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#settitle(第七十九話「少年シュヴァリエ」)
ウルトラマンゼロの使い魔
第七十九話「少年シュヴァリエ」
甲冑星人ボーグ星人 登場
トリステイン王国の飛行船用の港町、ラ・ロシェールの桟橋に今、ロサイスから飛んできた
軍船が接舷した。タラップが下ろされると、パーカーを着て剣を背負った一人の少年が一番に降りてくる。
「んー! 久々のトリステインだ! 色々危ない目を見たけど、無事に帰ってこれたんだなぁ」
背筋を伸ばしながら感慨深く発した少年は、誰であろう平賀才人。その後にはグレンが続く。
「いやぁ、ほんと無事でよかったぜ。見つかるまでめっちゃ心配したけど、これでひと安心ってもんだ。
なぁ焼き鳥」
『私の名前はジャンボットだ!』
グレンに続いたのはシエスタ。その腕輪からジャンボットがいつもの抗議の声を上げた。
「サイトさん、わたしたちようやく、みんなそろって学院に帰れるんですね!」
シエスタの嬉しそうなひと言にうなずいた才人は、最後に降りてきたルイズに呼びかける。
「ルイズ、またお前の使い魔としてよろしくな」
「……」
だが、ルイズはつんと不機嫌そうに澄ましたままだった。才人は呆れたように頭をかく。
「お前なぁ、まだ機嫌損ねてるのかよ。テファとは何もなかったって言ってるだろ? ほんとだって」
ティファニアの名前を出すと、ルイズは口を開いて苛立ちの声を出した。
「どうかしら!? 実際何もなかったとしても、あの“胸っぽいなにか”に触りたいとか
ずっと思ってたんじゃないの? あんたってああいうの好きそうだものね!」
「胸っぽいなにかって……」
未だにコンプレックスを爆発させているルイズに、才人たちはほとほと参った。
才人と再会した時のルイズは、筆舌に尽くしがたいほどに喜び感涙まで流したものだが、
世話になっていたティファニアを紹介すると態度が一変。彼女のあまりにも大きな胸に
過去最大のショックを受け、何故かティファニアに逆ギレし、更には彼女の胸に才人が
どぎまぎしていることに目敏く気づいて八つ当たりをしでかすなどと大暴れだった。
お陰で一瞬でも生じていた才人との甘い空気は完全に霧散してしまったのだった。
ルイズにとっては、ティファニアがハーフエルフでしかも自分と同じ“虚無”の
担い手だということよりもそっちが重要なようであった。
そんなこんなでへそを曲げっぱなしのルイズであったが、残っている理性で才人らに呼びかける。
「それに、学院に戻るにはまだ早いわよ。先に姫さまの御許まで行かないと。姫さまも、
そのために迎えのフネを寄越して下さったんだから」
「ああ、そうだったな。姫さま、俺に用件って何だろうな」
才人たちは話しながら、彼らを待っている送迎用の竜籠の元へと向かっていった。
冷凍怪獣軍団とバルキー星人の襲撃を退けた才人は、ルイズと再会。そして再び彼女と
契約を交わし、“虚無の使い魔”に立ち返った。その際、ルーンが以前と同じ左手に現れたことに
デルフリンガーが異様に安堵していたが……。
激戦があったこともあってしばらくウェストウッド村で休息を取るはずだったが、グレンが
アンリエッタに才人の生存を伝えると、彼女から才人に話したいことがあるという連絡が来たのだ。
それで才人たちは、アンリエッタの回した送迎船に乗ってアルビオンをあとにした。
この際、『外の世界を見たい』と言っていたティファニアを才人が誘ったのだが、彼女は
ウェストウッド村の身寄りのない子供たちの世話をしなくてはならないと、その話を断った。
いつかは、ティファニアも自由に外の世界を見て回れる日が来るのだろうか……。
ともかく、こうして才人、ルイズ、グレン、シエスタの四人はトリステインに帰国したのであった。
四人を乗せた竜籠がトリスタニアに到着し、一行が王宮入りすると、出迎えたのはアニエスだった。
「よく来てくれた、ミス・ヴァリエール、グレン。そしてよく生きていたな、ミス・ヴァリエールの使い魔」
「アニエスさん! お久しぶりです」
サウスゴータ以来のアニエスと顔を合わせ、才人は頭を下げて挨拶した。その顔を見た
アニエスは、ほぅ、と息を漏らす。
「少し見ない内に、随分とたくましくなったようだな」
「え? そうでしょうか」
「それくらい、見ればわかる。すっかり戦士の顔つきになったな」
「だろぉ~? この俺がつきっきりで指導したんだからな! そりゃ当然ってもんよ!」
ピッと自分を指差して、胸を張って自慢するグレン。それにアニエスは苦笑を浮かべる。
「どうやら苦労したみたいだな。さぁ、陛下は執務室でお待ちだ。案内しよう」
アニエスのあとに続いて、一行は執務室へと向かう。アニエスが扉をくぐると、アンリエッタへと
深く一礼する。
「陛下、ミス・ヴァリエールの使い魔の少年をお連れしました」
そのあとに執務室へと入ると、すぐにそこが王宮に相応しくないほどに寂しい光景であることに
