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#navi(NEVER~新たなる戦いinハルケギニア)
「ハァァァァ!!」
「ぐわぁ!……こ、これが!?……そうか、これがぁ!!」
「そう、これが……『死』だ。大道克己」
「……久し振りだな、死ぬのは。ハハハハ!ハハハハ……うわぁあああ!!」
破壊され落下していく風都タワー。
そこで大道克己は二度目の死を迎えた。
仮面ライダーWの手によって。
それは完全なる死。
大道克己という存在をこの世から消すもの。
……その筈であった。
だが……。
(………………!?)
ひやっとした地面の感触。
肌にチクチクと刺さる草の感触。
(………………何だ?)
感触。
死んだ人間。
それも本当の意味で死んだ人間には味わうことが出来ないもの。
(どういう……ことだ?)
すぐに浮かび上がる疑問。
(生きて……いるのか俺は?)
それを証明するかのように、克己は全身で大地の感触を得ていた。
(……俺は奴らにやられ、そして死んだ筈だ)
崩落していく風都タワーの中、仮面ライダーWの蹴りが自らを貫いていったことを今この時も覚えている。
死ぬことを知らない筈の肉体は崩壊し、そして消滅した。
あの時、風都の仮面ライダーより与えられた『死』は完全なるもの。
そう、自分はあの時、本当の意味で死んだのだ。
それはこの身に受けた彼だからこそ。
一度死んだことがある彼だからこそ分かる。
それが何故、今こうして『生きて』いるのだろうか?
克己が最初に死んだのは、子供の頃である。
克己は子供の頃、心臓が弱く病弱であった。
だが、その頃の彼は母親思いの心優しい少年でもあった。
ある日、克己の心臓移植が決まった。
手術が成功すれば、もう病院へ通わなくても済む。
大好きな母親へ迷惑を掛けなくて済むと、彼はその日を待ち望んでいた。
そして、手術が決まった日、克己は珍しく外出していた。
それは、母親へオルゴールを買う為であった。
音楽が大好きだった彼は、母親の為にピアノで演奏した曲をオルゴールとしてプレゼントしようと思ったのである。
ところが、その道中に彼は轢き逃げに遭い、そのまま事故死してしまう。
これが大道克己の最初の『死』であった。
その後、克己は彼の母親である大道マリアが当時研究していた科学技術により蘇生することとなる。
生ける屍、『NEVER』として……。
『NEVER』とは『NECRO OVER』……死を超えるものの略称で、化学薬品とクローニングを駆使した『死亡確定固体復環術』によって蘇生した死人のことであり、また克己たちが所属する部隊の名称でもある。
『NEVER』になると、身体能力は生前の数倍にも増幅され、また不死身とも思えるほどの強靭な肉体を得ること出来る。
そして部隊である『NEVER』は、メンバーが戦闘のプロフェッショナルによって構成されている。
前述の効果に加え、それぞれが元々超人的な戦闘能力を持っている為、『NEVER』は正に無敵の部隊であった。
そんな一見無敵にも見える『NEVER』ではあるが、不死身とも思えるほどの強靭な肉体にも、限度というものは存在する。
それを超えるような攻撃を受ければ、当然肉体は崩壊してしまう。
克己が二度目に死んだ、あの時のように。
また、彼らは死人であるが故に、定期的に特殊酵素を打たなければ、その肉体は元の死体へと戻ってしまう。
つまり、長期戦にはあまり向いてはいないのだ。
そして『NEVER』として生き続けていると、生前の記憶や人間性は次第に失われていき、やがて消えてしまう。
擬似的に生きているだけなので、その脳も段々と朽ちていってしまうからである。
全てを無くせば最早人間ではなく、文字通り生ける屍と化す。
そのように悲しい宿命を背負っているのが『NEVER』である。
克己は『NEVER』であり、そして全てを失っていた。
そう、あの時までは……。
克己は手始めに自らの指を動かしてみる。
すると僅かではあるが、指が自分の意図した通りに動いていることを感じた。
(……動く)
自身の肉体を意のままに操れることが分かると、克己は徐々に動かす指を増やしていった。
指の次は手首、手首の次は肘、と動かす箇所を変えて、肉体の動作に問題が無いかを次々と確認していく。
今のところ、何も問題は無いみたいだ。
「……アンタ、ダレ?」
(……!?)
