「ゼロの蝶々-2」(2007/07/07 (土) 20:51:53) の最新版変更点
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呼び出しはしたものの、パピヨンとルイズの契約は難航すると皆が予測した。
何故なら妖精という種族は人間と、というより普通の生命体とはまるで違う存在である。
例えば「水の精霊」という存在がある。
彼ら、ではなく「彼」は「個にして全。全にして個」であるという。
群体に近い存在でありながら単一であるとも言える。
ばらばらにされようとその意識は一つのままなのだそうだ。
妖精はそこまで極端な存在ではないがそれでも通常の生命体を超越した存在であるのは確かで、
妖精に比べたらエルフの方がよっぽど人間に近い存在である。
まぁそんなことは希少ではあるがハーフエルフが実在する以上当たり前のことだが。
ともかく、そんな超越者である妖精との契約は熟練したメイジでも難しい。
何せ意思疎通ですら苦労を伴うのだ。
ましてや契約しようとしているのは「ゼロのルイズ」である。
これがすんなり進むと予測するメイジは誰一人としていないだろう。
だが意外にも契約はあっさりと結ばれた。
蝶々の妖精さん、パピヨンは、
「どうせ元居た場所ではやるべきこともやりたいことももうなくなった。
こんな刺激的な場所に呼んでくれた礼ぐらいはしてやる。
しばらくだが付き合ってやるよ」
と契約を承諾、そしてルイズのコントラクト・サーヴァントも一発で成功した。
こうしてパピヨンは「ゼロの使い魔」となったのである。
ゼロの蝶々 ~接触編~
[シエスタの場合]
ミス・ヴァリエールに呼びつけられたその時、私はちょっとハイになっていました。
ミス・ヴァリエールがパピヨンという名前の蝶々の妖精さんを使い魔として召喚した、という噂を聞いていたからです。
蝶々の妖精さん!パピヨン!なんて可愛らしい響!
きっとちっちゃくて可憐で綺麗な羽を背中に付けた可愛い妖精さんに違いない!!
是非一度見てみたい!そして許されるのなら抱きしめてみたりしたい!!
前からそう思っていましたがついにその蝶々の妖精さんと出会える機会に恵まれたのです。
(妖精さんはどうやら言葉も話せるそうだしどうにかして仲良くなって・・・頑張るのよ、シエスタ!)
そう心に決めると私はミス・ヴァリエールの部屋のドアをノックしました。
「ミス・ヴァリエール、お待たせいたしました」
私の言葉を受け、部屋の中で誰かが動く気配がします。
自分の鼓動が早まっているのが自分でも感じられました。
そしてドアが開くと!!
「ふむ、中々早いな。流石は貴族に仕えるメイドといったところか」
変態が出てきました。間違いなく変態です。どこからどう見ても変態です。これ見よがしに変態です。
とっさに叫び声を上げなかった自分を褒めてあげたい、というより褒める。よくやった私。
「ああああああの、こっこここはミス・ヴァリエールの、おっお部屋では?
ああああなたは、どどどどなたでありましょうか?」
「俺は彼女の使い魔の蝶々の妖精さ、名前はパピ(はあと)!ヨン(はあと)!!
