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ウルトラマンゼロの使い魔
第百二十三話「夜があけたら」
蘇生怪人シャドウマン
精神寄生獣ビゾーム 登場
『……サイト、起きろッ!』
深夜、寝ついている才人たち三人はジャンボットの鋭い呼び声によって起こされた。
「う、うぅん……どうしたんだ……?」
目をこすってベッドから身を起こす三人。シエスタが枕元のテーブルからブレスレットを
手に取ると、ジャンボットが続けて告げた。
『異常事態発生だ! 私のセンサーが礼拝堂で侵入者の集団をキャッチした! いや、既に
侵入していたと言うべきか!』
「何だって!?」
その言葉で才人たちは一気に目が覚め、ベッドから飛び降りた。才人とルイズはマントを
羽織り、それぞれの得物を身につける。
ルイズがジャンボットに問う。
「やっぱり、あの死体が敵の刺客だったってこと?」
『いや、遺体自体は今も礼拝堂に残されている。恐らくあれらに宿されていたものが、学院を
徘徊しているようだ。今一つ正体が掴めない……気をつけろ、手強い相手になりそうだぞ』
「分かった、ありがとう」
うなずいた才人はルイズとシエスタに振り返った。
「ルイズたちはテファの無事を確認してくれ。俺はタバサの方を見てくる!」
「分かったわ!」
「サイトさん、ご武運を!」
二人に言い残して、才人は素早く部屋の扉から飛び出していった。
才人がタバサの部屋に到着する前に、タバサの方も不気味な気配を鋭敏な感覚で感じ取り、
覚醒して杖を手にしていた。
更に感覚を研ぎ澄まして、敵の数や位置を探ろうとした。が、どうにも気配ははっきりとせず、
どの程度近づいてきているのかも不明瞭であった。タバサの生存本能が、危険の信号を鳴らす。
「パムー……」
ハネジローも危険を感じ取ったか、小刻みに震えて怖がっていた。タバサはそんなハネジローを
籠ごとベッドの下に隠した。
「ここにいて」
そして下手に動かずに杖を構えて待ち伏せしていると……部屋の扉がいきなり軋んだ音を
立てて開かれた。しかし、廊下には誰もいない。風か何かが扉を押したのだろうか?
タバサはそうではないことを優れた観察眼で見て取った。何もない場所を、人の影が這っているのだ!
直ちに影に杖の先端を向けるタバサ。すると影が立ち上り、怪しい霧とともに三人の男たちの
霊体……シャドウマンの正体を見せた。
「ッ!」
目の前にはっきりと現れた幽霊という、常人なら腰を抜かしてしまいそうな事態だが、
闇の世界をくぐり抜けてきたタバサは動じなかった。素早く呪文を唱え、氷の矢を飛ばして
攻撃する。
が、氷の矢はシャドウマンをすり抜けて壁に刺さるだけであった。実体を持たない幽霊には、
魔法の力も通用しないようだ。
タバサは分が悪いと見て窓からの脱出を図るが、それより早くシャドウマンは霧を噴出して
タバサに浴びせかけてきた。
「うッ……!」
一瞬視界をふさがれるタバサ。そして霧が晴れると……自分の身体が豆粒のように小さく
なっていることに気がついた!
