「斬魔の使い魔04」(2008/03/10 (月) 22:54:15) の最新版変更点
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学院と言うだけあって、無論、授業もある。
包帯の数が増えた九郎は、ルイズに連れられて教室に入った。
大学の講義室のような造りに、一瞬、ミスカトニック大学に来てしまったのかと言う錯覚に陥る。
二人の姿を見かけた生徒からクスクスと笑い声が起こる。
明らかにこちらを見て笑っている。
ルイズは我冠せずといった様子で歩いていく。
微妙に肩が震えているところから、我慢しているのが見て取れる。
(なんだかなあ……)
こういうのは嫌いだ。何とかしてやりたいと思うが…
明らかに自分のせいで笑われている。
他の生徒たちが連れている使い魔は、幻獣や動物など多種多様な生物。
人間は九郎ただ一人。
どうすることもできないもどかしさを感じた。
ルイズが席の一つに腰をかけた。
その隣で九郎も席に着く。ぎろりと睨むルイズ。
「そこはメイジの席。使い魔は床に座るの」
「いやぁ、私の身体では無理があると思いますですよ、はい」
九郎をじろりとねめつける。
確かに九郎は意外と体格がいい。ただでさえ狭い机と机の間に座るのは無理があるだろう。
「しょうがないわね。特別よ」
「はい、ありがとうございますぅ」
にこやかに答える九郎を不思議そうな目で見るルイズ。
「何か随分と楽しそうね」
「え? だって学校なんて久しぶりだから、懐かしくてつい」
「ふうん、貴方の故郷にも学校なんてあるんだ?」
「ああ、ミスカトニック大学っていって、でっかい時計塔が特徴なところさ」
「ふうん、聞かない名前ね。よっぽどの田舎の学校なのね」
(まあ、別の世界の大学だからな……)
九郎は思ったが口には出さない。
混乱を避けるために異世界から来たと言う話はしていない。しても、信じないだろうが。
と、急にルイズの表情が不機嫌になり、
「またタメ口を聞いた! ご主人様には敬語を使いなさい!」
「――えっ? あ、はい、分かりましたぁ!」
そうこうしているうちに扉が開いて、教師のシュヴルーズが入ってきた。
子供の絵本に出てくる、優しい魔法使いのおばさんという感じの女性だ。
教室を見回すと優しく微笑み、
「どうやら皆さん、使い魔の召喚には成功したようですね。おや、ミス・ヴァリエールは変わった使い魔を召喚したようですね」
教室が笑いに包まれる。
「ゼロのルイズ! 召喚できないからって、その辺歩いていた平民を連れてくるなよ!」
「違うわよ! ちゃんと召喚したわよ!」
「嘘つくな! サモン・サーヴァントができなかったんだろ!」
さらにクスクスと嘲笑が漏れる。
何事か言い返そうとしたとき、笑っている生徒の口に赤土の粘土が押し付けられた。
教壇ではシュヴルーズが杖をふるっていた。
「お友達を馬鹿にしてはいけません。貴方達は、その格好で授業を受けなさい」
教室が静まり返る。
九郎はシュヴルーズを何ともいえない表情で見た。
最初に余計なことを言ったのはそっちでは、と思ったが、口には出さなかった。
この世界では異邦人である九郎。そこまで深く関わるには、まだ日が浅すぎた。
コホンと咳払いをして、シュヴルーズの授業が始まった。
先ほどの騒動はさておき、九郎にとって異世界の魔法の授業と言うのは興味を惹かれるものだった。
元の世界との相違。似ている部分、違っている部分。
色々と学ぼうと決めていた。
いつか来るべきマスターテリオンとの闘いに備えて。
魔法の四大系統、失われた五つ目の系統『虚無』、メイジ各々の属性。
メイジのレベルを決める呼び名『ドット』『ライン』『トライアングル』『スクウェア』。
とりあえずこれらがこの世界の魔法形態の初歩的なことらしい。
そして、シュヴルーズは土系統のトライアングルとのこと。
九郎の世界でも、魔術師の位階を表すための呼び名があった。
『アデプタス・イグゼンプタス』『アデプタス・メジャー』『アデプタス・マイナー』など。
この世界のスクウェアはどれに相当するのか?
