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ウルトラマンゼロの使い魔
幕間「ウルティメイトフォースゼロの旅立ち」
帝国機兵レギオノイド(β)
友好珍獣ピグモン 登場
未だ正体の知れない邪悪な何者かの影響によって、怪獣と侵略者の脅威に見舞われるようになったハルケギニア。
それを護りに、遠くの別宇宙からはるばるやってきた光の戦士、ウルトラマンゼロ。そしてアルビオン大陸の戦いで、
彼の仲間である鏡の騎士、ミラーナイトがハルケギニアの地に降り立った。そう、ハルケギニアにやってきたのは
ゼロだけでない。彼が結成した、惑星エスメラルダの存在するアナザースペースを守護する宇宙警備隊、
ウルティメイトフォースゼロの面々も一緒であったのだ。
それではここで余談として、ウルティメイトフォースゼロがハルケギニアに来訪する直前のことを語ろう。
『……へッ。久々に団体のお出ましだな』
アナザースペースの一画の小惑星群。その小惑星の一つの上に仁王立ちしているのは、
我らがヒーロー、ウルトラマンゼロ。
そして周囲の小惑星群の上に大勢で陣を張っているのは、両腕がガンポッドになっている
量産型の戦闘ロボット。かつてアナザースペースを震撼させた悪の帝国を築いたベリアルが、
侵略用の兵士として造らせていたレギオノイドの、宇宙戦用タイプだ。
ベリアルの大帝国は、ゼロたちの活躍により既に滅んだ。しかし、その軍団が全滅した訳ではなかった。
今ゼロを取り囲んでいるような残党がしぶとく生き残っていて、ベリアルの怨念に突き動かされるかのように
各所で被害を出し続けているのだ。ウルティメイトフォースゼロは主に、その残党を片づけることで
アナザースペースの平和を取り戻す活動をしている。
『ハッ。毎度毎度数頼みの戦いしかしねぇな、こいつら。量産型だからって学習能力が全くない連中だぜ』
さて、その残党に囲まれているゼロなのだが、孤立無援の状況とは裏腹に彼には肩をすくめる余裕すらあった。
それに反応したかどうかは定かではないが、レギオノイドの群れはギギギと駆動音を鳴らしつつ、
ゼロに向けてガンポッドより光線の雨を降り注がせた!
『ハァッ!』
だがゼロは命中の直前で、上へ向けて飛び上がって全弾を回避した。そしてすかさず
ゼロスラッガーを両方とも投げ飛ばす。
『ゼアッ!』
超高速で、複雑な軌道を描くゼロスラッガーは、レギオノイドを次々と切り裂いて爆散させる。
『シャッ!』
更に額のランプからエメリウムスラッシュを放ち、これもレギオノイドたちを纏めて吹き飛ばした。
『ゼアアァァァァァァッ!』
とどめのワイドゼロショットを周囲に振り撒き、残った機体を全て爆破する。
ウルトラマンゼロは、すさまじい力を持った強敵との激闘をくぐり抜けてきた歴戦の戦士。
たとえ束になって掛かってこようとも、今更量産型のロボット兵士などに後れを取ったりはしないのだ。
『こいつでフィニッシュだッ!』
ワイドゼロショットが最後の一機を爆破すると、目に見える範囲でレギオノイドはいなくなる。
念のために辺りを探っても、伏兵の気配は感じられなかった。