所で呼んだ理由だがご主人様の下着と俺の蝶サイコーなスーツの洗濯を頼みたい」
そういいながら変態はその場でスーツ(?)を脱ぎ、黒パンツ一丁になって私に手渡しました。
私は涙を堪えながら洗濯しました。
正直触れているもの嫌でしたけど変態にどんな難癖をつけられるかわからないので何時もの五割り増し慎重に丁寧に洗いました。
「おお!蝶サイコーな仕上がりじゃないか!気に入った、これからもちょくちょく君に頼もう」
私は迷わず学園長室に乗り込んで告げました。
「仕事止めます」
「駄目じゃ」
(このファッキン爺!!)と思いながら近いうちに絶対に止めてやる、と決心しました。
[タバサの場合]
彼を見た時こう思った。
(自分に似ている、と)
だがそれは正しいが同時に勘違いだったことに後で思い知らされた。
「俺に字を教えろ」
彼が最初に私に話しかけてきたのは図書館だった。
彼は本が読みたいがここの文字は理解できないから教えろ、と言ってきた。
私に要求に応える理由はない筈だ。
だが何故か彼が気になった私はこう答えた。
「基礎だけでいいなら」
そんな流れで私は彼に字を教えることとなった。
彼は極めて優秀な生徒だった。
教え始めて数日しかたっていないが既に殆ど習得し終わったと言っていいだろう。
「後は辞書があればなんとかなる」
「思ったより手間取ったな、だが助かった。
礼に頼みの一つぐらいは聞いてやるぞ」
特に頼むべきことはなかったが何となく好奇心でこう言った。
「マスク、外して」
すると彼は今までの飄々とした態度が嘘のように殺気を滲ませた。
それは今までの危険な任務を何度もこなした私が感じたことがないほど強い殺気だった。
そして私の目を覗き込みながらこう言ったのだ。
「それは出来ない。このマスクは二度と人前で外さない。
お前のソレと違ってこれは俺が俺の弱さを超越した証だ」
その言葉は深く私の心に染み込んだ。
そして(似ている)と思った理由もわかった。
私と彼は同じ『仮面をつけた者』だったのだ。
しかし何時しか身に着けていた無表情という私の『仮面』は私の弱さを覆い隠す為の物。
だが彼の『仮面』は弱い自分と決別した証なのだ。
それと同時に彼が唐突に怖くなった。
滲ませる殺気でも見せ付けられた実力の片鱗でもなく、己の弱さすら超越してみせた彼の執念が怖かった。
自分の久しく使われていなかった顔の筋肉が動くのがわかる。
鏡はないがきっと私は脅えた表情をしているのだろう。
そんな私に唐突に彼は告げる。
「貴様・・・こっちに来てから見た人間の中で一番『いい目』をしてるな」
普通に聞けば私を口説いているとしか聞こえない。
だが彼の雰囲気はとても恋をかたるそれではない。
「お前・・・何か不条理な目にあってるな。だが諦めてない。
普通は無謀で不可能だと思うような何かを成そうとしているな。
その無表情さもその為の『仮面』だ、そうだろう?」
彼の言葉は尋ねる形をとってはいるが確信に満ちている。
私は黙ってうなづく事しか出来なかった。
「少しだが気に入った。字を教えてもらった借りもある。
その『仮面』を俺と同じモノに変えらる自信ができたら来い。
高く遠くまで翔ぶ力を貸してやる」
そう言って去っていく彼の背中を見ながら決めた。
強くなる、と。
上辺だけの強さじゃない、本当の強さを手に入れ、そして高く遠くまで翔ぶ。
母を奪い返し、助けられるくらい高く遠くまで、と。
だから彼に言われたように私の『仮面』を彼のそれと同じものとするべく形から入ってみた。
具体的にはあの蝶々のマスクを被ることにした。
蝶々のマスクを作るのはちょっと手間だが幸い街で似たようなものが売っている店を見つけた。
鞭やロウソクも売られていたりして、何の店かはよくわからなかったが。
[キュルケの場合]
あたしがその前日召喚したのはサラマンダーだった。
それ自体には問題は一かけらもない。それどころか大満足だった。
例年ならば使い魔品評会の優勝候補に食い込めること間違いなしの使い魔を呼んだのだから。
だが問題なのはルイズの使い魔だ。
『ルイズが蝶々の妖精さんを呼んだ!』
その話を聞いた時、そんな馬鹿な、と思うと同時に何処か納得していた。
ルイズは確かにどんな魔法であっても使おうとすると爆発ばかり起こす駄目メイジだ。
だけどその爆発の破壊力が、破壊を根本とする火のメイジであるあたしに彼女が規格外のメイジであると告げるのだ。
あたしは確信していた。どういう形であれ彼女は何時かその規格外さを周囲に見せ付ける日が来るだろう、と。
そんなわけで彼女は私の心のライバルとなったのだ。
だから彼女の召喚する使い魔がどんな使い魔なのか彼女の次に気にしていたのはきっとあたしだろう。
(しかしまさか蝶々の妖精さんとはね!)
