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 マジシャン ザ ルイズ (4)霊的直感 
 
 「お願いだよ、ヴェルダンデも連れて行かせておくれよっ!」 
 「駄目ったら駄目っ!何度言ったら分かるの!」 
 朝もやの中、ルイズとギーシュが言い争っている。 
 ギーシュの足元には巨大なモグラ。このジャイアントモールの扱いについての諍いである。 
 
 ギーシュは自身の使い魔であるジャイアントモール、ヴェルダンデを連れて行くと主張している。 
 一方のルイズは、目的地まで馬で向かうのだから地中を掘って進むジャイアントモールを連れて行くことは出来ないと主張。 
 お互い、一歩も譲らない主張と主張。 
 
 「そうか!分かった!君はこの僕の美しいヴェルダンデが役立たずだと思っているんだね!」 
 「はぁ!?何言ってるのよ!問題はそこじゃないでしょ!」 
 「さあヴェルダンデ!君の力を見せてやるんだ!」 
 「ちょっと!こっちの話を聞きなさいよ!」 
 
 ギーシュの号令でルイズに飛び掛るヴェルダンデ。 
 
 「ちょっ!止めなさいよ!この馬鹿モグラ!」 
 ヴェルダンデはそのままルイズを押し倒し、その鼻で体中をまさぐる。 
 ブラウスから、果てはスカートの中身にまで鼻を突っ込むヴェルダンデ。 
 「は~な~れ~な~さ~いっ!!」 
 
 暫くルイズを慰みものにしたヴェルダンデであったが、ルイズの右手の薬指、そこにある宝石を見つけると鼻を押し付けた。 
 「なな、何やっちゃってんのよ!この低脳モグラはっ!これは姫様に頂いた大切な指輪なのよっ!」 
 「ははは、分かっていただけたかな、僕のヴェルダンデはこの様に貴重な鉱石や宝石を見つけ出すことが出来るのさ!」 
 「それが何の役に立つっていうのよ!」 
 
 一陣の、風。 
 
 突然の突風が巻き起こり、ルイズを押し倒していたヴェルダンデの体が宙に巻き上げられた。 
 「ああっ!僕のヴェルダンデがっ!誰がこんな酷いことを!」 
 
 ギーシュが喚くと、朝もやの中から一人の長身の男が現れた。 
 「すまない、婚約者がモグラに襲われているのを見ていられなくてね…おっと、僕は敵じゃない。 
  姫殿下より君達の同行を命じられた、魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ」 
 「わ、ワルドさま!?」 
 流石のギーシュも、押し黙る。 
 衛士隊の隊長に意見することは出来ない。 
 このトリステインにおいて、衛士隊こそ、全貴族の憧れ、その憧れに意見することなど出来ようはずが無い。 
 
 ルイズ、ギーシュ、ワルドの三人の自己紹介が済む。 
 三名の出発の準備は整い、後は旅立つのみである。 
 
 「ところで………君の使い魔殿はどうしたんだい?」 
 「ワルドさま、私の使い魔がメイジだとご存知なのですか?」 
 「ははは、君が土くれのフーケを捕まえた話は聞いているよ。その時に知ったんだ」 
 「まあ、そうでしたか。 
  ミスタ・ウルザ出発する為の足を用意してくると言って、何処かに…」 
 
 「待たせたね、ミス・ルイズ」 
 
 
 朝もやの中から現れる長身。それもワルドと同じくらいの丈の、初老の老人の姿。 
 白髪白眉白髭の色眼鏡、手には杖、服装はメイジのようなローブ、背中には剣を二本背負っているようだ。 
 「ワルドさま、彼が私の使い魔、ミスタ・ウルザです」 
 
 
 ワルドは一目見て、この男が自分とは相容れない存在と直感した。 
 直感―――この男が気に入らない―――という、本能的な嫌悪。 
 「初めまして、ワルド子爵です」 
 手を挿し伸ばす。 
 
 ウルザは一目見て、この男が自分の障害となる存在だと直感した。 
 直感―――この男は邪魔になる―――という、予知じみた霊感。 
 「ああ、初めまして、ウルザだ」 
 差し出された手を握り返す。 
 
 互いに己の本心は臆面も出しはしない。 
 
 これが長く因縁となるウルザとワルド、最初の出会いである。 
 
 
 
 「随分と時間がかかったのね、ミスタ・ウルザ。 
  それにこんなところに馬を連れてきたなんて…素直に門まで連れてきてくだされば良かったのに」 
 ルイズ達はウルザに連れられて、裏庭へと向かっていた。 
 「持ち主の了承を取るのに時間がかかってしまってね、それに多少の準備もあった。」 
 「だったら最初からちゃんと説明してく、」 
 「今回の足は、これを使わせてもらう」 
 
 そういったウルザが指差す先、そこには何か大きなものが置かれているようであった。 
 風が吹き、朝もやの中から影の正体が現れる。 
 果たして、そこにあったのは先日コルベールが完成させた機械であった。 
 
