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#navi(Ruina 虚無の物語)
ルイズに矢の呪文を披露してから数日が過ぎた。
あれから魔法は使っていない。
理由として、自分の扱える魔法の中に日常生活で使えるようなものがほとんど無いという事も挙げられる。
せいぜい灯りを作り出す魔法ぐらいである。
他の魔法も威力を落とせば使えるかもしれないが、そこまでする必要性も感じられなかったという事も原因の一つである。
また先日教師達に事情を説明した結果、自分達は「東方から召喚された平民のメイジとその友人達」として認識される事となった。
校長と名乗る老人が「よかった、これで貴族だったら国際問題になっとったわい」と安堵していていたのが印象深い。
なお、事情を知らない生徒は広場にある岩の痕の原因がルイズの失敗魔法であると勘違いしているらしく「ゼロのルイズ」呼ばわりする者は日に日に減って行った。
今更ながらあの爆発の危険性を知ったのだろう。
もっとも本人はそれを望んでいないようだ。
なお、使い魔である自分はともかく、ネル・キレハ・エンダの3人までルイズの部屋で寝泊まりすると流石に場所を取るため、使用人宿舎の使用許可を貰ってきた。
使用人が彼女達をちゃんと受け入れてくれるか不安だったが、反発は無かった。
むしろ、遠方の話が聞ける上に偉ぶる様子もないとあって使用人達からの人気は割と高い。
また、話の礼にとハルケギニアにおける常識や国の情勢等を教えてもらった。
そんなある日の朝、水場で下着を洗濯していると青い髪の少女と目があった。
短く切った青い髪と眼鏡が印象的な、小柄な少女だ。
服装から察するに学院の生徒のようだが、このような場所に何か用でもあるのだろうか。
そう思って洗濯を続けていると、声をかけられた。
「質問がある。」
直球だ。
何事かと尋ねると先日の晩のシエスタとのやり取りを見ていたとの事だ。
自分達が何者なのか探りに来たのだろうか。
注意して見ると、少女は杖を片手にしっかりと握り重心を低く落としている。
有事には咄嗟に飛び退いて魔法を唱えるつもりなのだろう。
警戒を解くために作業を中止して両手を軽く上げる。
そして遥か遠方にある村の片隅で薬師をしていた事、
村の近くで遺跡が発見されたため探索にやってきた者達がいる事、
共に召喚されたのはその探索仲間である事、
シエスタに関してはあの夜偶然出会った事、
彼女の武術が探索仲間のそれに似ていたため、話しかけた事を正直に告げる。
また、できればあの夜の事は内密にして欲しい事も伝える。
メイドの中にメイジ殺しがいる等と言う噂が立つと困るからだ。
「あれほどの腕で、何故使い魔に?」
故郷でやり残した事がないからだと答える。
親代わりだった人物はすでに亡くなっている上、思い出の残る家も燃やされた。
生みの親に関しては、むしろ忌まわしい記憶しかない。
ただ、仲良くなった仲間や幼馴染が村に居たから自分も残っていた程度だ。
ここが新しい居場所になるならばそれでもいい、ただ友人が帰る手段は見つけておきたいだけだ。
それに、こちらに呼ばれた以上何か成すべき事があるのだろう。
そう思った。
その後、どのような魔法を使えるのか。薬師としての腕は確かなのか。どのような薬を調合できるのか。毒の知識はどれだけあるのか。等と様々な事を質問された。
魔法に関しては攻撃の魔を主として、治療の魔法も多少心得ていると。薬師としての腕は悪くないと思っていると答えた。
別れる直前に名前を尋ねると、少女はタバサと名乗った。
貴族にしては珍しい名前だ。
そんな出来事もあったが、特にそれ以外は何も起こらずに虚無の曜日と呼ばれる日となった。。
この日は休日であるらしく、授業もないために暇を持て余す生徒が多いらしい。
雲一つない快晴であり、よい洗濯日和だ。
陽が昇り切ったならば草原で居眠りするのも一興かもしれない。
「王都に服を買いに行くわ。あんた達もついて来なさい。」
そんな日の早朝にルイズが声をかけてきた。
自分はそこまで服を気にしていなかったが
「たしかに、こっちの服見てみたいよね。」
「そうね。あと従者らしい服もあった方が便利よね。」
となんだかんだで年頃の女性二人は同意し、