気がついた。家具はほとんど何もなく、執務用の机は古ぼけたライカ欅のもの。他には書架が一個、
隅にぽつんとあるのみと、王冠を被ったアンリエッタがいなければ、誰もここが女王の執務室とは
思わないであろう。
ルイズが不安そうに辺りを見回すと、アンリエッタが説明する。
「ああ、家具はすべて売り払ってしまったの。びっくりした?」
「ざ、財産だけでなく、ですか……?」
「しかたがないの。あの戦争で、国庫はからっぽになってしまったから……」
アンリエッタは、ルイズの手をとった。
「ルイズ、元気になってよかった。わたくしはあなたに、使い魔を奪いかねなかったこと、
いえそれ以上にあなたを死地に追い込んだことを改めてお詫びせねばなりませんね」
「そんな……あんなことになったのは姫さまのせいではないではないですか」
ルイズが慰めるが、アンリエッタは首を振る。
「いえ……、わたくしの責任です。わたくしは、戦争というものを……侵略者と戦うということを
甘く考えていたのです。本当に、あなたたちが生きていてよかった。ごめんなさいルイズ。なんと言って
お詫びすればよいのか……」
「姫さま、どうぞお気になさらないでください。このルイズ・フランソワーズ、陛下に一身を
捧げております。己の死もそこには含まれています。ですから……」
抱きしめあっておいおいと泣くルイズとアンリエッタ。才人は、俺の死もそこに入ってるのかよと
心の中で突っ込んだ。
ひとしきり泣くと、ルイズが伝える。
「姫さま……、恐ろしい事実をお耳に入れねばなりません」
「まあ! 恐ろしいですって! どうしましょう! いいえ、聞かねばなりませんわね。
わたくしはすべてを耳に入れねばなりません。恐ろしいことも、心をつぶしてしまうような
悲しい出来事も……、さあ、話してくださいまし」
ルイズはもう一人の虚無の担い手、ティファニアに出会ったことを語った。
「あなたの他にも、虚無の使い手がいるのですか? なんということ。そのものを早く保護しなければ」
ルイズは首を振った。
「彼女はひっそりと暮らすことを望んでおります。その呪文は身を守るのに適しているし……、
できうることなら、かの地でそっとしておいてあげたいと思います」
「そうね……、この地が安全とは限りませんわね……。わかってルイズ。己のものにしたい
わけではないの。ただ、わたくしは“虚無”を誰の手も触れぬようにしておきたいだけなのです。
自分の目的に利することはもう望んでおりません」
アンリエッタは、ルイズの“虚無”の存在が、自分に少なからずアルビオン侵攻を決意させた
ことを知っていた。
「わかっていてなお、力を持つということは、分を超えた野望を抱きやすいものです。わたくしは
そのようなことが二度と起こらぬよう、注意するつもりです。また、他人にそれをさせるつもりも
ありません。ああ、触らぬに越したことはないわね。その方がそう望むのであれば、そっとしておいて
さしあげましょう。ほんとうに。ええ……」
ルイズは続けて告げる。
「虚無の担い手ですが……、察するに王家の秘宝の数だけ……、つまり四人いると思いますわ」
「なんということでしょう! 始祖の力を担うものが四人とは!」
「その中に、虚無を悪しき目的で用いようと考えるものがいないとは限りません。仮にまだ
姿の見えない虚無の担い手が、侵略者の残党と手を結んだりなどすれば、脅威の度合いが一挙に
はねあがるものかと思われます」
アンリエッタはルイズをじっと見つめた。
「安心して、ルイズ。最早これ以上、外敵の好きにはさせません。……で、あるならば、
なおさら必要がありそうですわね」
「必要?」
アンリエッタはルイズから離れると、今度は才人を見つめた。
「使い魔さん。わたくしはもう存じています。あなたが、わたくしたちの救い主、ウルトラマンゼロなのですね」
「え!? ど、どうしてそのことを……」
「状況から推察いたしましたわ」
見るからに動揺する才人に苦笑したアンリエッタは、一つ頼む。
「すみませんが、ウルトラマンゼロのお声を聞かせてはいただけないでしょうか」
才人は困ったようにウルティメイトブレスレットに視線を落としたが、それがチカチカと
瞬いたので、ゆっくりと持ち上げた。
『アンリエッタ姫さん、こうして言葉を交わすのは初めてだな。その通り、才人はこの俺、
ウルトラマンゼロと一体なんだ』
ゼロが言葉を発すると、アンリエッタは王冠をかぶった頭を何度も下げ始めた。
「ありがとうございます。何度お礼を言っても足りません。本当にありがとうございます。
あなた方は英雄です」
「そ、そんな……、ゼロはともかく、俺は英雄なんて呼ばれるようなことはしてないですよ」
「いいえ……、あの地獄絵図の最中に、飛行機械で敵に立ち向かうあなたの勇姿があったからこそ、
皆が勇気づけられたのです。あなたの活躍がなければ、最悪わたくしたちは皆殺しにされ、世界は
終わっていたかもしれません」
そんな風にアンリエッタに頭を下げられ、才人は恐縮した。同時に、今まで感じたことのない
