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#navi(Maximusな使い魔)
#setpagename(Maximusな使い魔 第06話)
「…何で全部片付けちゃうのよ」
顔を洗って帰ってきたルイズは、マキシマと教室を見渡して呟いた。
ルイズが居ない間に、マキシマが教室を片付けていたのだ。
その事にルイズは、何故か頬を脹れさせている。
「どうしたんだ?掃除なら終わったぜ?」
「そうじゃないのよ…」
ルイズは『私が教室を滅茶苦茶にしてしまったのだから、私が掃除をするんだ』と、意気込んでいた。
自分のしたことに責任を持ち、行動に移そうとしていたのだ。
しかし、マキシマが全て終わらせていた。完璧に。
ルイズのやる気が、口の開いた風船のように萎んでいく。
「なんだ。そんなに掃除が好きなのか?」
マキシマは気にした様子も無くルイズに聞く。
まさか自分のせいでルイズが落ち込んでいるとは思ってもいない。
そんなマキシマに、ルイズは「…はぁ」っと短くため息を吐く。
事が事だけに、怒るに怒れない。
むしろ、自分が居ない間に掃除を終わらせていた使い魔を褒めるべきではないか。
そう考えて、気分をリセットする。
「ま、まぁ…。よくやったわ」
「ん?ああ」
そう短く言葉を交わすと、マキシマが手に付いた埃をはらう。
「そろそろランチの時間じゃないか?またあの食堂でいいのか?」
高く昇った日を窓越しに眺めながらマキシマがルイズに問いかける。
朝食の時間を考えれば、昼食は今ぐらいの時間だろう。
「そうね。基本的に食事は食堂で。自室で食べる人もたまにいるけどね。毎日ってわけでもないでしょうけど」
答えながら教室を出るルイズと、それに続くマキシマ。
ルイズはマキシマに昼食を厨房でとるように伝えると、食堂の中へ入っていった。
それを見送り、厨房に向うマキシマ。
厨房の中を覗くと、マルトーが怒鳴るように指示を出している。朝以上に忙しそうだ。
中へ入っていくと、シエスタがマキシマを見つけ、小走りで近づいてくる。
「忙しそうだな。こりゃあ呑気に食事って訳にもいかなそうだ」
「大丈夫ですよ!一人分位ならすぐに用意できますから」
シエスタが昼食を用意しようとしたが、引き止める。
「いや。まだいい。それより何か手伝える事はあるか?いつまでもタダ飯を食わせてもらう訳にもいかないからな」
「おう!助かる!裏から小麦粉を4袋持ってきてくれ!!茶色い袋だ!」
シエスタの返事よりも早く、マルトーが指示を出す。
「もう…。ごめんなさい。お願いできますか?」
困ったように頼むシエスタに「まかせときな」と言うと、マキシマは厨房から出て行く。
シエスタがその背中を見送り、自分の仕事に戻る。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「まさか4袋一気に持ってくるとはなぁ…」
生徒達の昼食が終わり、ようやく落ち着いた厨房でマルトーが呟く。
大の大人が肩に担いで持つようなものを四つ一気に軽々と持ってきたマキシマに脱帽していた。
固そうな黒パンをスープに浸しながら、マキシマは厨房の人達と談笑中だ。
昼食を終えた生徒は、さっさと部屋に戻るわけでもなく食堂でダラダラと過している。
「シエスタ!デザートを配ってくれ!終わったら部屋に戻ってもいいぞ!」
マルトーの放った言葉に、マキシマの耳がピクリと反応する。
「大丈夫ですよ!洗物もちゃんとやりますから」
「気にするな。あいつの熱、まだ下がってないんだろ?部屋に戻って看病してやりな」
「でも私の仕事だし・・・」
恐らく、今朝話してたもう一人の使用人の子の話だろう。
「・・・俺が配ろうか?」
「お!頼めるか」
押し問答を続ける二人にマキシマが提案すると、マルトーが賛成する。
「少し時間もあるしな。構わないぜ。」
「いいんですか?マキシマさん・・・」
シエスタが申し訳なさそうに聞いてくるが、「まかせときな」と頼もしい返事をするマキシマ。