突然、ノイズのような声が克己の耳に入って来た。
誰かの声が聞こえてくるなど微塵にも思っておらず、克己は驚きを隠せなかった。
声の主を探そうとしても、目の前は相変わらず何も見えぬ闇のままである。
(……そう言えば、目を瞑っていたのだったな)
克己はゆっくりと目を開く。
すると、途端に日の光が差し込み、その眩しさに再び目を閉ざしてしまった。
闇に慣れきっていたこの目には、やわらかな日の光さえ強過ぎる刺激なのだろう。
まるで光が自分を拒んでいるみたいで、克己は少しだけ苛立ちを覚えた。
それに抗うかのように強引に瞬きを繰り返して光に目を慣らしていくと、最初はぼんやりとしていた視界も段々ハッキリしていくのが分かる。
そうして、眩しさを感じなくなるくらいまで目を慣らすと、すぐ目の前で唖然とした表情をしているピンク色の髪の少女が見えた。
(さっきの声は……こいつか?)
少女の視線は先程から克己の方へ向けられている。
克己がゆっくりと体を起こすと、それを見て少女はビクッと身を強張らせた。
今まで倒れていた人間が突然起き上がろうとしているのだ、驚くのも無理は無いだろう。
すると、再び誰かの声が克己の耳に入って来る。
「おい、ゼロのルイズが平民を召喚したぞ!!」
その言葉と同時に多くの笑い声が聞こえて来る。
嘲るかのような不快な笑い声。
克己は目だけを動かして周りの状況を探ってみると、先程の少女と同じような格好をした少年や少女たちが次々と目に入って来る。
更に周囲を確認すると、どうも自分は何処かの建物の中庭みたいなところにいるらしいということが分かった。
克己はすぐに身構える。
(囲まれている……か)
自分を取り囲んでいるのが例え少年少女だろうと、克己は警戒を一切怠ろうとはしなかった。
相手を見た目で判断するのが、戦いにおいて一番愚かしいことだと知っていたからである。
(……不快な視線だな)
連中の視線は自分へ注がれており、その目にはまるで新しい実験道具を見つけたマッドサイエンティストのような下卑たものを克己は感じていた。
どう贔屓目に見ても、連中が自分の味方とは思えない。
(こいつら……あいつと同じ感じがするな)
連中を見て、克己はとある少女のことを思い浮かべていた。
克己はかつて、傭兵として仲間と共に某国のテロリストたちと戦ったことがあった。
それ自体は克己たちの日常にとって、特に珍しいことではない。
ただの仕事であり、己の存在を世界中に刻み付けるための儀式のようなものでもある。
そこで克己たちは、強力な超能力を使う一人の少女と出会った。
彼女はドクター・プロスペクトの実験の下、戦うことだけを目的とした超能力兵士の一人だったのだ。
周囲の連中からは、その少女と同じような感じを克己は感じていた。
見た目はただの子供だが、底知れぬ何かを隠し持っているような、そんな雰囲気を。
(それに……)
克己が別の方向へ視線を向けると、そこには一人の中年の男が立っていた。
頭頂部は禿げ上がり、古ぼけた眼鏡を掛けた、一見冴えない男。
周りがガキと言っていい程の少年や少女ばかりなので、男の存在はその中で明らかに浮いている。
だが、克己はその男から見た目とは別のものを感じていた。
(……臭うな)
どんなに隠していても、男から漂って来る血や火薬の『臭い』。
それは、正に戦場の『臭い』であった。
克己にとって馴染み深く、最早そこから去ることも出来ないであろう『臭い』。
間違いなく、この中年の男は兵士……それもかなりの手練のものであろう。
そして、数多くの人間をその手で殺している。
男の見た目や佇まいからはそれを感じさせないようにしているが、同じ種類の人間である克己にはすぐにそれが分かった。
更に男にも周りの連中と同じ得体の知れない何かを感じる。
どちらにしろ、ただの中年の男ではないということは分かった。
克己がそんな風に男を見ていると、男の方も克己のことを探るようにじっと見ている。
(……あの男、俺を見ているのか?)
