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「ゼロの賢王 第02話」(2010/11/27 (土) 01:20:08) の最新版変更点
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#navi(ゼロの賢王)
「月・・・か」
ポロンがルイズに連れられて、彼女の部屋へ着く頃には日は落ち始めており、
窓から空を見上げると、暗くなりかけた空に月が浮かんでいた。
それを見て、ポロンは誰に言うでもなく呟いた。
「2つの月・・・ねえ」
かつて異魔神との戦いの際、上空に浮かぶいくつもの『幻の月』を目の当たりにしていたポロンにとっては、
月が2つあること自体は驚く様なことでは無かった。
だが、一つ確信したことがある。
(ここは俺がいた世界じゃ無いな・・・)
ポロンがいた世界では、どんな時でも本物の月は1つしか無かった。
それに先程中庭でチラッと見えた子供たちが連れている『使い魔』であろう見覚えの無い生物たち。
『コントラクト・サーヴァント』など、賢王である自分さえ聞いたこともない単語。
これだけの材料があれば、同じ世界の別の土地と考えるよりも別の世界と考えた方が自然である。
先程、呪文が使えることで抱いていた違和感に一つの答えが出たと言える。
ポロンのいた世界では呪文は消失した。
逆に言えば、呪文が消失したのはポロンのいた世界なのである。
別の世界、それも距離などを超越し、次元さえも越えた世界であれば呪文は使えるかも知れない。
『失われし日』以降、ポロンはそんな考えを持ったことが何度かあった。
だが、現実的では無いし何よりもそんな別の世界があることさえ懐疑的であった。
なのでそれ以上考えることはしなかった。
しかし、今自分がいるのはそんな別の世界なのだ。
「着いたわ。ここが私の部屋よ」
ルイズの声がポロンの思考を遮った。
目の前にはルイズの部屋がある。
ポロンはルイズに連れられて部屋の中へと足を踏み入れた。
部屋の中は人一人が住むには十分な広さで、家具も一式並べられている。
その一つ一つが一級品なのは、この世界のことを知らないポロンでも一目で分かる程であった。
「すっげー。とてもガキ1人が住む部屋とは思えねーな」
「(ガキ・・・?ピキッ)フン、貴族ならこのくらいの部屋は当然よ」
「いやー贅沢っつーか、豪華っつーか・・・」
「そりゃ平民からしてみたらそうなんでしょうね」
ポロンは少々不機嫌な顔になる。
それを見て取ったルイズがポロンに詰め寄る。
「何?何か言いたいことでもあるの?」
「ある。つーか、その『平民』とか『貴族』って何だよ?」
「ハァ?『平民』は『平民』だし、『貴族』は『貴族』じゃない。それ以上何かあるわけ?」
「言葉の意味は分かる。だが、この世界においてどういう意味なのか、それが分からん」
「『この世界』って、まるで別の世界から来たみたいな言い方ね」
「あ、いや、ほ、ほら俺のいたところってさあ、田舎も田舎でそういうのから隔離されてたっつーか」
ポロンは別の世界から来たということをなるべく表に出さないように努めた。
仮にそれをルイズに説明したところで信じないだろうし、ややこしくなるだけだ。
下手すれば自分に不信感さえ抱きかねない。
余計なトラブルはなるべく避けたかった。
「ふぅん、まあいいわ。じゃあ無知なアンタに優しい私が『貴族』と『平民』の関係について簡単に説明してあげるわね」
何処か棘のある言い方だったが、ルイズはそれ以上追及することはせずポロンに説明した。
その内容を要約するならば、以下の様なことであった。
『貴族』とは一部を除いて魔法が使えるメイジであり、この世界の支配階級であり、
『平民』とは魔法の使えない者を指し、貴族に従う者であるということ。
また『平民』は決して『貴族』に逆らうことは出来ないのだということ。
それを聞くとポロンは「う~む」と考え込んだ。
(話を聞く限りじゃ『貴族』と『平民』にはどうしても越えられない壁があるみたいだな。でも、こんだけ『貴族』側が『平民』を縛り付けてたら、その内暴動や革命に発展するんじゃないのか?)