喜びを感じた。女王さまに認められる、なんて、日本にいたら考えられないことである。
ここでグレンがニッと笑って発言した。
「これでアンリエッタ姫さんも、正真正銘、秘密を共有する仲間ってわけだな!」
「こんなわたくしがウルティメイトフォースゼロの仲間などと、身に余る光栄です」
グレンに笑いかけられたアンリエッタはほんのり頬を赤らめた。
「んじゃ、ここで改めて俺たちの自己紹介をしようか」
と言うグレン。そのために、シエスタも連れてきたのだ。
彼女の腕輪のランプを通してミラーも呼ぶと、ウルティメイトフォースゼロの四人が名乗りをあげる。
「アンリエッタ姫さま、私は鏡の騎士、ミラーナイトと申します」
『私は鋼鉄の武人、ジャンボットです』
「俺が炎の戦士、グレンファイヤーな!」
『そして俺がウルトラマンゼロ! ここにはいないジャンナインと合わせて、宇宙警備隊
ウルティメイトフォースゼロ! ハルケギニアを狙う宇宙のワルをやっつけるために来たんだ!』
それからゼロたちは、自身らの素性や目的などを詳しくアンリエッタに伝えた。遂にウルティメイトフォースゼロの
確かな事実を知ったアンリエッタは、感極まって四人へ再び頭を下げた。
「そんなに遠くの世界から、わたくしたちのために……。何と感謝の気持ちを申し上げれば
よろしいのかもわかりません……」
『いいんだよ。宇宙の平和は俺たち自身の願いだ。アンリエッタ姫さんも、どうか平和の
実現のために頑張ってほしい』
「はい! わたくし、この身とこの魂を祖国トリステインとハルケギニアの大地の安寧のために
捧げる決心を改めて固めましたわ」
熱い思いを瞳にたぎらせたアンリエッタは、才人に告げる。
「それで、ウルトラマンゼロとして日々戦ってくださっているあなたにせめてものお力添えと、
ささやかながら感謝の気持ちとして、用意したものがあります。受け取ってください」
アンリエッタが差し出したのは、黒地のビロードのマントであった。小さく青い百合紋があしらわれ、
胸元には銀色の五芒星が燦然と輝いている。
それを見たルイズが、口と目を大きくあけた。
「“シュヴァリエ”のマントじゃない! ということは姫さま……サイトに“シュヴァリエ”の
称号授与を!? サイトを貴族に取り立てるおつもりですか!?」
「わッ!? す、すごいです! サイトさんが、貴族に!?」
シエスタもあっと驚いた。トリステインでは、ゲルマニアと違ってメイジでないいわゆる
『平民』が貴族の位をいただくことは、アンリエッタ以前の治世ならばあり得なかったことだ。
才人自身は、ことの重大さがよく飲み込めておらずにきょとんとしている。
「でも姫さま、どうしてサイトに“シュヴァリエ”の称号を……」
「侵略者の行いはあまりに姑息です。これから先、何の権限も持たない平民の身分では侵略者の
影を追う際に動きづらい時があるかもしれません。それ故の計らいです。この騎士のマントが
あるだけで、トリステインで行動できる範囲がぐんと広がります。戦時の彼自身の貢献も、
騎士叙勲の名誉を授けるに相応しいものです」
アンリエッタは改めて才人と向かい合う。
「お願い申し上げます、使い魔さん……いえ、サイトさん。あなたとゼロのお力を、これからも
わたくしたちハルケギニアの民にお貸しください」
才人はやっと、アンリエッタの自分への用件と、その重要さを理解した。ルイズやシエスタの
反応を見ても、ただごとではないことがはっきりわかる。
しかしルイズがアンリエッタに抗議した。
「姫さま、でもサイトを貴族にするなんて、認められませんわ!」
「どうしてかしら? トリステインで平民が貴族になる例は、既にアニエスがありますよ」
「サイトとアニエスは違います! サイトは元々トリステインの民ではありませんし、この世界の
人間でもないんですよ! そんな人間を貴族にしていいんですか?」
「彼に貴族の資格がない、とすれば、王国中の貴族から領地と官職を取り上げなければいけなくなるでしょう」
「でも、サイトはわたしの使い魔で……」
「ええ。もちろん、そのことは変わりません。貴族になれば、あなたのお手伝いもやりやすくなるはず。
違って?」
「でも、でも、わたしの“虚無”とウルトラマンゼロのことは秘密のはずじゃ……」
「もちろん、それは秘匿します。サイトさんが“ガンダールヴ”であり、ウルトラマンゼロだということは、
これまで通り一部の人間のみの機密です。彼は今までどおり“武器の扱いに長けた戦士”として振る舞って
もらいましょう」
そう言われては、もうルイズは反論できない。しかしアンリエッタは更に説得する。
「ルイズの他にも“担い手”がいるならなおさらあなたを今までとおりにしておくわけにはいきません。
名実共に騎士となり、ルイズを守っていただくことにいたします」
そうまで言われてはしかたがない。ルイズは頷いた。
「わかってくれたのね。嬉しいわ、ルイズ」
続いて才人に向けて、アンリエッタは水色の水晶があしらわれた杖を掲げた。
