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ウルトラマンゼロの使い魔
第百二十九話「一冊目『甦れ!ウルトラマン』(その2)」
変身怪人ゼットン星人
恐怖の怪獣軍団
友好珍獣ピグモン 登場
未完のまま筆が途絶え、自身の完結を求めて魔力を得た『古き本』の中に精神を囚われたルイズ。
才人は彼女を救うべく、リーヴルの力を借りて本の世界へと旅立った。――そこは初代ウルトラマンが、
ゼットンに敗れた後も地球に残り続けたifの世界。そこではウルトラマンことハヤタが敗戦のトラウマ
から不調になり、失意にどん底に陥っていた。才人とゼロは、ウルトラマンを立ち上がらせてこの本の
世界を完結に導くことが出来るのだろうか。
野山を覆う緑の山林の中で、この本の主人公であり本来の『ウルトラマン』であるハヤタと、
現実世界から闖入者たるイレギュラーの『ウルトラマン』のゼロと才人が向かい合った。まずは
ハヤタの方が先に口を開く。
「君が……さっきのウルトラマンだね?」
才人はうなずいて答える。
「ええ。平賀才人……ウルトラマンゼロと言います。はじめまして、ハヤタさん」
この本の中では、ハヤタことウルトラマンはゼロのことを存じていないようだ。それも無理の
ないことかもしれない。本がいつ頃執筆されたかは知らないが、地球ではゼロの存在はかなり
最近になってから、惑星ボリスとハマー、怪獣墓場から生還したZAPクルーの報告によって知られた
もの。それ以前に書かれたのならば、たとえ『ウルトラマン』でもゼロのことを認知するのは
不可能。本の世界は、本来は作者の情報がその全てなのだ。
さて才人が肯定すると、ハヤタは自嘲するように苦笑を浮かべた。
「そうか……。最近科特隊に活躍を奪われがちだったところに、僕以外のウルトラマンが
現れたなら、ますます僕はお払い箱だな」
才人はそのひと言に若干慌てる。
「お払い箱だなんてこと……! 『この』地球を守ってきたのはあなたじゃないですか」
「そんなことは関係ないさ……。どんな実績を打ち立ててこようとも、現在に怪獣に勝てず、
地球を守れない弱いヒーローなんて誰からも求められないよ。これを機に、僕は引退する
べきなのかもしれない」
かなり弱々しいことを吐くハヤタ。昨今のスランプがよほど精神に応えているようである。
すると才人は、語気をやや強めてハヤタに告げた。
「そんな情けないこと、言わないで下さいッ!」
「え……」
ハヤタの顔をまっすぐ見据え、熱意を込めて説く。
「あなたは地球に現れた、最初のスーパーヒーローだ。世界中の子供たちは、みんなあなたの
勇敢に戦う姿に勇気をもらい、憧れた。俺もその一人です。あなたの存在はたくさんの人に
夢を与えた……いや、与えてるんだ。あなたは不朽のヒーローなんです!」
この応援のメッセージは、本を完結させるためだけのものではない。才人は本当に、地球を
何度も救ってきたウルトラ戦士の歴史の始まりとなった最初のウルトラマンに、強い憧れの心を
抱いて育った。だからたとえ本の登場人物でも、そのウルトラマンが弱っているのを放っておく
ことは出来ないのだ。
「ヒーローに、別の誰かがいるから必要ないなんてことはありません。今は落ち込んでても、
あなたは偉大な戦士なんだ。どうかもう一度立ち上がって、今までのように俺たちに夢と希望を
与えて下さい!」
「平賀君……」
果たして才人の気持ちは、ハヤタの心を動かすことが出来たのか。
その答えが出る前に、ハヤタの流星バッジが着信を知らせた。ハヤタはすぐにアンテナを伸ばした。
「すまない。こちらハヤタ!」
『ハヤタ、今どこにいる! たった今防衛隊から、謎の円盤群が日本上空に侵入したとの
連絡とともに出動要請が入った。直ちに迎撃するぞ! すぐにビートルまで戻れ!』
「了解!」
ムラマツに応答してアンテナを戻したハヤタが、才人に向き直る。
「悪いが、僕は行かなくてはいけない。話はまた後にしてくれ」
「分かりました。どうか、頑張って下さい!」
才人の呼びかけに、ハヤタは迷いを顔に浮かべながらも、科特隊式の敬礼で応じて走り
去っていった。
それから才人は、ゼロの千里眼によって科特隊に先んじて件の円盤群の光景をキャッチした。
『……こいつはゼットン星人の円盤だ!』
「ゼットン星人って言うと、あのゼットンを最初にもたらした……!」
現在の地球において、ゼットンの名を知らぬ者などいないだろう。当時無敵と思われた
ウルトラマンを完敗せしめ、世界中の人間に衝撃を与えた恐るべき宇宙恐竜。色んな教科書に
その名前が載っている、世界一有名な怪獣だ。
そのゼットンを最初に侵略兵器として地球に連れてきたのが、『ゼットン』という言葉が
出身星の名前にまでなっているゼットン星人だ。
『ゼットン星人はもう一つ、変身能力による破壊工作が得意だ』
「破壊工作……科特隊が円盤迎撃に出たのなら、基地はがら空きだよな」
『ああ。嫌な予感がするぜ。俺たちは基地の方に向かおう!』
「よっしゃ!」
ゼロと相談し、才人は科特隊基地へ向かって駆け出した。
ルイズを通信士として基地に残し、科特隊自慢の万能戦闘機、ジェットビートル二機で
出撃したハヤタたちは、ゼットン星人の円盤群と会敵していた。
「おいでなすったなぁ。円盤発見!」
『直ちに攻撃開始!』
ムラマツの指示により、ジェットビートルは光線を発射して円盤に攻撃を加える。
だが光線は円盤をすり抜けてしまう!
