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#setpagename(Call of Different ACT7)
ゲイリー・「ローチ」・サンダーソン軍曹 サイモン・ライリー「ゴースト」中尉
元TF141 チェルノボーグ監獄 01:27:15
目的地に到着した二人は草むらに身を隠し周りの状況を見渡す、どうやら外の歩哨は比較的少なく広い範囲で少ない人数を対応させているようだ
草むら付近に近づいてくるほぼ無警戒の歩哨に狙いを付ける
「ローチ、あいつを捕まえてフーケの場所を吐かせるぞ」
「了解」
草むらと歩哨までの距離がおよそ10Mになり歩哨があちらを向いた瞬間ローチがナイフを持って音も無く飛び出す
10Mを数秒と経たず音も無く歩哨に背後から接近したローチが歩哨の杖を持った手を蹴り飛ばし杖を弾き飛ばす
歩哨が反応するよりも早くナイフを喉元に突き付け口を塞ぎ膝裏を蹴り足腰に力を入れることの出来ない格好にする
「叫んだり変な動きをしようとするなよ、その瞬間に人生が終わるぞ」
いつもの声からは考えられぬほど低く静かな声で歩哨を脅す
そのまま歩哨を草むらの中に引きずり込み質問する、ゴーストは歩哨の視角に入らぬようローチの後ろを陣取る
「土くれのフーケがここに投獄されたのを知っているか?」
口を塞いでいた手を離し喋れる様にする
「し、知ってる…!知ってるさ…!」
「OK、じゃぁフーケが何処の牢屋に入っているかは分かるか?」
「そ、それは…俺には言えな…いや、知らない…!」
ゴーストがローチの腰のデルフを引き抜き錆びた刀身を歩哨に見せる
「知ってるか?酷くボロボロで錆びた刃物ってのはな、スゲェ痛いらしいぞ…まずは左腕だ、言うか?」
ゴーストが歩哨の左腕をつかみ二の腕付近にデルフの刃を乗せる
「っ…!!分かった、分かった…!言います、だから止めてくれ…止めて下さい…!」
「いい子だ」
デルフを二の腕から離し切っ先を地面につけてクルクルと回す
「東側地下一階の…左側…奥から2番目…です」
「OKもし良かったら見取り図のある場所を教えてくれねぇか?それかその牢屋に隣接してる廊下でもいいけどよ」
「な、なぜそんな事を…?」
「いいから言えや、live or dieだぜ?」
「ひ、東側裏口から ち、地下一階に降りれば通路の一番奥右側に壁一枚で牢屋の通路一番奥に隣接している場所があります…!」
「OKだ、ご褒美に五体満足で命を助けてやる、だがしばらく寝とけ」
ゴーストがそう言って一度頷きローチに合図をすると口を塞いでいた今は空いている手で歩哨の顎を打ち抜き持っていたナイフの柄で後頭部を殴る
「え?…ぐッがぁ!!」
歩哨が一瞬で脳震盪から気絶へのコンボを叩きつけられて体から力を失い地面に倒れ付す、掌底を入れられた時に偶々横を向き一瞬だけゴーストを見た
歩哨は気を失う中覚えた、襲ってきたのは仮面をつけた男だ、と
正確にはブラックカラーのバラクラバにホワイトでスカルフェイスが描いてあり尚且つ視線が揺れていた為そう見えただけだが
「行くぞ、ブリーチの用意をしておけよ」
「了解」
二人はサプレッサーを装着したP90とM92Fを構え警戒しながら進んでいく
「あーあ、ついに天下の大盗賊土くれのフーケ様が捕まっちまったかい…」
東側地下一階奥から二番目左側の牢屋内で土くれのフーケが独り言を呟く
「まさか、最初からばれていたとはねぇ…ふふふ、今考えりゃ確かに無茶苦茶なアリバイだね…」
簡素も簡素、ただ其処に在るだけのベッドに腰掛け牢屋内を見渡す、ただ何も無い、そりゃそうだ、余計な物などあるはずが無い
何もすることは無い、脱走なんて絶対に不可能だ、杖なんて勿論持って来れるはず無いし例えあっても強力な固定化が掛けられた壁を錬金する事は出来ない
勿論その物質自体が非常に強固なため蹴っても殴ってもビクともしない、ただ縛り首を待つだけ
「ここで王子様が助けてくれるなんて展開は…あるわけ無いか、たかが罪人にさ…」
自嘲気味に笑いベッドの上で膝を抱える、すると
「あ゛ッギィッ!!」
男の声、否、喉から捻り出された音がフーケの耳に入る、恐らく牢屋の番をしていた人間の音だろう