「そのかわりと言ってはなんだが、そのデザートを一つくれないか?」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「…おい。ルイズの使い魔がデザート配ってるぞ」
「…本当だ。ルイズの使い魔がデザート配ってる」
マキシマがデザートを配り始めると、またヒソヒソ話しが始まる。
エプロンを着けたマキシマがデザートを配る姿はなかなかに異様だ。
その様子に気が付かずにお喋りに夢中な者も数人。
フリルの付いた派手な服を着た、金髪の少年が薔薇を片手に談笑中だ。
時折薔薇を鼻に持っていく姿は、まさしくナルシストである。
「おいギーシュ。お前今誰と付き合ってるんだ?」
「いい加減に教えろよ!」
取り巻きの生徒の言葉に「フ…」と微笑んで見せると、少年はまるで舞台の上に居るように熱弁を始めた。
「付き合う?僕にはそのような特定の女性はいない…。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだから!」
言い終えると同時に奇妙なポーズをとる。
「主演男優賞貰えるな…」
「バカのな…」
周りの生徒から散々に言われるが勝手に悦に入ってる少年の耳には届かない。
マキシマは気にせずに少年達のテーブルにデザートを並べる。
すると奇妙なポーズをとったのが災いしてか、ポケットから小瓶が地面に落ちた。
足元に転がってきたそれを拾い上げ、なんとなく中身をみてから、少年の目の前のテーブルに置く。
「落ちたぞ」
一声掛けて、その場を去ろうとするマキシマの耳に、予想外な言葉が聞こえた。
「あ、あれれ〜?ナンダこの瓶は〜。僕知らないなー!!」
不自然である。
「へぇー。人がせっかくあげた物を知らないとか言うんだ…」
少年の後ろから少し怒気を孕んだ声が掛かる。
少年が反射的に振り向くと、金色の髪を綺麗にロールさせた少女が腕を組み佇んでいる。
「せっかくあなたのために調合したのに、知らないって言うんだ…」
「まってくれモンモランシー!君が僕のためにわざわざ調合してくれたのは判る!だけど今は!今だけは!!」
モンモランシーの不機嫌そうな顔が、一転して赤く染まる。
「べ、別にギーシュのために調合したとか…。ギーシュが喜んでくれるのが嬉しいとか…。そんなんじゃないんだから…。
今だって、一緒にデザートを食べたいなとか…そんな事思ってないんだからね!!」
さっき自分で調合したとか言ったよな…。
周りの皆が同じ事を考えていると、一人の少女が少年に近づくと、手をワナワナと震えさせた。
「ギーシュ様…。やはりミス・モンモランシーと…」
「ケ、ケティ!?違うんだよ!違うんだ!僕の心の中に住んでいるのはいつだって君一人———」
パン!と少年の頬が小気味良い音を立てる。
ケティと呼ばれた少女は顔を両手で隠し、泣きながら走り去った。
「ふぅ…。困ったチャンだな」
「本当にね…」
何気なく放った言葉に、まさか返事が返ってくると思ってなかった少年は、ビクリと体を震わせた。
振り向けば、笑顔のモンモランシー。
「ハハハ…」
「フフフ…」
お互いに少し笑い合うと、モンモランシーが小瓶に手を掛ける。
小瓶の蓋を取ると、小瓶の横に置いてあったケーキに中身を掛ける。
苺の鮮やかな赤と、小瓶の中に入っていた、これまた鮮やかな紫色が美しくケーキを彩る。
その様子を、固まった笑顔で見ることしか出来ない少年の額に、一筋の汗が落ちる。
小瓶の中身が全てケーキにかかり、瓶がテーブルに再び置かれる。
美しく彩られたケーキは、その色とは裏腹に毒々しい匂いを放っている。
少量ならばその香りは人々の鼻腔を楽しませるであろうその液体は、今や見る影も無い。
マキシマ確認したその小瓶の中身は、間違いなく香水だった。
「アハハ…」
「ウフフ…」
もう一度笑い合うと、モンモランシーはケーキを少年の前に置く。
そして死刑台に掛けられた首に、斧を振り下ろすように言った。
