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マジシャン ザ ルイズ (2)ウルザの怒り
ルイズ達がフーケを捕らえ、『禁断の剣』を取り返してから、幾日かが過ぎた。
朝。
ルイズは足元でせこせこと動き回るものに手伝われながら、着替えを済ませていた。
最近では、朝はウルザに起こされ、その後は彼が召喚したものに手伝われながら身支度を済ませるのが日課となっていた。
その間、ウルザは部屋を出ていく。次に合流するのは授業の時だ。
なお、ウルザが呼び出したこれは「さまようもの」というらしい。
ひょろひょろとした青い体、頭には傘のような帽子を被っている、よく見ると可愛い、のかもしれない。
当のウルザはというと、裏庭にその姿があった。
「ミスタ・ウルザ!遂に、遂に完成しましたぞっ!」
「見事だ…短期間に、これ程までに理論を実践に応用出来るとは…ミスタ・コルベール、君の熱心さは驚嘆に値する!」
ウルザの横にはコルベール。
朝、ルイズを起床させた後はコルベールの研究室で過ごし、そのついでに朝食を済ませるのが最近の通例であった。
そして、今は二人の前には縦横10メイルほどもあろうかという人造物が鎮座している。
ドミナリアのウィザードが見たなら気付いたであろう、それは彼らが「アーティファクト」と呼んでいるものであった。
ウルザがコルベール、そしてオスマンに正体を明かして以来、コルベールはウルザからアーティファクト創造についてのレクチャーを受けていた。
元々、メイジでありながら魔法を機械に応用することを考えていたコルベールである。
ウルザのアーティファクト製作者、『工匠』としての技能に興味を持ったコルベールが、ウルザに教えを請うたのは必然である。
加えてコルベールの魔法に拘らない柔軟な発想は、教える側のウルザからしても優秀な生徒としての条件をクリアしている。
こうして、二人は時間の許す限りアーティファクト創造に打ち込んでいるのであった。
食堂、すでに生徒達の昼食の時間は終わっており、遅い朝食をとる職員の姿が数名あるのみ。
そこで二人は、ささやかな祝杯をあげていた。
勿論、先ほどコルベールが完成させたアーティファクトに関してである。
あれはアーティファクト基礎理論を学んでいたコルベールが、始めて主導的に製作したアーティファクトなのである。
これまでの、手練として作り出したカラクタとは違う、一つの目的のために作られた機械。
それを祝っての祝杯であった。
コルベールは興奮したように矢継ぎ早にウルザに話しかける。
共にあるウルザとしても、悪い気分ではない。
彼はこれまでにも弟子を取ったことはある。しかし、自身の教授で才能が開花していくのを眼にするのはやはり良いものである。
コルベールは決して天才的ではない、しかし、それを補って余りある情熱。
これほどに教えがいのある生徒は、ジョイラ以来である。
コルベールの質問に対して、上機嫌に答えるウルザ。
普段からは考えられないほどに饒舌である。
しかし…
――――――えてして不幸な事故は、何度も起こるものである。
座っていたウルザに、頭から大量の水がかけられた。
「も、申し訳ございません!」
果たして、このときウルザがどのような顔をしていたか、それは正面に座るコルベールしか分からない。
「最強の系統は知っているかね?ミス・ツェルプストー」
「『虚無』じゃないんですか?」
「伝説の話をしているわけではない。現実的な答えを聞いているんだ」
教室は今、風系統の授業の時間である。
教壇に立っているのは『疾風』のギトー。
長い黒髪に、漆黒のマントを纏ったその姿は、生徒達から『悪役みたい』と評されている。
更に、本人の冷たい雰囲気が、余計に生徒達に不人気の原因でもある。
「『火』に決まっていますわ。ミスタ・ギトー」
「ほほう、どうしてそう思うね?」
「すべてを燃やしつくせるのは、炎と情熱。そうじゃございませんこと?」
キュルケの回答に、ギトーはやれやれと肩を竦める。
まるで蟷螂が威嚇をしたような印象。
「残念ながらそうではない。試しに、この私にきみの得意な『火』の魔法をぶつけてきたまえ」
流石にこの発言にはぎょっとするキュルケ。
「どうしたね?君は確か『火』系統が得意なのではなかったかな?」
「火傷じゃ、…すみませんわよ?」
しかし、その時……教室の扉がガラッと開き、陶面のように表情を消し去ったウルザが現れた。
「!、ミスタ・ギトー、あたしのような未熟者では先生に敵いませんわ。
変わりにミスタ・ウルザにやって頂きたいのですがどうでしょう?」
キュルケのその発言に、扉の前のウルザに視線が集まる。変わらず無表情のウルザ。
(こいつが噂の使い魔メイジか。ゼロの小娘が呼んだ癖に大きな顔をしてるそうじゃないか………
ここで力関係ってものをはっきりさせてやるのもいいか)
「よかろう、ミスタ・ウルザ。私に『火』の魔法を打ち込んでください、皆もそれでよろしいな」
無表情のウルザが無言のまま杖を振るう。
するとその眼前に1メイル以上あろうかという火球が生まれ出でる。
それを見た生徒達が、一糸の乱れも無く机の下に避難した。
轟音を轟かせた火球が、猛然とギトーへと突進していく。
唸りをあげて自分めがけて飛んでくる火の玉を避ける仕草も見せずに、ギトーは腰から杖を引き抜き、呪文を唱えた。
刹那、烈風が舞い上がる。
次の瞬間、爆炎がミスタ・ギトーへと直撃した。
打ち消すことも、軽減することも許さずに。
「少し、やりすぎたかな?」「…少し?」
―――ウルザとルイズ
