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ウルトラマンゼロの使い魔
第八話「陰謀襲来」
凶獣ルガノーガー 登場
ルイズの部屋に現れたアンリエッタは、感極まった表情を浮かべて、膝をついたルイズを抱きしめた。
「ああ、ルイズ、ルイズ、懐かしいルイズ!」
「姫殿下、いけません。こんな下賤な場所へ、お越しになられるなんて……」
「ああ! ルイズ! ルイズ・フランソワーズ! そんな堅苦しい行儀はやめてちょうだい!
あなたとわたくしはおともだち! おともだちじゃないの!」
「もったいないお言葉でございます。姫殿下」
「やめて! ここには枢機卿も、母上も、あの友達面をしてよってくる欲の皮の突っ張った宮廷貴族たちもいないのですよ!
ああ、もう、わたくしには心を許せるおともだちはいないのかしら。昔馴染みの懐かしいルイズ・フランソワーズ、
あなたにまで、そんなよそよそしい態度を取られたら、わたくし死んでしまうわ!」
「姫殿下……」
目の前で繰り広げられるルイズのアンリエッタの、お芝居かと見紛うほどに仰々しいやり取りを、
才人は言葉をなくしてながめていた。
「幼い頃、いっしょになって宮廷の中庭で蝶を追いかけたじゃないの! 泥だらけになって!」
「……ええ、お召し物を汚してしまって、侍従のラ・ポルトさまに叱られました」
「そうよ! そうよルイズ! ふわふわのクリーム菓子を取り合って、つかみあいになったこともあるわ!
ああ、ケンカになると、いつもわたくしが負かされたわね。あなたに髪の毛をつかまれて、よく泣いたものよ」
「いえ、姫さまが勝利をお収めになったことも、一度ならずございました」
ルイズが懐かしそうに言った。
「思い出したわ! わたくしたちがほら、アミアンの包囲戦と呼んでいるあの一戦よ!」
「姫さまの寝室で、ドレスを奪い合ったときですね」
「そうよ、『宮廷ごっこ』の最中、どっちがお姫さま役をやるかで揉めて取っ組み合いになったわね!
わたくしの一発がうまい具合にルイズ・フランソワーズ、あなたのおなかに決まって」
「姫さまの御前でわたし、気絶いたしました」
顔を見合わせて笑う二人の話を傍聴していた才人とゼロは、すっかり呆気にとられていた。
二人は幼い頃ともに遊んだ幼馴染の関係のようだが、その内容はとてもではないが
お姫さまと公女とは思えなかった。
「おしとやかに見えたけど、とんだお転婆なんだな……」
『全くだな……』
ゼロはアンリエッタの姿に、ウルティメイトフォースゼロの活動する宇宙で最も栄えている星、
エスメラルダの姫、エメラナを思い出した。彼女も一見すると深窓のお姫さまだが、
その実かなりの行動派で物怖じしない性格であることをつき合いの中で知った。
などと思っていたら、不意にアンリエッタが重いため息を吐いた。それをルイズが心配する。
「姫さま?」
「あなたが羨ましいわ。自由って素敵ね。ルイズ・フランソワーズ」
「なにをおっしゃいます。あなたはお姫様じゃない」
「王国に生まれた姫なんて、籠に飼われた鳥も同然。飼い主の機嫌一つで、あっちに行ったり、こっちに行ったり……。
特に最近は、「怪獣」という巨大生物への対策に追われて、ろくに休んでいる時間がないわ……」
アンリエッタは抱えているものを吐き出すかのように、怪獣対策の現状を話し出した。
宇宙人連合の攻撃によりその脅威のほどを肌で知った貴族たちは、一転して対策に協力的になった。
それは結構なことなのだが、トリスタニアに甚大な被害が出たこととトリステイン軍が壊滅状態に陥ったことで、
復興と軍立て直しの資金を捻出するのに王宮は喘ぐ羽目になってしまった。対怪獣用に軍備拡張もしないとならないのに。
悩みの種は他にもある。怪獣と宇宙人の脅威は全世界的なものなので、マザリーニの意見により、
未知の世界からやってくる脅威を打ち払うことを目的としてハルケギニア中の国家が政治的な思惑関係なしに結束する
対怪獣同盟を築く交渉を行うことになったのだが、これが全くといっていいほど成果を上げていなかった。
元々無理の多い交渉なのだが、ロマリアは他国より怪獣の出現例が少ないこともあってか、こんな場合でも無関心を決め込み、
ガリアは国内からも「無能王」と侮蔑されるジョゼフ一世が聞く耳を持たないので交渉の席すら設けられなかった。
ゲルマニアだけが比較的好意的というありさまだという。
「姫さま、アルビオンはどうなのでしょうか? まさか、この世情で今も内乱が続いてるのでは……」
ルイズの当たってほしくない予想は的中した。
「その通りよ。だから、アルビオン王宮は、わたくしたちとの話し合いどころではないの」
「まあ、何てこと! 世界の危機というのに、未だ人間同士で下らない諍いを続けてるなんて!
