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#navi(Call of Different)
#setpagename(Call of Different ACT5)
授業中
ローチが教室の端の方で腕を組み体を壁にもたれかけて惰眠を貪る
いびき等は一切かかず、ただひたすら静かに、無言に、微動だにせずまるでオブジェの如く眠る
ローチにとってこの学院の授業は全く持って興味を持てず、あっても役に立たないと感じた結果だ
一般学生の授業中の居眠りと違う点は必要だから眠っている事だ、学生にとって興味の無い教科の教師の言葉は子守唄と相違ない
彼は基本的に眠っている時間が非常に短くそれだけでは圧倒的に睡眠時間が足りないのだ、故に空いた時間に睡眠を取る
確かに授業がつまらないと感じたからと言うのもある、その証拠にルイズが「次は歴史ね」と呟いたとき「歴史の授業は勘弁願いたいな」と言っていたのだ
ちなみに彼が起きている間に彼の視界内で彼に聞こえるようにルイズの悪口を言おう物なら
教室の端から「ガチャッ」だの「カキンッ」だの「シャキッ」だのヤバイ音がする
顔を向ければDE(※1)にマガジンを装填していたりマガジンを抜いて引き金を引いてハンマーを鳴らしたりナイフを抜いたりしている
決闘を見た人間ならば恐怖し、何も言えなくなる
あと眠ってる筈なのに偶に聞こえてくる
そう言ったローチによる恐怖政治で何も異常なく全ての授業を終えた
「ねぇ、ローチ?授業中に変な音聞こえなかった?」
「ん?俺は寝てたから知らないな」
「そう」
ルイズとローチが聞いているだけなら至って普通の会話を繰り広げる
無言の圧力を掛けられていた本人達ならばきっと文句を言うだろう、そしてローチがDEのグリップを握ると同時に顔を背けて黙るだろう
「あ、ローチ、明日街へ剣を買いに行くわよ」
「ん?授業はどうるすんだ」
「明日は虚無の曜日って言って休みなのよ」
「でも剣なんて何のために?」
「ローチに持って貰うのよ」
「別にいらないが…銃もナイフもあるしな」
「でもナイフより大振りの武器もあった方がいいと思うし銃だって直ぐに弾切れになるじゃない」
ローチはふーんと納得して「OK」とルイズに返事をする
ルイズは可愛くやったと小躍りする、ローチがルイズの頭に手を置いて軽く撫でるとルイズは慣れてしまったのか猫のように目を細くして手を受け入れた
「おーい!ローチ!」
後ろからローチに声を掛ける人物が走ってくる、後ろを向いて視界内にその人物を入れると満面の笑みを浮かべて優雅に走ってくるギーシュだった
そういや放課後に射撃訓練をするって言ったっけ、と朝言った事を思い出しふむと頷く
「ルイズ、俺は外にいとくぞ、飯時になったら食堂に行くから」
「…えぇ、分かったわ」
ルイズは少し寂しそうに頷いて笑顔を作り小さく手を振った
ローチは歩幅を自分の物にして歩き始めギーシュを呼ぶ
「行くぞギーシュ!次はお待ちかねだ!」
「あぁ!」
大人の歩幅で歩いて行くローチとそれを追いかけ疾走して行くギーシュを眺めてルイズが呟く
「いいもん、明日はずっと一緒だもん」
頬をぷくっと膨らませながら
「さて、今から射撃訓練だが朝言ったことをちゃんと覚えているか?」
「あぁ、勿論だy…勿論です!」
ギーシュが綺麗に敬礼しながら言う
どうでもいい聞いた話だが元々敬礼は騎士が戦場に赴くとき王に顔を覚えて貰おうと
甲冑のバイザーを右手で押し上げたのが元だそうだ、何故右手なのか?それは左手は手綱を握っている為である
私見だがハルケギニアはまだ現実で言う騎士が戦うような時代背景であるため現在の軍としての敬礼はまだ無いかもしれない
「じゃぁ、あの的に撃ってみろ」
「はい!」
ギーシュがややへっぴり腰で銃を構える
「右手でしっかり握って左手で支える…トリガーには撃つ時に指を掛けて」
ぶつぶつと言いながら
「撃てッ!!」
ローチがゲキを飛ばす、驚いたギーシュは引き金を反射的に引いてしまう
乾いた音が響きギーシュが反動に腕を持って行かれて尻餅をつく
的には当たらなかったが板には当たったようで板の端に申し訳程度の欠けた所がある
「は、はは…当たった」
ギーシュはまるで始めて人を撃った新兵の如く放心状態になっている
「せめて的に当てろ、もう一回だ」
ローチがギーシュの腕を引っ張りあげて立たせた
「た、弾を込めないと…」
ギーシュがあたふたとして変な事を言う、今持っているのはマスケットではなくオートマティックだ、一発毎のリロードは必要ない
「いいから今よく狙って引き金を引いてみろ」
「…?」
やや首を傾げギーシュが的を狙う、大方弾が出ないからただ狙う訓練だと思っているのだろう
「撃て」
その声と同時に引き金を引く、ギーシュにとっては予想だにせず、ローチにとっては当たり前に銃口から火が出て乾いた音が響き薬莢が飛ぶ
的の端に弾が命中している、人型を描いたため端と言っても足に当たる場所だ、部位で言えば右足の太腿だろう
「いいぞ、致命傷にはならんが命中だ」
「た、弾が出た…どうして…?」
ギーシュがまだそんな事を言っているとローチがふと思い出す
ギーシュにはパーツの名称、パーツの機能、銃の構え方、撃ち方は教えたが銃そのものの機能を教えていない
つまりギーシュは銃を完全に単発式だと思っていたのだ、確かに決闘で銃は使ったが使ったのはDEでM92F(※2)を使っていた訳ではない
形状が違うため全くの別物だと思っていた可能性がある
「それは15発まで連続で撃つことができる、2発撃ったからあと13発だ」
「凄い…!凄いです!そんなに凄い物を僕に頂けるなんて…!」
ギーシュはその事を聞きひどく感激する、確かに頼りになるサイドアームだがそこまで凄いものじゃない
これではP90なんて持たせた日には感涙物だろう
ローチはModel-1887(※3)ショットガンでも持たせれば良かったかと少しだけ後悔する
「…あと3マガジン分撃って今日の訓練は終わりだ、いいな?」
「はい!」
以降ギーシュは常に笑顔で銃を撃ち続けた、ちなみに命中率は初日と言う事もあってかかなり悪い
殆どが板に当たり的に当たったのは十発にも満たないだろう
その上中心に当たることは一度として無く、ことごとく致命傷にはならない場所に当たった
常に笑顔だったことに対しローチは少し不安になる
的がただの板だから撃てるのではないだろうか、もし的が人ならば戸惑うのではないか?