「略式ですが……、この場で“騎士叙勲”を行います。ひざまずいてください」
女王の威厳がこもったアンリエッタのその言葉に、才人は思わずひざまずいてしまった。
才人が目をつむり、頭を伏せると、右肩にアンリエッタの杖が乗せられた。そしてアンリエッタが
騎士叙勲の詔を唱える。
「我、トリステイン女王アンリエッタ、この者に祝福と騎士たる資格を与えんとす。高潔なる魂の
持ち主よ、比類なき勇を誇る者よ、並ぶものなき勲し者よ、始祖と我と祖国に、変わらぬ忠誠を……
いえ、他所の人間に、わたくしたちへの忠誠を誓わせるわけにはいきませんわね。詔の一部を変えます」
「姫さま」
思わずルイズが口を開いた。そんな騎士叙勲、聞いたことがない。
「いいのです。頼んでいるのはわたくしなのですから。わたくしは彼に請うて、騎士になっていただくのです」
アンリエッタは再び厳粛な顔になり、言葉を続けた。
「高潔なる魂の持ち主よ、比類なき勇を誇る者よ、並ぶものなき勲し者よ、汝の魂の在り処、
その魂が欲するところに忠誠を誓いますか?」
「……誓います」
「よろしい。始祖ブリミルの御名において、汝をシュヴァリエに叙する」
アンリエッタは、才人の右肩を二度叩き、次に左肩を二度叩いた。これで才人は騎士に叙されたのだ。
叙勲式が終わり、才人がマントを試しに羽織ると、シエスタらがわっと歓声を上げた。
「お似合いですよ、サイトさん! サイトさんがシュヴァリエなんて、夢のように素敵です!」
『うむ、なかなか様になっているな』
「マントが似合うような男前になったのも、俺の手腕だからな!」
「はいはい」
『へへッ、親父やレオのマント姿を思い出すな』
グレンたちがわいわい盛り上がる一方で、ルイズは複雑な気分だった。
才人が他ならぬアンリエッタに評価されたのが嬉しくないわけではないが、シュヴァリエなんかに
なってしまったら、今より女の子が寄ってくるのではないかなんて不安があるのだ。シエスタより
強力なライバルが現れたら、女の子としての魅力“ゼロ”の自分が勝てるんだろうか? などと
憂鬱になってしまう。
それだけではなく、才人はいずれ自分の世界に帰らなければならないはずだ。それなのに
騎士になんてなってしまって、いざ帰る時に未練が湧いたらどうするつもりなの? とも思っている。
それより何より、仮に才人がシュヴァリエとしてこの地に残ると考えて、喜びがこみ上げてきたのが
一番の理由なのであった。
そういう風にルイズが悶々としていたとき……。
ドンッ!!
「!? 何事かしら……!」
いきなり執務室の外から激しい爆音が響いてきたので、アンリエッタたちは一瞬にして
楽しげな雰囲気が吹っ飛び、緊張に包まれた。
「確かめて参ります」
早速控えていたアニエスが飛び出していこうとしたが、それより早くに銃士隊の隊員が一人、
執務室に駆け込んできた。
「失礼いたします! 非常事態です!」
「何が起きた!」
アニエスの問いに、隊員は早口に答える。
「王宮の一画で爆発が発生しました! 何者かに爆発物を仕掛けられたものと思われます!」
「爆発物だと……!?」
「まさか、また侵略者の破壊工作かしら……」
アンリエッタがつぶやき、才人たちは一瞬互いに目を合わせる。
刹那、才人は殺気を感じた!
「ッ!」
才人の身体は、考えるよりも早く、デルフリンガーを抜いていた。反射神経のみで動いていた。
グレンの指導の賜物だ。
そしてデルフリンガーで、電光のような速度で斬りかかってきた銃士隊員の剣を受け止めていた。
「えッ!?」
まさかの銃士隊員が才人を攻撃したので、ルイズたちは衝撃を覚えた。
攻撃の瞬間に能面のように生気のない表情となった銃士隊員は、全く動じずに二撃目を
仕掛けようとしたが、才人の切り上げが彼女の剣を弾き飛ばした。それでもなお才人に
襲いかかろうとする銃士隊員を背後からアニエスとグレンが捕まえ、床に抑えつける。
「貴様、これは何のつもりだ! もしくは侵略者の変装か!?」
アニエスの怒号に銃士隊員は何も答えず、二人を振り払おうとする。恐ろしい力であったが、
グレンの怪力により抑え込むことが出来た。
「すげぇ力だ……! 人間のパワーじゃねぇぜ!」
「ですが、星人の変身という訳でもないようです」
ミラーのひと言に同意するジャンボット。彼はセンサーで銃士隊員の状態を突き止めた。
『うむ。彼女は生身の肉体ではなくなっている! 何者かにサイボーグにされ、操られているのだろう』
『フッフッフッフッフッ……その通りだ』
突如として第三者の声が響き、執務室に宇宙人がテレポートで侵入してきた! 全身を甲冑で
覆っているように見えるが、正真正銘の生身である。
『ボーグ星人かッ!』
ゼロの指摘を肯定する宇宙人……ボーグ星人。
『如何にも、私は元宇宙人連合の一人、ボーグ星人。ウルティメイトフォースゼロ、貴様らを
抹殺してこの星を我々のものとする!』
ボーグ星人は堂々と宣戦布告する。才人がシュヴァリエに叙勲されてすぐに、新たな敵の
攻撃が始まったのだ!