学ぶべきことは多い。
授業は実演になった。
シュヴルーズが石ころを光る金属へと変えた。
キュルケが身を乗り出した。
「ゴゴ、ゴールドですか!? ミセス・シュヴルーズ」
「いいえ違います、これはただの真鍮です。ゴールドを錬金できるのはスクウェアクラスのメイジだけです。
私はただの……トライアングルですから」
その様子を見ていた九郎は、ふと思いたち、ルイズに尋ねる。
「あのぉ、ご主人様のレベルは何でしょうか?」
「……なんでそんなこと知りたいわけ?」
凄まじく冷たい視線を向けてくるルイズ。
やべ。何か地雷を踏んだ?
「いやあの……使い魔として知っておいた方がいいかなあと……」
「いちいち知る必要はないの。そんなこと気にしないでよ」
「は、はい……」
何故怒っているのか理解できず押し黙る九郎。
「ミス・ヴァリエール! 授業中の私語は慎みなさい!」
「は、はい! すいません!」
シュヴルーズに見咎められた。
貴方のせいよと言わんばかりにこちらを睨みつけるルイズ。
その様子を見ていたシュヴルーズがさらに続ける。
「使い魔とお喋りしている暇があるのなら貴方にやってもらいましょう」
「――えっ? 私ですか?」
「危険です!」
キュルケが立ち上がり叫んだ。顔面が蒼白だ。
「危険? どうしてですか?」
「先生はルイズを教えるのは初めてですよね」
「ええ、でも彼女が努力家だと言うことは聞いています。ミス・ヴァリエール、気にしないでやってごらんなさい。
失敗を恐れていては何もできませんよ」
促すシュヴルーズ。
口々に静止の言葉を口にする生徒。
訳が分からず目を丸くしている九郎。
そして、ルイズは、
「やります」
立ち上がり、教壇まで降りた。
その間に、生徒達は机の下に隠れるなどをし、身を隠した。
シュヴルーズの隣に来ると、教卓に置いてある石ころに向かって杖を構えた。
「ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を、強く心に思い浮かべるのです」
「……はい!」
(大丈夫……私はルイズ。やれば、できる!)
ルイズは目を閉じ、短くルーンを唱え――
――!?
突然、身体の中から魔力があふれ出す感覚が湧き起こった。
その感覚を放出するように素早く杖を振るう。
次に起こる惨劇を予想し、身構える生徒達。
石ころは光り――
「素晴らしいです! ミス・ヴァリエール!」
教室にシュヴルーズの賞賛の声が響いた。
何事かと身を起こす生徒達の目に映ったのは、笑顔のシュヴルーズ、驚いた顔で固まっているルイズ、そして――
――銅へと変化した石ころだった。
『工エエェェ(´д`)ェェエエ工』
生徒達の驚愕の声が一斉にこだました。
「嘘だ!」
「ゼロのルイズが成功した!?」
「夢だ! ええい! 早く覚めろ!」
呆気にとられる者。
頭を抱える者。
頬をつねる者。
多種多様な行動を取る生徒達。
シュヴルーズの制止の声も届かない。
そんな中、当のルイズはと言うと、自分が錬金させた銅を見ながら、未だ呆然としていた。
まだ頭の中で、目の前で起こった現実を理解できずにいる。
しかしそれも束の間。
目の前の現実を理解すると、左手は可愛く握りこぶしを作り、右手は持っていた杖を強く握り締め、その口元には笑みが浮かぶ。
そして、
「やった―――――っっ!!」
文字通り、飛び上がらんばかりに喜んだ。
そのまま走り出しかないほどの様子だ。
その様子を複雑な目で見ているものが二人いた。
豊満な胸を反らして、大きく溜息をつくキュルケ。
「あーあ、とうとう成功させちゃったか。つまんないのー」
そして、誰にも聞こえないほどの小さい声で呟く。
「ま、とりあえずはオメデト、ルイズ」
そして、もう一人。大十字九郎。
観察するような、睨むような、そんな目でルイズを見ている。
(ルイズが錬金をした瞬間に感じたのは……)
それは、とても懐かしい気配。
それは、とても力強い気配。
それは――
(何で、あいつから……?)