笑顔なのは板を遊び気分で撃っているからか狂っているかのどちらかだ、恐らくギーシュは遊んでいる方だろう
「ギーシュ」
「はい!なんでしょうか!」
「“板切れ”を撃つのは楽しいか?」
「はい!」
ローチはバラクラバで見えない顔をしかめる
確かにギーシュは遊んでいる、しかし人を撃つ段階になると戸惑うだろう、所詮ただの子供だ
もし撃てたとして敵を殺してもそこでタガが外れトリガーハッピー状態になる、落ち着いてくると次は狂う、酷くなると廃人だ
ローチはまだ新兵の頃共に軍に入った同期の兵士が狂ってしまったのを何人か見た
「ギーシュ、お前は自分の手で人を殺せるか?板切れじゃなく人を撃てるか?」
「ッ…」
ギーシュは言葉に詰まる
「出来ないならもう射撃訓練はしない、そのうち後悔するからな」
「僕は…
…」
ギーシュがひとしきり自分の気持ちをローチに叩き付けるとローチはにやっと笑う
これでいい、コレでもう戦場に出ても大丈夫だ、もうコイツが壊れる可能性は無いに等しい、自分を突き通し曲がる事は無い と
「OKだ、そこまで言うならもう止めない その代わりに最高の兵士になってもらうぞ」
「…はい!」
ギーシュにM92Fを持たせたまま分かれたローチは早足で食堂に向かう
食堂に向かう途中で廊下のど真ん中でローチを待ち構えていたある少女に出会う
その少女は青髪でルイズより幼そうなメガネを掛けた女の子だった
ローチが少女を避けて通ろうとすると少女も同じように動いてローチの前に立つ
「……」
無言で少女を見つめる体格のいいバラクラバを被った男
「……」
少女はひとしきりローチを見つめて満足したのかいそいそと歩いて行った
「一体なんなんだ…」
目的も全く分からない少女の行動に頭を悩ませるローチであった
ちなみにその少女、もといタバサ嬢はただ単に近くでローチを見たかっただけである
タバサがローチに惹かれたのはなんと言うのか唯一つシンプルな事だ、ミステリアスな事に惹かれたそれだけである
「HEYルイズ、待たせたか?」
ローチがそわそわとしてテーブルを前に椅子に座るルイズの元へ歩いて行き肩をぽんと叩いて話しかける
「!、べ、別に待ってないわよ?」
肩を叩かれてビクッとしながらローチの方に振り向きローチを確認して安堵の表情を浮かべる
食事が始まると仲のいい兄妹のように楽しく会話しながら食事を取る、なおローチの分はちゃんと追加されている
傍から見れば歳の離れたラヴラヴカップルにも見えなくも無い、本人達は兄妹気分であるわけだが
余談だが二人の横はマリコルヌと呼ばれた残念無念また来週な独り身(NOTリア充)が鎮座なさっている、彼の方向からとても小さい声で
「畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生、畜生」
と呪詛のように聞こえていたらしい
食事を終えた二人は以降部屋に戻って普通に会話をして就寝した、普通である
そう何度も妙なことが連続して起こるのはファンタジーの中だけである
「さってー、溜まって来たし適当な女引っ掛けて解消しますかねーっとぉ」
そんな事を口走る不埒な輩が生徒達が部屋に戻り、日が沈んだばかりの学院内を徘徊する
かの不届き者の名はゴースト、ローチと共に召喚されたにもかかわらず別行動が多いため殆ど描写されない男だ
「貴族の人間は面倒臭くていけねぇや、狙うならメイドとかだな、うん」
言動と見た目だけなら間違いなく衛兵が大急ぎで走ってくるレベルの男がか弱き乙女をその毒牙に掛けようと闊歩する
「個人的には少し気の強そうな女が好みなんだが…丁度いいのはいるかなー」
アンタ本当にイギリスの人間か、紳士の国出身か
しかしTF141の面々は残念ながら絶望的に女運が無い
ナンパが成功する確率は絶望的なまでに低いのだ
ローチとゴーストの上官のある人は家に帰ったら奥さんが他の男と暮らしていてその上に上官自身が家から追い出されたそうだ
ゴーストもその例に漏れず軍に入ってから娼婦以外を抱いた事は殆ど無い
ローチは……まぁ童貞で無いことは確かだ、少なくともそっちの面でルーキーと言うことは無いだろう、相手はどうか置いといて
「おっ…早速女発見」