「どうなってやがるんだ!?」
何度攻撃しても結果は同じ。ハヤタはこの円盤のカラクリを見抜いた。
「キャップ、あの円盤は何者かの罠です。多分、立体映像なんです!」
「おい、それじゃ本部は!」
ビートルは本部の危機を察し、慌てて引き返していった。
才人が科特隊の基地にたどり着いた時、上の階に行くほど幅が広がっていく独特な建築の
ビルの窓の一つから、黒い煙が立ち上るのを目にすることになった。恐らく作戦室だ。
『まずい! ひと足遅かったか!』
「ルイズは無事なのか!? くそッ!」
ルイズが犠牲になってしまったら最悪だ。才人は全速力で基地に入り込み、階段を駆け上がって
作戦室にたどり着いた。
そこでは科学者の男性が、光線銃を用いて科特隊本部のコンピューターを破壊していた。
その足元には、倒れているルイズの姿。
「ルイズッ! こんのやろぉーッ!」
煙に巻かれる作戦室の中、激昂した才人が踏み込んで、男を殴り飛ばした。男は突然の
攻撃に驚いたか、すぐに作戦室を抜け出して逃げていく。
才人は先にルイズを介抱して、無事を確認する。
「ルイズ、無事か! ……よかった、息はしてる」
「う、うぅん……」
才人に抱き起こされたルイズの意識が戻った。
「大丈夫か?」
「大丈夫かって……あなたは誰なの!? ここは科特隊本部よ、子供がどうやって入ったの?」
お前も子供だろ、と言いかけた才人だが、今のルイズはフジ隊員の役になり切っているのだ。
そんなことを言ってもしょうがない。
「えーっと……俺は風来坊さ。科特隊の危機を察知して、助けに来たんだ」
「風来坊? 助けてくれたのはありがたいけれど、冗談言ってないで避難しなさい。ここは危ないわ」
ルイズが自力で立つと、ちょうど本部に帰投したハヤタたちが駆け込んできた。
「フジ隊員、どこだ!? ……ややッ、君は誰だ!?」
「君はさっきの……!」
イデたちは見慣れぬ才人の姿に面食らっていた。ルイズは彼らに告げる。
「この子は誰だか知らないけれど、わたしを助けてくれたの。それより、犯人は岩本博士よ!」
「そうだった、捕まえないと!」
「お、おい君ぃ! 一体何なんだ!?」
才人が逃げた男を捜しに飛び出していく。その背中を追いかけていくアラシたち。
男は科特隊基地から外に逃げ出したところだった。それを発見した才人が速度を上げ、
距離を縮めて飛びかかる。
「待てぇー! とおッ!」
タックルした才人に足を掴まれ、男は前のめりに倒れた。
「この野郎、正体を見せろ!」
才人の要求に応じるように、男はケムール人に酷似した真の顔を晒して立ち上がった。
これがゼットン星人だ。
この時にハヤタ、ムラマツ、アラシが才人に追いついてきた。
「はぁッ!? 君、危ない!」
ムラマツとアラシがゼットン星人から才人をかばい、ハヤタがマルス133をゼットン星人の
顔面に向けて発射。
「グ……グオオ……!」
その一撃により、ゼットン星人はもがき苦しみながら消滅していった。
しかし今際の断末魔が、怪獣軍団総攻撃の合図だった!