『よし、この辺に潜んでる奴らは全員片づけたみたいだな。……最近はベリアル帝国の残党も
めっきり見かけなくなったな。ま、もう随分な数を倒したんだし、残り少ないんだろうな』
周囲の状況と最近のアナザースペースの環境をそう判断したゼロは、今回のパトロールをこれで終了し、
ウルティメイトフォースゼロの基地へ帰投することにした。
アナザースペースに浮かぶ、一見すると緑色の結晶の芸術品と見間違えるような、巨大な建築物。
それがウルティメイトフォースゼロの本拠地、マイティベースだ。惑星エスメラルダの技術協力により
築かれたもので、外観や内装はウルトラの星の宇宙警備隊本部を参考にしている。
『……よっと! 今帰ったぜ』
「キュイッ! キュイッ!」
マイティベースに帰還したゼロは、40m級の巨体からすると豆粒のような大きさの赤い生命体に出迎えられた。
『おッ、ピグモン! 留守番ご苦労!』
「キュウッ!」
その生き物は、友好珍獣ピグモン。地球では多々良島で初めて存在が観測された、攻撃性を持たない小型の怪獣だ。
元々は死んだ怪獣たちの魂が漂う怪獣墓場で、バット星人の誤算により蘇生された個体なのだが、紆余曲折あって
このマイティベースにやってきてゼロたちと同居している。ちなみに名前をつけようとしたことがあったが、
「ピーちゃん」だの「モロボシくん」だのいい名前が思い浮かばず、結局はみんなが好きに呼ぶようになっていた。
『ピグモン、みんなは帰ってるか?』
「キュウ」
ゼロの質問にピグモンがうなずくと、そのすぐ後にゼロの側に、彼と同等の背丈の赤い巨人が飛び出てきた。
『おーうゼロぉ! 随分と遅かったじゃねぇか』
『グレンファイヤー!』
しゃべりながら赤い巨人が髪をかき上げるような仕草をすると、彼の炎を象った頭部から
本物の炎が一瞬燃え上がった。
この巨人は、炎の戦士グレンファイヤー。肩書きと今の行動から見て取れる通り、熱く燃える
炎の力を宿した男である。性格も誰よりも活発な熱血漢だが、お調子者な一面もある。
『今日は久しぶりに集団の相手をしててな』
『なーるほどねぇ。けどそれにしたって時間掛けすぎだぜ? 俺もベリアルの残したオモチャを
纏めてぶっ飛ばしてたが、帰ったのは誰よりも早かったぜ!』
ゼロに対して豪語したグレンファイヤーだが、それに異を唱える者がこの場に現れた。
『グレンファイヤー、虚偽の報告は良くない』
『んなッ!?』
グレンファイヤーを諌めたのは、腰部のバックル型の部品と赤と銀がコントラストをなす
配色が目を引く巨大ロボット。その名もジャンナインである。
ウルティメイトフォースゼロの中では、ジャンナインだけは初期メンバーではない。
ビートスター事件の際に、最初は敵としてゼロたちと戦ったが、後に仲間となった。
そしてその機体の基礎部分には、エスメラルダのロボットであるジャンボットから解析された
技術が使われたため、ジャンボットの弟と見なされている。
『本日の活動で君は、敵との交戦記録が存在しない。よって今の発言は明らかな誤りだ。
訂正を行うべきだと判断する』
淡々と語るジャンナインに、興を削がれたグレンファイヤーはため息を吐く。
『あのねぇナイン……今のは会話を盛り上げるためのジョークって奴だよ。分かる?