「!?」
幽霊の奇怪な妖術か。さすがに動揺するタバサ。
シャドウマンは棚から透明のグラスを取り出すと、逆さまにして小さくなったタバサに
覆い被せた。完全に無力化されたタバサは、ただのグラスの中に閉じ込められてしまう。
「……!」
シャドウマンがグラス越しに、縮小したタバサをじっと見下ろす。そのおぞましい光景に、
タバサも恐怖を覚えて震え上がった。
タバサの部屋を目指して全速力で向かおうとしていた才人だが、途中の廊下で足止めを
食らっていた。残りのシャドウマンが行く手に現れ、道をさえぎっているのだ。
「この幽霊が侵入者の正体か……! うおおおッ!」
才人は問答無用でシャドウマンに斬りかかっていくが、デルフリンガーの刃はシャドウマンを
すり抜けてしまった。
「相棒! さすがの俺でも、幽霊は斬れねえみてえだ! 面目ねえ!」
「駄目か……! それじゃあどうすれば……!」
才人はシャドウマンの放ってきた霧を後ろに跳びすさることでかわした。しかしシャドウマンを
越えないことには、タバサの部屋までたどり着くことは出来ない。
「こうなったらゼロに変身するか……!」
ゼロアイを出そうとした才人だったが、そこに後ろから聞き慣れた声がした。
「サイト、伏せてッ!」
ルイズだった。ルイズは掲げた杖を、才人がしゃがむと同時に振り下ろした。
小規模な爆発が廊下の中央で起こり、シャドウマンは爆発の光にかき消されて霧散していった。
「やった!」
「すっげ……! ルイズの爆発は霊体にも有効なのか……!」
“虚無”の魔法の威力を改めて知り、感心する才人。
だが今の爆発の音で、寮塔のあちこちの部屋から動く気配が発生した。生徒たちが目を
覚ましてしまったみたいだ。
ルイズは手短に才人に告げる。
「サイト、ティファニアは無事だったわ。後はタバサだけよ。ここはわたしが収めておくから、
早く行って確かめてきて!」
「よし分かった! ありがとな!」
ルイズに感謝の言葉を返し、才人は駆け足でタバサの部屋の前までたどり着いた。壁に氷の
矢が刺さっているので、思わず息を呑む。
「タバサッ!」
慌てて部屋の中に駆け込むと――タバサの姿はなくなっていた。空のグラスが床に転がっており、
窓は開け放たれて風がカーテンをバサバサ揺らしていた。
「しまった! 遅かったか……!」
窓に飛びついて外を見回したが、見える範囲にもタバサらしき影はなかった。既に連れ去られた
後だろうか。
「すぐ追いかけないと……! でも敵はどこへ逃げたんだ……」
才人がつぶやいていると、窓の外からバッサバッサと翼を羽ばたかせて、シルフィードが
彼の眼前に舞い降りてきた。カーテンを揺らす風は、シルフィードの羽ばたきだったのだ。
「パムー!」
シルフィードの頭の上にはハネジローが乗っかっていた。シルフィードはハネジローが
呼び寄せたようだ。
「ハネジロー、お前はタバサがどっちへ連れ去られていったか知ってるのか?」
「パム!」
コクリとうなずくハネジロー。
「でかした! すぐ案内してくれ! シルフィードも頼んだぞ!」
「きゅいー!」
才人は迷いなく窓から飛び降りてシルフィードの背中に乗り移り、シルフィードはハネジローの
誘導の下に夜の森へ向けて飛び立っていった。
その頃、シャドウマンに捕まり、学院外へ連れさらわれたタバサは、森の中の開けた場所に
投げ出されて解放された。大きさも元に戻される。
「ここは……?」
辺りを見回して訝しむタバサ。現在地は学院からそう離れた場所ではなく、当然トリステインの
領地。そんな場所にどうしてわざわざ自分を解き放ったのか。それも大きさを元に戻して。何か裏が
あるに違いない。
そのタバサの読み通りに、夜の闇の中からシャドウマンとは違う、怪しい人影がぬっと出現した。
「わたしの主人の元まで連れていく前に、あなたの心を闇で染め上げておこうと思ってね」
「!」
振り返ったタバサが杖を向けるが、現れた者の姿を目の当たりにして驚愕で固まった。
「その姿……わたし……!」
目の前にいるのは、黒衣を纏った自分自身。そうとしか言い表せなかった。
一瞬だけ唖然としていたものの、タバサはすぐに自分そっくりの相手に杖を向け直した。
「撹乱のつもり?」
短く告げると、黒タバサは酷薄な笑みを浮かべた。
「そう言うと思った。分かってたわ。何故なら、わたしはあなた自身なんだから。わたしは
あなたの心の闇よ、シャルロット」
「……ふざけないで」
「ふざけてなんかいないわ。アーハンブラ城で怪獣に呑まれたことがあったでしょう?