 
 あえて形容するなら骨組みと羽、それに箱で構成された朽ちた飛竜。 
 「ミスタ・ウルザ、これは何? 
  見たところ………羽のある機械のようだけど」 
 「これは、羽ばたき飛行機械という魔法と機械の融合したアーティファクトだ」 
 「飛行機械…というと、これが飛ぶっていうの?」 
 「ああ、飛行実験はこれからだがね」 
 
 
 結局、羽ばたき飛行機械にルイズを乗せることをワルドが反対したので、ウルザ・ギーシュが飛行機械、ワルド・ルイズがワルドのグリフォンに乗るという運びとなった。 
 
 「さあ、最初の目的地は港町ラ・ロシェールだ!」 
 ワルドが叫び、幻獣グリフォンが空へと舞い上がる。 
 
 
 一方の羽ばたき飛行機械。 
 
 「振り落とされないように、しっかりと捕まっていたまえギーシュ君」 
 「あ、ああ…」 
 
 まずは、ゆっくり飛行機械の羽が動き始める。 
 その姿は、骨組みだけのドラゴンが、空を舞おうと羽ばたこうとしているようであった。 
 羽ばたきによって強い風が巻き起こる、まるで風の精霊が降り立ったかのよう。 
 そうしているうちに、徐々に飛行機械が浮き始める。 
 一度浮き始めると、そこからは早く、力強く羽ばたく機械が先行していたグリフォンに追いつくまで、そう長い時間を必要としなかった。 
 
 
 
 それから半日近く、ルイズ達は空を飛び続けていた。 
 流石は魔法衛士隊の隊長が騎乗するグリフォン、疲れ知らずのタフな幻獣である。 
 その間、グリフォン上の人であるルイズとワルドは思い出話に花を咲かせていた。 
 「僕にとっては未だに小さな女の子だよ」 
 「いやですわ、ワルドさまったら」 
 「僕は家を出る時に決めていたんだ、立派な貴族になって、必ず君を迎えに行くとね」 
 「ワルドさま……でも、私…」 
 「ルイズ…僕の小さなルイズ、君は僕が嫌いなのかい?」 
 「そんなことは…」 
 「僕を嫌いじゃなければ、信じて欲しい。僕は君を迎えに来たんだから」 
    ―――私が君を導いてあげよう――― 
 突然フラッシュバックする、夢の一場面。 
 顔を赤らめて、慌てて俯くルイズ。 
 
 
 
 羽ばたき飛行機械。 
 そこには沈黙に押し黙るウルザとギーシュの姿。 
 しかし一方のギーシュは、この数時間、何か口を開きかけては閉じる、そんなことを繰り返していた。 
 
 「………ギーシュ君、何か、私に言いたいことがあるのかね?」 
 「………別に」 
 「そうかね」 
 
-再び沈黙、このまま到着まで終止無言かと思われたとき、意を決したギーシュが口を開いた。 
+再び沈黙、このまま到着まで終始無言かと思われたとき、意を決したギーシュが口を開いた。 
 「謝ろうと、思っていたんだ………」 
 「…謝る?」 
 「決闘の時の件だよ、あのことを、謝ろうと思っていたんだ…」 
 「………」 
 「意識が戻ってからモンモランシーに酷く叱られてね、僕がどれだけ馬鹿なことをしようとしていたか、思い知らされたよ」 
 「…謝るなら、私にではなくあの平民の娘とコック長にだろう」 
 「その二人には、もう既に謝ったよ…」 
 「そうか」 
 「だから、………あなたにも謝ろうと思って」 
 「私は何も怒ってはいない、君が反省しているというなら、後は君自身の問題だろう」 
 「……はは、まったくその通りだね、以後気をつけるよ。 
  それにしても、あの時の熊は恐ろしかったよ、何せ、」 
 「ギーシュ君、客のようだ。話はそこまでにして、口を閉じていたまえ」 
 
 
 地上から、空を行くものへ矢が射掛けられたのは、その時であった。 
 
 
 射掛けられる大量の弓矢、回避行動を取るウルザであったが、その数本が羽ばたく羽に突き刺さる。 
 平行を欠き、傾ぐ羽ばたき飛行機械。 
 
 「ミスタ・ウルザ!奇襲だ! 
  敵は私が引き受ける、あなた達は先に目的地へ! 
  ラ・ロシェールは街道沿い、峡谷に挟まれた場所にある!」 
 旋回して敵を迎撃する態勢をとるワルド。 
 「分かったワルド子爵! 
  こちらは先に向かわせてもらう。苦戦するようなら後ろの者達に協力を仰ぐといい!」 
 それ以上は耐えられないとばかりに、目的地に向かって徐々に高度を落としながら全力で飛行するウルザ・ギーシュ。 
 
 目的地ラ・ロシェール。 
 アルビオンへの玄関口は、すぐそこである。 
 
                      これがウルザとワルド、その出会いの最初の1ページ 
-                            ―――ギーシュ回顧録第三篇 
+                            ―――ギーシュ回顧録第三篇
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