それにマジになられても困るぜ』
やれやれと首を振るグレンファイヤーだが、ジャンナインは立ちすくんでいる。
『理解不能。ジョークというものが、適切な報告よりも優先すべきものとは考えられない』
その言葉に、グレンファイヤーは更に深いため息を吐いた。
『相変わらず堅苦しい奴だなぁお前……。頭固いとこまで兄貴に似るんじゃないよ全く……』
『無礼者! その言葉、私への侮辱と受け取るぞ!』
グレンファイヤーのひと言で、声を荒げる者が現れた。ジャンナインと同じ巨大ロボットであり、
彼が上で触れたジャンボットだ。
『それに今回の件は貴様の方が悪いのだ! 任務の報告は正確に! 虚偽を挟むなど以ての外だ』
ジャンボットに叱られるグレンファイヤーだが、まるで反省の色が見えなかった。
『は~あ。また始まったよ。これだから焼き鳥は』
『無礼者! 私の名前はジャンボットだと、何度言えば覚えるのだ!』
グレンファイヤーは宇宙船ジャンバードへの変形機能を持つジャンボットが、ジャンバードとなっている時に
初めて出会ったので、そのために「焼き鳥」というあだ名をつけている。しかしジャンボットはそれを気に入っておらず、
呼ばれる度に憤慨するというのが既に定番のやり取りになっている。
『全く、二人ともいつもいつも飽きませんね……』
ギャアギャア騒ぐグレンファイヤーとジャンボットの様子に、最後に場にやってきた
緑色の巨人が呆れ返った。ミラーナイトだ。
リーダーのウルトラマンゼロを始めとして、グレンファイヤー、ジャンナイン、ジャンボット、ミラーナイト。
以上の五人が、アナザースペースの平和を守るウルティメイトフォースゼロのメンバーである。
さて、マイティベースに住まう者たちがそろったところで、グレンファイヤーがこんなことを話題に出す。
『しっかしホント、最近めっきりとベリアル軍の残党どもを見なくなったよなぁ。今日ゼロが倒したので、
もう全部倒したんじゃねぇか?』
『そう判断するのは早計だろう。……とはいえ、残党の頭数も有限。私たちがこれまで倒してきた数を合計すると、
もう推測されるベリアル軍の生き残りの総計に迫っている。全滅間際というのはあながち間違いではないだろう』
その意見にはジャンボットも同意する。
『だろぉ? そんで俺たちは交戦の回数が減ってきてる訳だが……それが毎日のように続くと、
暇でしょうがねぇよな~』
『いけませんよ、グレン。私たちが暇なのが、平和の証拠なのですから。喜びこそすれ、
残念がるものではありません』
ミラーナイトが咎めると、ゼロがピグモンの相手をしつつ相槌を打った。
『その通りだ。俺たちが倒すべき奴がいるということは、一時のエメラナたちやピグモンのような
思いをする人が出てくるってことだ。そんなのはない方がいいに決まってる』
「キュウッキュウッ!」
『まぁそうなんだけどよ~。けど、こうも実戦が少ないと、腕と勘がなまっちまうぜ』
『有機生命体は不便だな。能力の維持に、定期的な鍛錬と経験が必要なのだから』
グレンファイヤーの意見に、ジャンナインがロボットならではの感想を述べた。
そんな風にウルティメイトフォース内で話し合っていると、突然誰のものでもない声が外から響いてきた。
『ふむ。どうやら話を聞く限りでは、これから頼む任務を支障なく引き受けてくれそうだな』
『! その声は……!』
ゼロが真っ先に反応し、マイティベースの出入り口へ振り返る。その彼の目に、赤いマントを羽織った、
ゼロの面影を持つ紅蓮の巨人の姿が映る。
『親父!!』
『ゼロ、元気でやっているようで何よりだ』
その巨人は、地球人ならば知らない者のいないほど有名だ。そしてウルトラマンゼロの父親でもある。
名前は、ウルトラセブン!
