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「ルイズと幽香(未定)4」(2008/01/06 (日) 05:11:53) の最新版変更点
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ルイズと幽香は他者と一歩送れて朝食の席を立つ。
これから、幽香を入れての、初めての授業である。
「・・・むきゅー。この本、興味深いわ。ここの世界の魔法も会得して、
絶対に魔理沙をぎゃふんと言わせてやるわ」
第4話 こんどこそ すごい 本領発揮
他の生徒から数分遅れてルイズと幽香が教室に入る。
すると、赤い髪をしたスタイル抜群の女性がルイズの姿を認めると、近づいてくる。
「あらルイズ、おはよう」
「・・・おはよう、キュルケ」
ルイズは心底嫌な顔を、キュルケは悪戯を楽しむような顔をしている。
「この人が貴方の召喚した使い魔?」
「そうよ、幽香こそ「使い魔じゃないわ。あくまでルイズとは対等のつもりよ」ってちょっと」
キュルケの質問に、ルイズが自慢げに答えようとしたところ、幽香の口から驚きの言葉が漏れた。
「ち、ちょっと、前に一応ではあっても敬おうって言ってたじゃない」
「いや、なんかやっぱり慣れない事はするもんじゃないわねって事で」
「余りにも酷いわ・・・」
ルイズの絶望感に満ちた声が漏れる。もちろん、それはキュルケにも聞こえていたわけで。
「あははは、ルイズ、なんだかとんでもないのを召喚したみたいね?」
「ふ、ふん!これでも実力は本物・・・なんだからねっ!多分!」
「多分って何よ、私は本気さえ出せれば分けはあっても負けたことは無いわ」
「ふふ、でもあたしはちゃんとした使い魔を召喚したのよ?おいで、フレイム」
すると、教室で他の使い魔と話して(?)いたオレンジ色のトカゲの様な大きな生き物が歩いてきた。
「あら、火の象徴の生き物?」
微妙に不快そうな顔をする幽香。
「そうよ。この尻尾、素晴らしいと思わない?」
確かに、とルイズは思う。この尻尾から見るに、サラマンダーの中でもそれなりに
高位にあるのだろう。と、容易に想像が付く。
「ふーん・・・知能の割に力はあるのね。花、燃やさないでね」
「ふふ、あたしが指示したりしなきゃ、そうそう火なんて吹かないわよ」
「ふーん、ならいいわ」
完全にルイズは蚊帳の外である。
「ちよっと幽香、せめて他人の前では使い魔らしく振舞って頂戴よ」
「嫌よ、逆にルイズしか居ないんなら・・・考えなくも無いけど、他人の前で使い魔
・・・と言うより、ルイズより下だなんて思われたくないわ」
「ふふ、ルイズ、貴方、使い魔に忠誠も見せて貰えないようだからモテないのよ・・・」
「私はアンタみたいに他人に媚を振り分けるほど暇じゃないのよ」
ルイズが反論をするが、キュルケは幽香に興味があるようだ。
「ねぇ、貴方はなんて名前なの?」
「あら、こちらの貴族は相手に先に名乗らせるの?」
「そうね、こちらから名乗りましょうか。あたしはキュルケ。微熱のキュルケ。」
キュルケはそこで一旦区切ると、ルイズにあてつけるように胸を張り、幽香に向かって艶かしい視線を送る。
「ささやかに燃える情熱は微熱。でも、世の男性はそれでいちころなのですわ。あなたと違ってね?」
キュルケは視線を幽香の胸に移動させ、その後視線をルイズの胸に固定し、嘲るような笑みを浮かべる。
「じゃ、失礼?」
そのまま、キュルケはさっそうと歩いていく。歩く姿でさえ何か色気のような物があった。
「キィィィッ!くやしいっ!何よ何よ!絶対幽香のほうが使い魔としての格は高いんだからっ!」
「・・・・・・」
「どうしたのよ、幽香?」
「胸で・・・負けたわ。そうそう負けることは無かったのに・・・」
「・・・そう」
幽香は割りと本気で悔しがっているようだ。
そこに何故かキュルケが戻ってくる。