哀れにもゴーストの視界に入ってしまった女性は何やら頑丈そうな扉の前でうんうんと唸っている
「やぁ、御嬢さん…如何致しましたか?」
誰だテメェ、ローチが見たらきっと俺の先輩がこんなにキモイわけがないと言うだろう
一瞬びくりと驚いてゴーストの方へ顔を向けにこりと笑顔を浮かべた女性はゴーストに返事をする
「いえ、何でもありませんわ…ミスタ…」
その女性の名はロングビル そう、オールドオスマンの秘書である女性だ
「ゴーストです。以後お見知りおきを…あー…」
ロングビルに自分の名を伝え、いつものゴーストとは思えない態度で礼をする
「ふふ、ロングビルですわ、ミスタ・ゴースト」
ゴーストはココまで話をしてある確信のようなものを感じた、その確信はこうだ
よ し 、 ヤ れ る
今までナンパしようとした女はことごとくゴーストのスカルフェイスバラクラバを見るなり悲鳴を上げて逃げようとした
その上今日は非常に暗く、黒いバラクラバに白いスカルフェイスがぼうっと浮かびサングラスが光を反射し非常に恐ろしい
こういうのが駄目な人間にとっては失禁して泣き叫ぶレベルである。
しかし目の前のロングビルと言った女性はどうか、確かに最初は驚いていたがそれは急に声を掛けられたからであり
決してゴーストのスカルフェイスに驚いたわけではない
しかもロングビルは出るとこ出て引っ込んでるところが引っ込んでいるし顔も美人だ、欲を言えば気の強い女が良いが仕方ない
ゴーストはさぁどうやって食ってしまおうかと思案していると
「あら、もう行きませんと…ではミスタ・ゴースト、またお会いしましょう」
そう残して歩き去っていった
ゴーストはポカンと口を開け(見えない)その後姿を見届けた
一人ポツンと残されたゴーストはただ一言だけ明日の目標を決めるように呟いた
「ローチのケツを蹴ろう」
どう見てもただの八つ当たりです、本当にありがとうございました
次の日の朝
「あ~ぁ~…うっし」
ローチがむくりと仮設ベッド(藁から変更して非常に簡素なベッド)から体を起こし一つ大きなあくびをした後に気合を入れる
時間はもう記述する必要も無いと思うが太陽が昇っていない時間帯だ
取り合えず顔を洗って軽いトレーニングを済ませようと部屋を無音で出て外に向かう
いつも通りのトレーニングを終えると丁度ゴーストがのっそのっそと外に出てきた
「よぉローチ、早速今日の目標クリアだ、幸先良いな」
「?何言ってるんですか」
ローチがたずねた瞬間にゴーストがほぼ予備動作なしでロウキックを放ってくる
普通は反応できずに気分の良くなるいい音を出してケツを蹴り飛ばされるだろう、しかしローチには現在特殊な効果がある
そう、身体能力の向上だ、常にバトルナックルグローブを装着しているため常に常軌を逸した能力を得ることが出来る
目視すら難しい素早くキレのある鞭のようにしなる蹴り、それをありえない速度の反応で体を回転させながら跳ぶ事により回避する
空振った蹴りを最後まで振り切りローチに背を向ける形となったゴーストが蹴りを放った足を軸として後ろ回し蹴りを放つ
華麗に着地したローチは態勢を立て直すでもなく倒れるようにしゃがみこんでまわし蹴りを回避する
その直後にゴーストが回し蹴りを放った足を盛大に地面の土を抉る程に踏みしめ残りの足で蹴り上げる
ローチが跳ぶように立ち上がり、否、実際に跳んだ程に勢い良く立ち上がるのと同時に体を後に反らして回避する
蹴り上げた足を一瞬だけ静止して勢い良く、斧を振り下ろし今にも叩き斬らんが如く足を振り下ろす
反らした体を足を後に大きく引き下げる事で無理やり停止し足でステップを踏み体を回転させ手を振り下ろした足に当て逸らせる
ココまで5秒も無い一連の動作が終了したときに二人ともにやりと笑う
「ほぉ、やるじゃねぇかローチ、人間じゃねぇ動きだな」
「そう簡単に蹴られやしませんよ、油断さえしなければね」
ゴーストの攻撃は一発目のケツ狙い以外は全て的確に致命傷を狙っていた、当たればただではすまないレベルのじゃれ合いである
「言うじゃねぇか、あぁ?絶対今日中にテメェのケツを全力で蹴り飛ばしてやるからな」
「いつから俺がゴーストを超えられないと錯覚していました?」
「ほぉ?来いよローチ、武器なんて捨ててかかって来い。来いよローチ!怖いのか?」