どうやら男も同様に克己から戦場の『臭い』を感じ取ったようである。
戦場での経験や兵士としての本能が男に克己の危険性を察知させたのであろう。
(……………………)
克己もすぐに男を警戒する。
この中では、まず間違いなくあの男が一番強い。
もしも戦闘になった場合、真っ先に始末すべきはあの男だ。
克己は他の連中に見えないように服の中へ手を入れた。
(……無い、か)
T2ガイアメモリとロストドライバー。
この2つは何処にも無かった。
更に服の中を探っていくと、隠しナイフがあることは確認出来た。
それと同時に何時でも抜けるよう柄を握り締める。
(まあ、仕方あるまい。何せ、派手にやられたからな。ナイフがあっただけマシと考えるか)
克己はすぐに戦闘態勢に入ろうとする。
その途端に全身から違和感を覚えた。
(………………!?)
一言で言うなら、重い。
克己の意思に対して、体が瞬時に反応してくれないのだ。
思考に肉体が追いついて来ない。
そういった感じであった。
(目覚めたばかりで、まだ本調子ではない……といったところか)
ただ体を動かすだけなら問題は無かったが、戦闘ともなれば通常以上に体を動かす必要が生じる。
今の克己の肉体は、どうもまだ戦闘が可能となるまでに調子を取り戻せていないようであった。
そんな不十分な状態で、更にナイフ一本だけでは、この男と戦うのに心許ない。
また、戦闘になれば男以外に周りの得体の知れない連中も相手にしなくてはならなくなるだろう。
そうなれば、自身が『NEVER』であることを考慮しても、やはりリスクの方が高い。
男も克己と同じように何やら隠し持っているようで、こちらが不審な動きをしたらすぐにでもそれを抜くぞ。
とでも言いたげにこちらを睨み付けている。
(……チッ!)
克己は舌打ちした。
自分の身に何が起きたのかも、自分を取り巻いている今のこの状況も全く分からない。
だが、そんなことよりも周りを敵に囲まれていることの方が克己にとって大事であった。
戦闘になれば、こちらが圧倒的に不利。
最悪、嬲り殺しにされてもおかしくはないだろう。
そこまで考えて、克己は不敵に笑った。
(フッ……何を恐れているんだ俺は?……死か?再び死ぬのが恐いのか?ハッ!既に死んでいるのに、これ以上死ねるか!)
それは別に強がりでも何でもなく、純然たる事実である。
克己は既に死人……そう、『NEVER』なのである。
(それに、この中に俺を殺しきれるような奴はいまい。……あの男ですらな!)
克己がキッと男を睨み付けると、男も身構える。
ここにいる連中が全員襲ってくるなら、一人残らず返り討ちにしてやればいいだけだ。
例えこの身が朽ちたとしても、最後まで抗い続けてやる。
克己はそう思い、ナイフを握る手を強める。
そう、それが克己の『生き』方であった。
もっとも、死んでいる彼にとっては適切な言葉では無いのだが。
(……とは言え、一度体勢を立て直す必要はあるな)
現在のコンディションのまま相手をしても、全員を殺しきることは恐らく出来ないであろう。
仮に殺せたとしても、周りの建物を見る限り、ここにいる連中は全体のほんの一部なのは明白。
戦闘を行えば、敵の増員は必至であった。
いくら克己でも、数の暴力に対抗するには限度がある。
おまけに今の自分は本調子では無いのだ。
最悪無駄死にに終わりかねない。
克己はそれだけは避けたいと考えていた。
死ぬのが怖いわけではないが、何故今自分がこうして動いているのか、それさえも分からぬまま死ぬのは嫌だった。
(……さて、どうしたものか?)