「ルイズ、貴方、タバサの部屋に入った何か、見なかった?」
「・・・? いえ、見てないけど?」
「うーん。やっぱりルイズも見てないか・・・」
「どうしたのよ?」
「ううん、ただ、タバサが後で戻ってはいるとはいえ、本が減ったりしてるって嘆いてたのよ」
「ふぅん・・・普通、生徒ならタバサの部屋じゃなくて図書室に行くと思うけど・・・」
「だから妙なのよ。まぁいいわ。見つけたらあたしに言ってね。それじゃ」
こんどこそキュルケは男性の群れに戻っていく。
「変なの・・・」
「へぇ、この学園、図書室なんてあったんだ」
「えぇ、まぁ、一般生徒じゃ入れないところもあるけどね」
「ふぅん・・・まぁいいわ、前に居るの、先生でしょ?」
「げ、危なかったわ。ありがと幽香」
「どういたしまして」
前に来た先生、シュヴルーズ先生が口を開く。
「おはよう皆様、私はこの季節に召喚された使い魔を見るのが好きなのですよ・・・
本当に皆さん、色々な・・・色々な・・・」
シュヴルーズはルイズの隣に居る幽香を見て凍りつく。
「・・・えー、本当に色々な使い魔が居るのですね・・・」
「ちょっと、ミセス・シュヴルーズ!人の使い魔みて硬直するのは止めてください!」
「そうよ、使い魔を一通り見てみたけど、私以上の生き物・・・いや、かろうじて対抗できそうなのは、
そこの青もやしの竜しか居ないわよ?」
幽香は青もやし・・・いや、タバサを指差して言う。
タバサは反応しない。それに対してキュルケが反応する。
「ちょっとそこの使い魔、タバサをもやし呼ばわりとは、
礼儀がなってないんじゃない?」
「あら、すいませんね。昔、そこのタバサ、だっけ?
に似た人が紫もやしと呼ばれて居たので、つい呼んでしまいましたわ。
非礼をお詫びします」
「くっ・・・わ、わかればいいのよ!」
周りからは明らかに喧嘩を売りに行ったキュルケを上手く受け流すほどの知慧を
見せた幽香に控えめながらも感嘆の声が漏れる。
ルイズは幽香の耳元でささやく。
(よくやったわ幽香!)
「ゃん!」
「え?」
しかし幽香はそれに気づかなかったようで、ルイズの息が幽香の耳に入り、
思わず嬌声を上げてしまう。
その声はやけに色っぽく、何人かの男子生徒が反応してしまう。
その耳を押さえて甘い声を上げながら顔を赤らめるという動作を
幽香のスタイルとルックスを見ていたギーシュは直視してしまった。
「・・・可憐だ。薔薇たる私が、あの花を手に取らない?そんなことはあり得ない。そんなことは―――!」
ギーシュは、ルイズの最初の召喚、そう、コルベール場外ホームラン事件を見ているのだ。
もちろん幽香の名乗り上げも聞いている。
「そうだ、花だ!全ての美しい花は私の物、ならば私が薔薇である必要は何処にもなくて―――!」
気障なギーシュがなにやら叫んでいるが関係ないことである。
しかし、ミセス・シュヴルーズ先生は耐えられなかったらしい。
「ふがっ!」
「しばらく黙っていなさい。では授業を始めましょう」
「ふがふぐふもっふー!」
ギーシュの喚く声が五月蝿いので生徒達によって窓から落とされる。
これは痛い。
「では、今日は使い魔を召喚して皆さん疲れているでしょうし、土魔法の基本、錬金
のおさらいをしましょう。それでは・・・」
シュヴルーズ先生が錬金の理論を説明している。
しかし、ルイズにとっては実技が出来ない分、座学はかなり優秀な方である。
そんなルイズにとっては、非常に退屈な授業である。
しかし、幽香はしきりに頷きながら、その授業の内容を咀嚼している様であった。
「幽香、意味わかるの?」
「うーん、分からないわけじゃないんだけど、どうにもピンと来ないわ。
せめて、一回でも実技が見れれば・・・」
「・・・貴方、実は頭良い?」
「・・・伊達に数百年生きてないわ」
「うそっ!貴方、そんなに生きてたの!?」
「言ってなかったかしら?妖怪は軽く千年は生きたりするわよ。
ま、種族にもよるけどね」
「・・・何か、常識が崩れて来たわ」
