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#navi(Adventure-seeker Killy in the magian world quest)
LOG-12 駆除
部隊の宿営地が築かれた街へと逃げ帰ったのは、たった二人の若い騎士のみだった。
いずれも熟練し、国境も近く、悪魔の噂が絶えない呪われた地にも隣接するこの場所での重要な任務に従事する、優秀な兵ばかりであったはずだ。
それがたった二人。
しかも、伝令でも逃亡でもなく「生き残ったのは二人だけ」であるという。
おまけに、先ほど遺跡で発生した爆発と発光も、その戦闘の際に起こったことであるともいう。
事実であるならば「不明な勢力との絶望的な交戦」「救援の要請」という、数時間前の伝令とも相まって、相当な異常事態である。
百近い部隊は、高い戦闘技術もさることながら、その中には、最高水準の才能を持った、先住魔法の行使手がいたのだ。
精霊との契約に手間取ることも、一応は我々の領土であるこの遺跡周辺で、致命的要素とはなりえない。
生存者は、いくつかの回収物を携えていたが、この驚異の品々が、果たしてあの破壊を行い、戦士たちの精神を恐慌状態に叩き込めるほどなのか…
その回答は空にあった。
「あれは鳥か?」という誰かの問いに、生存者の一人が悲鳴を上げた。
町中の精霊たちが震え、どのような技術や魔法を使っても正体を明らかにできない鳥は、急激に高度を上げ始める。
生存者の必死の訴えもあって、その鳥のように見える何かを、落とすなり取り押さえるなり、近づいて分析してみるなりをしようと試みたが、不可能だった。
鳥は、スーツと肉の混じり合った羽でこの世の理を作り替え、急激に上っていく。
造作のないことだ。
彼女は本来、自分の持つ火器と同等の攻撃―――基本的に、それは光速で迫ってくる―――にさらされた場合を想定した、圧倒的な探知能力と機動性を備えている。
戦闘体を用いるわけにもいかず、大部分がセーブさえているといっても、飛翔器官を精製してしまえば、有象無象にとっては驚異的な速度をたたき出せる。
破壊を局限するために到達した超空。
そこは、大気すらも重力に囚われ、昇ることの叶わぬ高度であり、いかに大気や大地に一体化したシステムを味方につけようとも、“その程度”でしかない。
…そして、全てを捕える“重力”という、もっとも基本的な相互作用こそが、彼女の攻撃手段である。
轟音を感じるのには、最初の破壊の急激さに比べれば、多大な時間を要求された。
光の柱が大気の限界地点から地上まで振り下ろされる。
大地では、より恐ろしいことが起こった。
数mほどの空間に存在した質量がくり貫かれ、そこにあった全ての質量がエネルギーを開放していく。
いわば、空から大地の奥底に至るまで、一本の柱上の強力な爆薬が突如として現れ、認識困難な速度でほぼ一斉に反応して爆発したのだ。
全ての意志は間に合わず、ありとあらゆる形での破壊が、ほぼ街を飲み込んだ時点で、まだ生体機能に重大な損傷をこうむっていない者が、大混乱の中、圧倒的破壊という現実のみを突き付けられた。
不幸なことに、破壊が本領を発揮する前に、神速に近い数発の連続射撃が行われ、特に被害が少ないと予想される街の外縁部や、離れた位置にある建造物、農村などにも光の柱が立った。
大地はプラズマとなって電流と光をまき散らし終わると、溶岩流と岩石蒸気となって、すでに爆風で撫でられた周囲を焼き尽くす。
大気は爆圧で外側へ吹き飛ぶが、続く高熱によって上空へ塵とともに舞い上がる過程で、押しつぶすように戻ってきた。
果たしてどれ程が生存しているか、被害者は見当もつかない。
だが、破壊の元凶は、正確かつ無感動に生存者の総数や状態を算出する。
そして、自由落下を上回る速度で降下し、また何事もないかのように歩き出した。
「あれだ! 間違いない、あれだ!!」
誰かが喚き散らす。
