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ウルトラマンゼロの使い魔
第八十八話「よみがえったミスコン」
UFO怪獣アブドラールス 登場
……この俺、平賀才人には今、一つ悩みがあった。それはルイズのことだ。
俺とルイズは何度か交流を重ねて、結構仲良くなった。するとキュルケの奴がそこに割って
入ってきて、ルイズと俺の取り合いを始めたのだ。そのことが悩みなのだ。
え? 女の子二人から取り合いをされる状況が悩みなんて、羨ましいって? いやまぁ、
普通だったら幸せな悩みってところなんだろうけど……ルイズとキュルケの場合は……。
「ダーリン、あたし教科書忘れちゃったの。見せてくれない?」
「な、何でサイトがあんたに見せなくちゃいけないのよ! 大体、席も離れてるじゃない!」
「ならルイズ、席代わってくれない? あんたはあたしの隣のファッションに見せてもらえばいいでしょ」
「えッ」
「よ、よよ、良くないわ! ツェルプストーに譲るものなんか何一つないんだからッ!」
……と、こんな感じで来る日も来る日も、口喧嘩を繰り返して大騒ぎを起こしているのだ。
お陰でクラスは大迷惑だ。いつぞやなんかは、魔法を使った決闘紛いのことまで……。
ん? 魔法? いやいや、そんなファンタジーなことがある訳ないだろ。また夢かなんかと
記憶がごっちゃになってるのかな。最近多いんだよな……。
ともかく、ルイズとキュルケはいちいち張り合って喧嘩をするのだ。これは俺だけが原因ではなく、
何でもルイズとキュルケは昔馴染みで、その時から色々因縁があるんだとか。その二人が今になって、
日本の高校で鉢合わせなんて、奇妙な巡り合わせもあったもんだ。それでこっちはいい迷惑なんだが。
「また始まったか。しかも毎日毎日、似たようなことを繰り返して飽きないのか?」
クリスも呆れ返っている。モンモランシーが相槌を打った。
「ほんと、うるさくて敵わないわね。サイト、早くあれ、止めてよ」
「止められるもんならとっくに止めてる……」
俺はため息交じりに返した。あの二人、口論を始めると俺の話なんかには耳を傾けても
くれないんだよな……。
ギーシュが肩をすくめて言った。
「やれやれ。これだから女性の扱いに慣れていない男は困る」
「お前に言われたくねーっての」
しょっちゅう他の女の子に声をかけて、モンモランシーを怒らせてるくせに……。
とは言っても、さすがにこのままにはしていられない。どうにか、ルイズだけでも止めようと思う。
「なぁ、ルイズ。そろそろ喧嘩はやめにしないか? 周りの迷惑になるだろ?」
しかし、案の定ルイズは反発した。
「うう、うるさいッ! あんたは一体誰の味方なのよッ!」
「味方ぁ?」
「そうよ! あんたがはっきりしないから、その、色々大変なんじゃないッ!」
そんなこと言われても……。ここでどっちかを選んでも、選ばれなかった片方がうるさい
だろうしなぁ……。どうすりゃいいってんだ……。
途方に暮れていたら、矢的先生の助けが入った。
「こらッ! またルイズとキュルケが騒いでるのか!」
「あッ! ヤマト先生……」
矢的先生が叱りつけると、さすがのルイズたちも大人しくなった。何たって迫力が段違いだもんな。
「廊下にまで声が響いてるぞ。休み時間とはいえ、もう少し静かにするんだ」
「は、はい……」
「それと平賀、ちょっとこっちに来い」
「え? 俺ですか?」
ルイズとキュルケを黙らせてから、先生は俺を呼んで、教室の片隅でヒソヒソと囁きかけた。
「平賀、折り入って頼みがある。ルイズとキュルケの二人を、どうにか仲良くさせてやってくれないか?」
「えぇ!?」
「あいつたちの喧嘩の声がうるさくて仕方ないと、結構な苦情が来てるんだ。だからどうにか
しないといけない。分かってくれ」
「で、でも、どうして俺なんですか……」
「二人と共通して仲のいいお前が一番打ってつけのはずなんだ。本当なら先生がやるべきことだが、
こっちは明男……大島の方に取りかかってて余裕がないからな……。お前に負担をかけてすまないとは
思うが、どうか頼む」
大島か……。クラスメイトの男子だが、勉強もスポーツも駄目なのを、「自分が宇宙人だから」
「自分の居場所はここではない」と現実逃避して目をそらす困った奴だ。さすがに先生も大島には
手を焼いているみたいだ。
そういうことなら、仕方ない。矢的先生たっての頼みとあっては、俺も断ることは出来なかった。
とは言ったものの、実際問題どうしたものか……。とりあえず俺は、何かアイディアの
手助けになるものはないかと図書室に来ていた。
「けど俺、調べものって苦手なんだよなぁ。何から手をつければいいのやら」
立ち並ぶ本棚を前に途方に暮れ、思わず独白していたら、
「図書室では静かに」
「わッ!?