この時、ルイズは不覚にも大きな声を上げていてしまった。
「ミス・ツェルプストー!」
「はっ!はい!」
「随分と余裕のようですね。では、私がやるつもりだった
錬金の魔法を実演していただきましょう。大丈夫です。
貴方はとても優秀な生徒と聞いています。さぁ」
途端に周りがザワザワと騒ぎ始める。
「あの・・・先生、やめさせた方がいいと思います」
「もう爆発は見たくありません!」
「触ると爆発する技ってあったわね」
周りの生徒達が口々に止めろ止めろと騒ぎ立てる。
その様子を見て、なおルイズはその指名を受けた。
「やります!」
ルイズのこの宣言で、生徒達が隠れようとした。
「―――静かにしてくださらない?」
しかし、ルイズの隣に居た女性、いや、使い魔の幽香が、
この喧騒の中でもやけに響く、重く、低く、人間の本能に直接語りかけるような
声を、いや、もはやこれは号令だ、を掛ける。
「ミセス・シュヴルーズ?」
「は、はい?」
幽香が、非常に優しい声でシュヴルーズに声を掛ける。
周りの喧騒は、幽香の先ほどの一声で静まり返っていた。
「普通は生徒の前に、先生が手本を見せる物じゃなくて?
―――ミセス・シュヴルーズ?」
幽香の、「異論は許さない」と言う、確固とした感情の籠められた言葉は、
それは言霊となってシュヴルーズの考えを侵食する。
「え、えぇ、そうですね。わかりました。では私が手本を見せます」
そう言ってシュヴルーズは、土を出すと、それに魔法を掛ける。
するとその土は、金の輝きを放つ金属に変化する。
「あら、凄いですね先生。それは金ですか?」
幽香は心底感心した風でシュヴルーズを見て、声を掛ける。
それに対してシュヴルーズは自嘲したような
笑みを浮かべながら言葉を紡ぐ。
「いえ、これは真鍮です。私は二つしか属性を掛け合わせられませんから。」
シュヴルーズの自分を見下すような言葉に、幽香はポツリとつぶやく。
「ふぅん―――なんだ、これなら、まだ魔界の人形の魔法の方が高度だわ」
「え?」
幽香のぽつりと言った一言は、近くに居たルイズにしか聞こえていなかった。
「ミセス・シュヴルーズ?」
「は、はい、何でしょうか・・・?」
「よろしければ、私に一度やらせて戴けません事?」
「え?」
シュヴルーズは、不思議そうな表情をしながら、疑いの念の篭った声を上げる。
その幽香の申し立てに、ルイズが反応する。
「や、やめてよ幽香!私が恥かいちゃうじゃない!」
「見てなさいルイズ―――これが、私の実力って言う物よ」
幽香は、あたかも自分がこの空間の支配者のごとく、
いや、事実そんな状況だ。誰もが、学園長室に居る三人ですら、
遠見の鏡を使ってこの状況を覗き見ている。
「行くわよ―――」
幽香の宣言に、全員が息を呑む。
そして―――幽香の魔法、土を真鍮に変える魔法が使われた。
それは、貴族の使う杖と言う、それなりの長い時間を掛けて作られる杖と言う
魔法媒体無しで振るわれた。
「―――出来たわ」
そして、その土は見事金の輝きを放つ別の金属、真鍮に成り代わっていた。
「――――――!!」
その歓声は、どこまでも無音であった。
ただ、ルイズを初めとする、学園全員を、震わせ、叫ばせる物であった。
そして、幽香は言う。
「ルイズ?」
幽香の突然の呼びかけに、ルイズは驚く。
「な、何よ?」
「ルイズ、こっちにいらっしゃい。もしかしたら、
貴方に魔法を使わせられるかも。」
「なっ!」
「「「なっ!?」」」
教室のほぼ全員が驚きの言葉を上げる。
もちろん、校長室の三人も、である。
「どうするの?ルイズ?私のやり方―――やってみない?」
「当然、やるわ!」
ルイズは、もしかしたら今までの自分の評価をひっくり返せるかもしれない
その考えだけで、走ってやってきた。
それはそうだろう。幽香は、完全に魔法の素人の筈なのだ。
その幽香が一発で魔法を成功させた。つまり、それは自分にも
魔法が使えるのではないか―――?