「食え」
一瞬にして周りの空気が凍る。
そこで、乾いた笑い声を出しながら少年は言う。
「お、可笑しなことを言うんだね。冗談きついなぁ。これは明らかに食べることの出来ないそれじゃないか」
「そうね。確かに食べたら確実に体に悪いそれね」
モンモランシーはワインの瓶を掴むと、テーブルに叩きつける。
すでに空になっていた瓶は簡単に割れると、すぐに凶器と化した。
その切っ先を少年の喉に突き立てると、笑顔で言った。
「黙って食え」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「モウ一杯…。モウ一杯水ヲクレ…」
グラスをテーブルに叩きつけるように置くと、ぜえぜえと息を整えるギーシュ。
その頬には紅い紅葉が二つ綺麗に描かれている。
「お花畑が見えたよ…。赤と紫の鮮やかなお花畑が…」
マキシマはデザートの乗っていたトレイを脇に抱えてその場を去ろうとする。
しかし、ギーシュはそれを見逃さなかった。
「待ちたまえ。そこの君」
声を掛けられたマキシマは、その場で振り返り眉をひそめる。
「君のおかげで、二人のレディと僕の喉が傷ついた。どう責任を取るつもりだね?」
「自業自得っていうんだぜ。僕ちゃん」
マキシマの返答に、ギーシュの額に青筋が浮かび上がる。
「僕ちゃんだと!?誰に言っているのか判っているのか?」
「自分の失態を人のせいにしようとしてる貴族の僕ちゃんにだ」
そう言うと、周りの生徒達がどっと笑った。
「そうだギーシュ!お前が悪い!」
「何を言っているんだい給仕君。君があれを拾わなければこんな事にならなかったんだぞ」
「あれはお前のじゃないんだろ?じゃあ別に僕ちゃんには関係ないじゃないか」
その言葉に顔を赤くしたギーシュは、白い手袋を取り出すとマキシマに投げつけた。
「決闘だ!!」
ギーシュの言葉に、周りがざわつく。
マキシマは手袋を拾い上げると、承諾した。
「受けて立つぜ。僕ちゃん」
「この…!どこまでも憎々しい!」
そこで騒ぎに気が付いたルイズが、野次馬を掻き分けてマキシマに近寄る。
「なにしてんのよマキシマ!何の騒ぎ?」
まだいまいち状況が掴めていないルイズに、ギーシュが説明する。
「僕が彼に決闘を申し込んだ。それに彼が応じた。これは僕と彼の問題だ」
「何を言ってるのギーシュ!決闘は禁止されてるはずよ!」
「それは貴族同士の話だろう?そういえば彼は君の使い魔だったね、どうも頭に血が上りすぎて気が付かなかったよ」
そこでギーシュは、マキシマとルイズを見て、笑いながら言った。
「使い魔!ここは不出来な主人に免じて頭を下げれば特別に許してやらない事もない!」
「マキシマ!やっちゃいなさい!私が許すわ」
ギーシュの言葉にルイズが反応する。
大人げ無かったかと思っていたマキシマも、ギーシュの言葉にはカチンときた。
「これはお前と俺の問題なんだろ?嬢ちゃんは関係ないはずだ。それとも今更怖くなったのか?」
「…後悔するなよ。十分後にヴェストリの広場で待つ」
そう言うと、ギーシュは身を翻し食堂から姿を消した。
「ああ言ったのは良いけど。どうしよう…」
「心配するな。適当に相手してやるさ」
頭を抱えているルイズの肩に手を置くと、余裕の篭った声を掛けるマキシマ。
そんな二人の元に、シエスタが駆けつけてきた。
「こ、殺されちゃう…。マキシマさん!!謝りに行きましょう!!」
マキシマの手を取り、必死に引き止めようとするシエスタを、マキシマがなだめる。
「心配するなって。それより部屋に戻ってな。病人が待ってるんだろ?」
軽口をたたくマキシマの様子に、落ち着きを取り戻すシエスタだが、まだ不安がある様子だ。
「大きく出たけど、何か勝てる見込みはあるの?あんな奴だけど、結構強いわよ」
「言っただろ?俺の周りにも魔法みたいなもんがあったって。あの僕ちゃんの捻じ曲がった根性を叩き直してやるよ」
食堂を出るマキシマとルイズを、シエスタは不安げに見送った。
#navi(Maximusな使い魔)