反乱軍の何て愚かなこと!」
「彼らは、そもそも怪獣のもたらす危機への実感が薄いのでしょう。アルビオンはハルケギニアの国で唯一、
一度も被害を受けていないから」
その言葉で、ゼロも「アルビオン」という国へ飛んでいったことは一度もないことを思い出した。
ここまでの悩み事をぶちまけたアンリエッタだが、まだため息を吐いていた。それでルイズはますます心配する。
「姫さま、まだ何かあるのでしょうか?」
「いえ、これ以上はあなたに話せるようなことじゃないわ。今のを聞いてもらっただけで十分よ」
「おっしゃってください。昔はなんでも話し合ったじゃございませんか! わたしをおともだちと
呼んでくださったのは姫さまです。そのおともだちに話せないのですか?」
その言葉にアンリエッタは心動かされ、話す決意をした。
「今から話すことは、誰にも話してはいけません」
と前置きするので、才人は席を外そうかと申し出たが、アンリエッタ自身に「メイジと使い魔は一心同体」と断られた。
「わたくし、ゲルマニアの皇帝に嫁ぐことになったのです……」
「ゲルマニアに! あんな野蛮な成り上がりどもの国に!」
「そうよ。でも、しかたないの。先ほどの同盟とは別の、軍事同盟を結ぶために」
アルビオンは現在王党派と貴族を中心とした反乱軍の内紛が続いているが、戦局は反乱軍に圧倒的に有利で、
王室は風前の灯火だという。そして反乱軍が勝利したら、次にトリステインに侵攻してくるのは確実。
ただでさえ国力が低下しているのに、軍の立て直しも途中の今攻め入られたら、勝ち目などない。
だからゲルマニアと同盟を結ぶ必要があるのだが、そのためにはアンリエッタがゲルマニア皇帝と
婚姻を上げないといけないという。
「そうだったんですか……」
アンリエッタが本心からその結婚を望んでいないことは明白。ルイズが沈んでいると、
アンリエッタから逆に慰められる。
「いいのよ。ルイズ、好きな相手と結婚するなんて、物心ついたときから諦めていますわ」
「姫さま……」
「礼儀知らずのアルビオンの貴族たちは、トリステインとゲルマニアの同盟を望んでいません。
二本の矢も、束ねずに一本ずつなら楽に折れますからね。……したがって、わたくしの婚姻を
さまたげるための材料を、血眼になって探しています」
ここまででアンリエッタの悩みが何か予想がついてきたので、ルイズは顔面蒼白になった。
「もしかして、姫さまの婚姻をさまたげるような材料が?」
あるのか、という質問への回答は、イエスだった。
「……わたくしが以前したためた一通の手紙なのです」
「手紙? どんな内容の手紙なんですか?」
「……それは言えません。でも、それがゲルマニアの皇室に届いたら……このわたくしを赦さないでしょう。
ああ、婚姻はつぶれ、トリステインとの同盟は反故。となると、トリステインは一国にてあの強力なアルビオンに
立ち向かわなければならないでしょうね」
ルイズは息せき切って、アンリエッタの手を握った。
「いったい、その手紙はどこにあるのですか? トリステインに危機をもたらす、その手紙とやらは!」
アンリエッタは首を振った。
「それが、手元にはないのです。実は、アルビオン王家のウェールズ皇太子が……」
「プリンス・オブ・ウェールズ? あの、凛々しき王子さまが?」
アンリエッタはのけぞると、ベッドに体を横たえた。
「ああ! 破滅です! ウェールズ皇太子は、遅かれ早かれ、反乱勢に囚われてしまうわ!
そうしたら、あの手紙も明るみに出てしまう! そうなったら破滅です! 破滅なのです!