それにどうやらポロン自身も周りから見れば『平民』という立場らしい。
この先のことが途端に不安になって来る。
ポロンは浮かない顔でルイズに尋ねた。
「・・・で、平民であり使い魔である俺はこの先何すりゃいいんだ?」
ルイズはコホンと咳払いすると、腰に手を当てて胸を精一杯反らした。
丁度座り込んでるポロンを見下ろす様な形になる。
「いい?使い魔って言うのはまず主人の目となり、耳となる能力が与えられるの。使い魔が見たり聞いたりしたことを、主人も同時に知ることが出来るのよ」
「ほう・・・。そいつぁ凄いがこっちにも一応プライベートってもんがあるぞ?」
「安心なさい、アンタじゃ無理みたい。何も見えないし聞こえないから」
「そうか」
「私にとってはちょっと残念だけどね。・・・それから、使い魔は主人の望むものを見つけて来るのよ。秘薬の材料の苔とか硫黄とかね。どう?アンタ、そういうの得意?」
「知識はあるけど、それがここでも通じるかはわかんねーな。第一何処にあるのか知らねーしな」
「そう。まあ期待はしていなかったから別にいいわ。それでね・・・」
ルイズは一旦呼吸を置いてからポロンの顔を見た。
そして残念そうにため息をついた後、言葉を続けた。
「そしてこれが一番なんだけど、使い魔はご主人様を守らなきゃいけないの。でも、アンタ弱そうだし、きっと無理ね」
「これまた厳しいご意見で」
(まあ、今の俺じゃあ何処まで戦えるかまだ分かんねーしな)
ポロンの身体能力はそれ程高くは無い。
遊び人としてアルスと同行していた時もまともな戦闘はなるべく避けていたし、
賢王として目覚めた後は呪文主体で戦っていた為、体を使って戦うということはあまり無かったのだ。
それではいけないと思い、仲間であり親友である剣王キラや拳王ヤオに稽古をつけてもらったこともあったが、2人揃って「才能が無い」と言われてしまったくらいである。
その為、呪文が使えなくなってからは自分の弱さに苦労させられることがとにかく多かった。
それでもモンスターと心を通わせることが出来た為、旅先でモンスターに襲われそうになったのを度々回避することも出来たが、たまに襲ってくるモンスターがいた時は全力で逃げていた。
(今思えば俺はよく今まで生きて来れたな・・・。ま、昔から悪運だけは強かったからな)
ポロンはルイズに気付かれない様にフッと笑った。
「他にアンタに出来そうな仕事は・・・そうね、洗濯、掃除、その他雑用なんかはどう?」
「おいおい、俺は召使いかよ?使い魔ってそういうことじゃ無いんじゃねーの?」
「でも、アンタに出来そうなのってそのくらいよ?」
「・・・まあ、その辺はサクヤの代わりに俺がやることもあるし、出来ないことは無いけどな」
「それじゃあ決まりね。・・・ところでサクヤって誰?」
「俺の愛する妻だが・・・」
「え?アンタ妻帯者だったの?」
ルイズが驚いた顔をしたのを見ると、ポロンは少し落ち込んだ。
「・・・そんなに驚くことかよ?」
「ふ~ん、そうなんだ・・・ねえ、ポロン。一つ聞いていい?」
ルイズは声のトーンを落とす。
ポロンはルイズの態度が急に変わったのを見て、不思議がった。
「何だ?どうした?」
「その・・・サクヤさんと会いたい?」
「そりゃあ、会いたいに決まってんだろ」
「・・・そっか。そうよね」
「・・・お前まさかさあ『それなら使い魔なんてやらなくていいわよ』とか言うつもりじゃ無いよな?」
「え?」
ルイズは不意を付かれて驚いた。
ポロンは先程までとは違い、真剣な眼差しでルイズを見ている。
その視線に思わずルイズはドキッとしていた。
「俺が『お前の使い魔になる』って言ったのはその場しのぎの方便でも、ご機嫌取りでも無いからな」
「でも・・・使い魔になったらサクヤさんに逢えなくなるかも知れないのよ?」
「ああ、それは確かに困る。サクヤに逢えなくてもいい。なんてこれっぽちも思っちゃいねえ!