「ピッギャ――ゴオオオウ!」
東京奥多摩の丘陵を突き破り、レッドキングが出現! 驚き逃げ惑う人々に狙いをつけ、
襲い掛かり始める。
「ゲエエゴオオオオオオウ!」
「ギャアアオオオォォウ!」
「ゲエエオオオオオオ!」
それに続いて有翼怪獣チャンドラー、地底怪獣マグラー、冷凍怪獣ギガスまで出現した。
怪獣たちはレッドキングが総大将となり、人間に牙を剥く!
怪獣出現の報を受けたムラマツは、部下たちに命令を発する。
「出動準備! 直ちにビートルで現場に向かうぞ!」
「しかしキャップ、この子はどうします?」
イデが才人を一瞥して尋ねた。
「今は怪獣撃滅の方が最優先だ。すぐに発進だ!」
「了解!」
ムラマツ、アラシ、イデの順にビートルへ向けて駆けていく科特隊。ハヤタだけは複雑な
眼差しを才人に注いでいたが、前を向いてムラマツたちの後に続いていった。
彼らを見送った才人は、颯爽とウルトラゼロアイを取り出す。
「行くぜ、ゼロ!」
『ああ! ウルトラマンが再起するまで、俺たちが物語を支えなくっちゃな!』
戦意を燃やしながら、才人がゼロアイを装着。
「デュワッ!」
輝く光と化して、ビートルより早く奥多摩の怪獣が暴れる現場へと飛んでいった。
「ピッギャ――ゴオオオウ!」
奥多摩では、レッドキングが逃げ遅れた人たちを今にも叩き潰しそうになっていた。
「うわああああッ!」
彼らの命が危機に晒されているところに、ウルトラマンゼロが到着!
『てぇぇぇぇいッ!』
上空からの急降下キックがレッドキングに入り、大きく蹴り飛ばした。それにより逃げ遅れた
人たちは間一髪で助かり、避難に成功する。
「ピッギャ――ゴオオオウ!」
レッドキングの前にチャンドラー、マグラー、ギガスが集まり、登場したゼロと対峙して威嚇する。
『来い、怪獣ども! このウルトラマンゼロが相手になってやるぜ!』
「ゲエエゴオオオオオオウ!」
「ギャアアオオオォォウ!」
「ゲエエオオオオオオ!」
ゼロの挑発に応じるように、チャンドラーたちが一斉にゼロに押し寄せてきた。
『はぁッ!』
対するゼロはまずチャンドラーの突進をいなし、マグラーの頭部にキックを一発入れて
ひるませ、殴り掛かってくるギガスの腕を捕らえてウルトラ投げを決めた。
「ゲエエオオオオオオ!」
「ピッギャ――ゴオオオウ!」
投げ飛ばされたギガスに代わってレッドキングがパンチを打ち込んできたが、ゼロは紙一重で
かわし、反撃の掌底で突き飛ばした。
「ギャアアオオオォォウ!」
そこにマグラーも跳びかかってくるも、すかさず反応したゼロがひらりと身を翻したことで
丘陵に激突した。
四体もの怪獣相手に敢然と戦うゼロは、頭部のゼロスラッガーを取り外して両手に握る。
『一気に決めてやるぜ!』
そして突っ込んできたチャンドラーにこちらから踏み込んでいき、刃を閃かせる。
「セェェアッ!」
逆手持ちのスラッガーの一閃が、チャンドラーの片翼をばっさりと切り落とした。
「ゲエエゴオオオオオオウ!!」
『だぁぁッ!』
それで留まらず、振り返りざまにゼロスラッガーアタックが叩き込まれた。ズタズタに
切り裂かれたチャンドラーは瞬時に爆散。
「ギャアアオオオォォウ!」
「ゲエエオオオオオオ!」
一瞬でチャンドラーを撃破したゼロに、マグラーとギガスは動揺して後ずさった。
『さぁて、次はどいつだ!』
スラッガーを頭部に戻して残る怪獣たちに向き直ったゼロだったが、
『……ぐあッ!?』
その肩に突然電気ショックが走った。予想外のダメージにゼロもふらつく。
『くッ、今のは……!』
振り向くと、その方向の空間からヌゥッと新たな怪獣の姿が出現した。
「ゲエエゴオオオオオオウ!」
透明怪獣ネロンガだ! 今のはネロンガの角から放たれた電撃であった。
『くッ、新手か……!』
うめくゼロだったが、新たな怪獣の出現はネロンガで終わりではなかった。
「グウウウウウウ……!」
「ウアァァァッ!」
丘陵の影から怪奇植物グリーンモンス、海獣ゲスラが出現!
「ミ――――イ! ミ――――イ!」
「カァァァァコォォォォォ……!」
更にミイラ怪獣ドドンゴ、毒ガス怪獣ケムラーも地中から出現した!
