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#navi(ゼロのチェリーな使い魔)
『フリッグの舞踏会』は食堂の2階にあるホールにて和やかな雰囲気の中開催された。
普段は生意気そうな生徒達も正装を着こなし佇む姿はフリオニールをして「さすが貴族」と
唸らせるものだった。ルイズ、キュルケ、タバサもパーティドレスに身を包み会話に花を咲かている。
フリオニールは学院内で孤高の存在である上、フーケ討伐の実績も加わった為、生徒達に
とっては益々近寄りがたい存在となってしまった(もちろん平民である彼がそのような
活躍をしたことに対するやっかみもある)。唯一の友(?)であるギーシュはずっと
女生徒達に囲まれている。会話の輪に加わりたいが女性の群れに入るのを躊躇うチェリー。
パーティ会場で暇を弄び退屈していたフリオニールは、ギーシュを諦めて同じくボッチで
食事をしていたコルベールの元へ向かった。
「コルベール先生」
「おお、フリオニール君」
「俺までパーティに参加してよかったのでしょうか?」
「もちろん!君も主役の一人だよ。似合ってるぞ、そのタキシード」
コルベールは自身のタキシードを見事に着こなしているフルオニールを眩しい目で見た。
フリオニールは感謝の言葉を述べると、小声で
「先生、例の伝説ってやつ」
「しーっ!その話題はここでは・・・」
伝説のことを口にしたがコルベールは慌てている。フリオニールは構わずさらに小さい声で
「やっぱりこの世界に骨を埋めなきゃいけないんですか?」
「・・・あそこで話そうか」
人だかりのない窓際を指差した。二人はそこまでゆっくりと歩くと、ひそひそと
「君が帰りを急ぐ訳を教えてくれないか」
「俺の住む世界では帝国が世界征服を企んでいて、俺達はそれを阻止しているんです」
「そうだったのか・・・」
「この世界が嫌いっていうわけではないんです。ただ、仲間のことも気になるし」
「気持ちはわかるよ」
「お願いです、先生。「ご主人様」には悪いけど、やっぱり俺・・・」
「・・・わかった。『ガンダールヴ』を手放すのは非常に惜しいが私も全力を尽くそう。
しかし、君が元の世界に戻ったらミス・ヴァリエールとの契約はどうなるのか・・・」
コルベールが難しい顔をして沈思黙考しているところにオスマン院長がやってきた。
「楽しんでおるかの?フリオニール君」
「やっと憶えてくれましたね」
「ほっほっほっ」
「ところで院長。なんであの杖に『破壊の杖』という名前を付けたんですか?」
「ああ、あれを使うのはギャンブルなのじゃよ。標的を仕留めることもあれば己を仕留める
こともあり。度を過ぎたギャンブルは身を滅ぼす、じゃ」
「だったら『破滅の杖』でもよかったんじゃ・・・」
「それも良い名前じゃのぅ・・・まぁ、そんなこと気にせんでパーティを楽しんでくれたまえ」
オスマン院長はニッコリと微笑むとその場を立ち去った。
そして、パーティも佳境に入りダンスタイムの時間がやってきた。生徒達は男女一組と
なるべくパートナー選びを始めた。
キュルケは引く手数多でどれにしようかな、をやっている。フリオニールの元へ行かないのは、
誘いたい気持ちは当然あるが何故か心に躊躇いが生じてしまった。先程、フリオニールと
コルベールが真剣に話をしていたのを目撃した時、フリオニール帰還の件が頭によぎって
しまったからだろうか。
タバサは人目もくれず食事をしている。かなりの大食いだ。ちなみに彼女に言い寄ってくる
男子生徒はいない。
なぜなら、屈指の実力を持つメイジである上性格も無愛想な為、学院内でアンタッチャブルな
存在となっているからだ。入学当初相次ぐ決闘で相手を病院送りにした前科もある。
そして、「ご主人様」はフーケ討伐の立役者でありこのパーティの主役の為、多くの男子生徒から
ダンスのお誘いを受けていたが全て断っていた。
普段の『ゼロ』と蔑まれている状況から一転、『シュヴァリエ』候補となり周囲からちやほや
される様になり嬉しくないはずがない。
しかし、ルイズはさり気ない態度を取りつつ、ちらりと使い魔のいる方向を見ると、
何と給仕のメイドと楽しそうにおしゃべりをしている!シエスタという名前らしい。仲間に
して・・・あげるわけにはいかない!ルイズはつかつかと二人の元へ歩み寄る。
「こ、これはミス・ヴァリエール。この度のご活躍、おめでとうございます」
「あ、ありがとう」
「「ご主人様」は踊らないんですか?」
「・・・相手がいないのよ」
「では、私はこれで・・・」
シエスタはルイズに会釈をし、寂しそうな目をフリオニールに向けて軽く手を振った。
その時、ルイズはシエスタのシャツの袖に付けられたボタンを見逃さなかった。
「あら、綺麗なボタンですこと」
「はい。フリオニールさんからいただきました」
頬を赤らめるシエスタ。そして、ルイズを見つめるシエスタの目は心なしか勝ち誇って
いるように思われる。
「そうですよ。「ご主人様」にあげたのと一緒。4個一組1000ぎる。高いのか安いのか
よくわからないけど」
「ちょっとこっちに来なさい」