「グローブなんか必要ねぇやぁハハハ(おもむろにグローブを脱いで)……誰がテメェなんか!テメェなんか怖かねえ!ヤルォームッコロシテヤルァー!!」
ギーシュは走る、ただひたすらに走る
「はっはっはっ…!南無三、寝過ごしたか!」
ついに昨日訓練をしたところに辿り着いた
「申し訳ありません!!少々遅れてしまいまし……?!」
ギーシュは今まで一度も見た事の無い物を目にする
「だぁらっ!!テメェまだどこかに武器持ってるだろうが?!」
「持ってたらもっと楽にやってますよ!!ぜぇらぁっ!!!」
「いってぇ!!ロウハイでそんな威力でるわけねぇだろうが?!でいっ!!」
「っぶねぇ?!今股間狙ったでしょう?!汚いな!流石ゴースト汚い!!」
「うっせバーカ!バアァァァァカ!!ヴワァァァァァカ!!!」
「うっぜぇ!!何コレ!うっぜぇ!!!」
師匠の二人がマジなのかネタなのか蹴り合い殴り合い、つまるところ喧嘩をしていた。それも素晴らしい格闘技を伴って
「「だぁっりゃぁああああ!!」」
二人の雄叫びと共にクロスカウンターが炸裂する
一秒にも満たない硬直の直後に二人が同時に倒れる
「あ…あの…」
「「ぜっ…はっ…あぁ…?…ギーシュ…か…」」
二人がぶっ倒れたまま顔だけギーシュに向ける
「ぜぇ…十秒だけ…待て…はぁ…」
ローチがそう言って動くことも諦めて荒々しい呼吸を整えている
「は、はい」
ギーシュはただ待つしかなかった
じゅううううびょおおおおおおお後
「じゃぁ訓練始めるか、つっても昨日と同じだけどな、質問あるか?」
ローチが言う
「(なぜたった十秒で持ち直せるんですか、教官!!って言っちゃ駄目なのかなぁ)」
「回復力は元ゲーが元ゲーだからだよ、言わせんな恥ずかしい」
「元ゲーって何ですか?!てか心読まないで下さいゴースト教官!!」
以後も至って普通にギーシュがひーこら言うまで、否、言ってもノルマを達成するまでしごき続けた
もう今度からこの当たりを日常にしてカットしても良いよね
そう言えば後半辺りからある人物がローチとゴーストを見続けていた
ちなみにローチは塔を出て直ぐのこの場所を訓練所としている、流石に射撃訓練は違う所だが…
ゴーストは離れている塔からココまで、ギーシュは男子寮からココまで歩いてくる
そう、ココは女子寮のすぐ裏なのである、窓から覗けば訓練所が見えるのだ
余談だが基本マイペースを崩さないタバサ嬢の習慣に早起きが加わったそうだ
「さぁ、出かけるわよローチ!」
朝起きて服を着替えたルイズが元気一杯に言う
「嬢ちゃんよ、俺は?」
なぜか一緒に居るゴーストが不満たらたらにルイズに尋ねる
「…来たいの?」
「もち」
サムズアップして満面の笑顔(見えない)で返すゴースト
ルイズはちらとローチの様子を伺う、ローチは諦めきった様子で力無く首を横に振った
「…わかった、あなたも一緒に行くわよ、ゴースト」
「じゃぁちっとばかし用意してくる、来いローチ」
「うげっ、首元掴まないで下さい!」
ズルズルと引っ張られていくローチ、それをいつもの事だと生暖かい目で見守るルイズ、トリステインは今平和だった
さて、時は少し進み馬を並走させているTF141とルイズ
「ねぇ、ローチ?何その変な形の黒いの」
「P90-Silenced(※4)だ、街中で轟音響かせる訳にも行かないだろう?」
「俺はローチにちゃんと言ったんだぞ?」
「なんて言ったのよ」
「AA-12-Shotgun(※5)持って行けよ。って」
「ゴースト、街中で前方の人間を皆殺しにするつもりですか」
ルイズが何言ってるのよ一体、とぶーたれる
ちなみにゴーストは普通に乗馬が上手かったので一人で乗っている、流石はイギリス人である
対してローチは上手く乗ることが出来ないためルイズと共に乗っている
ローチが先に乗り(乗るだけ)ローチのすぐ前にルイズを挟み込むようにして乗っている
場所と時は変わりルイズ一行が出た直後
「さぁて、今日こそはダーリンのハートをゲットするわよ!」
キュルケがいつもよりお化粧に気合を入れてルイズの部屋の前に立つ
ドアノブを掴み捻る…捻れない!ロックが掛かっている!!残念!キュルケの冒険はここで終わってしまった!