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ウルトラマンゼロの使い魔
第七十九話「少年シュヴァリエ」
甲冑星人ボーグ星人 登場
トリステイン王国の飛行船用の港町、ラ・ロシェールの桟橋に今、ロサイスから飛んできた
軍船が接舷した。タラップが下ろされると、パーカーを着て剣を背負った一人の少年が一番に降りてくる。
「んー! 久々のトリステインだ! 色々危ない目を見たけど、無事に帰ってこれたんだなぁ」
背筋を伸ばしながら感慨深く発した少年は、誰であろう平賀才人。その後にはグレンが続く。
「いやぁ、ほんと無事でよかったぜ。見つかるまでめっちゃ心配したけど、これでひと安心ってもんだ。
なぁ焼き鳥」
『私の名前はジャンボットだ!』
グレンに続いたのはシエスタ。その腕輪からジャンボットがいつもの抗議の声を上げた。
「サイトさん、わたしたちようやく、みんなそろって学院に帰れるんですね!」
シエスタの嬉しそうなひと言にうなずいた才人は、最後に降りてきたルイズに呼びかける。
「ルイズ、またお前の使い魔としてよろしくな」
「……」
だが、ルイズはつんと不機嫌そうに澄ましたままだった。才人は呆れたように頭をかく。
「お前なぁ、まだ機嫌損ねてるのかよ。テファとは何もなかったって言ってるだろ? ほんとだって」
ティファニアの名前を出すと、ルイズは口を開いて苛立ちの声を出した。
「どうかしら!? 実際何もなかったとしても、あの“胸っぽいなにか”に触りたいとか
ずっと思ってたんじゃないの? あんたってああいうの好きそうだものね!」
「胸っぽいなにかって……」
未だにコンプレックスを爆発させているルイズに、才人たちはほとほと参った。
才人と再会した時のルイズは、筆舌に尽くしがたいほどに喜び感涙まで流したものだが、
世話になっていたティファニアを紹介すると態度が一変。彼女のあまりにも大きな胸に
過去最大のショックを受け、何故かティファニアに逆ギレし、更には彼女の胸に才人が
どぎまぎしていることに目敏く気づいて八つ当たりをしでかすなどと大暴れだった。
お陰で一瞬でも生じていた才人との甘い空気は完全に霧散してしまったのだった。
ルイズにとっては、ティファニアがハーフエルフでしかも自分と同じ“虚無”の
担い手だということよりもそっちが重要なようであった。
そんなこんなでへそを曲げっぱなしのルイズであったが、残っている理性で才人らに呼びかける。
「それに、学院に戻るにはまだ早いわよ。先に姫さまの御許まで行かないと。姫さまも、
そのために迎えのフネを寄越して下さったんだから」
「ああ、そうだったな。姫さま、俺に用件って何だろうな」
才人たちは話しながら、彼らを待っている送迎用の竜籠の元へと向かっていった。
冷凍怪獣軍団とバルキー星人の襲撃を退けた才人は、ルイズと再会。そして再び彼女と
契約を交わし、“虚無の使い魔”に立ち返った。その際、ルーンが以前と同じ左手に現れたことに
デルフリンガーが異様に安堵していたが……。
激戦があったこともあってしばらくウェストウッド村で休息を取るはずだったが、グレンが
アンリエッタに才人の生存を伝えると、彼女から才人に話したいことがあるという連絡が来たのだ。
それで才人たちは、アンリエッタの回した送迎船に乗ってアルビオンをあとにした。
この際、『外の世界を見たい』と言っていたティファニアを才人が誘ったのだが、彼女は
ウェストウッド村の身寄りのない子供たちの世話をしなくてはならないと、その話を断った。
いつかは、ティファニアも自由に外の世界を見て回れる日が来るのだろうか……。
ともかく、こうして才人、ルイズ、グレン、シエスタの四人はトリステインに帰国したのであった。
四人を乗せた竜籠がトリスタニアに到着し、一行が王宮入りすると、出迎えたのはアニエスだった。
「よく来てくれた、ミス・ヴァリエール、グレン。そしてよく生きていたな、ミス・ヴァリエールの使い魔」
「アニエスさん! お久しぶりです」
サウスゴータ以来のアニエスと顔を合わせ、才人は頭を下げて挨拶した。その顔を見た
アニエスは、ほぅ、と息を漏らす。
「少し見ない内に、随分とたくましくなったようだな」
「え? そうでしょうか」
「それくらい、見ればわかる。すっかり戦士の顔つきになったな」
「だろぉ~? この俺がつきっきりで指導したんだからな! そりゃ当然ってもんよ!」
ピッと自分を指差して、胸を張って自慢するグレン。それにアニエスは苦笑を浮かべる。
「どうやら苦労したみたいだな。さぁ、陛下は執務室でお待ちだ。案内しよう」
アニエスのあとに続いて、一行は執務室へと向かう。アニエスが扉をくぐると、アンリエッタへと
深く一礼する。
「陛下、ミス・ヴァリエールの使い魔の少年をお連れしました」
そのあとに執務室へと入ると、すぐにそこが王宮に相応しくないほどに寂しい光景であることに
気がついた。家具はほとんど何もなく、執務用の机は古ぼけたライカ欅のもの。他には書架が一個、