彼のパートナー、アル・アジフの気配。
#navi(斬魔の使い魔)
学院と言うだけあって、無論、授業もある。
包帯の数が増えた九郎は、ルイズに連れられて教室に入った。
大学の講義室のような造りに、一瞬、ミスカトニック大学に来てしまったのかと言う錯覚に陥る。
二人の姿を見かけた生徒からクスクスと笑い声が起こる。
明らかにこちらを見て笑っている。
ルイズは我冠せずといった様子で歩いていく。
微妙に肩が震えているところから、我慢しているのが見て取れる。
(なんだかなあ……)
こういうのは嫌いだ。何とかしてやりたいと思うが…
明らかに自分のせいで笑われている。
他の生徒たちが連れている使い魔は、幻獣や動物など多種多様な生物。
人間は九郎ただ一人。
どうすることもできないもどかしさを感じた。
ルイズが席の一つに腰をかけた。
その隣で九郎も席に着く。ぎろりと睨むルイズ。
「そこはメイジの席。使い魔は床に座るの」
「いやぁ、私の身体では無理があると思いますですよ、はい」
九郎をじろりとねめつける。
確かに九郎は意外と体格がいい。ただでさえ狭い机と机の間に座るのは無理があるだろう。
「しょうがないわね。特別よ」
「はい、ありがとうございますぅ」
にこやかに答える九郎を不思議そうな目で見るルイズ。
「何か随分と楽しそうね」
「え? だって学校なんて久しぶりだから、懐かしくてつい」
「ふうん、貴方の故郷にも学校なんてあるんだ?」
「ああ、ミスカトニック大学っていって、でっかい時計塔が特徴なところさ」
「ふうん、聞かない名前ね。よっぽどの田舎の学校なのね」
(まあ、別の世界の大学だからな……)
九郎は思ったが口には出さない。
混乱を避けるために異世界から来たと言う話はしていない。しても、信じないだろうが。
と、急にルイズの表情が不機嫌になり、
「またタメ口を聞いた! ご主人様には敬語を使いなさい!」
「――えっ? あ、はい、分かりましたぁ!」
そうこうしているうちに扉が開いて、教師のシュヴルーズが入ってきた。
子供の絵本に出てくる、優しい魔法使いのおばさんという感じの女性だ。
教室を見回すと優しく微笑み、
「どうやら皆さん、使い魔の召喚には成功したようですね。おや、ミス・ヴァリエールは変わった使い魔を召喚したようですね」
教室が笑いに包まれる。
「ゼロのルイズ! 召喚できないからって、その辺歩いていた平民を連れてくるなよ!」
「違うわよ! ちゃんと召喚したわよ!」
「嘘つくな! サモン・サーヴァントができなかったんだろ!」
さらにクスクスと嘲笑が漏れる。
何事か言い返そうとしたとき、笑っている生徒の口に赤土の粘土が押し付けられた。
教壇ではシュヴルーズが杖をふるっていた。
「お友達を馬鹿にしてはいけません。貴方達は、その格好で授業を受けなさい」
教室が静まり返る。
九郎はシュヴルーズを何ともいえない表情で見た。
最初に余計なことを言ったのはそっちでは、と思ったが、口には出さなかった。
この世界では異邦人である九郎。そこまで深く関わるには、まだ日が浅すぎた。
コホンと咳払いをして、シュヴルーズの授業が始まった。
先ほどの騒動はさておき、九郎にとって異世界の魔法の授業と言うのは興味を惹かれるものだった。
元の世界との相違。似ている部分、違っている部分。
色々と学ぼうと決めていた。
いつか来るべきマスターテリオンとの闘いに備えて。
魔法の四大系統、失われた五つ目の系統『虚無』、メイジ各々の属性。
メイジのレベルを決める呼び名『ドット』『ライン』『トライアングル』『スクウェア』。
とりあえずこれらがこの世界の魔法形態の初歩的なことらしい。
そして、シュヴルーズは土系統のトライアングルとのこと。
九郎の世界でも、魔術師の位階を表すための呼び名があった。
『アデプタス・イグゼンプタス』『アデプタス・メジャー』『アデプタス・マイナー』など。
この世界のスクウェアはどれに相当するのか?