実はあの時、わたしがあなたの精神に寄生してた。そして今日、活動を始めたのよ」
黒タバサの言をにわかには信じられないタバサだったが、自分の敵は常識外の怪物を
次々送り込んできている。精神に寄生する怪物がいてもおかしくはない。
それにそんなことは問題ではない。やるべきことは、今面前にいる敵を倒すことだ。
そんなタバサの思考を見通したか、黒タバサが嗤いながら言葉を発する。
「ふふッ、早速わたしに攻撃しようというのね。実にあなたらしい……。親から与えられた
名を捨て、冷徹な人形になったつもりで、人間らしい感情を捨て切れない半端なあなたらしい、
自分が傷つきまいとするばかりにひたすらに牙を剥く、みじめな子犬のような行動」
長々と挑発めいたことを述べる黒タバサに、タバサは眉間に皺を刻んだ。そして呪文を完成させ、
ウィンド・ブレイクで吹っ飛ばそうとする。
だが同時に黒タバサが、全く同じ魔法を放ってきた。しかも相手のウィンド・ブレイクは
自分の風をあっさりと押し返し、タバサの方が吹き飛ばされてしまった。
「うッ……!?」
地面にしたたかに打ちつけられるタバサ。倒れた彼女を見下ろす黒タバサが告げる。
「あえて同じ魔法で打ち破ってみせたわ。どうしてわたしの魔法の方が上回ったか分かる?
……わたしはあなたの心の闇。あなたの綺麗な部分より、汚く暗い部分の方がずっと大きいと
いうことよ」
「!?」
心にグサリと来るものを感じ、反射的に黒タバサの顔を見上げるタバサ。
「だってそうでしょう? 自分の目的のために、親の仇にへりくだることを是として、様々な
非合法な行いに手を染めてきたのだから。今までに何人殺して、己の目的の犠牲にしてきたか
覚えてる? 挙句の果てには友達も殺そうとして……その相手を勇者なんて、厚かましいにも
程があるんじゃなくて?」
「……やめてッ……」
思わず耳をふさぐタバサ。これまであらゆる人間から罵声を浴びて、耐えてきたタバサで
あったが、才人に向ける想いを傷つけられることは耐え難かった。
しかし耳をふさいでも、黒タバサの声は脳に直接響いてくるかのように聞こえてくる。
「勇者に仕える騎士? 真っ黒に汚れ切ったその身で、よくそんな美辞麗句が唱えられるものね。
このこと、本当は自分がよく分かってるでしょう? 何せわたしはあなたの闇……わたしの言葉は
あなた自身の言葉なのだから」
違う。そんなことはない。……だが否定し切れない。タバサはお化けを怖がる幼児のように、
うずくまり目を固くつむってブルブル震える。
お化けなんて怖かったのはずっと昔のことだ。怪物への恐怖も、ファンガスの森で断髪と
ともに振り切った。
しかし、自分が抱えたほんのりと温かい感情。それを否定されることは、とてつもなく恐ろしかった。
「――そこまでだッ!」
その時、闇を切り裂くように、あの男の子の声が空から届いた。
目を開けて見上げると――勇者が、シルフィードの背から黒タバサの面前、自分の盾と
なるように着地した。
「タバサ、無事だったか? 安心しろ、俺とゼロが来たからにはもう大丈夫だ」
振り返って、力強い微笑みを見せる才人。呆然と彼の背中を見つめるタバサに、シルフィードと
ハネジローが覆い被さった。
「お姉さま、こんなに震えてかわいそう。あいつにいじめられてたのね」
「パムー」
肌から伝わる二匹の体温が、タバサの身体も心も温めた。
才人にデルフリンガーの切っ先を向けられた黒タバサは、それでも動じず不敵な笑みを返す。
「勇者さまのご到着という訳ね。けれど……」
黒タバサの見た目が、一瞬にして才人のものに変わった。才人は姿を変えた相手をきつく
にらみつける。
「やっぱり、倒してはいなかったのか……!」
「そうさ! 言っただろう。俺はお前の心の怪物だと。自分自身の心を倒すことなど出来やしない。
――そして俺は、そのタバサの闇でもある」
黒才人に指を差され、タバサはビクリと身を震わせた。
「見ろ、今の哀れな姿を。あいつは心の闇に呑まれる寸前だったのだ。そんな弱い女を守る
必要がどこにある? そいつの弱さは、そいつの闇は! いずれお前の足を引っ張り、お前を
破滅させるッ!」
黒才人の言葉がタバサの心をえぐり、タバサは縮こまる。シルフィードはタバサを苦しめる
黒才人をキッとにらんだ。
「俺には見える! その女は厄災を呼び込むだけだ! お前はそのせいで、故郷に帰ることも
出来ずに闇に呑まれ、その女を、この世界を呪いながら死んでいく! そんな結末をたどりたいのか!?」
黒才人の突きつける暗黒の未来。それに対して、才人は、
「勝手なことばっか抜かすんじゃねぇッ!」
思い切り突き返した。
「……!」
タバサはハッと顔を上げて、才人の背中を見つめる。
「タバサは弱くなんかねぇ! 俺は何度も、こいつに助けてもらった! タバサは勇敢なんだ!