『おぉ!? ゼロの親父さんじゃねぇか! ひっさしぶりだなぁ~!』
『しかし、どうしてこちらの宇宙に?』
セブンの登場にはグレンファイヤーたちも驚きを隠せない。そしてジャンボットの疑問は、
ゼロも感じていた。
『親父、一体何の用でこっちに? 任務って言ったが……』
と尋ねると、セブンは早速その件について話し出した。
『そうだ。実はウルティメイトフォースゼロの諸君に、ぜひとも頼みたい用件があるのだ。
それというのは、別の宇宙の防衛』
『別の宇宙だって!?』
ゼロたちが驚愕していると、セブンは詳しく説明する。
『実は先日、宇宙と宇宙の狭間で大規模な次元震が観測された。それだけなら何の問題もなかったのだが、
その震動に乗じて、大いなる邪悪の気配が我々の宇宙から別の次元の宇宙へと移動した痕跡が発見されたのだ』
『大いなる邪悪だって!? そいつの正体は!』
『残念ながら、そこまでは特定できなかった。しかし、このまま放っておいたら、そいつが
侵入した先の宇宙の生命が滅ぼされてしまう恐れがある』
『そうだな……見過ごせねぇぜ』
セブンの言葉で、ゼロは因縁のベリアルやビートスター、バット星人のことを思い出した。
彼らは移動先の宇宙に抵抗するだけの力がなかったのをいいことに、多くの悲劇を起こした。
それを繰り返してはならない。
『それが明らかになった以上、すぐにでも我らウルトラ戦士が派遣されるところだが、一つ問題があった。
向かう先の宇宙の情報が得られないことだ。もしその宇宙にディファレーター光線がなければ、
我らウルトラ戦士はまともに活動できない。そうなっては派遣する意味がない。……しかしゼロ、
お前ならばその問題は解消できる』
『ああ、そうだな。俺にはこのウルティメイトイージスがあるからな』
ゼロはうなずきながら、左腕のウルティメイトブレスレットを見つめた。
実はアナザースペースが、そのウルトラ戦士のエネルギー源となるディファレーター光線の存在しない宇宙なのだ。
初めてやってきた際のゼロもそのために変身回数と活動時間が限られて苦しんだものだが、
神秘のアイテム・ウルティメイトブレスレットを入手してからは、それが光エネルギーを変換して
ゼロの力にしてくれるので、問題なく活動が出来るようになった。
『そして他のウルティメイトフォースゼロの面子は、ウルトラ一族じゃないから、エネルギーの心配はない。
つまり俺たちがその任務に打ってつけって訳だな?』
『呑み込みが早くて助かる。ウルティメイトフォースゼロには、別の宇宙の調査と悪の魔の手の排除を依頼したい。
やってくれるか?』
『当たり前だぜ! なぁお前ら!』
ゼロが聞くと、ミラーナイトたちは当然の如くうなずいた。
『ええ。悪の手が及んでいることを聞かされて、黙っている訳にはいきません』
『ちょうど暇を持て余してたしな! そういうのを待ってたんだぜ!』
『別の宇宙のことでも、平和を守るのは姫様の願い。了解した!』
しかし、ここでジャンボットが次のように言う。
『しかし、全員という訳にもいかないな。ベリアル軍の残党が全滅した訳ではないし、
我らの不在を狙って他の悪しき者どもも活動する恐れがある。誰か一人くらいは残らなければ……』
それについては、ジャンナインが名乗り出た。
『ならばその役目は、僕が引き受けよう』
『何ぃ? ナインが? おいおい大丈夫なのかよ』
『僕は宇宙最強のロボットとして造られた。僕の戦闘力なら、留守を守る程度は造作もない』
グレンファイヤーが異を唱えると、ジャンナインは自信過剰なほどに自負した。が、グレンファイヤーは肩をすくめる。
『そういうこと言ってるんじゃないんだよ。お前は常識に疎いだろ? だから一人だけで
何か問題を起こさないかって心配してるの!』
『常識についてグレンに心配されたらおしまいですね』
『え? ミラーちゃん、それどういう意味?』
ミラーナイトがさりげなく毒を吐いていると、ゼロがジャンナインを支持した。
『俺は大丈夫だと思うぜ。ジャンナインも、もう立派に平和と命を愛する心を持ってる。
それがあれば、多少のことなら何の問題もないはずだ』