「アンロック」
終わらなかった!ガチャリと音がしてルイズの部屋の扉が開かれる
「やっほー!ダーリーン!!」
が、居ない…!部屋はもぬけの殻…!しかしそこで馬の蹄の音が外から聞こえてきた
ルイズの部屋の窓から外を覗くと今まさにルイズ一行が街に向かおうと外に出た瞬間である
ステンバーイ…ステンバーイ…
「ゴッ!!」
キュルケが何かの掛け声を上げると同時に凄まじい速度で走りだす
何やらカッコいいドラムメインのBGMが聞こえてきたかと思えばある扉の前で急停止する
そしてドアをノックというかむしろぶん殴って中の人物を呼ぶ
「タバサ!タバサァ!!ちょっと開けて!話を聞いて!」
中の人物、タバサ嬢はホクホクとした気分で本を読んでいたが邪魔をする音への対策のために杖を手に取る
「―――」
ぼそりと一言呟くと一転ただの一つも音がしない静かな空間になった
コレはサイレントと呼ばれる魔法を使ったためである
すると鍵を掛けていた筈の扉が開きキュルケが近づいてくる
それでも無視を決め込んで本を読んでいるとタバサの肩を掴んで前後に勢い良く揺らして口パクする
音が聞こえないだけなので正確には口パクではないのだがそこは置いておこう
仕方ないので嫌そうな顔をしてサイレントを解除する
「虚無の曜日」
「貴女にとって虚無の曜日がどれだけ大切かは知ってるわ!でもこれは仕方ないの!」
「用はなに」
「貴女の使い魔の風竜じゃないと追いつけないの!」
タバサは考える、切羽詰っているがどうせ男関係だろう、面倒だし適当に断っt
「ルイズが街に行っちゃったのよ!ダーr」
いきなりキュルケの腕を引っ張って窓を開ける
「行く、絶対行く、何があっても行く」
そう言って口笛を吹くと同時に窓から飛び降りる
「きゅっ、きゅいーっ!!」
タバサの使い魔のシルフィードが凄まじい速度で飛んできて主とその友人を拾う
「街、馬2~3頭食べちゃ駄目、急いで、早く、今すぐに、全てに優先させて」
「きゅいぃっ?!」
「た…タバサ…そういえば貴女も狙ってたっけ、彼」
タバサの凄まじい要求と剣幕に押されシルフィードは嘆きと抗議の声を上げキュルケは若干引いた
街の大通り
「人だらけだな、それに道が狭い」
「そうだな、スリもいそうだ、スられんなよローチ?」
「狭いって…ココは王都でも有数の大通りよ?…スリには気をつけなさいよ、魔法を使ってくる輩もいるからね」
前をルイズが歩きその後を二人が付いて歩く
街を見渡せばそこら中に人が集まり露店などが並び談笑などを行っていたりと活気のある場所だ
表通りに普通武器を置いているところは無いため恐らく裏道に入るのだろうがその裏道への入り口も大量にありどれがどれだか分からない
ローチがキョロキョロと周りを見渡していると男が軽くローチにぶつかる
「おっと、悪いね兄ちゃん」
男が軽くローチに謝るとローチは自分の腰に手を回す
カキンッ
チャリン
変な音がしたかと思えば先程ぶつかった男が急に脚を抑えて叫びだす
「ア…ギャァァアアアアアア!!!俺の脚がァァァァァァ!!!」
急に周りがザワザワとして男を囲んで心配しだす
ローチが周りのギャラリーに紛れその男の近くに歩いて行き肩に『P90を持っていない方の』手を置いて呟く
「いや何、別に謝る必要は無いぜ?俺はただ財布を返してくれればそれで良いんだ」
「ひぃ…!!分かった…!!返す、返すよ…!!」
「OK」
そう言って男の差し出した財布を受け取り男から離れる
何も不自然な動作を行わなかったのでまるで当たり前のように人ごみから脱出してルイズたちに合流する
「な、何があったのかしら…?」
ルイズは心配そうにローチに尋ねる、何があったのか全く分かっていなくローチは全く離れていなかったと思っている
「さぁな、どこかのスリが灸でも据えられたんじゃねぇか?なぁ、ローチ?」
「当事者じゃないと分からないでしょう、さぁ行くぞルイズ」
「え、えぇ?」
ルイズは急な流れであたふたして流されるままになってしまう
なにやらしっくり来ないまま先を歩くルイズについて行きローチとゴーストが会話する
「やったな?ローチ」
「えぇ、脚を狙うのは得意ですから」
リオデジャネイロのファベーラで行った任務のとき逃げるターゲットの動きを止める目的で脚を撃った事がある
その任務の時にジャンプ力が足りず登ることが出来ずに落ちたのも記憶に新しい
数十人に追われ武器を持っていない丸腰で走り屋根の上を飛び回ったのもいい思い出だ
そうこうしている内に一向は武器屋に到着した、裏通りに入ったときにルイズが少し迷ったがそこは放って置こう
扉を開き埃っぽい店に入ると糞ダルそうに煙をふかしていた店主が死んだ魚のような目でルイズ達を見る
ルイズが身に着けている五芒星が描かれたタイ留めに気付いたのか急に姿勢を正す
「旦那、貴族の旦那、うちはまっとうな商売してまさぁ、お上に目をつけられるようなやましいことなんかこれっぽっちもありませんや」