隅にぽつんとあるのみと、王冠を被ったアンリエッタがいなければ、誰もここが女王の執務室とは
思わないであろう。
ルイズが不安そうに辺りを見回すと、アンリエッタが説明する。
「ああ、家具はすべて売り払ってしまったの。びっくりした?」
「ざ、財産だけでなく、ですか……?」
「しかたがないの。あの戦争で、国庫はからっぽになってしまったから……」
アンリエッタは、ルイズの手をとった。
「ルイズ、元気になってよかった。わたくしはあなたに、使い魔を奪いかねなかったこと、
いえそれ以上にあなたを死地に追い込んだことを改めてお詫びせねばなりませんね」
「そんな……あんなことになったのは姫さまのせいではないではないですか」
ルイズが慰めるが、アンリエッタは首を振る。
「いえ……、わたくしの責任です。わたくしは、戦争というものを……侵略者と戦うということを
甘く考えていたのです。本当に、あなたたちが生きていてよかった。ごめんなさいルイズ。なんと言って
お詫びすればよいのか……」
「姫さま、どうぞお気になさらないでください。このルイズ・フランソワーズ、陛下に一身を
捧げております。己の死もそこには含まれています。ですから……」
抱きしめあっておいおいと泣くルイズとアンリエッタ。才人は、俺の死もそこに入ってるのかよと
心の中で突っ込んだ。
ひとしきり泣くと、ルイズが伝える。
「姫さま……、恐ろしい事実をお耳に入れねばなりません」
「まあ! 恐ろしいですって! どうしましょう! いいえ、聞かねばなりませんわね。
わたくしはすべてを耳に入れねばなりません。恐ろしいことも、心をつぶしてしまうような
悲しい出来事も……、さあ、話してくださいまし」
ルイズはもう一人の虚無の担い手、ティファニアに出会ったことを語った。
「あなたの他にも、虚無の使い手がいるのですか? なんということ。そのものを早く保護しなければ」
ルイズは首を振った。
「彼女はひっそりと暮らすことを望んでおります。その呪文は身を守るのに適しているし……、
できうることなら、かの地でそっとしておいてあげたいと思います」
「そうね……、この地が安全とは限りませんわね……。わかってルイズ。己のものにしたい
わけではないの。ただ、わたくしは“虚無”を誰の手も触れぬようにしておきたいだけなのです。
自分の目的に利することはもう望んでおりません」
アンリエッタは、ルイズの“虚無”の存在が、自分に少なからずアルビオン侵攻を決意させた
ことを知っていた。
「わかっていてなお、力を持つということは、分を超えた野望を抱きやすいものです。わたくしは
そのようなことが二度と起こらぬよう、注意するつもりです。また、他人にそれをさせるつもりも
ありません。ああ、触らぬに越したことはないわね。その方がそう望むのであれば、そっとしておいて
さしあげましょう。ほんとうに。ええ……」
ルイズは続けて告げる。
「虚無の担い手ですが……、察するに王家の秘宝の数だけ……、つまり四人いると思いますわ」
「なんということでしょう! 始祖の力を担うものが四人とは!」
「その中に、虚無を悪しき目的で用いようと考えるものがいないとは限りません。仮にまだ
姿の見えない虚無の担い手が、侵略者の残党と手を結んだりなどすれば、脅威の度合いが一挙に
はねあがるものかと思われます」
アンリエッタはルイズをじっと見つめた。
「安心して、ルイズ。最早これ以上、外敵の好きにはさせません。……で、あるならば、
なおさら必要がありそうですわね」
「必要?」
アンリエッタはルイズから離れると、今度は才人を見つめた。
「使い魔さん。わたくしはもう存じています。あなたが、わたくしたちの救い主、ウルトラマンゼロなのですね」
「え!? ど、どうしてそのことを……」
「状況から推察いたしましたわ」
見るからに動揺する才人に苦笑したアンリエッタは、一つ頼む。
「すみませんが、ウルトラマンゼロのお声を聞かせてはいただけないでしょうか」
才人は困ったようにウルティメイトブレスレットに視線を落としたが、それがチカチカと
瞬いたので、ゆっくりと持ち上げた。
『アンリエッタ姫さん、こんな風に言葉を交わすのは初めてだな。その通り、才人はこの俺、
ウルトラマンゼロと一体なんだ』
ゼロが言葉を発すると、アンリエッタは王冠をかぶった頭を何度も下げ始めた。
「ありがとうございます。何度お礼を言っても足りません。本当にありがとうございます。
あなた方は英雄です」
「そ、そんな……、ゼロはともかく、俺は英雄なんて呼ばれるようなことはしてないですよ」
「いいえ……、あの地獄絵図の最中に、飛行機械で敵に立ち向かうあなたの勇姿があったからこそ、
皆が勇気づけられたのです。あなたの活躍がなければ、最悪わたくしたちは皆殺しにされ、世界は
終わっていたかもしれません」
そんな風にアンリエッタに頭を下げられ、才人は恐縮した。同時に、今まで感じたことのない
喜びを感じた。女王さまに認められる、なんて、日本にいたら考えられないことである。
ここでグレンがニッと笑って発言した。