そう、考えさせるのに十分であった。
「偉いわねルイズ・・・よく来てくれたわ」
ただ、ルイズには、一つ心配なことがあった。
何故か、幽香に良く解らない迫力と言うか、
周りの人に、一切の反論を許さない、ナニかが渦巻いていたのだ。
「待ってね・・・」
幽香は、またシュヴルーズの用意した土に何処からか
出した種を蒔き、宣言する。
「フラワーマスターの名において宣言するわ。
―――咲きなさい」
すると、ルイズ、この中で最も博識なタバサですら見たことの無い花を咲かせる。
その花を、ルイズの花に近づけると、ルイズは意識を失った。
「ふふ、いいわ。さぁ―――!」
その光景を見ていたオールド・オスマンと、コルベールは、ほぼ同時に叫んだ。
「いかんっ!」
すぐさまその幽香の行動を止めに行くが、幽香の鏡越しの視線と、
満面の笑みを見ると、一瞬でそんな考えが吹き飛ぶ。
元々、動くことすら出来なくなっていたロングビルは、「ひっ」
と言う声を上げて、失神した。
使い魔は、そのメイジと実力差があると、メイジから主従の関係を取り除こうとする。
幽香は、正にそれをしようとしていたのだ。
幽香は、嬉しそうに叫ぶ。
「さぁ、これで私の使い魔生活も終わり―――よっ!」
光が走った。
ルイズと幽香は他者と一歩送れて朝食の席を立つ。
これから、幽香を入れての、初めての授業である。
「・・・むきゅー。この本、興味深いわ。ここの世界の魔法も会得して、
絶対に魔理沙をぎゃふんと言わせてやるわ」
第4話 こんどこそ すごい 本領発揮
他の生徒から数分遅れてルイズと幽香が教室に入る。
すると、赤い髪をしたスタイル抜群の女性がルイズの姿を認めると、近づいてくる。
「あらルイズ、おはよう」
「・・・おはよう、キュルケ」
ルイズは心底嫌な顔を、キュルケは悪戯を楽しむような顔をしている。
「この人が貴方の召喚した使い魔?」
「そうよ、幽香こそ「使い魔じゃないわ。あくまでルイズとは対等のつもりよ」ってちょっと」
キュルケの質問に、ルイズが自慢げに答えようとしたところ、幽香の口から驚きの言葉が漏れた。
「ち、ちょっと、前に一応ではあっても敬おうって言ってたじゃない」
「いや、なんかやっぱり慣れない事はするもんじゃないわねって事で」
「余りにも酷いわ・・・」
ルイズの絶望感に満ちた声が漏れる。もちろん、それはキュルケにも聞こえていたわけで。
「あははは、ルイズ、なんだかとんでもないのを召喚したみたいね?」
「ふ、ふん!これでも実力は本物・・・なんだからねっ!多分!」
「多分って何よ、私は本気さえ出せれば分けはあっても負けたことは無いわ」
「ふふ、でもあたしはちゃんとした使い魔を召喚したのよ?おいで、フレイム」
すると、教室で他の使い魔と話して(?)いたオレンジ色のトカゲの様な大きな生き物が歩いてきた。
「あら、火の象徴の生き物?」
微妙に不快そうな顔をする幽香。
「そうよ。この尻尾、素晴らしいと思わない?」
確かに、とルイズは思う。この尻尾から見るに、サラマンダーの中でもそれなりに
高位にあるのだろう。と、容易に想像が付く。
「ふーん・・・知能の割に力はあるのね。花、燃やさないでね」
「ふふ、あたしが指示したりしなきゃ、そうそう火なんて吹かないわよ」