どうやら国の視察か何かだと思ったのだろう、しかし
「客よ、剣を買いに来たの」
ルイズが店主に言い放った、すると店主が目を丸くして
「ほぉ!こりゃぁたまげた!貴族様が剣を!」
「私が振るんじゃなくて私の付き人よ、私は振れないわ、見ての通り非力なの」
「あー…どちらの?」
ルイズが後ろを向くとなるほど確かに二人いる、しっかりとルイズの後ろに立つローチと既に店の物を手にとって見始めているゴーストが
「…こっちのマスクに何も描いて無いほうよ」
「はいはい、畏まりました」
「私は剣なんて何も分からないからお任せするわ」
「少々お待ち下さい」
そう言って店主が店の奥に引っ込む
「へへ、いいカモがやってきやがった」
そう小さく呟いて
しかしローチとゴーストはしっかりと聞こえていた、ルイズの方は聞こえていなかったみたいだが
「ルイズ、以降は俺が交渉するから絶対に黙っていてくれ」
「え?えぇ…分かったわ」
しばらくすると店主がいかにも高そうな無駄に装飾が多い大きな剣を持ってくる
「そういえば最近は貴族の方々が下僕に剣を持たせるのが流行っているそうで」
ルイズに話しかけるがルイズはローチとの約束を律儀に守ってお口チャック状態だ、代わりにローチが返事する
「貴族が下僕に剣を持たせるのが流行っている?」
「えぇ、なんでも土くれのフーケって盗賊が貴族の持っている宝を次々と盗んでいってるって噂ですぜ
で、貴族の方々が恐れて下僕に剣を持たせているって話でさぁ」
店主がさぁ好きなだけご覧になってくだせぇ、と自慢の一品を手渡す
宝石が飾り付けられ面が鏡のように光って煌びやかな装飾が施されているいかにも斬れ味の「良さそう」な剣だ
ルイズは黙りながらもその剣に興味が引かれているのだろうジッと見つめている
店主がその剣の話を始めるゲルマニアがどうとかシュペーが何だとか、そんな事はどうでもいいのだが
ローチがいかにも高くて重そうな剣を軽々と持ち刃を指でなぞって
「…話にならねぇな、なまくらだ」
とゴーストのほうが何故か口を出す
「そうですね、無駄な装飾、変な所に宝石を付けているから強度もガタ落ち、おまけに刃は触れても薄皮一つ裂けないゴミ
10人も斬れば鈍器に早変わり、中途半端だから拷問にも使えないあるだけ無駄な剣だ」
そう言って店主の目の前の机に下ろす、店主が口をあんぐりと開ける
「自慢の一品ならせめてレベルはコレだけの物を用意しろ」
ドンッ!
ローチは腰のナイフを抜き机に深々と突き刺す、店主は舌打ちをして渋々とナイフを見る
「?!こいつは…!!」
瞬間絶句する、ハルケギニアのレベルでは到底再現不可能な合金で出来たアーミーナイフ
それもローチの為に作られた量産品ではない完全オーダーメイドの最高のナイフ
強度は勿論切れ味も日本刀レベルまで引き上げられグリップも個人に合わせて作られている
お値段3000$日本円にして約26万円だ(1ドル85.479円時)ちなみにローチが個人で買った物である
勿論こんな辺鄙な店にコレほどの一品などある筈も無くローチは最初から期待などして無い
「申し訳ありません旦那…うちにココまでの一品なんざありませんや……」
店主は項垂れて負けを認める、王宮付の鍛冶屋でもコレほどの一級品を作るのは難しくスクウェアクラスでも作ることは不可能だ
なにせ材料が材料なのだから当たり前である
「さぁて、コレで俺達の目を誤魔化す事は出来ないと分かったな?じゃぁ改めて商談開始だ」
ローチがにやりと唇の端を吊り上げて威圧的な態度を取る
「ははっ!中々いい目を持ってるじゃねぇか!ココまでスゲェ事を言い切ったのはアンタが始めてだぜ!」
店内に聞いた事の無い声が響く、声のした方向を見れば投売り品の如く大量に置かれた剣しかなかった
「黙ってろデル公!」
「驚いたわ、インテリジェンスソードじゃない」
ルイズが口を開くと思い出したようにルイズが両手で自分の口を塞ぐ、そこまで徹底する必要は無いのだが…
「インテリジェンス…剣が喋ってるのか?」
「えぇ、そうでさ、意思を持つ魔剣、インテリジェンスソードでさぁ、いったいどこの魔術師が始めたんですかねぇ
剣を喋らせるなんて……とにかく、こいつは口は悪いわ、客に喧嘩を売るわでほとほと呆れていまして」
ローチはおもむろにその剣を掴んで持ち上げ、先程と同じように刃を指で撫でる
錆が浮いて刃自体はボロボロ、しかし非常に強固に出来ていて錆びているのに刃の欠けていない所はちゃんとした切れ味がある
「おでれーた…アンタ使い手か!おい俺を買え!役に立つぜ!!」
「……ふむ」
「だ、旦那…もしよろしければその剣をさっきの無礼のお詫びもかねてタダでお譲り致しますぜ」
ローチはしばし考える、が、ここでゴーストがローチの肩に手を回して耳元で呟く
「いいじゃねぇか、タダで貰えるもんは貰っとけよ損にはならねぇぜ?」
「…分かりました、おやっさんコイツ貰うぜ?」
「YES!俺の名前はデルフリンガーってんだ!よろしく頼むぜ相棒!」