一番良いのは、ここから脱出すること。
状況を打開し、連中を振り切ることが先決であった。
幸い、ここの建物は何処かの収監施設とかでは無いらしく、壁一つを見ても脱出は容易そうであった。
連中さえ振り切れれば、この建物から逃げることはそれ程難しくはないであろう。
そんな風に克己が考えていると、先程の少女が中年の男へ走り寄って来た。
「ミスタ・コルベール!召喚のやり直しをお願いします!」
よく通る大きな声で少女はそう言った。
言葉の意味は分からないが、少女がこの場の空気を全く読めていないことは克己にも分かった。
少女は更に続ける。
「平民を使い魔にするなんて、前例がありません!」
「ミス・ヴァリエール!」
コルベールと呼ばれたその男が声を張り上げた。
そして、こちらを警戒したまま少女を諌め始める。
何を話しているのか、克己にはさっぱり理解出来ない。
取り敢えず、身構えながら二人の様子を遠巻きに伺っていた。
やがて二人の会話が終わると、しょんぼりとした様子で少女は振り返り、ぼとぼと克己の元へやって来た。
そして、少女はため息を一つ吐くと、すぐに無い胸を張ってからやけに尊大な態度で克己を睨み付けた。
「ちょっとアンタ!」
少女は上からものを言うように克己へ言葉を浴びせ掛ける。
その目は何処か怒りを帯びているようであったが、克己のことをまるで警戒しておらず、隙だらけであった。
克己はニヤリと笑う。
少女はそれに気付かずに再び口を開いた。
「感謝しなさいよね!貴族にこんなことされるなんて、普通は……」
克己は少女に皆まで言わせずにその首根っこを捕まえると、自分の元へと強引に引き寄せた。
「え?」
少女が呆気に取られて間抜けな声を上げるか上げないかの内に克己は彼女のその細い首へ自分の腕を巻きつけた。
所謂スリーパーホールドの形である。
更に克己はその状態からもう片方の腕で隠しナイフを取り出し、それを少女の喉元へと突きつけると、半ば勝ち誇ったかのような笑みを浮かべて声を張り上げた。
「動くな!」
一瞬の静寂。
克己の突然の行動に周囲の連中は暫く面食らっていた。
やがて、すぐにその場は騒然となる。
状況を飲み込んだその中の数名がまるで魔法使いの振るう杖のようなものを克己へと向けた。
それで何が出来るのか克己には理解しかねたが、連中から武器を向けられていることには違いない。
すぐに克己はナイフの切っ先をぐっと少女の喉へ押し当てた。
そこに迷いや躊躇いは一切無く、少女の首から一筋の血が流れ落ちる。
「杖を下げなさい!ミス・ヴァリエールにもしものことがあったらどうする!?」
それを見るなり、コルベールと呼ばれた男が必死の形相で克己に杖を向けている連中を制した。
その鬼気迫る声に、連中も思わず杖のようなものを下げていた。
克己は笑みを浮かべたまま、少女と共にじりじりと後ろへ下がって行く。
「君!今すぐにミス・ヴァリエールを離したまえ!」
コルベールと呼ばれた男はすぐに克己に向かって言い放った。
口調こそ冷静さを保ってはいたが、その内面では怒りの炎が滾っていることを克己は感じていた。
だが、それと同時に腕の中にいる少女がこの男にとってはそれなりの価値がある存在であることも見抜く。
「ほう……こいつがそんなに大事か?」
克己がそう問い掛けると、コルベールと呼ばれた男はぎりりと音を立てて歯軋りをする。
どうやら図星らしい。
克己は再びニヤリと笑うと、少女を連れてどんどん後ろへと下がって行った。
少女は克己の腕の中でじたばたと暴れることなく大人しくしている。
しかし、その目は強い敵意を持って克己を見ていた。
「アンタ……こんなことしてタダで済むと思ってんの?」
少女はあくまで強気を崩さずに言った。
強がっているわけではなく、本気でどうにかなると思っているようだ。
「タダで済ますさ」
克己もまた不敵な笑みを崩さない。
確かに今の自分は本調子ではなく、敵に囲まれているという厳しい状況でもある。
だが、このくらいの窮地は彼の戦場ではいくらでもあった。
そして、その窮地を何度も脱して来たという自負もある。
また、彼の手には人質もいる。
状況は克己に有利に傾きつつあり、克己は半ば自身の勝利を確信していた。
……だが、克己は知らない。
ここがどういう場所なのか……いや、ここがどういう世界なのかを。
後ずさっていく克己を避けるように、周囲の連中はどんどん道を空け始めた。
克己はそれを確認すると、すぐに少女を投げ捨て、空いたスペースを走り抜ける。
「キャアッ!!」
突然拘束を解かれたことで、少女は地面に思い切り尻餅をついた。
克己はそれを後目に持てる力を振り絞って、その場から走り去る。
人質を手放すのは惜しいが、この少女を連れたまま逃走するのは却って足手まといになる可能性の方が高く、得策ではない。
それに、連中を撒くだけならば単体でも何ら問題は無い。
単純な身体能力であればNEVERである自分の方が連中よりも上だし、それならば一人で行動した方が身動きが取りやすい。
克己はそう判断し、人と人の間を駆け抜けていった。
(このまま脱出する!)