そこには組織だった活動をどうにか見せる、武器を帯びたものの一団があり、その背後では何とか統制された避難を試みる小規模な群衆があった。
武装調査隊の本隊―――といったところで、もう大半が燃え尽きている。
加えて、街に駐留する小規模な部隊と、普段から居住している戦士たちもそこに紛れているが、これも大半が失われている。
残ったありとあらゆる兵器と防衛機構を総動員しようという意思が垣間見え、女は手で顔を保護した。
周囲の熱が一転に集まる
気圧が急激に変化する
大気運動による膨大な電流が解放される
地面が口を開けて岩石を叩きつける
金属片を打ち付ける
いずれも、いまの彼女が気にするほどの威力もなければ、先ほどの攻撃の二次破壊に花を添えるほどの派手さもなかった。
むき出しの皮膚である頭部には、いくつかの傷がついたが、血液は流れず、すぐに周囲のものと溶け合って痕跡すら残さず完治した。
髪とコートをなびかせ、銃を構えると、たった一射。
正確に目標を射ぬき、その後ろの逃げ惑う女子供もついでに貫いた。
光と熱と轟音
そして出来上がるもはや無差別な虐殺とすら思える光景
だが、これは、彼女らにとってみれば、ごく当然の行為だった。
守る必要がない、まるで赤の他人であるうえに、敵であり、これから情報の伝搬によって、より増大しかねないのなら、迷わずこういう手段をとるのが、早く確実である。
統治局という名の絶対的な理性は、捻じ曲げられることのない理論によって判断しているのだ。
その駒たる彼女は、いくらか長く自立させすぎたために、こういった部分での不都合が生じたり、不可解で愚かな敵の行動を理解するための感情も備えていたが、無駄な慈悲や迷いは設計的にありえない。
だからこそ、また悠然と歩き出し、次なる一手を打つのだ。
左手が沸騰して、特殊な装置が姿を見せる。
続いて品定めを行う。
目の前には、程よく周囲のシステムへの干渉権限を持ち、また肉体への損壊が随分と抑えられた有機生体があり、これが良いとばかりに接近し、一本の針を左手から放つ。
微小構成体
極めて小さな彼女の一部であり、また統治局の管理する駒の一つ。
それは突き刺さると瞬時に機能した。
肉体は腐敗した屍のように急激に膨れ上がって、周囲の大気や地面を貪り、電流と暴風を吹き荒れさせる。
一度崩れた形質が、再び人型に戻るときには、もうそれは、元の肉体とはまるで異なる存在だった。
皮膚は白い陶器のような外殻になり、間接は球体間接になり、内側はタールの固まったような黒い肉になった。
特に重要なのは、この個体の能面のような顔は、変成前の青年の面影を残し、頭髪は風に靡き、衣服は肉体と一体化した膜や管の塊として、何らかの機能を負っている点だ。
つまり、かつての能力は保持したうえで、あらたな“ネットスフィアの力”を付与されている。
すでにその生みの親は、銃をホルスターに戻して、戦闘の構えを解いていた。
辺りの亜原人は、恐怖でも驚きでもない表情で、唖然と眺めていたが、それがこちらに敵意を持っていると、最初の一撃で悟り、悲鳴を上げて駆け出した。
ここの連中が“先住魔法”、“精霊”といった名称で認識しているシステムをフルに活用可能なうえに、その肉体は同水準の技術を除けば、対抗しがたい強靭なものだ。
突風を巻き起こしながら追いすがり、気付く間もない速さで犠牲者を引き裂く。
あるいは、相手よりも一段上の効率と権限を持って、精霊を使役し、自然現象を模した破壊を進める。
攻撃は、問題が解決するまで続く。
懸念される情報の漏えいは未然に防ぎ、自身を追撃する可能性のある戦力を殲滅する
これが解決したのなら、もう長居の必要はない。
無為な破壊を行う必要もないし、時間を食いつぶす必要もない。
逃げるか、あるいは集まってくる何者かに追尾される可能性を考慮し、一気に低空から離脱した後、また目立つ翼を畳んで歩行を再開する。
幾らか消耗したが、何事もないといった風に髪を直すと、眼を普段通りに戻し、意志も目的もなさそうな感じで歩き出した。
この世界線に紛れ込んだ非日常とは、こういうものであった・・・
