは、眠っているおふた方にお会いしたのですが、おそらく覚えてはおらぬでしょう?」
「なにっ!?」
 ガバッと2人が立ち上がった。
「では説明させていただきましょう。地球で何が起こったのかについて。」

 5000年前。地球に不時着した宇宙人がいた。名をバビル。
 彼はその力を用いて地元の権力者に取り入り、宇宙へとSOS信号を送る巨大な塔を作り上げた。
「では、ここで皆様疑問にお持ちになりませぬかな?なぜ、バビル1世様は塔を作ろうと思われたのか、と。」
 その答えは単純明快であった。
「それは不時着後、バビル2世様は地球に訪れていた宇宙人の遺留品をいくつも発見していたのです。」
 遺留品、すなわち地球監視者のことである。
「バビル1世様はそれを見て、この星周辺を通りかかる船があるに違いないと考えたのです。」
 だが、その塔は科学知識のない原住民が、不用意に扱ったため大爆発を起こしてしまった。
 塔は消滅し、宇宙へ信号を発信することは不可能になった。しかし、塔の通信施設はなくなったものの、その恐るべき科学力は依然
存在している。
「そこでバビル1世様は原住民と結婚し、子孫を残すことにしました。その中からいずれ現れるだろう、自分と同じ遺伝子を持ち、超能
力を有するものに、塔を渡すために……」
 だが、一つの不安材料があった。
「それ、即ち地球破壊爆弾なり。」
 たとえ塔を残しても子孫が現れるまでに地球が消滅しては水の泡である。そのためバビル1世は地球監視者を徹底的に調査した。
「そこでわかったのは意外な事実でした。なんと地球監視者を残し、爆弾をセットしたのはバビル1世様の祖星と同盟を結ぶ惑星の
人間が残したものだったのです。」
 バビルの星と、爆弾をセットしたものたちの星はお互い協定を結んでいた。それは互いが宇宙に有益であることを認めたゆえに結ば
れたものであり、これを破ることはすなわち極刑に値する罪であるというのだ。
「簡単に言えば『互いの星の住民を、決して殺さない』というものです。」
 これの重要なところは、互いの星の住民が作ったもの、たとえばロボットや人造人間にさえ厳しく協定を守らせるということにあった。
すなわちプログラムの段階で、人造人間やロボットには、互いの星の人間を殺すことができないようになっている。
「もうおわかりでしょう。あなたたちは、バビル1世様の星と協定を結んでいる星の人間が作った人造人間です。つまり、バビルの子
孫を攻撃することはできない。」
 こうしてバビル1世は安心して永久の眠りについた。全てを子孫へと託して。

「……つまり、マーズこそが正常で、われわれにバグが生じていたというのか……」
 遠目にもわかるほどあからさまに地球監視者たちは落ち込んでいた。
「左様。あなたがたの中に、長い地球監視生活でバグが発生したのです。バビル1世様の子孫は、世界中に散らばってしまっていま
す。これを殺すことは重大な協定違反。人造人間ならば即死してもおかしくないはず!」
 つまり目覚めたばかりのマーズは、地球人類の中に協定を結んだ星の遺伝子を無意識のうちに発見していたのだ。
 そのため、戦う気力が湧かなかった。逆に協定を結んだ星の住人を守るべく、プログラムが作動した。
 マーズは、バグが発生し狂ったためにプログラムが働かなくなった仲間たち地球監視者と、死闘を繰り広げていたのだ。
「ましてやバビル2世様ならば、とうてい逆らうことすらできぬはず。にもかかわらず戦いを挑んだあなたがたは、かなり大きなバグが
発生しているということに他なりませぬ。」
 むふー、と笑みを浮かべる孔明。見よ、この勝ち誇った笑顔を。
「……これが違和感の正体か。なんというざまだ……。狂っていると思い込み攻撃していれば、実は狂っていたのは我々だったと?」
「だが、全て納得がいく。マーズが地球を破壊することをためらったわけ。我々に戦いを挑んだ理由。バビル2世に攻撃を仕掛けるとき
の不快感と違和感……。」
 暗い。見るだけで気が沈む。なんて落ち込みようだ。だが、
「話はよくわからないがねぇ。」
 髭を弄りながら、セルバンテスが口を挟む。
「今はそんなことをしている場合ではないんじゃないかな?今優先すべきは、トリステインの王女陛下の救出ではないかね?」
 愚痴と言い訳は後で聞くから待ってろ、とあからさまではないが不快感が見え隠れする声。だがその通りだ。今はここでうじうじして
いる2人に付き合っている暇はない。
「その通りだ。」
 バビル2世が頷いた。
「優先順位から言えば、あなたたち2人に我々が付き合っている暇はない。いまは王女様の救出が先だ。」
 ポセイドンの姿がバビル2世の視界の端に映りこむ。
 と、そのとき―
「 怨 怨 怨 怨 怨 」
 その先で、地鳴りのような声がした。
 声のしたさきで、何かが膨れ上がっていく。
 人間だ。
 人間が、巨大化していくのだ。
 現れたのは、巨人であった。でかい。ポセイドン級の大きさだ。
 互いに顔を見合わせ、頷きあうバンテスとバビル。そして一目散に巨人へと駆け出した。
 後には、孔明たちが残された。監視者たちはうなだれたままであった。

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