不意に横から注意された。振り返ると、タバサが本を読んでいた。存在感がないから、
全然気づかなかった……。
「ご、ごめんタバサ。悪気はなかったんだ」
ひと言謝ると、タバサはすぐ本に目を落とした。タバサは本当に読書好きだな……。ここの本は
もうあらたか読み尽くしていそうだ。
そうだ、タバサに相談してみよう。もしかしたらいいアイディアを出してくれるかもしれない。
駄目で元々だ。
「なぁ、タバサ。ちょっと相談あるんだけどいいか?」
「……」
タバサは沈黙したままだが、それを俺は許可したと受け取って、おおまかなところを説明した。
「……つーわけで、ルイズとキュルケの仲を何とかしたいんだよ。どうすればいいか、分かるかな?」
「……」
「……タバサさん、聞いてます?」
説明しても、タバサはうんともすんとも言わないので、聞いてもらえているのか不安になった。
それともやっぱり、タバサにもどうにも出来ないってことかな。タバサが思いつかないのなら、
残念だけどお手上げすることも……。
「コンテスト」
「わッ!? な、なに? いきなり」
そう思った途端に、タバサがひと言発した。いきなりしゃべるから、いちいちビックリするんだよなぁ……。
それにしても、コンテストって?
「仲良くする方法」
仲良くする方法って……あ、ああ、黙っていたのは、ずっと考えてくれていたからだったのか。
「それはつまり、写真とか歌とかで競うアレをしろってこと?」
「そう。二人はライバル。激闘を越えて友達になる」
「……はぁ」
意外だな、タバサの口からそんな少年漫画みたいな言葉が出てくるなんて……。
「だからコンテストをする」
「えーと、要するに平和的な対決で解決しろと?」
まぁ、本当に決闘なんかさせられないしな。落としどころとしては、妥当なのかもしれない。
「でも、平凡な勝負では、どっちも納得しない」
「ああ、そうだろうな……」
タバサの言ったことは容易に想像がつく。歌とか写真とかじゃ、採点基準や審査員にケチつける
だろうし。機械の採点でもいちゃもんつけそうだ。
「じゃあ、タバサはどんなコンテストがいいって考えてるんだ?」
聞き返すと、タバサはまたひと言で答えた。
「ミスコンテスト」
「ミスコン!? それって、美人コンテストってこと?」
またまたタバサから意外な言葉が出てきた。普段のキャラからはちょっと想像つかないような
俗な提案だぞ。
「ん。この学園伝統のミスコンがある」
「へ? そうなの?」
「ちょっと待って」
席を立ったタバサは、薄い冊子を本棚からたくさん取ってきた。
「これ見て」
「これ、生徒会誌か。すごい量だな、学校開設から保存してるんだな」
「この本の、ここ」
タバサが指したページには、ミスコン優勝者の写真が纏めて掲載されてあった。
「……おおー! 歴代のミス高校がずらっと! レベル高いな~」
「優勝した方が勝ち。それなら、二人も納得する」
なるほど。学校の全員の総意から勝敗が決められるんだったら、あの二人も認めるだろう。けれど……。
「悪い話とは思わないけど、乗ってくれるかな? 下らないとか言われたらおしまいだぞ?」
そこが心配だ。二人とも、無駄にプライド高いからなぁ……。賛同してくれなきゃ元の木阿弥だ。
タバサも少し考えてから、告げた。
「……それなら、わたしから言う」
「えッ!? わたしからって……ああ、待てってタバサ!」
思い立ったが吉日を体現しようとしているように、タバサはスタスタと図書室から退出して
いこうとする。思わず止めようとする俺だったが、その時、
「……ん? あれは何だ……?」
窓の外に、空を高速で横切る発光体を発見した。あれは……。
「はッ! UFOだ!」
間違いない! あれは円盤だ! それがこの町に降り立とうとしている!
俺の声が聞こえてか、引き返してきたタバサが青ざめた表情で円盤を見つめた。
「……ニュースで、スカンジナビア半島とメルボルンがUFOによって大きな被害を受けたとやってた……」
「何だって!?」
タバサからもたらされたのは、とんでもない凶報だった! その被害があの円盤によるもの
だったなら……今度はこの町が、この学校が危ないぞ!
