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「ネコミミの使い魔-05」(2012/02/06 (月) 09:31:33) の最新版変更点
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#navi(ネコミミの使い魔)
わたしが目を覚ますと、辺りは暗くなっていて、ルイズお姉ちゃんが本を読みながらベッドに腰掛けているのが目についた。
わたしが身体を起こしたのに気がついて、こちらを見たお姉ちゃんの表情は笑顔だった。召喚された当初は厳しい顔つきのほうが多かった気がするけど、最近は険がとれたというか、優しい表情が増えたのは思い過ごしでもなんでもないと思う。
「ふあ……」
わたしがアクビをすると、
「もうすぐ夕飯よ、食べられる?」
しっかりと頷く。
食事はキョーコの教えで食べられるときにきちんと食べないとダメだということを教えられている。と、一度食べ物を残して怒られたのを思い出す、アレもいい思い出だった。
ルイズお姉ちゃんはしばらく私を見つめていたが、ふと気がついたように、鼻を鳴らした。
「ところで、ツェルプストーの香水の香りがするのだけれど」
名前を出すのも嫌と言わんばかりに表情が歪んだ。
そんなに強烈な匂いだったかなと先ほどまでの行動を思い出す。特に抱きしめられたり肉体的接触はなかったような気がするけど。
撫でられたことはなかったし交わした言葉も一言二言だ、匂いがつくようなことは何一つなかったはずだった。
「さっきね、呼ばれたの」
「授業中に?」
「うん、タバサお姉ちゃんを紹介されたよ」
ふむ、と手を顎において考えこむようにするお姉ちゃん。
ルイズお姉ちゃんが考えこむときは黙って集中するようにする、こういう時は誰も話しかけられないんじゃないかって思う。
けれど現実ではそんなことはなく、ちゃんと話しかければ答えてくれるし、難しい顔をしていてもきちんと人の話を聞いている。
「まあ、夕食を採りに行きましょうか」
こうしてベッドに座っても埒があかないと思ったのか、わたしを引き連れて食堂へと向かう。夜中はさすがに給仕のお手伝いはしない、食べたらすぐに眠くなってしまうからだ。
今日はお昼寝をしたからそれほどでもないけれど。
キュルケお姉ちゃんとルイズお姉ちゃんは中が悪いのは今まで生活をしている中でちゃんとわかっていた。ただ、わたしが接触するのはそこまで問題に鳴るとは思わなかった。別に喧嘩をふっかけてくるわけでもないし。
出された料理はとても美味しかった。
思わず食べ過ぎて動けなくなってしまいそうなくらいに食べてしまった。
食堂からの帰り道、わたしとお姉ちゃんは手をつないで帰る。それだけじゃなく自分の所有物であることを主張をしているかのように身体を寄せながらである。
大丈夫だよと言いたかったけれど、誘いに乗ってしまったのはわたしの方だから説得力がないような気がして、口を閉ざした。
私は黙ったまましばらくルイズお姉ちゃんを見つめていて、握られたてはとても暖かかった。ただ、長い髪が時々鼻をついてくしゃみが出そうに鳴るのはちょっと困った。
部屋に入ってそうそう私は椅子に座り、ルイズお姉ちゃんと相対した。
「ねえ、タバサに変なことをされたり、聞かれたりしなかった?」
顔をこちらに寄せて聞いてくる。
そういえばとわたしは思い出す、不可思議なことというか、強さの秘密について聞かれたような気がした。
「強さの秘密ねえ……」
ルイズお姉ちゃんが考えこむ。
強さも何も、コレは魔法少女になってから得た能力と、マミお姉ちゃんとキョーコに教えてもらったことをしっかり実行したにすぎない。
それがこのハルケギニアで強いというのなら、わたしは強いんだろう。
ルイズお姉ちゃんとかのメイジよりもである。
すべての平民がすべての貴族よりも劣っているというのなら、たしかに不思議なことではあるだろうけれど、私はその平民とはちょっと違う。コントラクト・サーヴァントでルーンを刻まれてから魔力を使ってもソウルジェムが曇らなくなって魔法を連発できるようになった利点はあるけれど、それだって複数のメイジに攻撃されれば、キョーコの結界だってどうなるかはわからない。
ただそれを説明するモチベーションというか、語彙は私にはないと思う。
「使い魔になることによって、特殊能力を得ることがあるっていうのを聞いたことがあるけれど、それなのかしら」
「特殊能力?」
「そうよ、例えば黒猫を使い魔にしたとするでしょう?」
ルイズお姉ちゃんは指を立てて説明を開始する。
「うん」
「人の言葉を喋られるようになったりするのよ」
「へー、便利だね、でもゆまは人間だし」