「ふーん、ならいいわ」
完全にルイズは蚊帳の外である。
「ちよっと幽香、せめて他人の前では使い魔らしく振舞って頂戴よ」
「嫌よ、逆にルイズしか居ないんなら・・・考えなくも無いけど、他人の前で使い魔
・・・と言うより、ルイズより下だなんて思われたくないわ」
「ふふ、ルイズ、貴方、使い魔に忠誠も見せて貰えないようだからモテないのよ・・・」
「私はアンタみたいに他人に媚を振り分けるほど暇じゃないのよ」
ルイズが反論をするが、キュルケは幽香に興味があるようだ。
「ねぇ、貴方はなんて名前なの?」
「あら、こちらの貴族は相手に先に名乗らせるの?」
「そうね、こちらから名乗りましょうか。あたしはキュルケ。微熱のキュルケ。」
キュルケはそこで一旦区切ると、ルイズにあてつけるように胸を張り、幽香に向かって艶かしい視線を送る。
「ささやかに燃える情熱は微熱。でも、世の男性はそれでいちころなのですわ。あなたと違ってね?」
キュルケは視線を幽香の胸に移動させ、その後視線をルイズの胸に固定し、嘲るような笑みを浮かべる。
「じゃ、失礼?」
そのまま、キュルケはさっそうと歩いていく。歩く姿でさえ何か色気のような物があった。
「キィィィッ!くやしいっ!何よ何よ!絶対幽香のほうが使い魔としての格は高いんだからっ!」
「・・・・・・」
「どうしたのよ、幽香?」
「胸で・・・負けたわ。そうそう負けることは無かったのに・・・」
「・・・そう」
幽香は割りと本気で悔しがっているようだ。
そこに何故かキュルケが戻ってくる。
「ルイズ、貴方、タバサの部屋に入った何か、見なかった?」
「・・・? いえ、見てないけど?」
「うーん。やっぱりルイズも見てないか・・・」
「どうしたのよ?」
「ううん、ただ、タバサが後で戻ってはいるとはいえ、本が減ったりしてるって嘆いてたのよ」
「ふぅん・・・普通、生徒ならタバサの部屋じゃなくて図書室に行くと思うけど・・・」
「だから妙なのよ。まぁいいわ。見つけたらあたしに言ってね。それじゃ」
こんどこそキュルケは男性の群れに戻っていく。
「変なの・・・」
「へぇ、この学園、図書室なんてあったんだ」
「えぇ、まぁ、一般生徒じゃ入れないところもあるけどね」
「ふぅん・・・まぁいいわ、前に居るの、先生でしょ?」
「げ、危なかったわ。ありがと幽香」
「どういたしまして」
前に来た先生、シュヴルーズ先生が口を開く。
「おはよう皆様、私はこの季節に召喚された使い魔を見るのが好きなのですよ・・・
本当に皆さん、色々な・・・色々な・・・」
シュヴルーズはルイズの隣に居る幽香を見て凍りつく。
「・・・えー、本当に色々な使い魔が居るのですね・・・」
「ちょっと、ミセス・シュヴルーズ!人の使い魔みて硬直するのは止めてください!」
「そうよ、使い魔を一通り見てみたけど、私以上の生き物・・・いや、かろうじて対抗できそうなのは、
そこの青もやしの竜しか居ないわよ?」
幽香は青もやし・・・いや、タバサを指差して言う。
タバサは反応しない。それに対してキュルケが反応する。
「ちょっとそこの使い魔、タバサをもやし呼ばわりとは、
礼儀がなってないんじゃない?」
「あら、すいませんね。昔、そこのタバサ、だっけ?