「服はともかく、外に出るならエンダも連れてけ。おっちゃんやシエスタが服着ろとか虫を食うなとかすごくうるさいんだ。」
「ふ、服は着なさい!あと虫を食うって何よ!?」
窮屈なのだろう、外に行きたがるエンダとその発言に戸惑うルイズ。
ちなみにおっちゃんとはマルトー氏の事である。
迷惑をかけているようだ、王都で土産を買っておこうと心に誓う。
「あ、そういえば私達の持ってるお金って……」
「さすがに通じないわよね。」
何か売って金にするのはありかも知れない。
ネルに頼み、売れそうな物を見繕ってもらうことにした。
しばらくして学院の門の前で集合した。
念のために戦闘用の漆黒のコートを着て愛用の杖を懐にしまう。
キレハは銀糸で紋様が刻まれた黒い衣を羽織り、琴を模った弓を背負っている。
ネルは衣服の上から胸当てをつけており、腰に剣を2本佩いている。
エンダは薄衣を着て猫の耳を模したフードを被っており、可愛らしい。
さりげなく懐に竜の力を振るうための石を仕舞っている辺り、用心はしているようだ。
ルイズは、いつもと違う服装をしている自分達を見て命令を下した。
「しっかり護衛しなさい。」
気を引き締めつつ、馬4頭に乗って王都トリスタニアへ向かった。
ちなみにエンダはキレハと二人乗りである。
トリスタニアは水の国トリスタインの首都だ。
王城をはじめとした白い石造りの建築物が美しく、王家と関わり深い属性にちなんで水の都とも言われている。
およそ5メイルの幅の大通りを大勢の人が行き来しており活気に溢れている事が伺える。
その王都の入口に自分達は到着した。
「うわぁ、きれい。」
「綺麗ね。」
「おおっ!」
皆が思わず感想を述べた。
「そう、ここが王都トリスタニアよ。」
誇らしげに、ルイズが言う。
そして言葉を続ける。
「これから仕立屋に向かうけど、迷わないようちゃんと私について来なさい。」
皆が頷いた。
大通りは活気に溢れ、酒場や詰所といった施設も見えた。
また、衛兵と思わしき人物の姿を頻繁に見かける事に気付く。
何かがあったのだろうか?
そんな事を思いつつ、受け取った財布をコートの内に仕舞い周囲に気を配る。
スリの中には魔法を用いる者もいると言う。
ルイズ曰く、貴族のすべてはメイジだがメイジのすべてが貴族と言う訳ではないとの事だ。
どうやら落ちぶれた貴族や傭兵に身をやつした元貴族の三男坊などがそのような立場となっているらしい。
そのような者が窃盗となっていた場合魔法を用いて盗みを行うため厄介であるとの事だ。
そうやって歩いている途中、キレハが何か感づいたようだ。
そして次の瞬間、ネルが自分の懐へ伸びていた腕を掴んだ。
「フィー、危なかったよ。」
素直に礼を言う。
腕を掴まれた男はどうにか逃れようとしているがネルの腕力により、逃げられない。
ただの少女にしか見えないが、これでもネルの力は恐ろしいほどに強い。
かつて遺跡を探検していた時、自分達を押しつぶそうと迫ってきた壁や天井を受け止めた程の力だ。
たとえ近接戦の訓練を受けていたとしても、彼女を振りほどくのは至難の業である。
結局、スリは衛兵に突きだされていった。
「全く、何やってんのよ。」
ルイズが呆れと怒りが混じった表情をしてこちらを見つめている。
素直に謝罪し、改めて大通りを行く。
仕立屋でそれぞれの私服と従者服を発注し終えた。
初めは皆が遠慮していたが
「使い魔とその従者のあんた達の服が惨めだとヴァリエール家の沽券に関わるのよ!」
と強い口調で言われ、貴族と言うのも面倒なものだと実感する。
「そう言えばヴァリエール家ってどんな所なの?」
ネルがルイズに質問した。
それにルイズは驚いていた様だが、すぐに納得した様子を見せる。
「そういえばあんた達は遠いところから来たのよね。」
皆が頷く。
「ちょうどいいから説明してあげる。光栄に思いなさい。
ヴァリエール家はこのトリステイン王国の公爵で……」
説明が始まった。
どうやら自分は非常に有力な貴族の使い魔となってしまったようだ。
公爵家となると、王家の血筋も継いでいるのではなかったか。
しかし、学院の生徒の声のかけ方は有力な貴族に対するそれとは思えなかった事から、ハルケギニアの貴族にとって魔法の腕は最重要視される物なのだろう。
そう1人で納得する。
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