トリステインは、未知の侵略者ではなく同じ人間の侵略者に滅ぼされてしまうわ!」
ルイズは息をのんだ。
「では、わたしがその手紙を取り戻せば……」
「無理よ! 無理よルイズ! 貴族と王党派が争いを繰り広げているアルビオンに赴くなんて危険なこと、
頼めるわけがありませんわ!」
「何をおっしゃいます! たとえ地獄の釜の中だろうが、竜のアギトの中だろうが、姫さまの御為とあらば、
何処なりと向かいますわ! 姫さまとトリステインの危機を、このラ・ヴァリエール侯爵家の三女、
ルイズ・フランソワーズ、見過ごすわけにはまいりません!」
ルイズは膝をついて恭しく頭を下げた。
「『土くれ』のフーケを捕まえた、このわたくしめに、その一件、是非ともお任せくださいますよう」
「や、それは語弊があるんじゃ……」
ツッコミを入れる才人だったが、ルイズに「黙ってなさい」と視線だけで脅されたので、口を閉ざした。
「このわたくしの力になってくれるというの? ルイズ・フランソワーズ! 懐かしいおともだち!」
「もちろんですわ! このルイズ、いつまでも姫さまのおともだちであり、まったき理解者でございます!
永久に誓った忠誠を、忘れることなどありましょうか!」
「ああ、忠誠。これが誠の友情と忠誠です! 感激しました。わたくし、あなたの友情と忠誠を一生忘れません!
ルイズ・フランソワーズ!」
あまりにも大仰な会話で、アンリエッタに至っては涙まで流している。一部始終を見ていた才人が
ついていけずに唖然としていると、ゼロがこんなことを聞いてきた。
『トリステインの女の友情って、こういうものなのか?』
「俺が知るかよ」
うんざりとしながら返答すると、ゼロは次に唐突なことを言い放った。
『ところで、さっきから扉の外で聞き耳を立ててる奴がいるんだが、そいつはほっといていいのか?』
「え!?」
ルイズが青ざめて振り返るが、ゼロの声が聞こえないアンリエッタは、突然彼女が振り向いたようにしか見えず、
首を傾げた。
そして才人がそっと扉に近寄り、一気に開いて外にいる人間を力ずくで引っ張り込むと、その正体が明らかになった。
「いたたッ! こら、ぼくは貴族だぞ!? もっと丁重に扱いたまえ! ……って、そんな場面じゃないか……」
薔薇の造花を手にした、如何にもな色男で、以前才人と決闘したギーシュ・ド・グラモンであった。
「ギーシュ! ……ゼロ! どうしてもっと早く教えてくれないのよ!」
ルイズが声をひそめながら責めると、ゼロはあっけらかんと答えた。
『教える暇もなく話し始めたからな。その後もずっとしゃべってるし』
「だからって……もう、気が利かないんだから」
才人はとりあえずギーシュの後ろ手を確保すると、アンリエッタに問いかける。
「お姫さま、こいつどうします?」
「そうね……今の話を聞かれたのは、まずいわね……」
アンリエッタも困っていると、ギーシュの方が口を開いた。
「姫殿下! その困難な任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せつけますよう」
「え? あなたが?」
「どうしてだよ?」
才人に聞かれると、ギーシュはアンリエッタの顔を見つめたまま顔を赤らめた。
「姫殿下のお役に立ちたいのです……」
才人はそんなギーシュの様子で、感づいた。
「お前、もしかして惚れやがったな? お姫さまに!」
「失礼なことを言うんじゃない。ぼくは、ただただ、姫殿下のお役に立ちたいだけだ」
しかしアンリエッタを見つめる目つきは熱っぽかった。惚れてるのは確かであった。
「お前、彼女がいただろうが。なんだっけ? あの、モンモンだか……」
「モンモランシーだ」
「どうしたんだよ?」
ギーシュが無言なので、才人はなるほど、と思った。
「お前、フラれたな?」
「う、うるさい! きみの所為だぞ!」
わめくギーシュだが、決闘騒ぎの原因でもあるそれは、才人が拾った香水によりギーシュの二股が発覚したという内容。
つまり身から出た錆である。
「グラモン? あの、グラモン元帥の?」
アンリエッタはギーシュの名字について聞き返した。
「息子でございます。姫殿下」
「あなたも、わたくしの力になってくれるというの?」
「任務の一員にくわえてくださるなら、これはもう、望外の幸せにございます」