『そーかぁ? ……まぁお前がリーダーな訳だし、そう思うんだったら従うけどよ』
そういう訳で、ジャンナインをアナザースペースの守護に残し、ゼロたちは別の宇宙へ旅立つこととなった。
それが決まった後で、ふとゼロが問いかける。
『ところで親父、わざわざそれを伝えるためだけにこっちに来たのか? それだけなら、
テレパシーを使うだけで十分だったんじゃないか?』
光の国があるM78スペースとアナザースペースは、ウルトラマンゼロというつながりが出来たことで
距離が縮んだが、それでも別の宇宙間は両者の技術をもってしても移動に大変な労力が必要となる。
故によほどのことでなければ、人の行き来はない。それを気にしていると、セブンはこう答えた。
『ゼロ、私からお前に渡すものがあるのだ。だからこちらに来る許可をもらった』
『渡すものだって? 親父からはブレスレットとかもらったが、まだ何かあるのか』
セブンが差し出したのは、指先に念力で固定されている小箱。その中身は、三色のカプセルだ。
『カプセル怪獣。もしウルトラマンに変身できないような事態に陥った時には、必ず力になってくれる。
私も地球に滞在した時には、何度も世話になった。今回の任務はどれだけの期間が必要になるか分からないから、
持っておいた方がいいと判断した』
『カプセル怪獣、か……。へへッ、親父は相変わらず心配性だな。けど、ありがたく借りておくぜ』
ゼロははにかみながらカプセル怪獣を受け取る。すると、セブンがピグモンのことを見下ろす。
「キュウッ! キュウッ!」
『それがお前の守った命か……。ゼロ、立派なウルトラ戦士として成長したんだな。お前はもう一人じゃない。
たとえこれから何が待ち受けていようと、必ず乗り越えられると信じている!』
『ああ! 俺にはこんなに大切な仲間がいるんだ! 当たり前だぜ!』
セブンの信頼に、ゼロは固くうなずいて応えた。
『では、任務を頼む。成功と幸運を祈っているぞ』
セブンが挨拶を残してからM78スペースへの帰路に着いた後で、ゼロたちも別の宇宙へと
旅立つ準備に取り掛かっていた。
『向かう先の位置情報は、これだけか……。ちょっと不安だが、まぁ何とかなるだろ』
『頼むぜゼロぉ。お前が迷子になったら、俺たちも一緒に迷子になるんだからな』
『グレン、ゼロを信じるんです』
『ではナイン、私たちが不在の間、宇宙の平和とマイティベース、ピグモンのことと頼んだぞ』
『任せてくれ、兄さん。武運を祈る』
マイティベースの外で話し合うと、いよいよゼロたち四人が出発をする。
『それじゃあ行くぜ! はぁッ!』
ゼロが掛け声を上げると、ウルティメイトブレスレットが強く輝き、形を変えて銀色の鎧となり、
ゼロの身体に装着した。
これがブレスレットの本来の姿、ウルティメイトイージス。そしてそれを装着したゼロは
ウルティメイトゼロと呼ばれるようになり、単体での次元宇宙の移動が可能となる。
ミラーナイトたちも同時に連れていくことが出来る。
『よぉし行くぜッ! 遅れるなよ! ミラーナイト、ジャンボット、グレンファイヤー!』
『ええ! ナイン、行ってきますよ!』
『私からも、お前の武運を祈ってる!』
『ひゃっほーい! ウルティメイトフォースゼロ、出動だぁー!』
ゼロとミラーナイト、ジャンボット、グレンファイヤーがジャンナインに見送られて宇宙間の旅に出た。
四人はあっという間に光速を超え、アナザースペースの端へ到達すると、ウルティメイトイージスの力で
宇宙の壁を乗り越える。
『えーっと、目的地の方角は……こっちか……。いや、ちょっとズレてるな……』
『おいゼロ、ホントに大丈夫なのか? 何か不安になるようなことが聞こえてくるんだが』
『ちょっと黙っててくれ。今集中してるんだ』
セブンから受け取った、わずかなデータだけから目的地の座標を計算しているゼロは、
最後尾から尋ねたグレンファイヤーに言い返した。
それから大分の時間を、宇宙間移動に費やす。どれだけ行けども似たような景色が続くので、
グレンファイヤーはすっかり飽き飽きしていた。
『なぁ~まだ到着しないのかよ? 随分遠いなぁオイ』