しかも円盤は底部からリング状の光を放つと、その中から身体中に触手を生やした、軟体状の
不気味な怪獣が出現した!
「ヴイイイヴイイイ!」
あいつは……! 端末から情報を引っ張り出すと、UFO怪獣アブドラールスという奴だと分かった。
正体に謎が多いが、何より凶暴で非常に危険な怪獣とある!
「ヴイイイヴイイイ!」
案の定アブドラールスは両目から黄色い怪光線を撃って、町を焼き払い出す! こうはしていられない!
「タバサ、避難しよう!」
「うん……!」
俺はタバサとともに避難すると見せかけて、こっそり人気のないところへと移り、ウルトラゼロアイを
取り出した。
「よぉし! デュワッ!」
ウルトラマンゼロに変身し、アブドラールスへと挑んでいく!
『行くぜアブドラールス! はぁぁッ!』
まっすぐ突っ込んでいったゼロが先制パンチを繰り出すが、アブドラールスはヒラリとかわし、
ゼロの背にカウンターのパンチを入れる。
『うおぉッ!?』
今の一撃の威力は相当なもので、ゼロは地面の上をゴロゴロ転がった。
「ヴイイイヴイイイ!」
『くっそ……!』
すぐに起き上がったゼロはアブドラールスとじりじり睨み合う。そして機を見て間合いを詰めるが、
そこを読まれていたかのようにアブドラールスに捕まって後ろへ投げ飛ばされた。
『ぐぅッ!』
『ゼロ、大丈夫か!? しっかり!』
『あいつ、かなり出来るぜ……!』
アブドラールスはグネグネした見た目に反して、パワーもスピードも一級品だ。こいつはかなり
手強いぞ……!
「ヴイイイヴイイイ!」
アブドラールスは両目からの怪光線を連射してゼロを狙う。側転でかわすゼロだが……
停止したところに一発もらってしまった!
『うああぁぁッ!』
光線の威力も危険なレベルで、ゼロはその場にうずくまる。そこをアブドラールスに
蹴り上げられて、バッタリと倒れ込んだ。
『ぐッ! はぁッ!』
くそ、本当に強いぜ……! ゼロをこんな一方的に苦しめるなんて……!
ゼロがまともに動けなくなっている時に……不意に誰かの叫び声が聞こえた。
「僕だよ! 明男だよ!」
見ると、大島がアブドラールスに近い位置にいる。あいつ、あんなところで何やってるんだ!?
「地球人名、大島明男! 君の星の仲間だ! 迎えに来てくれてありがとう!」
大島は円盤とアブドラールスに向かって呼びかけている。
まさか、自分を宇宙人と思い込んでいるあいつは、円盤を自分の迎えに来たと思ってるのか!?
馬鹿なことを! 危険すぎるッ!
「明男! 何をするんだ、やめろ!」
そこに矢的先生が駆けつけて、大島を止める。だが大島自身はそれを振り払おうとする。
「放してよ先生! 僕の星から、僕を迎えに来てくれたんだ!」
「何を馬鹿なこと言ってんだッ!」
「放してよ先生ッ!」
聞き分けのない大島だが、アブドラールスが大島の仲間な訳がない。大島にも怪光線で攻撃する!
「ヴイイイヴイイイ!」
「あぁッ!?」
大島の右脚が焼かれた!?
「明男ッ!」
幸い、大島は矢的先生が抱え上げて安全な場所まで退避させていく。そしてこの間に、
ゼロが復活して立ち上がった!
『よくも才人のクラスメイトに手ぇ出しやがったな! もう怒ったぜ!』
怒りにたぎるゼロの電光石火のキックがアブドラールスの腹に食い込んだ! アブドラールスは
蹴りに押されて後退する。
『も一発!』
続けざまにもう一回キックを入れようとしたが、アブドラールスに足を捕らえられてすくい投げられる。
『くッ!』
「ヴイイイヴイイイ!」
アブドラールスと掴み合うゼロ。だがアブドラールスは、怪獣の体型で巴投げを決めて
ゼロを放り飛ばした!
『ぬおあッ!?』
本当に何て手強い奴だ……! 怪獣なのに技まで持っている!
『何の! まだまだぁッ!』
けれどゼロは逆に発奮し、今度はこっちが相手を投げ飛ばした。すかさず必殺のウルトラゼロキックを
食らわせる!
『ぜああぁぁぁぁぁッ!』
「ヴイイイヴイイイ!」
飛び蹴りがクリーンヒットしたが、アブドラールスはまだ倒れない。ゼロは追撃を掛けようと詰め寄るが、
「ヴイイイヴイイイ!」
そこに至近距離から赤い光線を浴びせられ、ゼロがたちまち力を失ってしまう!