「えぇ、どうぞ持ってってくだせぇ、鞘に納めてりゃあ黙りますぜ」
「さて、それとは別に商談を始めようじゃねぇか」
ゴーストがニヤニヤと笑いながら言う
数分後ゴーストとローチが買い物を終えルイズを伴って出ようとする
「ローチ、マジでそれ以外いらなかったのか?」
と、投げナイフを数本買ったゴースト(ルイズの金)
「えぇ、大振りの剣が一本あれば良かったんでそれと使い手ってのも気になりますし、おっとルイズいつまで口を塞いでいるつもりだ?もう良いんだぞ?」
「ぷはっ、ローチとゴーストの目利きが凄いのは分かったけどそんなのじゃなくても…第一何に使えるのよ」
「…пытка(拷問)だよ」
「え?何て言ったの?」
「あーあーなるほど確かにそりゃぁ斬れ味の悪い方が都合良いな」
「何なのよもうっ!」
そう言った直後に店の扉が勢い良く開けられる
外から現れたのは学院で見た事のある二人の人間だ
赤い髪で褐色の肌が特徴のキュルケ、青い髪で身長の低いタバサである
ゴーストの目の前に丁度位置するタバサがゆっくりと顔を上に向ける、そしてゴーストの顔が見えた瞬間に
「ぴっ?!」
親友のキュルケでさえ聞いた事の無い声がタバサの口から出る、みるみる顔色を青くして目尻に涙を浮かべ膝をガクガクと笑わせる
「どうした?嬢ちゃん、俺の 顔に 何か 付いてるか?」
そう言って顔をタバサと同じ高さまで下ろし近づける、なお現在いる所は非常にジメジメしていて薄暗く最も近い明かりは店内入り口のランプである
暗い為黒色は一瞬見ただけでは分かりづらく白色ははっきりと分かる、そしてサングラスがランプの光を反射して怪しく光る
ぱっと見てスゲェ怖い、その上ゴーストもそれが分かった上で一々怖く言葉を発している為性質が悪い
「ゴースト、馬鹿をして変に怖がらせないで下さい」
そう言ってゴーストの顔をタバサの目前から退け、タバサの前にしゃがみ頭を撫でる
「OK、もう大丈夫だ、心配要らない、俺はローチ、お嬢ちゃんは?」
タバサはローチの顔を見る、ゴーストのバラクラバに比べると経年劣化の為かまだ柔らかい黒色でゴーグルの奥に見える柔らかい表情
「タ…バサ…」
先程の恐ろしい顔に比べるとなんと暖かい事か、何と優しいことか、ゴーストとのギャップによる吊橋効果でタバサの幼い心は
元々ローチに興味を持っていた為容易くハート☆キャッチされた、タバサは大きい安心感に縋る為ローチにしがみ付く
手はまだブルブルと震えていてその心情を如実に表す
「あー…そこまでビビルとは思わなかった、正直反省してる」
「「タバサってこう言うの駄目だったのね…」」
前者はゴースト、後者はルイズとキュルケである
店を出た後はルイズやキュルケやタバサのショッピングに付き合うことになった
タバサはまだゴーストが怖いのだろう、ローチの服の端を掴みながら歩く
ルイズの後ろを歩くローチ(装飾品状態となったタバサ付)とゴースト、その後ろを歩くキュルケの5人である
なおゴーストは反省して無いのかどうか分からないがタバサを怖がらせて遊んでいた
「なぁ嬢ちゃん、俺の素顔って実は筋肉と骨丸出しで肉がズルズルになってるゾンビなんだぜ、 見 る か ?」
「ぅう…」目に涙を浮かべ首を横に振る
「ククク、ジョークだよ、本当は頭なんて無いんだよ、ほら 触 っ て み ろ よ」
「っ…」ローチの服に顔を埋めて震える
「ギャッハハハハハ!!何このお嬢ちゃん!超面白ぇ!!」
「その内後から刺されますよ、ゴースト」
ゴーストがタバサをからかいながら腹を押さえてひーひー言ってるのをよそにルイズは
「今日は私と二人の筈だったのに…」
と、ぶーたれている、ローチは怖がるタバサを右手で撫で、ルイズのご機嫌取りに左手で撫でる
一方取り残されているキュルケは普段見ることの無い親友の姿にあらあらうふふと笑いながらルイズを見ていた
キュルケはローチのことをダーリンと言って追いかけているが別にローチをモノにしようとは思っていない
宿敵であるはずのルイズがプンスカ怒るのが可愛くてしょうがないのだ、入学当時こそいいイメージを持っていなかったが
直向に頑張るのを見ているとその気持ちが無くなり可愛いと思うようになっていた
ルイズをからかうのは正にそれである、ローチにアプローチを掛けたのもルイズがどんな反応をするのか楽しみだったからである
勿論親友のタバサも大好きだがルイズもそれと同じぐらい好きである
案外マイホームママ体質である
ルイズも気になるがそろそろタバサが気になってきたので救いの手を差し伸べる
「さて、女性を怖がらせるのは殿方としてはどうなのかしらね?ミスタ…ゴースト?」
「んぁ?あぁ、そうだなぁ…そろそろ止めとくか、あー面白かったぁ!」
満面の笑み(見えない)で腹を押さえながらタバサから離れるゴースト
ルイズはふと思い出したようにローチを引っ張って貴族用の仕立て屋に入っていく