LOG.12@END
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部隊の宿営地が築かれた街へと逃げ帰ったのは、たった二人の若い騎士のみだった。
いずれも熟練し、国境も近く、悪魔の噂が絶えない呪われた地にも隣接するこの場所での重要な任務に従事する、優秀な兵ばかりであったはずだ。
それがたった二人。
しかも、伝令でも逃亡でもなく「生き残ったのは二人だけ」であるという。
おまけに、先ほど遺跡で発生した爆発と発光も、その戦闘の際に起こったことであるともいう。
事実であるならば「不明な勢力との絶望的な交戦」「救援の要請」という、数時間前の伝令とも相まって、相当な異常事態である。
百近い部隊は、高い戦闘技術もさることながら、その中には、最高水準の才能を持った、先住魔法の行使手がいたのだ。
精霊との契約に手間取ることも、一応は我々の領土であるこの遺跡周辺で、致命的要素とはなりえない。
生存者は、いくつかの回収物を携えていたが、この驚異の品々が、果たしてあの破壊を行い、戦士たちの精神を恐慌状態に叩き込めるほどなのか…
その回答は空にあった。
「あれは鳥か?」という誰かの問いに、生存者の一人が悲鳴を上げた。
町中の精霊たちが震え、どのような技術や魔法を使っても正体を明らかにできない鳥は、急激に高度を上げ始める。
生存者の必死の訴えもあって、その鳥のように見える何かを、落とすなり取り押さえるなり、近づいて分析してみるなりをしようと試みたが、不可能だった。
鳥は、スーツと肉の混じり合った羽でこの世の理を作り替え、急激に上っていく。
造作のないことだ。
彼女は本来、自分の持つ火器と同等の攻撃―――基本的に、それは光速で迫ってくる―――にさらされた場合を想定した、圧倒的な探知能力と機動性を備えている。
戦闘体を用いるわけにもいかず、大部分がセーブさえているといっても、飛翔器官を精製してしまえば、有象無象にとっては驚異的な速度をたたき出せる。
破壊を局限するために到達した超空。
そこは、大気すらも重力に囚われ、昇ることの叶わぬ高度であり、いかに大気や大地に一体化したシステムを味方につけようとも、“その程度”でしかない。
…そして、全てを捕える“重力”という、もっとも基本的な相互作用こそが、彼女の攻撃手段である。
轟音を感じるのには、最初の破壊の急激さに比べれば、多大な時間を要求された。
光の柱が大気の限界地点から地上まで振り下ろされる。
大地では、より恐ろしいことが起こった。
数mほどの空間に存在した質量がくり貫かれ、そこにあった全ての質量がエネルギーを開放していく。
いわば、空から大地の奥底に至るまで、一本の柱上の強力な爆薬が突如として現れ、認識困難な速度でほぼ一斉に反応して爆発したのだ。
全ての意志は間に合わず、ありとあらゆる形での破壊が、ほぼ街を飲み込んだ時点で、まだ生体機能に重大な損傷をこうむっていない者が、大混乱の中、圧倒的破壊という現実のみを突き付けられた。
不幸なことに、破壊が本領を発揮する前に、神速に近い数発の連続射撃が行われ、特に被害が少ないと予想される街の外縁部や、離れた位置にある建造物、農村などにも光の柱が立った。
大地はプラズマとなって電流と光をまき散らし終わると、溶岩流と岩石蒸気となって、すでに爆風で撫でられた周囲を焼き尽くす。
大気は爆圧で外側へ吹き飛ぶが、続く高熱によって上空へ塵とともに舞い上がる過程で、押しつぶすように戻ってきた。
果たしてどれ程が生存しているか、被害者は見当もつかない。
だが、破壊の元凶は、正確かつ無感動に生存者の総数や状態を算出する。
そして、自由落下を上回る速度で降下し、また何事もないかのように歩き出した。
「あれだ! 間違いない、あれだ!!」
誰かが喚き散らす。
そこには組織だった活動をなんとか見せる、武器を帯びたものの一団があり、その背後では何とか統制された避難を試みる小規模な群衆があった。
武装調査隊の本隊―――といったところで、もう大半が燃え尽きている。