『ぐあぁぁッ! か、身体が痺れる……!』
麻痺光線だ! アブドラールスはここぞとばかりに動きの鈍ったゼロを散々に叩きのめす!
『ぐはぁぁッ……!』
腹部を踏みつけられるゼロのカラータイマーがとうとう鳴り出した。がんばってくれ、ゼロ!
この町を救えるのは、お前しかいないんだ!
応援したのは俺だけじゃなかった。大島からの声も俺たちの耳に届いた。
「ウルトラマンゼロ助けて! 怪獣をやっつけてー!」
それを受けて、ゼロの身体に力が戻ってくる!
『ここで廃れてたらウルトラマンの名折れだ! おおおッ!』
気合いとともにアブドラールスをはね飛ばし、当て身! ひるんだアブドラールスは怪光線で
反撃するが、交差した腕で防御。
「セアァッ!」
そしてカウンターのワイドゼロショット! さすがのアブドラールスも大きなダメージを受ける!
『まだまだぁッ! ここからが正念場だ! うおおおぉぉぉぉぉッ!』
ゼロの身体が激しく燃え上がり、ストロングコロナゼロに変身を遂げた。そのパワーを乗せた
飛び蹴りが決まる!
「ヴイイイヴイイイ!」
アブドラールスも耐えられず、後ろにばったり倒れる。ほとんど力を失いながらもなおも
立ち上がるが、そこにゼロのとどめの一撃が繰り出された。
『ガァルネイト、バスタァァァ―――――!』
超破壊光線が突き刺さり、アブドラールスは今度こそ完全に力を失って倒れ込んだ。眼から光が消え、
絶命を果たす。
やった! ゼロの逆転勝利だ!
『そしてこいつでフィニッシュだぁぁぁッ!!』
振り向いたゼロは円盤に向けて、ゼロスラッガーのウルトラキック戦法を放つ! 宙を切り裂いて
飛んでいったスラッガーが、円盤を木端微塵に破壊した!
これで敵は全てやっつけた。完全勝利だぜ……!
「やったぁーッ! あッ……!?」
ゼロの勝利を大島も喜んでいたが、途端に撃たれた脚を抑えてその場にうずくまった。
大島……!?
負傷が想像以上に深かった大島は、病院に担ぎ込まれた。緊急手術を受ける大島。大丈夫だろうか……。
気を揉んでいたら、手術室の外で待つ俺たちの元に看護師さんが血相を抱えてやってきた。
「輸血が必要です! 供血をお願いします。血液型がO型の方はいらっしゃいませんか?」
血が足りないのか! でも俺の血液型じゃない……。
すると、博士、落語、ファッションが名乗り出た。
「僕、O型です!」
「僕もです!」
「私もです!」
大島のお母さんがお礼を言う。
「みんなありがとう。私もO型です」
「じゃあこちらへお願いします」
四人が看護師さんに連れられて、手術室に入っていく。よかった、O型の人がこんなにいて。
「矢的先生は何型ですか?」
「僕は、その……」
俺は血を分けてやることは出来ないけれど、それでも大島の助けになりたい。ゼロ、もう一度
力を貸してくれ!
『分かった。俺もちょうど、そうしなきゃいけないような気がしたところだぜ!』
俺はこっそり病院の外に出ると、再度ゼロへ変身。残ったエネルギーを治癒光線に変換して、
大島に浴びせた。
これで大島は大丈夫だ。後は回復する時を待とう。
それからすっかりと容態が良くなった大島は、入院前よりもむしろ元気になって帰ってきた。
みんなからの輸血で一命を取り留めたことと、矢的先生からの説得で自分が宇宙人を自称していたのを、
現実逃避していただけだということを受け止め、前を向くことが出来るようになったんだ。大島が自分と
向き合い、成長を遂げたことに先生も喜んでいた。
そうそう、忘れちゃいけないのが俺の方の課題だ。タバサが提案した、ミスコンはどうなったかと言うと……。
「ミスコンね。あたしそういうの大好き! 勝つ自信だってあるもの」
まずキュルケが意欲を見せて、ルイズに告げた。
「タバサはどうしてこういうこと言い出したか分からない? いい加減白黒つけろってことでしょ?
それで、どうするのルイズ?」
「い、い、いいわ! 受けて立つわよ! ツェルプストーの挑戦を断るなんて、ヴァリエールの名が
泣くんだから!」
と、ルイズも参加を表明し、無事に二人に勝負の場を用意することが出来た。
これで第一関門は突破だが、目的の二人の仲を取り持つことが出来るかどうかはここからだ。
はてさて、ミスコンを通してどんな結果をたどることになるのだろうか……。
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