「レビテーション!」
その言葉と共に克己の体が地面から浮き上がった。
「!?」
完全に宙に浮いた足は地面を踏むことは無く空回りする。
地面に手を伸ばそうとするが、尚も克己の体は上昇を止めない。
やがて、克己は空中へ貼り付けにされたような形となってしまった。
「……全く、たかが平民如きが貴族に手を上げるなんてね」
やたら気障っぽい少年がそう言いながら薔薇のようなものを手に持って克己の元へと歩いて来る。
少年はフフンと勝ち誇ったかのように笑うと、先程克己が投げ捨てた少女へ向かって言った。
「感謝したまえよ、ミス・ヴァリエール。君の使い魔はこの僕がちゃんと捕まえてあげたからね」
「フン!」
少女は不機嫌そうな顔で少年へそう返す。
どうやら克己に妙な真似を仕掛けたのはこの少年らしい。
少女は先程克己が付けた傷の部分を手で押さえながら克己の元へと向かって来る。
そして、目の前までやって来ると、憎々しげに克己を睨み付けた。
「アンタ……御主人様に向かってこんな真似しておいて……『タダで済むと思っていない』わよね?」
少女は先程克己に捕らえられていた時と同じような台詞を言った。
だが、あの時とは違い、今は克己の方が圧倒的に不利な状況である。
この状況に克己は見覚えがある。
かつて超能力兵士と戦った時に、相手の超能力で仲間が似たようなことになったのだ。
(……なるほどな、道理でこんなガキ共に連中と同じようなものを感じたわけだ。チッ、抜かった。まさかこんな真似をしてくるなんてな)
それは、克己の油断であった。
連中の危険性を察知しておきながら、本調子でないことや現状を把握出来ていないことに焦り、短絡的な行動を取ってしまった。
普段の克己ならば、まず犯さないミスである。
(フッ、久し振りに死んだから、どうも調子が狂っていやがるようだな)
克己は自嘲する。
今更犯したミスを反省したところで遅い。
それならば、今この状況をどうするかを考えることにする。
依然、克己は宙に浮かされ、身動きが取れないままである。
いくら自分が『NEVER』とは言え、こうされてしまっては肉体が頑強なことを除いて普通の人間と大差ない。
どうしたものかと思案していると、続々と連中が克己の元へとやって来る。
このままならば連中に捕まってしまい、その後何をされるのか分かったものではない。
その筆頭である少女は暫く克己を睨み付けた後、先程のように一つため息を付いた。
「……まあ、いいわ。罰は後で与えるとして、『コントラクト・サーヴァント』を早く済ませるわ」
少女がそう言うと、克己の体は地面近くまで下ろされた。
手を伸ばせば、少女に届きそうである。
だが、不意をついた先程とは違って、今は手出しをすることが出来ない。
少女は克己の目の前まで顔を近付けると、何やらぶつぶつと唱え始めた。
身動きの取れない克己は、少女が何を仕掛けて来てもそれを防ぐことが出来ない。
(チッ、流石に不味いか……)
『コントラクト・サーヴァント』とやらが何だか、克己には分からない。
だが、ろくでもないことをされることだけは直感的に察する。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。5つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」
少女がそう言い終えると同時に克己の額へ杖を置き、更に顔を近付ける。
そしてその唇は今、克己の唇へと重ねられようとしていた。
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