その直後大きな肉が地面に叩きつけられるようなドシャッという音に混じり水滴にも落ちたかのようなビチャッという音も同時に鳴る
「な、なんだい…?!」
フーケが狼狽しベッドから立ち上がり身構える
コツ、コツ、コツと足音に混じりピチャッと音もする所を聞けば誰かが番人を殺し、血溜りなど気にもせず歩いたのだろうか
ついに番兵を殺したであろう人物が姿を現す、その人間は仮面で顔を隠し黒尽くめの見た目をしていた
男は少し肩を落として何かを諦め掛けているかのような雰囲気を醸し出している
「…もうお前が土くれでなくてもいい」
「は?どう言う事…私に何の用だい?」
すると声で分かったがその男は諦め掛けたようなオーラを消し背筋を伸ばした
「お前が土くれだな」
「そうだけど…一体何の用だい?」
どこと無く男の声が嬉しそうだがそんな事はどうでもいい、男は杖を持っているのだ、少なくとも友好的には見えない
「金持ちに雇われて私を殺しに来た殺し屋かい」
「いや、話があってきたのだよ」
「それはそれは、ならこちらに向けている杖を何とかしてくれないかい?」
「残念ながらそういう訳にも行かん、話というのはお前の腕を見込んでこちらに引き入れたいと思ってな」
「……他を当たりな」
「まぁ話を聞け、マチルダ・オブ・サウスゴータ」
フーケが顔を強張らせる、彼女にとってその名はそれほどまでに重要な事柄なのだ
「…わかった、話を聞くよ」
「理解がよくて助かる、もう一度アルビオンに付く気は無いか?」
「…ッ!ふっざけんじゃないよ!!アルビオンに付けだぁ?!」
「落ち着け、何も今のアルビオンに付けと言っているのではない、新たなアルビオン国家に付けと言っているのだ」
「…ハッ、あいつ等をぶっ潰してくれるならありがたい限りだよ」
「で、どうだ?私達のところに来る気になったか?」
「NOだと言ったら?」
男が杖を牢屋越しにフーケに突きつけ首をゆっくりと横に振る
「残念ながら死んで」
ズドォンッ!!!
男が全て言い切る前に爆音が響き、男が音のした方向へ向くのと同時に男の頭、体、兎に角、男から鮮血が撒き散らされる
火薬の爆発音や形容し難いカリカリカリと言う音を伴って、その後小さな軽い鉄を石畳に落としたようにチャリンチャリンと音が鳴り、男が倒れた
すると男の体が急に風に吹かれたように消える、聞いたことがある、確か風の魔法で偏在だったか
しかし今はそんなことよりも重要なことがある
フーケは咄嗟に声を上げたがそれで何かが変わるとは思わなかった、これ程強引な侵入だ、きっと私を殺しに来たに違いないと思っていた
地面に転がる小さな鉄のような物を蹴りながら歩いてくる、コツコツコツと
再度死を覚悟したフーケは見えた顔に驚いた、見たことのある顔だったのだ
「あ、アンタは…?!」
「やぁこんばんわ、ミス・フーケ、貴女に会いに来ましたよ」
顔と言うには語弊のあるスカルフェイスがひょっこり顔を出して挨拶をしてきた
「ミスタ・ゴースト?!一体何のために?!」
ゴーストはM92Fをホルスターから引き抜き笑うように目を細めた
「俺がフーケをひっ捕まえて何をすると言っていたか思い出して下さい」
フーケは顔を青くしてハッハッと息を荒くして目に涙を浮かべる、そう言えば恐ろしい事を言っていた
まさかただ殺すよりも酷い事をする為、それだけの為にこんな所にまで来るとは思わなかった
「は…はは…ふふふ」
もう、笑いしか出なかった、絶望、恐怖、絶対的な死、逃れる術は無い
ゴーストが牢屋の鍵にM92Fを当て、引き金を引く、いとも容易く鍵が壊された
牢の扉を開け一歩、また一歩と近づいてくる
するとM92Fをホルスターにしまい手を差し出した
「…ふぇ?」
目に涙を浮かべきょとんと女の子座りのフーケが驚きの声をあげる
「冗談ですよ、ミス・フーケ、貴女を助けに来ました」
「え、ふぅぇ…」
フーケの顔がみるみるふにゃっと崩れていく、ゴーストはフーケの手を取り体を優しく引き起こす
「行きましょう」
ゴーストが優しく囁く…が、切羽詰った声でローチがゴーストに激を飛ばす