#navi(Maximusな使い魔)
#setpagename(Maximusな使い魔 第06話)
「…何で全部片付けちゃうのよ」
顔を洗って帰ってきたルイズは、マキシマと教室を見渡して呟いた。
ルイズが居ない間に、マキシマが教室を片付けていたのだ。
その事にルイズは、何故か頬を脹れさせている。
「どうしたんだ?掃除なら終わったぜ?」
「そうじゃないのよ…」
ルイズは『私が教室を滅茶苦茶にしてしまったのだから、私が掃除をするんだ』と、意気込んでいた。
自分のしたことに責任を持ち、行動に移そうとしていたのだ。
しかし、マキシマが全て終わらせていた。完璧に。
ルイズのやる気が、口の開いた風船のように萎んでいく。
「なんだ。そんなに掃除が好きなのか?」
マキシマは気にした様子も無くルイズに聞く。
まさか自分のせいでルイズが落ち込んでいるとは思ってもいない。
そんなマキシマに、ルイズは「…はぁ」っと短くため息を吐く。
事が事だけに、怒るに怒れない。
むしろ、自分が居ない間に掃除を終わらせていた使い魔を褒めるべきではないか。
そう考えて、気分をリセットする。
「ま、まぁ…。よくやったわ」
「ん?ああ」
そう短く言葉を交わすと、マキシマが手に付いた埃をはらう。
「そろそろランチの時間じゃないか?またあの食堂でいいのか?」
高く昇った日を窓越しに眺めながらマキシマがルイズに問いかける。
朝食の時間を考えれば、昼食は今ぐらいの時間だろう。
「そうね。基本的に食事は食堂で。自室で食べる人もたまにいるけどね。毎日ってわけでもないでしょうけど」
答えながら教室を出るルイズと、それに続くマキシマ。
ルイズはマキシマに昼食を厨房でとるように伝えると、食堂の中へ入っていった。
それを見送り、厨房に向うマキシマ。
厨房の中を覗くと、マルトーが怒鳴るように指示を出している。朝以上に忙しそうだ。
中へ入っていくと、シエスタがマキシマを見つけ、小走りで近づいてくる。
「忙しそうだな。こりゃあ呑気に食事って訳にもいかなそうだ」
「大丈夫ですよ!一人分位ならすぐに用意できますから」
シエスタが昼食を用意しようとしたが、引き止める。
「いや。まだいい。それより何か手伝える事はあるか?いつまでもタダ飯を食わせてもらう訳にもいかないからな」
「おう!助かる!裏から小麦粉を4袋持ってきてくれ!!茶色い袋だ!」
シエスタの返事よりも早く、マルトーが指示を出す。
「もう…。ごめんなさい。お願いできますか?」
困ったように頼むシエスタに「まかせときな」と言うと、マキシマは厨房から出て行く。
シエスタがその背中を見送り、自分の仕事に戻る。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「まさか4袋一気に持ってくるとはなぁ…」
生徒達の昼食が終わり、ようやく落ち着いた厨房でマルトーが呟く。
大の大人が肩に担いで持つようなものを四つ一気に軽々と持ってきたマキシマに脱帽していた。
固そうな黒パンをスープに浸しながら、マキシマは厨房の人達と談笑中だ。
昼食を終えた生徒は、さっさと部屋に戻るわけでもなく食堂でダラダラと過している。
「シエスタ!デザートを配ってくれ!終わったら部屋に戻ってもいいぞ!」
マルトーの放った言葉に、マキシマの耳がピクリと反応する。
「大丈夫ですよ!洗物もちゃんとやりますから」
「気にするな。あいつの熱、まだ下がってないんだろ?部屋に戻って看病してやりな」
「でも私の仕事だし・・・」
恐らく、今朝話してたもう一人の使用人の子の話だろう。
「・・・俺が配ろうか?」
「お!頼めるか」
押し問答を続ける二人にマキシマが提案すると、マルトーが賛成する。
「少し時間もあるしな。構わないぜ。」
「いいんですか?マキシマさん・・・」
シエスタが申し訳なさそうに聞いてくるが、「まかせときな」と頼もしい返事をするマキシマ。