に似た人が紫もやしと呼ばれて居たので、つい呼んでしまいましたわ。
非礼をお詫びします」
「くっ・・・わ、わかればいいのよ!」
周りからは明らかに喧嘩を売りに行ったキュルケを上手く受け流すほどの知慧を
見せた幽香に控えめながらも感嘆の声が漏れる。
ルイズは幽香の耳元でささやく。
(よくやったわ幽香!)
「ゃん!」
「え?」
しかし幽香はそれに気づかなかったようで、ルイズの息が幽香の耳に入り、
思わず嬌声を上げてしまう。
その声はやけに色っぽく、何人かの男子生徒が反応してしまう。
その耳を押さえて甘い声を上げながら顔を赤らめるという動作を
幽香のスタイルとルックスを見ていたギーシュは直視してしまった。
「・・・可憐だ。薔薇たる私が、あの花を手に取らない?そんなことはあり得ない。そんなことは―――!」
ギーシュは、ルイズの最初の召喚、そう、コルベール場外ホームラン事件を見ているのだ。
もちろん幽香の名乗り上げも聞いている。
「そうだ、花だ!全ての美しい花は私の物、ならば私が薔薇である必要は何処にもなくて―――!」
気障なギーシュがなにやら叫んでいるが関係ないことである。
しかし、ミセス・シュヴルーズ先生は耐えられなかったらしい。
「ふがっ!」
「しばらく黙っていなさい。では授業を始めましょう」
「ふがふぐふもっふー!」
ギーシュの喚く声が五月蝿いので生徒達によって窓から落とされる。
これは痛い。
「では、今日は使い魔を召喚して皆さん疲れているでしょうし、土魔法の基本、錬金
のおさらいをしましょう。それでは・・・」
シュヴルーズ先生が錬金の理論を説明している。
しかし、ルイズにとっては実技が出来ない分、座学はかなり優秀な方である。
そんなルイズにとっては、非常に退屈な授業である。
しかし、幽香はしきりに頷きながら、その授業の内容を咀嚼している様であった。
「幽香、意味わかるの?」
「うーん、分からないわけじゃないんだけど、どうにもピンと来ないわ。
せめて、一回でも実技が見れれば・・・」
「・・・貴方、実は頭良い?」
「・・・伊達に数百年生きてないわ」
「うそっ!貴方、そんなに生きてたの!?」
「言ってなかったかしら?妖怪は軽く千年は生きたりするわよ。
ま、種族にもよるけどね」
「・・・何か、常識が崩れて来たわ」
この時、ルイズは不覚にも大きな声を上げていてしまった。
「ミス・ヴァリエール!」
「はっ!はい!」
「随分と余裕のようですね。では、私がやるつもりだった
錬金の魔法を実演していただきましょう。大丈夫です。
貴方はとても優秀な生徒と聞いています。さぁ」
途端に周りがザワザワと騒ぎ始める。
「あの・・・先生、やめさせた方がいいと思います」
「もう爆発は見たくありません!」
「触ると爆発する技ってあったわね」
周りの生徒達が口々に止めろ止めろと騒ぎ立てる。
その様子を見て、なおルイズはその指名を受けた。
「やります!」
ルイズのこの宣言で、生徒達が隠れようとした。
「―――静かにしてくださらない?」
しかし、ルイズの隣に居た女性、いや、使い魔の幽香が、
この喧騒の中でもやけに響く、重く、低く、人間の本能に直接語りかけるような
声を、いや、もはやこれは号令だ、を掛ける。
「ミセス・シュヴルーズ?」
「は、はい?」
幽香が、非常に優しい声でシュヴルーズに声を掛ける。
周りの喧騒は、幽香の先ほどの一声で静まり返っていた。
「普通は生徒の前に、先生が手本を見せる物じゃなくて?