それを俺はよく知ってるし、タバサの心に強い光があるって分かるんだッ!」
才人の、タバサを認める言葉が、タバサの弱り切った心を温めていく。
「それに、心の闇くらい誰にでもあるもんだろうが! 俺自身、とても綺麗な人間なんて
言えねぇしな。けど、闇があるから心は光を放つ! 人は闇を抱えて、乗り越えることが
出来る! 俺は信じてるッ!」
才人の熱い言葉の数々をぶつけられた黒才人だが、冷笑を浮かべたままだった。
「やっぱり、言ったところで分からないか。だったらその身に直接教えてやろうッ!」
突然、黒才人の周囲にシャドウマンの霊体がいくつも現れ、漂った。
「!!」
「おおおおぉぉぉぉぉッ!」
それら霊体全てが黒才人に吸い込まれていき――身体がみるみる内に膨れ上がって変貌を
起こしていった。
「グフォフォフォフォフォ!」
そしてサタンビゾーをより人型にしたような巨大怪人への変身を遂げた。
才人とタバサの心の闇を写し取って暗躍していた精神寄生獣、ビゾームが真の姿を現したのだ。
『早くお前の光を開放しろ。人間の光など、大いなる闇の力、はるかなる星の叡智には敵う
ものではない!』
ビゾームは才人を挑発し、変身を促す。あえて真正面から戦うことで、才人の心を折ろうと
いう目論見か。
才人はその挑戦を真っ向から受けるつもりだ。
「やってやろうじゃねぇか! 後で今のなしって言っても聞かねぇから覚悟しやがれッ!」
力を込めて、ゼロアイを装着!
「デュワッ!」
才人が光に包まれ、ウルトラマンゼロがビゾームの正面に立つ。
『テメェみてぇな輩のこすいやり口は許せねぇ! ばっちり引導を渡してやらぁッ!』
ゼロとビゾームが互いに走り寄り、格闘戦を開始。
「シェアァッ!」
「フォッフォッフォッ!」
ゼロの拳を差し込まれたビゾームの腕が止め、ビゾームの膝蹴りをゼロが蹴りを当てて止める。
両者一歩も退かない互角の戦いを演じる。ビゾームの戦闘能力はサタンビゾーを超えるものであった。
しかしゼロは相手の一瞬の隙を突いて、腕を捕らえて高く投げ飛ばした。
『でりゃあぁぁッ!』
「フォフォフォッ!」
しかしビゾームはクルクル回転しながら綺麗に着地。振り返りざまに右腕から光剣を生やした。
『次は剣の勝負ってとこか……!』
対するゼロもデルフリンガーを召喚して柄を握り締める。
『行くぜデルフッ!』
『おうよ! あんなナマクラ、へし折ってやんなッ!』
デルフリンガーとビゾームの光剣が激突し、激しく火花を散らす!
ビゾームは風を切る剣さばきで、すさまじい斬撃のラッシュを叩き込んでゼロを攻め立てる。
しかしゼロの剣戟も全く劣っておらず、ビゾームの斬撃を全て弾き返した。
「セァッ!」
「グフォフォフォ……!」
息を吐かせぬ剣戟の後、ゼロとビゾームは鍔迫り合いに持ち込む。
が、ゼロの腕に一層の力が込められると、デルフリンガーの刃が光剣を粉砕した!
「グフォオッ!」
『今だッ! せぇいッ!』
ビゾームが押されてのけ反ったところに、その身体をZ字に切り裂いた。
「デァッ!」
更に後ろに跳びながらゼロスラッガーを飛ばし、ビゾームを縦に両断。ビゾームは八つに
分かれてバラバラになった。
『どんなもんだ!』
デルフリンガーを下げて見得を切るゼロ。普通ならこれで戦いが終わることだろう……。
しかしバラバラになったビゾームの破片は、一つ一つが変形して小型のビゾームになって復活した!