「そのかわりと言ってはなんだが、そのデザートを一つくれないか?」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「…おい。ルイズの使い魔がデザート配ってるぞ」
「…本当だ。ルイズの使い魔がデザート配ってる」
マキシマがデザートを配り始めると、またヒソヒソ話しが始まる。
エプロンを着けたマキシマがデザートを配る姿はなかなかに異様だ。
その様子に気が付かずにお喋りに夢中な者も数人。
フリルの付いた派手な服を着た、金髪の少年が薔薇を片手に談笑中だ。
時折薔薇を鼻に持っていく姿は、まさしくナルシストである。
「おいギーシュ。お前今誰と付き合ってるんだ?」
「いい加減に教えろよ!」
取り巻きの生徒の言葉に「フ…」と微笑んで見せると、少年はまるで舞台の上に居るように熱弁を始めた。
「付き合う?僕にはそのような特定の女性はいない…。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだから!」
言い終えると同時に奇妙なポーズをとる。
「主演男優賞貰えるな…」
「バカのな…」
周りの生徒から散々に言われるが勝手に悦に入ってる少年の耳には届かない。
マキシマは気にせずに少年達のテーブルにデザートを並べる。
すると奇妙なポーズをとったのが災いしてか、ポケットから小瓶が地面に落ちた。
足元に転がってきたそれを拾い上げ、なんとなく中身をみてから、少年の目の前のテーブルに置く。
「落ちたぞ」
一声掛けて、その場を去ろうとするマキシマの耳に、予想外な言葉が聞こえた。
「あ、あれれ〜?ナンダこの瓶は〜。僕知らないなー!!」
不自然である。
「へぇー。人がせっかくあげた物を知らないとか言うんだ…」
少年の後ろから少し怒気を孕んだ声が掛かる。
少年が反射的に振り向くと、金色の髪を綺麗にロールさせた少女が腕を組み佇んでいる。
「せっかくあなたのために調合したのに、知らないって言うんだ…」
「まってくれモンモランシー!君が僕のためにわざわざ調合してくれたのは判る!だけど今は!今だけは!!」
モンモランシーの不機嫌そうな顔が、一転して赤く染まる。
「べ、別にギーシュのために調合したとか…。ギーシュが喜んでくれるのが嬉しいとか…。そんなんじゃないんだから…。
今だって、一緒にデザートを食べたいなとか…そんな事思ってないんだからね!!」
さっき自分で調合したとか言ったよな…。
周りの皆が同じ事を考えていると、一人の少女が少年に近づくと、手をワナワナと震えさせた。
「ギーシュ様…。やはりミス・モンモランシーと…」
「ケ、ケティ!?違うんだよ!違うんだ!僕の心の中に住んでいるのはいつだって君一人———」
パン!と少年の頬が小気味良い音を立てる。
ケティと呼ばれた少女は顔を両手で隠し、泣きながら走り去った。
「ふぅ…。困ったチャンだな」
「本当にね…」
何気なく放った言葉に、まさか返事が返ってくると思ってなかった少年は、ビクリと体を震わせた。
振り向けば、笑顔のモンモランシー。
「ハハハ…」
「フフフ…」
お互いに少し笑い合うと、モンモランシーが小瓶に手を掛ける。
小瓶の蓋を取ると、小瓶の横に置いてあったケーキに中身を掛ける。
苺の鮮やかな赤と、小瓶の中に入っていた、これまた鮮やかな紫色が美しくケーキを彩る。
その様子を、固まった笑顔で見ることしか出来ない少年の額に、一筋の汗が落ちる。
小瓶の中身が全てケーキにかかり、瓶がテーブルに再び置かれる。
美しく彩られたケーキは、その色とは裏腹に毒々しい匂いを放っている。
少量ならばその香りは人々の鼻腔を楽しませるであろうその液体は、今や見る影も無い。
マキシマが確認したその小瓶の中身は、間違いなく香水だった。
「アハハ…」
「ウフフ…」
もう一度笑い合うと、モンモランシーはケーキを少年の前に置く。
そして死刑台に掛けられた首に、斧を振り下ろすように言った。
「食え」
一瞬にして周りの空気が凍る。
そこで、乾いた笑い声を出しながら少年は言う。