ルイズは強引にフリオニールの腕を掴み、引っ張るようにしてホールを出て1階へ降り、
周囲に誰もいないことを確認すると
「な、ななな何であのボタンをあ、ああああの娘も持っているのよ!」
「だって、色々お世話になってるから」
「わ、わわわわたしは、あ、ああああんたの何!?」
「「ご主人様」でしょ?」
「そ、そのご主人様に贈るプレゼントと、メ、メイドに贈るお礼をい、いいい一緒にする
とはどういうことよ!」
二人の様子がおかしいと後を追ってきたシエスタが涙ぐみながら
「あ、あの。私、何かいけないことでも・・・」
「シエスタは何も悪くないよ」
「悪いのはあんたでしょ!」
ルイズはハイヒールのかかとでフリオニールの足の甲を思いっきり踏んだ。
「ぎゃーーーー」
激痛に思わず飛び跳ねるフリオニール。
「あんたなんかもう知らないんだから!元の世界でもどこでもとっとと行ってしまえば
いいんだわ!クビよ!クビ!」
ルイズは激昂してそう言い残すと肩を怒らせ去っていった。2階へ戻る気はないらしい。
「痛ててて。なんだよ、本当ヒステリーだなぁ」
「すみません。私、どうしたら・・・うっうっ」
「いいんだよ。気にしなくていいんだよ。君は悪くない」
夜回り先生ばりの口調で小さく泣くシエスタを慰めるフリオニール。
「とにかく落ち着いたら仕事に戻りなよ。この埋め合わせはまた今度するからさ」
「ほ、本当ですか?ありがとうございます!」
潤んだ瞳でフリオニールを見つめるシエスタ。涙を手で拭いペコリとお辞儀をすると
2階へ戻っていった。
(とりあえず「ご主人様」に謝っておかなきゃなぁ)
フリオニールは痛む足の甲を引きずるように重い足取りでルイズの部屋へ向かった。
一方、ルイズは自室に戻るとドサッとベッドの上で仰向けになって悶々とする気持ちと
格闘していた。
(わたし、なんでこんなに怒っているんだろう・・・)
自身の使い魔は普段の感謝の気持ちを込めてあのボタンをプレゼントしたのだ。他にお礼
したい人物がいたとしても別段おかしいことではない(キュルケは除く)。
貴族への贈り物と平民への贈り物が一緒だったから?
しかし、フリオニールは別の世界の人間だ。主従の関係を理解し、敬語での会話を守り
(たまに崩れるが)よく仕えてくれている中でそこまで求めるのは酷というものだろう。
恐らく充分な金も持ってはいない。
では、何故、あの時あんなに激昂してしまったのだろうか?
ルイズは答えが出ずに脚をじたばたさせていると、ドアをノックする音が聞こえた。
ルイズの部屋の前に着いたフリオニール。案の定、ドアの前にはデルフリンガーとアイスシールドが
無造作に置かれている。
床に乱雑に置かれた際に鞘から少し出たデルフリンガーが不安げな声で話しかける。
「ど、どうしたんだ相棒!?貴族の娘っ子がいきなり部屋から俺っちを追い出したぞ」
「ごめんな、デルフ。俺、クビになっちゃたよ」
「なんだってー!」
「とりあえず説得するからしばらく納まっててくれ、デルフ」
「って、お、おい!」
フリオニールは丁重にデルフを鞘に納め(出番が少なくてすまん、デルフ!)ドアをノックした。
(あいつだわ!)
「「ご主人様」いますか?いるなら聞いて下さい」
(絶対にドアを開けてやるもんですか!)
「俺が軽い気持ちでプレゼントしてしまったことは不注意でした(君にあげたことが)」
(・・・・・・)
「けど、「ご主人様」にもシエスタにもお世話になっているから感謝の気持ちを表したかったんだ」
(そんなことわかってるわよ!)
「なんて言っていいかうまく言えないけど、俺、この世界にいるかぎり「ご主人様」の
護衛はちゃんと果たすつもりです」
(何よ、クビを取り消せっていうの?)
「でも、「ご主人様」勇気あるし、魔法使えるから俺なんかいなくていいのかも」
(どっちやねん!)
「あ、「ご主人様」結構無茶するからなぁ。あのバカでかい土くれ相手に逃げなかったし」
(今度はバカにするっていうの!?)
「でも、「ご主人様」が逃げることを許さなかったからフーケを追い詰めることができたし。
フーケを捕らえることができたのは「ご主人様」様様ですね」
(ここでヨイショ!?)
「だから、その~・・・」
(もう、しようがないんだから!)
数秒後、ドアがゆっくりと開いた。ルイズの頬には若干赤みがかかっている。
「ま、まぁ、今回は特別よ。今度から「ご主人様」にはちゃんと気を使いなさい」
「・・・わかりました。「ご主人様」」
舞踏会で奏でるメロディがかすかに聞こえてくる。曲は山場を迎えたようだ。
フリオニールは膝をつきルイズの右手をとると
「俺でよければダンスのお相手をさせて下さい。「ご主人様」」
「今から戻っても終わってしまうけど・・・仕方がないわね。さぁ、部屋に入りなさい」
デルフリンガーとアイスシールドを放置したまま部屋へ入る二人。
部屋の中は照明が点いていなかったが、窓から差し込む淡い月光が二人の姿を薄っすらと照らす。
ほの暗い部屋の中で曲に合わせゆったりとダンスを愉しむルイズとフリオニールであった。
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