『何ッ!?』
「グフォフォフォフォフォフォフォ!」
八体になったビゾームは一斉に顔面の発光部から怪光線を発射。
『うおあああぁぁッ!』
集中攻撃にさしものゼロも吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられる。
「あぁッ! ゼロが危ないのね!」
「パムー!」
戦いを見守っているシルフィードたちが思わず発した。すると、タバサがゼロに向けて叫ぶ。
「立って! 負けないで!」
「お姉さま……!?」
「あなたは勇者なの! この世界を救う……わたしを助けてくれた! 絶対に、闇に負けて
しまっては駄目ッ!」
タバサの応援の言葉に、ゼロの中から才人が応じた。
『ああ、もちろんだ……!』
「……!」
才人の声に反応するかのように、ゼロが身を起こす。
『俺は、俺たちは! 闇を照らしてみせるぜッ!』
ゼロは左腕をまっすぐ横に伸ばし、腕を組んでワイドゼロショットを発射した!
「セェェェェェアッ!」
光線を薙ぐことで、ビゾームを一気に八体纏めて爆破させる。
「グフォォ――――――ッ!」
粉々に吹っ飛んだかに見えたビゾームだが、抜け出た魂が一箇所に集い、元の一体の姿に
合体して復活した。
『無駄だ! 闇は途絶えることがない。お前たちは闇に抗おうとする限り、永劫の戦いの
運命に陥るのだ!』
不死身の肉体を見せつけて、脅しを掛けるビゾーム。
それでも、ゼロたちは決して屈しなかった。
『上等だぜぇ! 何度立ちはだかって襲いかかってこようとも、その都度ぶっ飛ばしてやるだけだぁッ!』
拳を握り締め、再度ビゾームに拳を打ち込んでいくゼロ。相手の反撃を払いのけ、ひたすら
打撃を見舞っていく。
そんな中で才人は叫んだ。
『お前らがどんな手段を用いようとも! 何度襲い来ようとも! タバサは絶対に渡さねぇぜッ!』
彼の言葉は、タバサ本人に届いていた。
『タバサは俺の大事な仲間なんだ! どこにも行かせねぇぜ! 絶対に守り抜くッ!』
才人の語ることに……タバサは頭に血が昇りそうな気持ちがした。
ああ、彼はどうしてわざわざあんなことを言ってしまうのだろうか。自分は騎士になると
誓ったのに……分不相応な想いを抱いてはならないのに……。
あんなことを聞いてしまっては、この胸の鼓動がどんどん高鳴ってしまうではないか。
『光が高まってきたぜ! この光で、フィニッシュを決めてやるッ!』
ゼロは右手を固く握り締めると、その拳に強い輝きが宿った。戦う度に昂っていく才人と
ゼロの心の光が、その手に発現しているのだ。
『おおおぉぉぉぉッ!』
光の拳を振り被って、ゼロはビゾーム目掛け駆けていく。
「グフォッフォッフォッフォッ!」
ビゾームの方も右手に闇の力を纏わせて、ゼロの仕掛ける勝負を正面から受けて立つ。
ゼロとビゾームがどんどんと距離を詰めていく。
『だぁぁぁぁぁッ!!』
そして互いの拳が、互いの頬を打った!
「……!」
激闘の音が一気に静まり、場は一時的に静まり返る。そして……。
ビゾームの全身が一気に爆散! 光に照らされて霊体も粉々になっていき、霧散して消滅していった。
「やったぁぁぁぁぁ―――――! やったのねッ!」
シルフィードはハネジローと手を取り合って喜びを分かち合う。タバサは口元をほころばせて、
ゼロとその中の才人を、慕情を乗せた目で見上げた。
変身を解除した才人はタバサの元まで近づいていくと、口を開いて呼びかけた。
「タバサ、俺たち勝ったぜ。さぁ、学院に帰ろう」
「……うん」
タバサは熱を込めた目つきのまま、才人にコクリとうなずいた。
その時、彼らの視界に森の向こうから昇ってきた太陽の日差しが入り込んだ。
「ん、もう朝か」
才人はまぶしそうに朝日を見やると、タバサに振り返って告げた。
「心の闇が消えることはない……。それは本当のことだろうさ。でも、どんな夜にも朝が来るんだ。
俺たちも、何があってもあきらめることなく朝が来ることを信じて、光り輝いて闇を照らしていこうぜ」
タバサは無言でうなずき、日差しに照らされた才人の顔をじっと見つめた。
その眼差しには、ずっとほんのりとした熱がこもっていた。
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