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#navi(ゼロのチェリーな使い魔)
風竜の懸命な飛行により港町ラ・ロシェールに到着したフリオニール達。
道中、フリオニールはルイズが王女の密命を帯びてアルビオンへ向かうこと、王女が同行
させたワルドはルイズの婚約者で魔法衛士隊の隊長であることを二人に説明した。
ルイズに婚約者がいると聞きフリオニールをめぐる恋の行方に光明が差し機嫌の良くなるキュルケ。
「けれど、王女から授かった任務って何かしら?」
「詳しいことは俺にもわからないんだ」
「秘密主義なところあるわよね、ルイズって」
「まぁ、言えない理由があるんだとは思うけど・・・」
フリオニールは自分を置いていった冷酷な(?)ご主人様とその婚約者の顔を思い出し
苦い顔を浮かべた。
フリオニールは風竜の背中から降りて辺りを見回す。港町とキュルケから聞いていたので
てっきりパルムかポフトのような漁師の町を想像していた。
しかし、このラ・ロシェールは海どころかそびえ立つ一枚岩を加工した建物がずらりと
並ぶ山の中の町だった。
「驚いたでしょ?」
「うん。これが港町だなんてレイラもびっくりだね、これは」
キュルケのいたずらそうな目線をフリオニールは少年のような澄んだ眼差しで見返す。
「『土』系統のスクウェアクラスのメイジが作った」
タバサから一言付け加えの説明を受けてハルケギニアの魔法の奥深さを見せ付けられた
フリオニール。自身の住む世界でこのような芸当が出来そうな人物と言えばパラメキア皇帝
くらいしか思い浮かばない。
「もう夜も遅いし「ご主人様」を探すのは明日にしようか。早起きしてさ」
「そうね。それがいいわ。今夜は寝かせないわよダーリン」
3人は貴族が宿泊しても違和感のないグレードの宿をとった(キュルケが強引に相部屋に
しようとするのをフリオニールは慌てて拒否した。結局、部屋割りはフリオニールが一部屋、
キュルケ、タバサの二人で一部屋となった。平民なのに高待遇なフリオニール)。
丁度3人が宿屋に入っていくところをマント姿に白い仮面を付けた男とフード付ローブを
まとった人物の二人組が隠れるようにして見ていたのだがフリオニール達は気付かなかった。
一方、ルイズとワルドは
『女神の杵停』というラ・ロシェールで一番値の張る高級な宿にいた。
まるで新婚旅行のようだね、と呑気なことを言うワルドを尻目にルイズは置いていって
しまった使い魔の安否を気にかけていた。
急いでここまで来たのは良いものの、アルビオン行きの船が出港するのが明後日であると
桟橋の係員から聞くに及び、足止めをくらう苛立ちとフリオニールを置いてけぼりにした
罪悪感がルイズの心の中に錯綜した。
そのようなルイズの心境を知ってか知らずかワルドはしきりに相部屋を要求してきた。
ルイズはやんわりとしかし強い意志を持ってその誘いを断った。いくら婚約者とはいえ
婚前交渉する気にはなれない。ゲルマニアの女であれば抵抗なく部屋を共にするのだろうが
慎み深いトリステインの女としてそれを受け入れるわけにはいかなかった。再会が10数年ぶり
というのもある。確かにワルドは幼少時の憧れの存在であったが、今現在の正直な気持ち
として結婚は当分先のことと捉えている。そんなことを言っているうちに姉のように婚期を
逃してしまうのだろうかという一抹の不安がないといえば嘘になるのだが。
「そうか、わかったよ。けれど、そのような貞淑なところも愛しいよ、ルイズ」
「ごめんなさい、ワルド様。今は任務のことで頭が一杯なの」
こうして二人は別々の部屋をとり休息をとるのであった。
翌朝