「早くして下さい!!さっきの爆発でココに人が押しかけてくるのも時間の問題です!出る為には人を殺さなきゃならなくなりますよ!」
「分かった、分かった!畜生!もうちょっと甘い空間を与えてくれてもいいじゃねぇか!38になってようやくだと思ったのに!」
「あ、あんたらまさかココまで一人も殺していないのかい?!」
「そうですよミス・フーケ、さぁ、急ぎましょう」
ローチは二人を連れ、警戒しつつ走りながら考えていた、一人も殺していないが先程のはどうなんだろう、いやいやきっと魔法で作った何かだノーカンノーカン
フーケは二人に守られながら穴の開いた道を越え通路を走る、すると途中で倒れている二人の人間を見つけた
「これ、確実に、片方…!」
「死んでない、死んでなんていませんよ、全く、ローチも酷い事をする」
そう、先程無力化した二人である、片方は泡を吹いて倒れもう片方はどう考えても力技で叩き潰した感が強い、地面真っ赤だし
勿論泡を吹いている方がローチ、レッドカーペットを作ったのがゴーストだがどう考えてもフーケの言う「片方」はゴーストの方だ
「確かに泡を吹いてた方が酷いってなら俺ですけどね!」
ローチが半ば自棄で言う、流石にそろそろゴーストの無茶苦茶な物言いにも慣れてくる
階段に差し掛かったところでローチは止まり二人を待たせる、どうやら上から降りて来ているようだ
「…クソ…仕方ない」
ローチが階段の下の階へと腰からスモークグレネードを手に取りピンを抜き投げる
ガン、カラン、キンと鉄の音が下に向かって転がり落ちていく、その後少しのラグを置き煙が撒かれる
「下だ!下の階にいるぞ!!急げ!」
兵士が怒号を上げ地下一階を調べようともせず全員を引き連れて駆け下りていく
足音が遠ざかって行った頃合を見てローチが付いて来いと指示を出す
「あんた等…慣れてるんだね…」
「どっちかと言うと前方の敵を皆殺しにする方が慣れっこだけどな」
フーケの問いにそれ以上の答えを示すゴースト、敬語どこ行った
「お喋りは後です、ルイズに朝までには戻るつもりだって言ってるんですから」
ローチがP90を再度構え階段を上ってゆく、どうやら牢屋方面内部に人が密集したため関係の無いと思われる場所は過疎状態となっている様でザル警備だ
出口へと続く通路を走ると先程ゴーストが気絶させた人間がそのまま気絶していた、どうやらこの道を誰も通らなかったようだ
出口のドアをゆっくりと開け、周囲を確認する、先程より人が多くこのまま見つからず逃げるのは難しそうだ
「あいつを狙え、上手く行けば逃げれるようになる」
ゴーストの指示を聞きローチは一度息を深く吸いしゃがんだ状態でP90を構える、全く動かない、まるで石になったように
「足を…掠らせ…よく狙…3…2…1…許せよ」
カリンッ
数秒後に歩哨が倒れ足を押さえのた打ち回る、それに気付いた他の歩哨が足を押さえている歩哨の方へ走っていく
「急げ!」
ゴーストの声で三人が一気に外へと走り歩哨の視界外を通りチェルノボーグの監獄から逃亡した
ゴーストは一頭の馬にフーケと二人乗りを楽しみ、ローチは一人で馬を操る
「ゴースト!俺はこのまま学院に戻ります、大事な妹が帰りを待ってるんでね!」
「あぁ!分かった!今日は付き合わせて悪かったな!今度礼をする!」
ローチはゴーストの言葉を聞いた後サムズアップして離れて行った
「アイツ、妹がいたのかい…?」
「あぁ、ルイズってガキの事をまるで妹のように溺愛してんだ」
「妹のように…かい」
フーケが声のトーンを暗くする
「お前にもいるんだろう?フーケ、おっと俺に敬語は似合わねぇから素にさせて貰ってるぜ」
「それも…いつばれたんだろうね…ミスタ・ゴースト?」
ゴーストには見えないがフーケが一度驚きの顔をして苦笑いする、彼はどこでその情報を得たのだろう、と
「こいつは普通にお前が言ってるのを耳に挟んだ、それと俺の事は普通にゴーストと…いや…」
ゴーストが一度言葉を途中で止め少し考え込む
「どうしたんだい?」
「サイモンと呼んでくれ、俺の本名はサイモン・ライリーだ」
にやりと笑って(見えない)明るい声でフーケに伝える
「それはアンタにとって重要な事じゃないのかい?それと…どうして私を助けたんだい…?