学ぶべきことは多い。
授業は実演になった。
シュヴルーズが石ころを光る金属へと変えた。
キュルケが身を乗り出した。
「ゴゴ、ゴールドですか!? ミセス・シュヴルーズ」
「いいえ違います、これはただの真鍮です。ゴールドを錬金できるのはスクウェアクラスのメイジだけです。
私はただの……トライアングルですから」
その様子を見ていた九郎は、ふと思いたち、ルイズに尋ねる。
「あのぉ、ご主人様のレベルは何でしょうか?」
「……なんでそんなこと知りたいわけ?」
凄まじく冷たい視線を向けてくるルイズ。
やべ。何か地雷を踏んだ?
「いやあの……使い魔として知っておいた方がいいかなあと……」
「いちいち知る必要はないの。そんなこと気にしないでよ」
「は、はい……」
何故怒っているのか理解できず押し黙る九郎。
「ミス・ヴァリエール! 授業中の私語は慎みなさい!」
「は、はい! すいません!」
シュヴルーズに見咎められた。
貴方のせいよと言わんばかりにこちらを睨みつけるルイズ。
その様子を見ていたシュヴルーズがさらに続ける。
「使い魔とお喋りしている暇があるのなら貴方にやってもらいましょう」
「――えっ? 私ですか?」
「危険です!」
キュルケが立ち上がり叫んだ。顔面が蒼白だ。
「危険? どうしてですか?」
「先生はルイズを教えるのは初めてですよね」
「ええ、でも彼女が努力家だと言うことは聞いています。ミス・ヴァリエール、気にしないでやってごらんなさい。
失敗を恐れていては何もできませんよ」
促すシュヴルーズ。
口々に静止の言葉を口にする生徒。
訳が分からず目を丸くしている九郎。
そして、ルイズは、
「やります」
立ち上がり、教壇まで降りた。
その間に、生徒達は机の下に隠れるなどをし、身を隠した。
シュヴルーズの隣に来ると、教卓に置いてある石ころに向かって杖を構えた。
「ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を、強く心に思い浮かべるのです」
「……はい!」
(大丈夫……私はルイズ。やれば、できる!)
ルイズは目を閉じ、短くルーンを唱え――
――!?
突然、身体の中から魔力があふれ出す感覚が湧き起こった。
その感覚を放出するように素早く杖を振るう。
次に起こる惨劇を予想し、身構える生徒達。
石ころは光り――
「素晴らしいです! ミス・ヴァリエール!」
教室にシュヴルーズの賞賛の声が響いた。
何事かと身を起こす生徒達の目に映ったのは、笑顔のシュヴルーズ、驚いた顔で固まっているルイズ、そして――
――銅へと変化した石ころだった。
『工エエェェ(´д`)ェェエエ工』
生徒達の驚愕の声が一斉にこだました。
「嘘だ!」
「ゼロのルイズが成功した!?」
「夢だ! ええい! 早く覚めろ!」
呆気にとられる者。
頭を抱える者。
頬をつねる者。
多種多様な行動を取る生徒達。
シュヴルーズの制止の声も届かない。
そんな中、当のルイズはと言うと、自分が錬金させた銅を見ながら、未だ呆然としていた。
まだ頭の中で、目の前で起こった現実を理解できずにいる。
しかしそれも束の間。
目の前の現実を理解すると、左手は可愛く握りこぶしを作り、右手は持っていた杖を強く握り締め、その口元には笑みが浮かぶ。
そして、
「やった―――――っっ!!」
文字通り、飛び上がらんばかりに喜んだ。
そのまま走り出しかないほどの様子だ。
その様子を複雑な目で見ているものが二人いた。
豊満な胸を反らして、大きく溜息をつくキュルケ。
「あーあ、とうとう成功させちゃったか。つまんないのー」
そして、誰にも聞こえないほどの小さい声で呟く。
「ま、とりあえずはオメデト、ルイズ」
そして、もう一人。大十字九郎。
観察するような、睨むような、そんな目でルイズを見ている。
(ルイズが錬金をした瞬間に感じたのは……)
それは、とても懐かしい気配。
それは、とても力強い気配。
それは――
(何で、あいつから……?)
彼のパートナー、アル・アジフの気配。
#navi(斬魔の使い魔)
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