フリオニール達はルイズとワルドを探すべく街中の宿屋を訪問していた。一番高級な宿から探そう、
というタバサの提案によって1件目にしてルイズ達を見つけることができた。
ルイズはまだ夢の中だったがワルドは起床していた。宿屋の従業員から連絡を受けてワルドは
ラウンジへやってきた。フリオニールはわざと怖い顔をつくり
「いくらなんでもひどいよ!俺を一人にして行くなんて!」
「この程度で遅れをとるようではルイズの使い魔は勤めきれないぞ、フリオ君!」
「いやいや。あんたは立派なモンスターで空を飛べても俺はタダの馬だったんですけど!」
「乗り物のせいにするとは感心しないな」
「いくら婚約者と一緒で舞い上がっていたとはいえ同行者の管理もできないようでは
隊長失格なんじゃないですか!?」
「言ってくれたな、フリオ君。わかった。君の実力がどの程度のものか僕がテストしてあげよう」
ワルドに抗議したが、逆にテストを受けるはめになった。
放置プレイに続き今度はテスト。この男は余程のS気質なのか?反省のないワルドに怒り心頭の
フリオニールとは対照的にキュルケとタバサは冷めた目で二人の男を見ていた。
「決闘なさるの?ルイズの婚約者さん」
キュルケは落ち着いた口調でワルドに問う。
「ああ、僕の見立てが正しければ彼は伝説の使い魔『ガンダールヴ』だ」
ワルドの衝撃発言にキュルケは唖然とした。タバサも眉をピクリと動かす。
わが意を得たりと得意げに講釈を始めるワルド。
「僕は歴史や用兵に興味があってね。以前書物で見た『ガンダールヴ』のルーンと彼の
ルーンは一緒だ。それに、決闘と言っても命を取ったり再起不能になるような攻撃は
加えないつもりだ。あくまで伝説の力量を確かめるだけなのだからね」
フリオニールは強引なワルドを見て案外亭主関白なタイプだな、と尻に敷く女房タイプの
ルイズとの結婚生活は上手くいかないだろうと思いつつ
「ち、ちょっと!俺はテストなんか受けないよ!」
「尻尾を巻いて逃げるのかねフリオ君」
異議申し立てをしたが、挑発されてついに
「わかったよ。逆に俺があんたを採点してやるよ!」
「よし!そうと決まれば話は早い。この宿には資材置き場に使っている広場があってね。
そこで行うことにしよう。レディ達には立会人として見届けてもらいたい」
決闘を受け入れてしまった。ワルドはキュルケとタバサに立会い人を頼むと外へ出ていった。
決闘場
対峙するフリオニールとワルド。うっすらと輝く朝日が二人の顔を照らす。
決闘の行く末を興味深そうに見つめるキュルケとタバサ。
ワルドはレイピアに似た杖を取り出す。フリオニールは剣も盾も装備する気配はない。
「素手とは僕も舐められたものだな!背中の剣と腕に装着している盾は飾りか!?」
フリオニールは挑発に乗ることなく真顔のまま返す刀で『アンチ』の魔法を唱えた(熟練度3)。
2つの光の輪がワルドの周りに出現し飛び回った次の瞬間、ピンク色をしたピラミッド状の
結界が出来上がりワルドを囲い込んだ。
「『ガンダールヴ』が魔法とは片腹痛いぞ!」
ワルドは素早くルーンを詠唱し『エア・カッター』の魔法で結界を切り裂こうとした。
しかし、結界は破れることなく数秒が経過した後自然に割れて消えた。
結界が消えると同時にワルドは精神力が少し落ちた気がした。朝起きてカーテンを開けたら
外は雨だったような憂鬱な気分とでもいおうか。
フリオニールは続けざまに『アンチ』の魔法を唱える。
そうはさせるものか、とワルドは光の輪を避けようとするが輪は追いかけてくる。
再び結界に囲まれた。さらに気分が優れなくなるワルド。
(これは精神に作用する魔法なのか?「ヤツ」から聞いた情報だと『偏在』や『蜘蛛の糸』の
ような魔法を使うはずだがこのような手段も持ち合わせていたとは!)