アンタにとって私に本名を教えるのも私を助けるのにもメリットが無いじゃないか」
「あぁ?んなもんお前に惚れたからだよ、言わせんな恥ずかしい!」
「なっ…ほ、惚れたってアンタ…!」
「あいむしんかーとぅーとぅーとぅーとぅとぅー…」
フーケが顔を真っ赤にして大声を上げる、しかし当のゴーストは鼻歌を口ずさみ馬の手綱を握ったままだ
フーケは自身の容姿に自信はあったが色恋沙汰に手を伸ばす心の余裕も時間も無かった
そして何よりもこれ程までにストレートな好意を向けられた事が無いのだ、セクハラしてくる人間は数あれどこんな事は一度も無かった
精神的にも身体的にも生娘なのだ、もう顔真っ赤で目も当てられない状態である
そういった所で事前に場所を確かめておいたゴーストがある町で馬を停めた、町の名前は考えてない、王都以外ならどこでも良かった、ムシャクシャ(ry
「自分の首にどれだけの賞金が掛けられていたか分かるか?」
「確か…六万エキューと聞いた事があるよ」
「OKだ、全額じゃなくて悪いがその内の半分をお前にやる、それで故郷に帰って妹さんと仲良く暮らしな
一週間以内に持ってくる、それまでここの宿屋か何処かに隠れていろ、こいつをやる」
フーケは絶句して口を開けたままになる、そりゃそうだいくら惚れたと言ってもそこまでして貰うなどありえる筈が無い
その上袋を一つ手渡された、ずしりと重く金属の音がする、先ほど言っていた言葉から金である事が予測される、しかし量が多い
「どうしてここまでしてくれるんだい…?」
「そうだなぁ…気まぐれだな」
「アンタ…狂ってるね…私を助けて見つかったら指名手配されるって思わなかったのかい?」
「そうだな狂ってる、それに指名手配は慣れっこさ、じゃぁな」
ゴーストは身を翻しひらひらと手を振って馬へと歩いていく
「待ちなよ…サイモン、私にはまだアンタに用があるんだからさ」
「あー?」
フーケに腕を掴まれ引き止められた事でゴーストが気の抜ける声を出す
「私は…まだアンタに礼をしていないよ…」
フーケはごくりと唾を飲みゆっくり、途切れ途切れに言葉を紡ぎ出す
「わ、私の…こんな身体でよければ…自由にしてくれていいよ…は、初めてだから…上手く…出来ないかもだけど……」
ゲームや漫画のイケメンキャラならばここで自分の身体を大事にするんだ~等と言うだろうが残念ながらゴーストは兵士であってファンタジーのイケメンキャラじゃない
「じゃぁ遠慮無く頂いちまおう、そこのINNでいいな?フーケ」
「ま…マチルダって呼んで…サイモン」
信 頼 と 実 績 の 朝 チ ュ ン
同時刻 ・・・・・・ ・・・・・ 場所記録無し
彼女は目に涙を浮かべ必死で逃げていた、廊下を走り、草むらへ隠れ、ただただ逃げていた
「ルイズ!まだお説教は終わっていませんよ!ルイズ!どこへ行ったの?!」
彼女を追う人の声がする、彼女はいつもより視線が低く歩幅も小さい、明らかに異変だ、しかし彼女にとってそれは異変ではなかった
声を殺し、涙を流す、痛みがあるわけではない、ただ悔しかった、悲しかった、苦しかった
「ルイズお嬢様は難儀だねぇ」
「本当だね、上の二人のお嬢様は、あんなに魔法がおできになるっていうのに」
声が聞こえる、自分を探す人達だろう、彼女はまた悔しくて涙を流し奥歯を噛み締め逃げ出す
走り続け目的の場所に到着した、とても大きな庭にある池だ、もっと言えば目的の場所は池に浮かんでいる小船
彼女はその船に入り元々用意していた毛布に包まって顔を隠し、声を殺し、泣く
目も瞑り泣き続けしばらく経っただろうか、ふと目を開け毛布を取るとそこは先程までの池ではなかった
小さな小屋、窓もガラスはなく扉も無い、否、扉どころか後ろを見ると床さえも無かった、船は支えられている
「何よこれ…」
身体はもう幼き少女ではなかった、魔法学院で勉学を学ぶ今のルイズだった
船から立ち上がり隙間の開いた空間を跨ぎ横の床に立つ、恐る恐る小屋から出るとやはり知る所ではなかった