「これでアンリエッタ姫さんも、正真正銘、秘密を共有する仲間ってわけだな!」
「こんなわたくしがウルティメイトフォースゼロの仲間などと、身に余る光栄です」
グレンに笑いかけられたアンリエッタはほんのり頬を赤らめた。
「んじゃ、ここで改めて俺たちの自己紹介をしようか」
と言うグレン。そのために、シエスタも連れてきたのだ。
彼女の腕輪のランプを通してミラーも呼ぶと、ウルティメイトフォースゼロの四人が名乗りをあげる。
「アンリエッタ姫さま、私は鏡の騎士、ミラーナイトと申します」
『私は鋼鉄の武人、ジャンボットです』
「俺が炎の戦士、グレンファイヤーな!」
『そして俺がウルトラマンゼロ! ここにはいないジャンナインと合わせて、宇宙警備隊
ウルティメイトフォースゼロ! ハルケギニアを狙う宇宙のワルをやっつけるために来たんだ!』
それからゼロたちは、自身らの素性や目的などを詳しくアンリエッタに伝えた。遂にウルティメイトフォースゼロの
確かな事実を知ったアンリエッタは、感極まって四人へ再び頭を下げた。
「そんなに遠くの世界から、わたくしたちのために……。何と感謝の気持ちを申し上げれば
よろしいのかもわかりません……」
『いいんだよ。宇宙の平和は俺たち自身の願いだ。アンリエッタ姫さんも、どうか平和の
実現のために頑張ってほしい』
「はい! わたくし、この身とこの魂を祖国トリステインとハルケギニアの大地の安寧のために
捧げる決心を改めて固めましたわ」
熱い思いを瞳にたぎらせたアンリエッタは、才人に告げる。
「それで、ウルトラマンゼロとして日々戦ってくださっているあなたにせめてものお力添えと、
ささやかながら感謝の気持ちとして、用意したものがあります。受け取ってください」
アンリエッタが差し出したのは、黒地のビロードのマントであった。小さく青い百合紋があしらわれ、
胸元には銀色の五芒星が燦然と輝いている。
それを見たルイズが、口と目を大きくあけた。
「“シュヴァリエ”のマントじゃない! ということは姫さま……サイトに“シュヴァリエ”の
称号授与を!? サイトを貴族に取り立てるおつもりですか!?」
「わッ!? す、すごいです! サイトさんが、貴族に!?」
シエスタもあっと驚いた。トリステインでは、ゲルマニアと違ってメイジでないいわゆる
『平民』が貴族の位をいただくことは、アンリエッタ以前の治世ならばあり得なかったことだ。
才人自身は、ことの重大さがよく飲み込めておらずにきょとんとしている。
「でも姫さま、どうしてサイトに“シュヴァリエ”の称号を……」
「侵略者の行いはあまりに姑息です。これから先、何の権限も持たない平民の身分では侵略者の
影を追う際に動きづらい時があるかもしれません。それ故の計らいです。この騎士のマントが
あるだけで、トリステインで行動できる範囲がぐんと広がります。戦時の彼自身の貢献も、
騎士叙勲の名誉を授けるに相応しいものです」
アンリエッタは改めて才人と向かい合う。
「お願い申し上げます、使い魔さん……いえ、サイトさん。あなたとゼロのお力を、これからも
わたくしたちハルケギニアの民にお貸しください」
才人はやっと、アンリエッタの自分への用件と、その重要さを理解した。ルイズやシエスタの
反応を見ても、ただごとではないことがはっきりわかる。
しかしルイズがアンリエッタに抗議した。
「姫さま、でもサイトを貴族にするなんて、認められませんわ!」
「どうしてかしら? トリステインで平民が貴族になる例は、既にアニエスがありますよ」
「サイトとアニエスは違います! サイトは元々トリステインの民ではありませんし、この世界の
人間でもないんですよ! そんな人間を貴族にしていいんですか?」
「彼に貴族の資格がない、とすれば、王国中の貴族から領地と官職を取り上げなければいけなくなるでしょう」
「でも、サイトはわたしの使い魔で……」
「ええ。もちろん、そのことは変わりません。貴族になれば、あなたのお手伝いもやりやすくなるはず。
違って?」
「でも、でも、わたしの“虚無”とウルトラマンゼロのことは秘密のはずじゃ……」
「もちろん、それは秘匿します。サイトさんが“ガンダールヴ”であり、ウルトラマンゼロだということは、
これまで通り一部の人間のみの機密です。彼は今までどおり“武器の扱いに長けた戦士”として振る舞って
もらいましょう」
そう言われては、もうルイズは反論できない。しかしアンリエッタは更に説得する。
「ルイズの他にも“担い手”がいるならなおさらあなたを今までとおりにしておくわけにはいきません。
名実共に騎士となり、ルイズを守っていただくことにいたします」
そうまで言われてはしかたがない。ルイズは頷いた。
「わかってくれたのね。嬉しいわ、ルイズ」
続いて才人に向けて、アンリエッタは水色の水晶があしらわれた杖を掲げた。
「略式ですが……、この場で“騎士叙勲”を行います。ひざまずいてください」
女王の威厳がこもったアンリエッタのその言葉に、才人は思わずひざまずいてしまった。
才人が目をつむり、頭を伏せると、右肩にアンリエッタの杖が乗せられた。そしてアンリエッタが