『五体も増えやがった!』
『ホントに怪獣軍団じゃねぇか!』
一気に八対一となり、さしものゼロも動揺を禁じ得なかった。
しかし怪獣が現れているのはこの場所だけではなかった!
「ガアアアアアアアア!」
雪山には伝説怪獣ウーが出現!
「ギャオオオオオオオオ!」
大阪には古代怪獣ゴモラ!
「ピャ――――――オ!」
国道上には高原竜ヒドラ!
「ギャアアアアアアアア――――――!」
山岳部には灼熱怪獣ザンボラー!
「パアアアアアアアア!」
市街地には吸血植物ケロニア!
「キュ――――――ウ!」
「グアアアアッ!」
更に石油コンビナートを油獣ペスター、沿岸を汐吹き怪獣ガマクジラが襲っていた!
日本中を襲う怪獣軍団。だがゼロも大勢の怪獣を前に苦戦しており、とても現地に駆けつける
ことは出来なかった。
「グウウウウウウ……!」
グリーンモンスは花弁の中央からガスを噴出。それは強力な麻酔ガスであり、ゼロの身体をも
痺れさせ苦しめる。
『うッ、ぐッ……!?』
「ウアァァァッ!」
更にゲスラが体当たりしてきて、その背中に生える毒針がゼロに刺さった。
『ぐわぁぁぁッ!』
「カァァァァコォォォォォ……!」
その上ケムラーが口から亜硫酸ガスを大量に噴出した。
『うッ、ぐううぅぅぅぅ……!』
ケムラーの亜硫酸ガスは凄まじい毒性だ。ただでさえ毒を食らい続けているゼロの身体を
破壊していく。カラータイマーがけたたましく鳴り、ゼロの大ピンチを表した。
『こ、こいつはやべぇぜ……!』
しかし怪獣たちの猛攻に追いつめられているところに、ジェットビートルが駆けつけた。
「あのウルトラマンが危ないわ!」
「攻撃開始!」
科特隊はビートルからロケット弾を発射し、怪獣たちを上空から狙い撃ち。ゼロへの攻撃を
妨害して援護する。
「ピッギャ――ゴオオオウ!」
「ミ――――イ! ミ――――イ!」
だがビートルもドドンゴの目から放たれる怪光線に狙われ、危機に陥る。やはりあまりの
数の差に、ゼロたちは苦しい状況が続く。
「ホアーッ! ホアホアーッ!」
その時、地上に小型の赤い怪獣が現れて、ピョンピョン飛び跳ねることで巨大怪獣たちの
注意を引きつけた。あれはピグモンだ!
『ピグモン! あいつ、まさか俺たちを助けようと……!』
驚くゼロ。だがあれではピグモンの方が危うい。
緊急着陸したビートルから飛び出したハヤタとイデが、ピグモンへと急いで走っていく。
「ピグモーン!」
「大丈夫かー!」
しかしハヤタたちが駆けつける前に、ドドンゴがピグモンを狙って怪光線を放ってしまった!
「ミ――――イ! ミ――――イ!」
怪光線は崖を砕き、発生した岩雪崩がピグモンの頭上に降りかかる。
「ホアーッ!?」
『!!』
ゼロの身体が青く輝く。
岩雪崩がピグモンに襲い掛かり、ピグモンは岩石の下敷きになってしまった。
「ホアーッ!」
「ピグモーンッ!」
「ピグモンッ!」
ピグモンの元までたどり着いたハヤタが岩の下から引きずり出したが、ピグモンはそのまぶたを
ゆっくりと閉ざしていった……。
「ピグモーン!!」
「くッ……! ちくしょうッ!」
激昂したイデがスーパーガン片手に怪獣軍団へ立ち向かっていく。
一方でハヤタは、ベーターカプセルをその手に強く握り締めていた。
「俺は一体、何を……!」
ハヤタは己の迷いがピグモンの犠牲を招いてしまったことに、激しい後悔を抱いていた。
そして才人の言葉にも背中を押され、遂に迷いを抱えていたその目に力が戻った!
「おおおッ!」
駆け出したハヤタがベーターカプセルを掲げ、スイッチを押した!
百万ワットの輝きが焚かれ、ハヤタは巨躯の超人へと姿を変えたのだ。
「ヘアッ!」
宙を自在に飛び回りながら怪獣たちを牽制する銀色の流星を見やり、才人が歓喜の声を発した。
『立ち上がってくれたのか……! ウルトラマン!!』
そう、暴虐なる怪獣軍団の中央に降り立ち、倒れているゼロを守るように大きく胸を張ったのは、
失意の淵から甦った我らがヒーロー、ウルトラマン!
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