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マジシャン ザ ルイズ (2)ウルザの怒り
ルイズ達がフーケを捕らえ、『禁断の剣』を取り返してから、幾日かが過ぎた。
朝。
ルイズは足元でせこせこと動き回るものに手伝われながら、着替えを済ませていた。
最近では、朝はウルザに起こされ、その後は彼が召喚したものに手伝われながら身支度を済ませるのが日課となっていた。
その間、ウルザは部屋を出ていく。次に合流するのは授業の時だ。
なお、ウルザが呼び出したこれは「さまようもの」というらしい。
ひょろひょろとした青い体、頭には傘のような帽子を被っている、よく見ると可愛い、のかもしれない。
当のウルザはというと、裏庭にその姿があった。
「ミスタ・ウルザ!遂に、遂に完成しましたぞっ!」
「見事だ…短期間に、これ程までに理論を実践に応用出来るとは…ミスタ・コルベール、君の熱心さは驚嘆に値する!」
ウルザの横にはコルベール。
朝、ルイズを起床させた後はコルベールの研究室で過ごし、そのついでに朝食を済ませるのが最近の通例であった。
そして、今は二人の前には縦横10メイルほどもあろうかという人造物が鎮座している。
ドミナリアのウィザードが見たなら気付いたであろう、それは彼らが「アーティファクト」と呼んでいるものであった。
ウルザがコルベール、そしてオスマンに正体を明かして以来、コルベールはウルザからアーティファクト創造についてのレクチャーを受けていた。
元々、メイジでありながら魔法を機械に応用することを考えていたコルベールである。
ウルザのアーティファクト製作者、『工匠』としての技能に興味を持ったコルベールが、ウルザに教えを請うたのは必然である。
加えてコルベールの魔法に拘らない柔軟な発想は、教える側のウルザからしても優秀な生徒としての条件をクリアしている。
こうして、二人は時間の許す限りアーティファクト創造に打ち込んでいるのであった。
食堂、すでに生徒達の昼食の時間は終わっており、遅い朝食をとる職員の姿が数名あるのみ。
そこで二人は、ささやかな祝杯をあげていた。
勿論、先ほどコルベールが完成させたアーティファクトに関してである。
あれはアーティファクト基礎理論を学んでいたコルベールが、始めて主導的に製作したアーティファクトなのである。
これまでの、手練として作り出したカラクタとは違う、一つの目的のために作られた機械。
それを祝っての祝杯であった。
コルベールは興奮したように矢継ぎ早にウルザに話しかける。
共にあるウルザとしても、悪い気分ではない。
彼はこれまでにも弟子を取ったことはある。しかし、自身の教授で才能が開花していくのを眼にするのはやはり良いものである。
コルベールは決して天才的ではない、しかし、それを補って余りある情熱。
これほどに教えがいのある生徒は、ジョイラ以来である。
コルベールの質問に対して、上機嫌に答えるウルザ。
普段からは考えられないほどに饒舌である。
しかし…
――――――えてして不幸な事故は、何度も起こるものである。
座っていたウルザに、頭から大量の水がかけられた。
「も、申し訳ございません!」
果たして、このときウルザがどのような顔をしていたか、それは正面に座るコルベールしか分からない。
「最強の系統は知っているかね?ミス・ツェルプストー」
「『虚無』じゃないんですか?」
「伝説の話をしているわけではない。現実的な答えを聞いているんだ」
教室は今、風系統の授業の時間である。
教壇に立っているのは『疾風』のギトー。
長い黒髪に、漆黒のマントを纏ったその姿は、生徒達から『悪役みたい』と評されている。
更に、本人の冷たい雰囲気が、余計に生徒達に不人気の原因でもある。
「『火』に決まっていますわ。ミスタ・ギトー」
「ほほう、どうしてそう思うね?」
「すべてを燃やしつくせるのは、炎と情熱。そうじゃございませんこと?」
キュルケの回答に、ギトーはやれやれと肩を竦める。
まるで蟷螂が威嚇をしたような印象。
「残念ながらそうではない。試しに、この私にきみの得意な『火』の魔法をぶつけてきたまえ」
流石にこの発言にはぎょっとするキュルケ。
「どうしたね?君は確か『火』系統が得意なのではなかったかな?」
「火傷じゃ、…すみませんわよ?」
しかし、その時……教室の扉がガラッと開き、陶面のように表情を消し去ったウルザが現れた。
「!、ミスタ・ギトー、あたしのような未熟者では先生に敵いませんわ。
代わりにミスタ・ウルザにやって頂きたいのですがどうでしょう?」
キュルケのその発言に、扉の前のウルザに視線が集まる。変わらず無表情のウルザ。
(こいつが噂の使い魔メイジか。ゼロの小娘が呼んだ癖に大きな顔をしてるそうじゃないか………
ここで力関係ってものをはっきりさせてやるのもいいか)
「よかろう、ミスタ・ウルザ。私に『火』の魔法を打ち込んでください、皆もそれでよろしいな」
無表情のウルザが無言のまま杖を振るう。
するとその眼前に1メイル以上あろうかという火球が生まれ出でる。
それを見た生徒達が、一糸の乱れも無く机の下に避難した。
轟音を轟かせた火球が、猛然とギトーへと突進していく。
唸りをあげて自分めがけて飛んでくる火の玉を避ける仕草も見せずに、ギトーは腰から杖を引き抜き、呪文を唱えた。
刹那、烈風が舞い上がる。
次の瞬間、爆炎がミスタ・ギトーへと直撃した。
打ち消すことも、軽減することも許さずに。
「少し、やりすぎたかな?」「…少し?」
―――ウルザとルイズ
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