加えて、街に駐留する小規模な部隊と、普段から居住している戦士たちもそこに紛れているが、これも大半が失われている。
残ったありとあらゆる兵器と防衛機構を総動員しようという意思が垣間見え、女は手で顔を保護した。
周囲の熱が一転に集まる
気圧が急激に変化する
大気運動による膨大な電流が解放される
地面が口を開けて岩石を叩きつける
金属片を打ち付ける
いずれも、いまの彼女が気にするほどの威力もなければ、先ほどの攻撃の二次破壊に花を添えるほどの派手さもなかった。
むき出しの皮膚である頭部には、いくつかの傷がついたが、血液は流れず、すぐに周囲のものと溶け合って痕跡すら残さず完治した。
髪とコートをなびかせ、銃を構えると、たった一射。
正確に目標を射ぬき、その後ろの逃げ惑う女子供もついでに貫いた。
光と熱と轟音
そして出来上がるもはや無差別な虐殺とすら思える光景
だが、これは、彼女らにとってみれば、ごく当然の行為だった。
守る必要がない、まるで赤の他人であるうえに、敵であり、これから情報の伝搬によって、より増大しかねないのなら、迷わずこういう手段をとるのが、早く確実である。
統治局という名の絶対的な理性は、捻じ曲げられることのない理論によって判断しているのだ。
その駒たる彼女は、いくらか長く自立させすぎたために、こういった部分での不都合が生じたり、不可解で愚かな敵の行動を理解するための感情も備えていたが、無駄な慈悲や迷いは設計的にありえない。
だからこそ、また悠然と歩き出し、次なる一手を打つのだ。
左手が沸騰して、特殊な装置が姿を見せる。
続いて品定めを行う。
目の前には、程よく周囲のシステムへの干渉権限を持ち、また肉体への損壊が随分と抑えられた有機生体があり、これが良いとばかりに接近し、一本の針を左手から放つ。
微小構成体
極めて小さな彼女の一部であり、また統治局の管理する駒の一つ。
それは突き刺さると瞬時に機能した。
肉体は腐敗した屍のように急激に膨れ上がって、周囲の大気や地面を貪り、電流と暴風を吹き荒れさせる。
一度崩れた形質が、再び人型に戻るときには、もうそれは、元の肉体とはまるで異なる存在だった。
皮膚は白い陶器のような外殻になり、間接は球体間接になり、内側はタールの固まったような黒い肉になった。
特に重要なのは、この個体の能面のような顔は、変成前の青年の面影を残し、頭髪は風に靡き、衣服は肉体と一体化した膜や管の塊として、何らかの機能を負っている点だ。
つまり、かつての能力は保持したうえで、あらたな“ネットスフィアの力”を付与されている。
すでにその生みの親は、銃をホルスターに戻して、戦闘の構えを解いていた。
辺りの亜原人は、恐怖でも驚きでもない表情で、唖然と眺めていたが、それがこちらに敵意を持っていると、最初の一撃で悟り、悲鳴を上げて駆け出した。
ここの連中が“先住魔法”、“精霊”といった名称で認識しているシステムをフルに活用可能なうえに、その肉体は同水準の技術を除けば、対抗しがたい強靭なものだ。
突風を巻き起こしながら追いすがり、気付く間もない速さで犠牲者を引き裂く。
あるいは、相手よりも一段上の効率と権限を持って、精霊を使役し、自然現象を模した破壊を進める。
攻撃は、問題が解決するまで続く。
懸念される情報の漏えいは未然に防ぎ、自身を追撃する可能性のある戦力を殲滅する
これが解決したのなら、もう長居の必要はない。
無為な破壊を行う必要もないし、時間を食いつぶす必要もない。
逃げるか、あるいは集まってくる何者かに追尾される可能性を考慮し、一気に低空から離脱した後、また目立つ翼を畳んで歩行を再開する。
幾らか消耗したが、何事もないといった風に髪を直すと、眼を普段通りに戻し、意志も目的もなさそうな感じで歩き出した。
この世界線に紛れ込んだ非日常とは、こういうものであった・・・
LOG.12@END
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