「ええ、古今東西人を使いにした例なんて無いし、どんな特殊能力を身につけるかなんて書物を見てもわからないわ、もちろん、ゆまの特殊能力が身についたから強いと断定することはできないし、わたしもしない。ただ、使い魔の特殊能力によって、何らかの利点があるとしたらそれが原因なんじゃないかしら」
っていうことは、魔力を使ってもソウルジェムが曇らなくなっているのは、それが原因ってことなんだろうか。
ルーンっていうのは不思議だな、とわたしは思った。
グリーフシードを探さなくてもいいし、魔女を倒さなくてもいいから楽だけども。
「不思議なら、トリステインのアカデミーにでも問い合わせてみる?」
「アカデミー?」
「そう、王室直属の、魔法ばっかり研究している機関よ」
「そこで研究されたらどうなっちゃうの?」
「とりあえずその不思議な宝石を中心に研究されるでしょうね」
「ダメだよ! コレが砕けたらゆまは死んじゃうもの!」
「へ?」
ルイズお姉ちゃんが信じられないという顔をする。
一度ソウルジェムを背負ったものは黒く染まって魔女になるか、それとも砕かれてその命を失うかの二択しか無い。
それまでして叶えたい願いがあるからこそ魔法少女になった、とは、一体誰の話だったろうか。
「そ、そう……じゃあ、とりあえずアカデミーはなしね」
「うん!」
ちょっと微妙な空気になったせいか、ルイズお姉ちゃんが咳払いをひとつする。
「そういえば明日は虚無の曜日なのよ」
「お休みの日だね」
「そのとおり、よく覚えていたわね」
曜日や月のことはルイズお姉ちゃんに教えて貰ってあった。
「というわけで、街に出かける準備をしましょう」
「準備?」
下着や私服のたぐいは衣装棚に入っているし、私の服はタバサお姉ちゃんが毎朝用意をしてくれている……そういえば、明日はお休みだけどきちんと用意してくれるんだろうか。
何もなければ見回収の他の曜日に着た分があるからいいんだけれど。
「ええ、と言っても今日のうちに準備することは何も無いんだけどね」
「ないの?」
「明日に備えて早く寝ちゃいましょうってこと」
そういって二人でベッドの中に入る。
昼間寝ていたけれど、疲れていたのかすぐに睡魔がやってきて眠ってしまった。
わたしが目を覚ますと、もうルイズお姉ちゃんは私服に着替えて待っているところだった。
窓の外を見るとまだ暗い時間で、自分もずいぶんと早く起きたと思ったのに、準備が完了をしているということは、それよりもずっと早い時間に目を覚ましたということだ。
私は飛び起きて、今日もやっぱりおいてあったタバサお姉ちゃんが用意した服を着て、そんなに慌てないのと苦笑いしているルイズお姉ちゃんの手を引いて顔を洗いに行ってから、ようやく一息をつく。そうして食堂へ行きいつも早いご飯を食べたら、馬小屋に向かうという。
馬。マミお姉ちゃんがいつか、白馬の王子様が私の前に現れたらいいのに、とつぶやいたらキョーコがゲラゲラ笑ってガチの大喧嘩になったのを思い出す。
「馬に乗るの?」
「ええ、ゆまは馬は初めて?」
「大抵の人は初めてなんじゃないかな……」
テレビで見たことがある第八代将軍が活躍する時代劇で、白馬に乗ってる人なら見たことがあるけれど。
「まあ、ゆっくりと行きましょうか」
そういって手を引いて馬小屋へと向かおうとした所に突然空が暗くなった。
上を見ると大きな龍が私たちを覆っていた。
「ウィンドドラゴン!?」
ルイズお姉ちゃんがびっくりしている。
そのドラゴンは私たちの前にすたっと着地をすると、載っていた小柄なタバサお姉ちゃんが地面に到着した。
「街に行くならこれに乗ればいい」
「何であんたが待ちに行くのを知ってんのよ」
「私はゆまのことなら何でも知っている」
ルイズお姉ちゃんが苦虫を潰したような表情で、タバサお姉ちゃんを見ているけれど、私の興味はドラゴンへと向いていた。小さなファンタジーみたいな生き物はいくつか見た記憶があるけどココまで大きいのは生まれて初めてである。
「これ……乗れるの?」
「……勿論」
「はあ……分かったわよ、連れてってくれるっていうんなら」
大空の旅は快適だった。
空から見える景色は新鮮で、森も、学園も小さく見えた。
なんでもこのドラゴンでも小さい方で、ハルケギニアではもっと大きくて巨大なドラゴンがいるという話だった。
トリステインの城下町はとても大きなところだった。
白い石造りの街はまるでテーマパークのようで、ココが平民の暮らす街だと聞くと、確かに身なりが質素な人が多い気がした。
道端で商品を売る人がいたり、のんびりと歩いている人がいたり、どこかへ急いで走っていく人も見かけた。
ただちょっと道は渋谷とかの大通りに比べるといくらか狭いような気もした。
「露店とかもあるんだね」