『ええい、お前という奴は、少しは我慢が出来ないのか!』
ゼロに代わってジャンボットが咎めると、その後でゼロが答える。
『計算上だと、後少しのはずだ。もうちょっとの辛抱……うおッ!?』
その瞬間に、突如として四人を激しい磁気嵐と次元震が襲った。ゼロたちは身体が大いに揺さぶられる。
『こ、これは……次元嵐! 何とも運の悪い……!』
ミラーナイトが思わず吐き捨てる。宇宙と宇宙の境、次元の狭間は、平穏な時ばかりではない。
時々このような災害規模の現象が発生することもある。もっとも広大すぎる超空間で遭遇することは
稀なことなので、ミラーナイトの言う通り、運が悪いとしか言いようがなかった。
次元嵐の勢いはゼロたちでも抗うのが困難なほどであり、ゼロは必死に力を振り絞って前に進む。
だが後ろに続く、ウルティメイトイージス並みのパワーを持たない三人は彼以上に苦しんでおり、
特に最後尾で加護が一番少ないグレンファイヤーは首がガクガク揺れていた。
『お……おわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――!!?』
そして遂に、グレンファイヤーが嵐に吹き飛ばされ、ゼロの後尾から外れてしまう。
『グレンファイヤー! ぬッ……うおおおおおおッ!』
『ジャンボット!』
振り返ったジャンボットも、気がそれたのが災いして嵐に流される。
『何てこった……ハッ! ミラーナイト!』
ゼロが気づけば、ミラーナイトまでが腕一本だけでゼロのコースにしがみついているありさまになっていた。
咄嗟に助けようとするゼロだが、ミラーナイト本人から止められる。
『いけませんゼロ! ここで余計な労力を使えば、たどり着く前にエネルギー切れを起こしてしまうかもしれません!』
『け……けど……』
『大丈夫です……あなたが無事にたどり着ければ、私たちもそれに引っ張られて到着することは出来ます。
逆に、あなたがたどり着けなければ私たちにも道はありません。あなたが今すべきことは、全力で
私たちのたどる道を作ることです!』
説得したミラーナイトは、もう数秒もこらえていられない状態になっていた。
『頼みましたよ、ゼロ。私たちの道を……!』
『ミラーナイトぉ!!』
その言葉を最後にミラーナイトが吹き飛ばされ、すぐに嵐に呑まれて見えなくなった。
『くそぉ……! すまねぇみんな……! 絶対にお前らが続く道を完成させるからな……!』
一気に一人になってしまったゼロだが、仲間たちの無事を信じて、前へと突き進み続けた。
その甲斐あり、ウルティメイトイージスのエネルギー残量がギリギリというところで光明が見えてくる。
『やった! あそこだ! これでもう大丈夫……うおぉ何だぁ!?』
遂に目的地を発見したゼロだが、その瞬間にいきなり身体が前に引っ張られ出した。
嵐の影響によるものではないのは明白だが、だからと言って力の正体は皆目見当がつかない。
『な、何が起きてるんだ!? 幸いこのまま到着は出来そうだが……』
ウルティメイトイージスのパワーがもうないので抵抗することは出来ないが、力の方向は目的地を向いているので、
特に問題はなさそうだ……と考えたのもつかの間、ゼロは信じられないものを目にすることになる。
『な、何ぃぃぃぃぃ!?』
何と、宇宙と宇宙の間の超空間に、自分と同じように目的地へ向けて飛んでいる、というか
飛ばされている少年の姿がはっきりと見えたのだ。
『こんなところに人間が!? って、このままじゃぶつかる! 何とか回避を!』
その少年との直撃コースにあることを察知したゼロが身をよじろうとしたが、
『うおおぉぉぉぉぉぉ間に合わねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』
結局、ゼロの巨体は小さな少年と正面衝突してしまった。それと同時に、ゼロと少年は超空間を抜けた。
こうして、ウルトラマンゼロと少年、平賀才人はハルケギニアのある宇宙で衝撃的な出会いを果たしたのだった。
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