一応確認するために遠くから見てみたがそれは間違いなく蝶々の妖精さんだった。
毎年使い魔品評会の優勝者が誰かトトカルチョが行われるのがこの学院の生徒の隠れた伝統だそうだが今年は駄目だろう。
損をするとわかりきっていて胴元をやる奴なんている筈がない。
ハルケギニア全土の中でも最高クラスの使い魔をルイズが呼んだのだから。
ルイズの自慢話を聞くことになるのは少し癪だけど私は素直にルイズを褒めることにした。
「凄いじゃない、ルイズ。あたしのフレイムも中々の使い魔だと思うけど流石にあなたの使い魔には負けるわね。
蝶々の妖精さんの使い魔だなんてもしかしたらトリステインの歴史に刻まれるかもしれないわよ?」
ルイズの反応はあたしの予想したものとはまるで違った。
その顔に浮かんだ笑みは自慢の笑みではなく・・・『自嘲』の笑みだった。
『嘲笑』ならまだわかる、ルイズらしくないとは思うけど。しかし何故『自嘲』?
ずっと考え込んでいたがルイズが授業で錬金の魔法を失敗した時、唐突に理解できた。
ルイズは悩んでいるのだ、自分が蝶々の妖精さんに相応しいメイジなのか?と。
ルイズはまだ自分を認められないのだ、蝶々の妖精さんを召喚したという偉業を成したにも関わらず、だ。
その証拠に彼女は蝶々の妖精さんと模擬戦闘訓練をしたらしい。
それを見たものがいうにはとてもメイジとその使い魔が訓練しているとは思えないほど実戦さながらの鬼気迫る光景だったそうな。
(それでこそあたしのライバルよ!!)
ルイズは確かにその規格外さをもう見せ付けた。
だがこれで終わりではないだろう。
先ほどあたしはルイズがトリステインの歴史に刻まれるかもしれない、と言ったが歴史どころの話ではない。
彼女は歴史すら超えて伝説に刻まれるようなメイジになるかもしれない。
あたしは彼女に負けないように、いえ、彼女に勝てるように更なる研鑽を積むことを誓った。
ところでやっぱり素敵よね、あの蝶々の妖精さん。
特にあのスーツのセンスがたまらないわ。
他人の使い魔で妖精で・・・でも恋は障害が大きいほど燃え上がる!
あたしの微熱が今情熱へと変わっていく!!覚悟してね、ダーリン♪
[(既に接触済みだが)ルイズの場合]
最近わたしは自分が貴族であるという自信がなくなってきた。
パピヨンという自称蝶々の妖精さんがいる、わたしの目にはどこからどう見ても変態よ。
反応を見る限り、学院に仕える平民達も同じらしいわ。
だが!貴族達の目にはパピヨンは蝶々の妖精さんに見えるらしい。
どうしてもからかわれているという疑いを捨てられなかったけどどうやら皆本気でそう思ってるみたい。
最初は彼らを馬鹿だと思った、だがこうまで会う人会う人皆にパピヨンを『蝶々の妖精さんだ!』と言われると、
なんだか間違っているのが自分に思えてくるわ。
先ほどなどついにあの不倶戴天の敵、キュルケまでが・・・
わたしは本当に貴族なのだろうか?
もしかして魔法の使えないわたしにはわからないだけで彼は本当に蝶々の妖精さんなのだろうか?
さっきの錬金にも失敗したし私はもしかしたら貴族たる資格がないのかもしれない・・・
悩みで重くなった足を無理矢理動かしながら何とか自室に帰ると。
「戻ったか、ご主人様」
黒パンツ一丁で変態が出迎えてくれた。
うん、間違いない。狂ってるのはわたし以外のセンスだ。
こいつは疑いようもなく変態だわ。
周りからの評価がどうなろうとこいつを殺して使い魔を召喚しなおす。
今すぐに。
「というわけで死になさい」
「どういうわけかは理解出来んが止めとけご主人様。
あんたの今の力じゃ無駄な労力を使うだけだ」
失敗魔法の爆発を精神力が尽きるまで只管に放ったけど結局変態にはクネクネした動きで最後まで回避された。
何時か必ず始末してやる、と心に決めた。
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