熱っぽいギーシュの口調に、アンリエッタは微笑んだ。
「ありがとう。お父さまも立派で勇敢な貴族ですが、あなたもその血を受け継いでいるようね。
ではお願いしますわ。この不幸な姫をお助けください、ギーシュさん」
「姫殿下がぼくの名前を呼んでくださった! 姫殿下が! トリステインの可憐な花、
薔薇の微笑みの君がこのぼくに微笑んでくださった!」
ギーシュは感動のあまり、後ろにのけぞって失神した。
「大丈夫かこいつ?」
『貴族ってのは、一人でも忙しいもんなんだな』
才人もゼロも、ギーシュのありさまに呆れ返った。
こうしてルイズと才人、ついでにギーシュは、アルビオンの王党派の最後の領地、ニューカッスルへ旅立つこととなった。
ルイズはアンリエッタから密書を受け取ると、同時に彼女の右手の薬指に嵌まっていた指輪を授けられた。
「母君から頂いた『水のルビー』です。せめてものお守りです。お金が心配なら、売り払って旅の資金にあててください」
ルイズは深々と頭を下げた。
「この任務にはトリステインの未来がかかっています。母君の指輪が、アルビオンに吹く猛き風から、
あなたがたを守りますように」
『何ぃ? 予定を早める?』
……ルイズたちがアンリエッタの密命を受け、明日に向けて就寝した頃、暗黒に包まれたある場所では、
四人の怪人の影が円陣を作っていた。内の一人、大柄な影が、胡乱な声を上げた。
『どういうことだ。ウルトラマンゼロを排除する計画は、あの浮遊大陸を支配した後に発動するのではなかったのか?』
そう尋ねると、丸い頭の影が回答する。
『そのウルトラマンゼロが、浮遊大陸アルビオンに向こうからやってくるというのだ。確かな筋からの情報だ』
『何だと? 奴にあの大陸で我らが計画を進めていることを気づかれぬようにと、細心の注意を払っていたのではないのか』
『人間どもの都合だ。我らの不手際ではない。……だがちょうどいい機会だ。「こちら側」の準備は整っているのだし、
向こうから我らの懐中に飛び込んでくるならば、利用しない手はない』
ニヤリと笑う丸頭の影だが、大柄な影は対照的に呆れ返った。
『忙しないことだ。相手の動向にその都度対応するなど……。そんな面倒くさいことをしておらんで、
とっとと出向いてねじ伏せてしまえばよいといつも言っとるのに』
と言うと、三人目の角張った頭の影が冷笑する。
『ふん、相変わらず脳味噌が足りん奴だ。そんなことだから、貴様の同族は、敵に足元をすくわれておめおめ散っていったのだ』
『何だと!? 貴様、我が星を侮辱するというのか!? 今ここで連合の席を一つ空けさせてやってもいいのだぞ!』
瞬時にいきり立った大柄な影が脅すと、最後の細身の影がそれを諌める。
『やめろ! そんな風に仲間同士でいがみ合っているから、我ら侵略者はウルトラ戦士に
いつの時代も勝てなかったのだ。いい加減学習したらどうだ。目的を見誤るな』
その言葉で、大柄な影も角張った頭の影も口を閉ざす。
『いいか。我々の計画は完璧だ。こちらがつまらぬいさかいで足並みを崩さなければ、
ウルトラマンゼロがどれだけ強かろうが必ず勝てる。そしてこの宇宙に来ているウルトラ戦士は
奴一人のみ! 奴さえ討ってしまえば、このハルケギニアは陥落したも同然! ウルトラの星への
長年の雪辱を晴らす時が来るのだ!』
細身の影が熱弁すると、他の影も興奮したように身を揺すった。
『この美しい星を、我ら宇宙人連合のものとするぞッ!』
翌日、ルイズたちは早朝からトリステインからアルビオンへの玄関口である、港町ラ・ロシェールへ向けて、
林の中の一本道を馬で飛ばしていた。しかしルイズは才人とギーシュと違い、馬には乗っていない。
もう一人の随行者のグリフォンに同乗していた。
そのもう一人の随行者とは、魔法衛士隊の三つの部隊の一つ、グリフォン隊の隊長のワルド子爵。
昨日ルイズが熱を込めて見つめていた貴族その人で、何とルイズの婚約者であった。もっとも、
ずっと昔に親同士の決めたものなのだが。
彼はルイズたちだけではやはり危険だと判断したアンリエッタに、同行を命じられたのだという。
「でもワルド……本当にいいのかしら? 魔法衛士隊だって、今は大変な時でしょう?」