ワルドは心の中で呟くが慌てることなくタイミングを見計らって『エア・ハンマー』の
魔法で反撃を開始した。
巨大な空気の槌が上空からフリオニールを狙って振り下ろされる。不可視なので攻撃が
向かっていることさえ気付かない。一陣の風がフリオニールの頭上に舞った次の瞬間、
『エア・ハンマー』はフリオの頭部に直撃した。
「うわっ!」
脳天に衝撃を受けガクッと膝を落とすフリオニール。
「ちっ!この一撃で倒れぬとは」
ワルドは粘るフリオニールを一瞥し舌打ちをする。先程の『アンチ』で精神力を消耗して
いるので魔法の乱発は避けたい。
一方、フリオニールも『アンチ』を2回放ったのに魔法を使われた為、ワルドのMPの
高さに舌を巻く。『エア・ハンマー』のダメージを『ケアル』で回復しながらこの「テスト」は
予想以上に難問だと感じた。もちろんワルドに対する採点は文句なしに合格点だ。
お互いに出方を伺い間合いをとる二人。ワルドはこの状況を打破しようと
「フリオ君、剣を抜きたまえ!僕の杖と君の剣、先に落としたほうが勝ちというはどうだろう?」
「わかったよ」
決着方法を提案しフリオニールはそれを受け入れた。
フリオニールは背中のデルフリンガーを抜刀し、
「よろしく頼むよ、デルフ」
「任せときな、相棒」
挨拶を済ませると構えをとった。盾は装備する気がないのかそのままだ。ワルドはそれを
確認すると迎撃する構えをとる。カウンター作戦のようだ。
フリオニールは先手必勝とばかりに素早い飛び出しでワルドとの間合いを縮めた。
大剣とレイピア状の杖が火花を散らす。剣術は互角。打ち合いをするもののお互い決定打を
放つことができず次第に体力勝負の様相を呈してきた。
「この僕を相手にここまでやるとはさすが『ガンダールヴ』だ」
「あんたこそ魔法だけじゃないんだな」
「僕は誉れ高き軍人だ!」
「俺は軍人が大嫌いなんだよ!」
意地のぶつかり合いであったが、大剣と杖では身体にかかる負荷は一目瞭然でついに
ワルドはスタミナを消耗し動きが鈍ってきたフリオニールの左腕を切りつけた。
一瞬動きを止めたフリオニールに容赦なく追撃の一突きを心臓に狙いを定めて放つワルド。
フリオニールは間一髪突きを避けたが体勢が崩れてしまった為、ワルドの見事な剣捌きに
よってデルフリンガーをはじき落とされてしまった。
「何やってんだよ相棒!」
地面に転がりフリオニールの失態をなじるデルフリンガー。
「すまない、デルフ」
息を切らせ悔しさをにじませながらデルフリンガーに謝るフリオニール。
ワルドは呼吸を整えると得意満面の笑みを浮かべて
「勝負あったな、フリオ君」
「悔しいけど俺の負けだよワルドさん」
勝利宣言をしフリオニールはそれを認めた。ワルドは最後通告を出すように
「これでどちらがルイズを守るに相応しい者か判明したわけだ」
「・・・やっぱりクビですか?」
「それはルイズが決めることだ。しかし、君がアルビオンに行ったところで足を引っ張る
ことになるとは思うがね」
フリオニールのプライドを踏みにじった。
がっくりとうなだれるフリオニールの元へキュルケとタバサが駆け寄る。
「よくやったわ、ダーリン。魔法衛士隊の隊長といえば魔法も剣術もトップクラスよ」
キュルケがフリオニールに慰労の言葉を贈る。タバサもそれに同意するかのように頷く。
「あはは。こんなんじゃ打倒帝国への道のりは険しいな」
フリオニールはレディ達の前で格好悪い姿をみせてしまった恥ずかしさを紛らわすように
苦笑を浮かべる。
フリオニールとの決闘に勝利しご満悦のワルドは
「とにかく、今日中にここを去ることだ」
敗者を気遣うそぶりを見せて忠告した。しかし、キュルケはワルドの思いを無視するかのように
「あら?私達はダーリンを連れて観光目的でアルビオンへ行くのだけど?」
あくまでアルビオン行きはルイズのミッションとは無関係であることを強調した。
「かの国は王党派と反乱軍が戦争をしている。君達が向かうのは危険極まりないだろう」
ワルドは聞き分けのないキュルケに幾分蔑みのこもった口調で言い放った。
「反乱軍!?」
気分の沈んでいたフリオニールであったが反乱軍の単語を聞いて元気を取り戻した。
「そうだ。レコン・キスタという組織が独立運動を展開しているのだ」
ワルドは何も知らずにルイズに付き添ってきたフリオニールに呆れ顔で説明した。
フリオニールは反乱軍の言葉につい条件反射で
「『のばら』」
「???何を言いたいのかわからないが、ちなみに僕は反乱軍ではない」
「なんだ、違うのか」
自身の所属する組織(盟主:ヒルダ王女)の合言葉を言ったが即座に否定された。
「君達がどこへ向かおうと勝手だが僕とルイズの邪魔だけはしないでくれたまえ」
ワルドはフリオニール達にそう言い残すと足早に宿の中へ戻っていった。
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