騎士叙勲の詔を唱える。
「我、トリステイン女王アンリエッタ、この者に祝福と騎士たる資格を与えんとす。高潔なる魂の
持ち主よ、比類なき勇を誇る者よ、並ぶものなき勲し者よ、始祖と我と祖国に、変わらぬ忠誠を……
いえ、他所の人間に、わたくしたちへの忠誠を誓わせるわけにはいきませんわね。詔の一部を変えます」
「姫さま」
思わずルイズが口を開いた。そんな騎士叙勲、聞いたことがない。
「いいのです。頼んでいるのはわたくしなのですから。わたくしは彼に請うて、騎士になっていただくのです」
アンリエッタは再び厳粛な顔になり、言葉を続けた。
「高潔なる魂の持ち主よ、比類なき勇を誇る者よ、並ぶものなき勲し者よ、汝の魂の在り処、
その魂が欲するところに忠誠を誓いますか?」
「……誓います」
「よろしい。始祖ブリミルの御名において、汝をシュヴァリエに叙する」
アンリエッタは、才人の右肩を二度叩き、次に左肩を二度叩いた。これで才人は騎士に叙されたのだ。
叙勲式が終わり、才人がマントを試しに羽織ると、シエスタらがわっと歓声を上げた。
「お似合いですよ、サイトさん! サイトさんがシュヴァリエなんて、夢のように素敵です!」
『うむ、なかなか様になっているな』
「マントが似合うような男前になったのも、俺の手腕だからな!」
「はいはい」
『へへッ、親父やレオのマント姿を思い出すな』
グレンたちがわいわい盛り上がる一方で、ルイズは複雑な気分だった。
才人が他ならぬアンリエッタに評価されたのが嬉しくないわけではないが、シュヴァリエなんかに
なってしまったら、今より女の子が寄ってくるのではないかなんて不安があるのだ。シエスタより
強力なライバルが現れたら、女の子としての魅力“ゼロ”の自分が勝てるんだろうか? などと
憂鬱になってしまう。
それだけではなく、才人はいずれ自分の世界に帰らなければならないはずだ。それなのに
騎士になんてなってしまって、いざ帰る時に未練が湧いたらどうするつもりなの? とも思っている。
それより何より、仮に才人がシュヴァリエとしてこの地に残ると考えて、喜びがこみ上げてきたのが
一番の理由なのであった。
そういう風にルイズが悶々としていたとき……。
ドンッ!!
「!? 何事かしら……!」
いきなり執務室の外から激しい爆音が響いてきたので、アンリエッタたちは一瞬にして
楽しげな雰囲気が吹っ飛び、緊張に包まれた。
「確かめて参ります」
早速控えていたアニエスが飛び出していこうとしたが、それより早くに銃士隊の隊員が一人、
執務室に駆け込んできた。
「失礼いたします! 非常事態です!」
「何が起きた!」
アニエスの問いに、隊員は早口に答える。
「王宮の一画で爆発が発生しました! 何者かに爆発物を仕掛けられたものと思われます!」
「爆発物だと……!?」
「まさか、また侵略者の破壊工作かしら……」
アンリエッタがつぶやき、才人たちは一瞬互いに目を合わせる。
刹那、才人は殺気を感じた!
「ッ!」
才人の身体は、考えるよりも早く、デルフリンガーを抜いていた。反射神経のみで動いていた。
グレンの指導の賜物だ。
そしてデルフリンガーで、電光のような速度で斬りかかってきた銃士隊員の剣を受け止めていた。
「えッ!?」
まさかの銃士隊員が才人を攻撃したので、ルイズたちは衝撃を覚えた。
攻撃の瞬間に能面のように生気のない表情となった銃士隊員は、全く動じずに二撃目を
仕掛けようとしたが、才人の切り上げが彼女の剣を弾き飛ばした。それでもなお才人に
襲いかかろうとする銃士隊員を背後からアニエスとグレンが捕まえ、床に抑えつける。
「貴様、これは何のつもりだ! もしくは侵略者の変装か!?」
アニエスの怒号に銃士隊員は何も答えず、二人を振り払おうとする。恐ろしい力であったが、
グレンの怪力により抑え込むことが出来た。
「すげぇ力だ……! 人間のパワーじゃねぇぜ!」
「ですが、星人の変身という訳でもないようです」
ミラーのひと言に同意するジャンボット。彼はセンサーで銃士隊員の状態を突き止めた。
『うむ。彼女は生身の肉体ではなくなっている! 何者かにサイボーグにされ、操られているのだろう』
『フッフッフッフッフッ……その通りだ』
突如として第三者の声が響き、執務室に宇宙人がテレポートで侵入してきた! 全身を甲冑で
覆っているように見えるが、正真正銘の生身である。
『ボーグ星人かッ!』
ゼロの指摘を肯定する宇宙人……ボーグ星人。
『如何にも、私は元宇宙人連合の一人、ボーグ星人。ウルティメイトフォースゼロ、貴様らを
抹殺してこの星を我々のものとする!』
ボーグ星人は堂々と宣戦布告する。才人がシュヴァリエに叙勲されてすぐに、新たな敵の
攻撃が始まったのだ!
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#navi(ウルトラマンゼロの使い魔)
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