宇宙人連合の侵攻により、魔法衛士隊も大打撃を食らったはずだ。ワルドは無事だったようだが、
隊長の立場なら、再編成に尽力しなければならないだろう。しかしワルドはこう答える。
「本来ならそうだが、姫殿下のたってのお頼みでね。よほど君たちのことを心配されてるようだった」
「ああ、姫さま、何てお心遣い。帰ってからお礼を申し上げないといけないわね……」
熱っぽく語るルイズは、ワルドの含みのある笑みに気づかなかった。
その時ルイズは、自分たちと才人、ギーシュの馬に大分距離が出来ていることに気づいた。
「ちょっと、ペースが速くない? ギーシュもサイトも、へばってるわ」
その言葉で、ワルドも才人たちとの距離を確認する。
「ラ・ロシェールの港町まで、止まらずに行きたいんだが……」
「無理よ。普通は馬で二日かかる距離なのよ」
「へばったら、置いていけばいい」
「そういうわけにはいかないわ」
「どうして?」
聞かれて、ルイズは困ったように言った。
「だって、仲間じゃない。それに……使い魔を置いていくなんて、メイジのすることじゃないわ」
「やけにあの二人の肩を持つね。どちらかがきみの恋人かい?」
ワルドがからかうと、ルイズは顔を赤らめた。
「こ、恋人なんかじゃないわ」
「そうか。ならよかった。僕は家を出るとき、立派な貴族になって、婚約者のきみを迎えにいくって決めてたからね」
歯の浮くような台詞に、ルイズはむしろ戸惑った。
「冗談でしょ。ワルド、あなた、モテるでしょう? なにも、わたしみたいなちっぽけな婚約者なんか相手にしなくても……」
ルイズはワルドとの婚約に、現実感を持っていなかった。十年前に別れて以来ほとんど会っていなかったし、
彼のことも夢を見るまで忘れていた。ルイズにとってワルドは遠い想い出の中の憧れの人だったのに、
先日不意に現実になってやってきたので、今もどうすればいいのかわからないところがあった。
「旅はいい機会だ。いっしょに旅を続ければ、またあの懐かしい気持ちになるさ」
ワルドはそう語るが、ルイズは自分がワルドのことを好きなのかがよく分かっていなかった。
一方、後方で馬を走らせる才人は、ぐったりとしながらも、ワルドがルイズに触れるたびに気が気でない思いをしていた。
そんな才人の様子を見て、ギーシュがニヤニヤ笑う。
「ぷ、ぷぷ。もしかして、きみ……やきもち焼いてるのかい?」
「あ? どーゆー意味だ!」
才人はがばっと馬から身を起こした。
「あれ、当たった? もしかして図星?」
「黙ってろ。モグラ野郎」
「ぷ、ぷぷぷ。ご主人様に、適わぬ恋を抱いたのかい? いやはや! 悪いことは言わないよ。
身分の違う恋は不幸の元だぜ? しっかし、君も哀れだな!」
「うるせえ。あんなやつ、好きでも何でもねえや。ま、確かに顔はちょっと可愛いけど、性格最悪」
ギーシュと言い争っていると、突然ゼロが割り込んできた。
『おい才人! そんな下らない話ししてる場合じゃねえぞ!』
「うわッ! どうしたんだゼロ? ……まさか」
ギーシュに怪しまれないように顔をそむけながら小声で問いかけると、ゼロは肯定した。
『そのまさかだ。怪獣が飛んでくる!』
その言葉の直後に、才人とギーシュ、そしてルイズたちにも、巨大な黒い影が差しかかった。
「な、何!?」
空を見上げると、竜の如き大怪獣が、翼もないのに空を飛んで自分たちを追い越そうとしているところを目にすることになった。
「アオ――――――――ウ!」
怪獣は黒い皮膚に赤や青のトゲを生やしている。また奇怪なことに両腕の先は手の形をしておらず、
竜の首の形の三つ首になっている。そして六つの赤い眼からは、一切の慈悲の感情が見て取れなかった。
殺戮本能の塊であり、驚異的な力で命あふれる星を焼き尽くして破壊してしまう、悪魔のような宇宙大怪獣、
ルガノーガーである!
ルガノーガーがルイズたちの行く手に降り立って、六つの眼球で彼女たちをにらみつけている様子を、
はるか遠方から立体映像を介して、四人分の影が観察していた。その内の、丸い頭の影が言い放った。
『凶獣ルガノーガーよ、ウルトラマンゼロを引っ張り出せ! その能力を我々に分析させるのだ!』
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