「お、可笑しなことを言うんだね。冗談きついなぁ。これは明らかに食べることの出来ないそれじゃないか」
「そうね。確かに食べたら確実に体に悪いそれね」
モンモランシーはワインの瓶を掴むと、テーブルに叩きつける。
すでに空になっていた瓶は簡単に割れると、すぐに凶器と化した。
その切っ先を少年の喉に突き立てると、笑顔で言った。
「黙って食え」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「モウ一杯…。モウ一杯水ヲクレ…」
グラスをテーブルに叩きつけるように置くと、ぜえぜえと息を整えるギーシュ。
その頬には紅い紅葉が二つ綺麗に描かれている。
「お花畑が見えたよ…。赤と紫の鮮やかなお花畑が…」
マキシマはデザートの乗っていたトレイを脇に抱えてその場を去ろうとする。
しかし、ギーシュはそれを見逃さなかった。
「待ちたまえ。そこの君」
声を掛けられたマキシマは、その場で振り返り眉をひそめる。
「君のおかげで、二人のレディと僕の喉が傷ついた。どう責任を取るつもりだね?」
「自業自得っていうんだぜ。僕ちゃん」
マキシマの返答に、ギーシュの額に青筋が浮かび上がる。
「僕ちゃんだと!?誰に言っているのか判っているのか?」
「自分の失態を人のせいにしようとしてる貴族の僕ちゃんにだ」
そう言うと、周りの生徒達がどっと笑った。
「そうだギーシュ!お前が悪い!」
「何を言っているんだい給仕君。君があれを拾わなければこんな事にならなかったんだぞ」
「あれはお前のじゃないんだろ?じゃあ別に僕ちゃんには関係ないじゃないか」
その言葉に顔を赤くしたギーシュは、白い手袋を取り出すとマキシマに投げつけた。
「決闘だ!!」
ギーシュの言葉に、周りがざわつく。
マキシマは手袋を拾い上げると、承諾した。
「受けて立つぜ。僕ちゃん」
「この…!どこまでも憎々しい!」
そこで騒ぎに気が付いたルイズが、野次馬を掻き分けてマキシマに近寄る。
「なにしてんのよマキシマ!何の騒ぎ?」
まだいまいち状況が掴めていないルイズに、ギーシュが説明する。
「僕が彼に決闘を申し込んだ。それに彼が応じた。これは僕と彼の問題だ」
「何を言ってるのギーシュ!決闘は禁止されてるはずよ!」
「それは貴族同士の話だろう?そういえば彼は君の使い魔だったね、どうも頭に血が上りすぎて気が付かなかったよ」
そこでギーシュは、マキシマとルイズを見て、笑いながら言った。
「使い魔!ここは不出来な主人に免じて頭を下げれば特別に許してやらない事もない!」
「マキシマ!やっちゃいなさい!私が許すわ」
ギーシュの言葉にルイズが反応する。
大人げ無かったかと思っていたマキシマも、ギーシュの言葉にはカチンときた。
「これはお前と俺の問題なんだろ?嬢ちゃんは関係ないはずだ。それとも今更怖くなったのか?」
「…後悔するなよ。十分後にヴェストリの広場で待つ」
そう言うと、ギーシュは身を翻し食堂から姿を消した。
「ああ言ったのは良いけど。どうしよう…」
「心配するな。適当に相手してやるさ」
頭を抱えているルイズの肩に手を置くと、余裕の篭った声を掛けるマキシマ。
そんな二人の元に、シエスタが駆けつけてきた。
「こ、殺されちゃう…。マキシマさん!!謝りに行きましょう!!」
マキシマの手を取り、必死に引き止めようとするシエスタを、マキシマがなだめる。
「心配するなって。それより部屋に戻ってな。病人が待ってるんだろ?」
軽口をたたくマキシマの様子に、落ち着きを取り戻すシエスタだが、まだ不安がある様子だ。
「大きく出たけど、何か勝てる見込みはあるの?あんな奴だけど、結構強いわよ」
「言っただろ?俺の周りにも魔法みたいなもんがあったって。あの僕ちゃんの捻じ曲がった根性を叩き直してやるよ」
食堂を出るマキシマとルイズを、シエスタは不安げに見送った。
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