ローチのスーツを仕立てたいと言った所ローチが必要ないと言う
それでもルイズの押しで渋々と了承したが頑なにバラクラバを外すのは拒否した
「なんでよ、その変なマスクぐらい脱いじゃいなさいよ」
「いいじゃねぇか、嬢ちゃん、ローチにはフェイスグラフィックが無いんだ、アレンはあったらしいけどな」
「フェイスグラフィック?アレン?」
フェイスグラフィックが無いならば仕方ない
単純に服だけならば平民用の服でもいいかも知れないがローチのガタイが良すぎるので平民用の服は入らない
全員の買い物も終え学院へと向かう馬の上でローチが思い出したようにデルフリンガーと会話する
馬には行きと同じように乗っている、つまりゴーストが一人、ローチとルイズが二人
ちなみにデルフリンガーは腰に下げた状態で持ち、刃を少し引き抜き刃を布で結んで鞘に入れながら話せる常態になっている
「なぁデルフ、使い手って何だ?」
「私もそれ気になったわ」
「デルフ?…あぁ略称のことか!おぉ!使い手ってのはな…確か…えーっと…わりぃ、忘れた
あぁ!いやいや!仕方ねぇだろぉ?!だってよぉ、六千年ぐらい生きてるんだぜ?」
「六千だぁ?何だその意味不明なファンタジーは、伝説の剣ですってか?意味わかんねぇよなぁ、ローチ?」
「おぉ!それそれ!俺ってば伝説の剣なんだぜ!」
「そうよね、伝説の剣よね、はいはい、ワロスワロス」
「ルイズ、学院に着くのはいつ頃になりそうだ?」
「せめて相棒は信じてくれよ…」
一方共に街を出たキュルケとタバサはタバサの使い魔である風竜のシルフィードに乗り馬二頭の上を飛んでいた
日も傾き漸く学院に戻った5人は馬を引き歩きながら戻る、シルフィードは自分で戻らせた
その最中 ズドン と鈍い音と地響きが起こる
「なんだ!地震か?!」
ゴーストが姿勢を低くして動きを止める
「な、何あれ?!」
ルイズがある場所へ指を指す
「ゴーレム、大きい」
タバサが素早く状況判断する
「あそこ……学院の宝物庫じゃない?!」
キュルケが杖に手を掛け身構える
「駄目だ、俺達じゃどうしようもない、ゴーストの部屋に武器を取りに行く時間も無い、諦めよう」
ローチが言い切った、が、その瞬間にルイズが手に杖を握り走り出す
「おい!ルイズ!待て!!」
「諦めるなんて出来ないわ!私は貴族なのよ!それにアレは土くれのフーケに違いないわ!!」
ルイズは走り杖を掲げる
「Boo shit!!(クソがッ!!)」
ローチが腰のP90を手に取り走り出す
「ファイアー・ボール!」
ルイズが杖を振り下ろす、しかし炎の球は出ず爆発が肩にフードを被った人を乗せたゴーレムの表面に起こる
何度も何度もファイアー・ボールを唱えるが致命傷を与える事が出来ず表面を深く削るだけとなる
「どうして!どうしてッ!!」
ルイズは詠唱を続けるが漸くといった所かゴーレムがゆっくりとした動きで足元のルイズを見る
ゴーレムが脚をゆっくりと、その巨体に見合った速度で上げる
「ファイアー・ボールッ!!」
しかし遂にはゴーレムに当たることさえなくルイズの唱えた魔法は塔の表面で爆発を起こす
その威力は皮肉にも先程まで唱えた物より大きいもので、塔の表面に大きなヒビを創った
ゴーレムの脚がゆっくりと、しかし確実に死を与える質量を持ってルイズを踏み潰そうとする
「ッ…!!」
ルイズが目を瞑り体を強張らせる、瞬間何かが突撃する様な衝撃がした、ローチがルイズを抱きかかえ足元を走り抜けたのだ
その直後にゴーレムの脚が地面に衝突し粉塵を巻き上げ飛礫を撒き散らす
「ッが…!!」
ローチの背に飛礫が鈍い音と共にめり込む、ローチは思わずうめき声を上げた
「フレイム・ボール!」「エア・ハンマー」
大火球が轟音と共にゴーレムの表面を焼き凄まじい衝撃がゴーレムの脚を打つ、しかしゴーレムに怯んだ様子は無くゆっくりと体勢を戻す
ゴーレムの肩に乗った人物が塔の表面に出来たヒビに気付きにやりと笑うのをゴーストは見た
瞬間、ゴーレムが腕を大きく振りかぶり塔のヒビに拳を叩き付けた、すると塔に大穴が開き内部が露になる
「くっ…そ…!」
ローチがP90をフーケに向け引き金を引く
カリカリカリカリカリンッ
と言う特徴的なサプレッサーを通した銃声がしてマズルフラッシュを発生させること無く弾が撃ち出され薬莢が排出される
しかしルイズを抱え先程のダメージが回復していない状態でフーケに弾を命中させる事は出来なかった
弾を1マガジン50発撃ち切ったローチはルイズを降ろし膝をつき息を荒げる
フーケが穴の開いた宝物庫に侵入し、しばらく後に何か箱のような物を重たそうに持ちゴーレムに乗り学院を去っていった
その場に残ったのは膝を付くローチ、立ち尽くすルイズ、ローチに駆け寄るゴースト、ただ呆然とするタバサとキュルケだけだった
#navi(Call of Different)
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