木々が生い茂り大きな湖があり、坂を上がった所には木で出来た家が建っている
立っているだけではいけない、と坂を上るとそこには信じられない光景が広がっていた
「何よこれ…!人が…!!」
数え切れぬほどの人が家の前で死んでいた、見れば家の外だけではない、家の中にも大量の人間が死んでいた、そして今も死に続けている
「ローチ、転送が完了したぞ!俺が玄関を抑えている間にDSMを回収しろ!」
家の前に見た事のある人物が聞いた事のある声で現れた、銃を構えて撃っている、どうやらローチもいるらしい
ローチも家から出てきた、やはり銃を構えて撃っている、次々と人を殺していた、見た事の無い光景、信じられなかった
「これより回収地点へ向かう!ローチ、行くぞ!」
その声でゴーストとローチが走り出す、自分も走り出す、怖い、怖い、怖い、怖い、ローチの元へ走る、笑って欲しい、冗談だと言って欲しい
「ローチ!待って!教えて!!これは、これは何なの?!」
しかしその声は届かない、振り向いたかと思えば自分にではなく後ろの銃を持った人を殺すために、立ち止まったかと思えば木の後ろに隠れるため
ゴーストも同じように銃を撃ち人を殺し走る、二人とも服は赤黒くなり無傷どころか既に大怪我を負っている事がわかる
「今から向かいます!ローチ、行くぞ!」
ゴーストが誰と喋っているのかも分からないが何かに答えローチを呼ぶ、ローチはそれに合わせ走り出す
急に地面が炸裂する、爆発したようだ、何が何か分からない、恐怖で涙が出てくる、頭を伏せ身体を丸める
「いや、嫌、イヤ、いやいやいやああぁぁぁぁ!!!助けてよ!誰か助けてよぉ!!」
もうプライドもクソも無い、ただ怖かった、泣き叫ぶ、何かに縋り付きたい、誰でもいいから助けて欲しい
しかし自分よりも遥かに恐怖を感じるはずの人間がいる事を思い出す、その二人を見ようと顔を上げたとき
ローチが爆発に吹き飛ばされた、木に身体を叩きつけられ、地面を転がり落ちていく
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!ローチ!!!!」
ルイズが震える足で走り出す、しかし足がもつれ倒れてしまう、痛みは無い、ただ立ち上がり走るだけの事さえ出来ない自分が悔しい
「しっかりしろ!」
ゴーストがローチの服を掴み引きずる、ゴーストが何かを投げた、赤い煙が上がる、ルイズは立ち上がり声を荒げる
「走れ!走りなさいよ!ルイズ!!ただ前に進むだけじゃない!いくらゼロでも走るだけなら誰だって出来るわ!走りなさい!!!」
ルイズはフラフラと体を前に倒し重心を前に移動する、そしてそれを支えるように足を前に出す、それを繰り返し走る
何か空を飛ぶ変な物が先程までルイズがいた所に滞空する、ドラゴンには見えないがその何かが吼えた
後ろの人間達を紅い霧へと変化させて行く、ただ殺しているのだ、ローチも引き摺られながら銃を撃っている
次に少し離れたところに先程の空を飛ぶ何かに似た物がいくつか飛んでくる
「頑張れ!」
ゴーストがそう叫んだ時ローチの腕が力なくだらんと垂れる、持っていた銃も放して力無く引き摺られる
「いやぁっ!!ローチ!!駄目!死んじゃ駄目ぇ!!」
ルイズが引き摺られていくローチに縋り付こうとするが手がすり抜ける、触れる事が出来ない
ここでようやく理解した、これは夢なんだと、しかし夢だと理解してもあまりにも現実的過ぎる夢に完全に夢だと認識できない
自分は見る事しか出来ないのか、歯を食いしばる、触れる事は出来なくても声は出せる、聞こえていない様だが呼ぶ
「ローチ!しっかり!死んじゃ駄目!頑張って!」
ローチがうっすらと目を開ける、それにいち早く気付いたゴーストがローチの腕を掴み引っ張り上げる
「さぁ立つんだ!」
肩を支えローチも足を引き摺りながらも歩いていく、先程飛んできた何かから人が何人か出てくる