―――ミセス・シュヴルーズ?」
幽香の、「異論は許さない」と言う、確固とした感情の籠められた言葉は、
それは言霊となってシュヴルーズの考えを侵食する。
「え、えぇ、そうですね。わかりました。では私が手本を見せます」
そう言ってシュヴルーズは、土を出すと、それに魔法を掛ける。
するとその土は、金の輝きを放つ金属に変化する。
「あら、凄いですね先生。それは金ですか?」
幽香は心底感心した風でシュヴルーズを見て、声を掛ける。
それに対してシュヴルーズは自嘲したような
笑みを浮かべながら言葉を紡ぐ。
「いえ、これは真鍮です。私は二つしか属性を掛け合わせられませんから。」
シュヴルーズの自分を見下すような言葉に、幽香はポツリとつぶやく。
「ふぅん―――なんだ、これなら、まだ魔界の人形の魔法の方が高度だわ」
「え?」
幽香のぽつりと言った一言は、近くに居たルイズにしか聞こえていなかった。
「ミセス・シュヴルーズ?」
「は、はい、何でしょうか・・・?」
「よろしければ、私に一度やらせて戴けません事?」
「え?」
シュヴルーズは、不思議そうな表情をしながら、疑いの念の篭った声を上げる。
その幽香の申し立てに、ルイズが反応する。
「や、やめてよ幽香!私が恥かいちゃうじゃない!」
「見てなさいルイズ―――これが、私の実力って言う物よ」
幽香は、あたかも自分がこの空間の支配者のごとく、
いや、事実そんな状況だ。誰もが、学園長室に居る三人ですら、
遠見の鏡を使ってこの状況を覗き見ている。
「行くわよ―――」
幽香の宣言に、全員が息を呑む。
そして―――幽香の魔法、土を真鍮に変える魔法が使われた。
それは、貴族の使う杖と言う、それなりの長い時間を掛けて作られる杖と言う
魔法媒体無しで振るわれた。
「―――出来たわ」
そして、その土は見事金の輝きを放つ別の金属、真鍮に成り代わっていた。
「――――――!!」
その歓声は、どこまでも無音であった。
ただ、ルイズを初めとする、学園全員を、震わせ、叫ばせる物であった。
そして、幽香は言う。
「ルイズ?」
幽香の突然の呼びかけに、ルイズは驚く。
「な、何よ?」
「ルイズ、こっちにいらっしゃい。もしかしたら、
貴方に魔法を使わせられるかも。」
「なっ!」
「「「なっ!?」」」
教室のほぼ全員が驚きの言葉を上げる。
もちろん、校長室の三人も、である。
「どうするの?ルイズ?私のやり方―――やってみない?」
「当然、やるわ!」
ルイズは、もしかしたら今までの自分の評価をひっくり返せるかもしれない
その考えだけで、走ってやってきた。
それはそうだろう。幽香は、完全に魔法の素人の筈なのだ。
その幽香が一発で魔法を成功させた。つまり、それは自分にも
魔法が使えるのではないか―――?
そう、考えさせるのに十分であった。
「偉いわねルイズ・・・よく来てくれたわ」
ただ、ルイズには、一つ心配なことがあった。
何故か、幽香に良く解らない迫力と言うか、
周りの人に、一切の反論を許さない、ナニかが渦巻いていたのだ。
「待ってね・・・」
幽香は、またシュヴルーズの用意した土に何処からか
出した種を蒔き、宣言する。
「フラワーマスターの名において宣言するわ。
―――咲きなさい」
すると、ルイズ、この中で最も博識なタバサですら見たことの無い花を咲かせる。
その花を、ルイズの花に近づけると、ルイズは意識を失った。
「ふふ、いいわ。さぁ―――!」
その光景を見ていたオールド・オスマンと、コルベールは、ほぼ同時に叫んだ。
「いかんっ!」
すぐさまその幽香の行動を止めに行くが、幽香の鏡越しの視線と、
満面の笑みを見ると、一瞬でそんな考えが吹き飛ぶ。
元々、動くことすら出来なくなっていたロングビルは、「ひっ」
と言う声を上げて、失神した。
使い魔は、そのメイジと実力差があると、メイジから主従の関係を取り除こうとする。
幽香は、正にそれをしようとしていたのだ。
幽香は、嬉しそうに叫ぶ。
「さぁ、これで私の使い魔生活も終わり―――よっ!」
光が走った。
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