「ええ、この道はトリステインの宮殿へと続いていくのよ」
「この先にお城があるの!?」
「……お城にいる住人にろくな奴がいない、私がこの街のことを調べてある、そこに行く」
そう言ってタバサお姉ちゃんがわたしの手を引く。
「ちょっと、姫殿下ことまでバカにしたら許さないわよ」
「姫なんてろくな奴がいない、さ、ゆま、おいしいお菓子がある所を調べてある」
「食べ物で釣ろうっていうのね、やなやつ! やなやつ! やなやつ!」
わたしの興味は姫殿下よりもお菓子だった。
外にテーブルや椅子が並べてある喫茶店のような場所で席に着くと、給仕の人が注文を取りに来て、そこでも一悶着あったけれどとりあえず品物は届いた。
「ココで一番いいものを頼むなんて、そうかそうかやっぱりあなたはそういうやつだったのね!」
「あなたのネタはちょっと古い、昔の綺麗な昆虫を盗もうとした話のことなんて誰も分からない」
「食べ物が来てるんだから喧嘩はやめようよ」
というわけで頂きます。
甘い味が口に広がり、フルーツの酸味も効いて、いくらでも食べられそうなくらいにおいしい。
ルイズお姉ちゃんも味にはご満悦なのか、さっきまで憤怒の表情をしていたのに今ではすっかり笑顔になっている。
そして食べ終わると、
「今度はゆまにプレゼントがある」
「ちょっと待ちなさい、今度はわたしがゆまにプレゼントを用意する番よ」
「そんなのは決まっていない」
「ま、まあまあ、プレゼントは嬉しい……な?」
二人はひとしきり睨み合った後わたしを置いてどこかへと走りさってしまった。ココで待っていったほうがいいのか、どちらかを探しに行ったほうがいいのか。
わたしが悩んでいると後ろから声をかけられた。
「あなたがゆまちゃんなのね?」
振り返ると全裸のお姉ちゃんが立っていた。
……幻覚?
唐突の事で頭がよく働かない。
「全く人使いが荒いのね、ゆまちゃんの相手をしろなんて」
裸のお姉ちゃんはそんなことを言っていた。
一糸まとわぬ姿の人の知り合いだって思われるのはなんとなく嫌だった。
「わたしのなまえはイルルクゥ、あなたのお名前は?」
さっきからずっと名前を呼ばれていたようなきがするけどきっと気のせいだ。
「ゆまの名前は、千歳ゆまだよ」
「なるほど、ゆまちゃんなのね」
……お姉ちゃんたち早く帰ってきてくれないかなあ。
「あーっと! 用事を思い出したのね、それじゃあサヨナラなのね!」
と、イルルクゥさんがいなくなったと同時に二人が帰ってきた。
何か会話をしたような気がするけれど、全裸ということで記憶が吹っ飛んでしまっているのでよく覚えてはいない。
「はあはあ……ゆま、わたしが買ってきたのは……これよ!」
それは古ぼけた剣だった。
「なんとこの剣、しゃべるのよ!」
「おう! 姉さん! このちっちゃい子がふむふむ、使い手ってわけか!」
「わっ! 本当だ! すごいすごい! ……でも、剣だね」
「ええ、まあ、部屋において置く分にはいいでしょう?」
ルイズお姉ちゃんのセンスが良く分からない……。
「……ルイズはゆまのことを何もわかっていない、ゆまの使用武器はコレ」
といって見せてくれたのは……大きな木槌だった。
あれー、おかしいなあ、わたしハンマーで攻撃したことってあったかなあ。
というか、ふたりとも武器って、わたしそんなに武闘派に見える?
いくぶんかショックを受けたということで、この二人の勝負は引き分けということにしてもらった。喋る剣は道中うるさかったので鞘に入れておいた。
学園に帰る頃にはもう夜になっていて、夕食を食べた後もルイズお姉ちゃんたちの勝負は続いていた。
殴り合いを続けてどちら立っていられるかの勝負は全力で止めた。さっきのウィンドドラゴンに魔法をぶつけてどちらが痛いか勝負するというのも可哀想なので止めた。知的な勝負はルイズお姉ちゃんが嫌がったのでなかったことになった。
全くふたりとももっと仲良くでき……
「な、な、何アレ!」
「んー? ゴゴゴゴ、ゴーレム! 巨大じゃない!」
「……ふたりとも、シルフィードに乗る、逃げるのが吉!」
三人でウインドドラゴンの背に乗って、巨大ゴーレムの上空に回る。
「あれは、宝物庫?」
「そう」
「……ってことは泥棒なの、ルイズお姉ちゃん!」
「あのクラスのゴーレムを操るってことは、トライアングル以上のメイジね! ゆま、危険だから近づかないほうがいいわ!」
わたしもあんなのには近づきたくもなかった。
ティロ・フィナーレなら多少はダメージを与えることが出来るかもしれないけど、どれほど放てば良いのか分からない。
巨大なゴーレムの上空を旋回したまま、こちらは指を咥えていることしか出来なかった。
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