「もうすぐそこだぞ!」
出て来た内で服装の違う一人がローチとゴーストに近づく、何か…嫌な予感がする、近付かせてはいけない、そんな気がする
「DSMは持ってきたか?」
「駄目…駄目…駄目!駄目よ!」
しかし通じない、服装の違う男はローチとゴーストに近付いてしまう
「ここに!」
「ご苦労・・・これで一つ片付いた」
男は笑った、哂った、にやりと笑みを浮かべて、手を腰に回す、嫌な予感は………的中した
後ろから見る形になっていたローチの背、場所的には腰と言うべきか、そこから血が吹き出た、二度、三度、小さく血が溢れる
ローチの身体から力が抜けて行くように倒れる、男はその手に銃を持っていた、この男が撃った、裏切った
「嫌ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「何をする?!」
ゴーストが銃を手に取ろうとする、しかしゆったりと、余裕を持った動きでゴーストの頭に銃を突きつけられ抵抗の時間も無く撃たれた
ゴーストの頭が大きく仰け反り血や紅い何かが背後に撒き散らされる、死んだ、確かめるまでも無い
「あぁ、ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
二人に触ろうとするが触れる事は出来ない、やはりすり抜ける、涙が溢れてくる、嗚咽がこぼれる
男が指示をしたのか何人かの人間がローチとゴーストを運ぶ
「やめて!やめてぇ!!」
男に掴みかかろうとするが無駄、盛大にすり抜けて転がる、倒れたまま止めてと懇願するが聞こえていない
放り捨てた二人に何かを掛けている、駄目だ、駄目だ、駄目、駄目、駄目、駄目
二人を撃った男が吸っていた葉巻を二人に投げる、止めれない、もう立ち上がる事さえ出来ない
二人を炎が包みブスブスと焼いていく、燃やしていく、自分はただ見る事しか出来なかった
「やめてええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
「やめてええぇぇぇぇぇぇ!!」
何とか夜のうちに帰って来れたと安堵したのもつかの間、ルイズが跳ね起きた
「どうした?!ルイズ、大丈夫か?」
ローチがルイズの元へ素早く移動する、たった今まで悪夢を見ていたのだろう
「はっ、はっ、はっ…」
息が荒い、過呼吸寸前である、ローチはルイズの頭に手を置き撫でる
「落ち着けルイズ、これが現実だ、いままでお前が見ていたのは夢だ、現実じゃない」
「はっ…ローチ…ローチ、ローチ!」
ルイズはローチの名を何度も呼びローチの胸に顔を埋め、泣き出した、ローチは大丈夫だと何度も言い聞かせ優しく撫で続ける
ルイズは今だ鮮明に覚えている夢の内容とふとある事を思い出した、それは二人を始めて見た時である
ローチは体中大怪我だらけで腹部から夥しい量の血が出ていた、ゴーストは体中大火傷を負っていた
ルイズは泣きじゃくりながら夢の出来事をローチに伝える
「人が、いっぱい、ヒック、死んで、ローチと、グスッ、ゴーストが、エグッ、逃げて、二人とも、撃たれて、焼かれて…!」
「…そうか、怖かっただろう、忘れるんだルイズ」
「ローチ、お願い…ヒック…一緒に寝て…私、怖いわ…」
「あぁ、分かった、一緒に寝てやる」
ローチはルイズにしがみ付かれながら頭を撫で、歌を歌う
「Sing, sing a song
Sing out loud
Sing out strong
Sing of good things not bad
Sing of happy not sad.」
やがてルイズは安らかな寝息を立てて再度眠りの世界へと旅立った
「使い魔の契約…メリットは大きいが何かヤバイ物があるな…俺の過去の記憶を見たのか…?」
グローブで覆われた左手の甲を見て小さく呟いた
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