帰れるなら今すぐにでも帰りたいさ!・・・でもよお、俺の性分って奴なのかねえ。
お前みたいに俺を必要としている人間が目の前にいるのにそれを無視する。なんてことは俺には出来ねえ!」
ポロンはかつてアリアハンで幼い兄妹と出会い、彼らを自分の弟子にして一緒に行動していたことがあった。
3人で森の中へ入ったところでモンスターに襲われてしまったのだが、
その時、ポロンは幼い兄妹を残してその場から逃げてしまった。
当時のポロンは賢王としての力も目覚めておらず、戦闘能力も無かったのだからその行動は仕方の無いことであった。
だが、ポロンは逃げる途中で立ち止まると、震える足を抑えて再びモンスターの元へと戻って行ったのである。
ポロンは昔から自分を必要としてくれる人を見捨てることは出来ない人間であった。
それは賢王としての義務ではなく、ポロン本来の人間の優しさなのだろう。
「だからよ、お前はそんな心配しなくていいんだぜ?」
「ポロン・・・」
「ったく、ガキがいっちょ前に気なんか利かせやがって・・・」
「ガ・キ?(ピキッ)・・・さっきからガキガキってご主人様に対する口の利き方がなってないみたいねえ?」
「あん?」
「そうね・・・使い魔の躾は早めにしておかないと、どんどん悪い子になっちゃうもんねえ」
そう言うとルイズは何処からか乗馬用の鞭を取り出した。
それを見てポロンは青ざめる。
「おい、そんな空気じゃ無かっただろ!何だその心変わりは!?秋の空だってそんな急変しねえぞ!?」
「うるさい!うるさい!うるさーーーい!!」
「イデェ!!!・・・ったく、とんだ癇癪持ちだ。ま、ポジティブに照れ隠しと受け取っておくか」
そう言いながらポロンはやんちゃな子供を見る親の気持ちになっていた。
その後、鞭で叩くのに疲れたルイズは洗濯物をポロンに渡してベッドに入り、さっさと寝てしまった。
ポロンは仕方無いので、床で寝ることにする。
(さあて、これからどうなるか・・・。ま、なるようになるだろう)
ポロンのハルケギニアでの一日はこうして終わった。
#navi(ゼロの賢王)
#navi(ゼロの賢王)
「月・・・か」
ポロンがルイズに連れられて、彼女の部屋へ着く頃には日は落ち始めており、
窓から空を見上げると、暗くなりかけた空に月が浮かんでいた。
それを見て、ポロンは誰に言うでもなく呟いた。
「2つの月・・・ねえ」
かつて異魔神との戦いの際、上空に浮かぶいくつもの『幻の月』を目の当たりにしていたポロンにとっては、
月が2つあること自体は驚く様なことでは無かった。
だが、一つ確信したことがある。
(ここは俺がいた世界じゃ無いな・・・)
ポロンがいた世界では、どんな時でも本物の月は1つしか無かった。
それに先程中庭でチラッと見えた子供たちが連れている『使い魔』であろう見覚えの無い生物たち。
『コントラクト・サーヴァント』など、賢王である自分さえ聞いたこともない単語。
これだけの材料があれば、同じ世界の別の土地と考えるよりも別の世界と考えた方が自然である。
先程、呪文が使えることで抱いていた違和感に一つの答えが出たと言える。
ポロンのいた世界では呪文は消失した。
逆に言えば、呪文が消失したのはポロンのいた世界なのである。
別の世界、それも距離などを超越し、次元さえも越えた世界であれば呪文は使えるかも知れない。
『失われし日』以降、ポロンはそんな考えを持ったことが何度かあった。
だが、現実的では無いし何よりもそんな別の世界があることさえ懐疑的であった。
なのでそれ以上考えることはしなかった。
しかし、今自分がいるのはそんな別の世界なのだ。
「着いたわ。ここが私の部屋よ」
ルイズの声がポロンの思考を遮った。
目の前にはルイズの部屋がある。
ポロンはルイズに連れられて部屋の中へと足を踏み入れた。
部屋の中は人一人が住むには十分な広さで、家具も一式並べられている。
その一つ一つが一級品なのは、この世界のことを知らないポロンでも一目で分かる程であった。
「すっげー。とてもガキ1人が住む部屋とは思えねーな」
「(ガキ・・・?ピキッ)フン、貴族ならこのくらいの部屋は当然よ」
「いやー贅沢っつーか、豪華っつーか・・・」
「そりゃ平民からしてみたらそうなんでしょうね」
ポロンは少々不機嫌な顔になる。
それを見て取ったルイズがポロンに詰め寄る。
「何?何か言いたいことでもあるの?」
「ある。つーか、その『平民』とか『貴族』って何だよ?」
「ハァ?『平民』は『平民』だし、『貴族』は『貴族』じゃない。それ以上何かあるわけ?」
「言葉の意味は分かる。だが、この世界においてどういう意味なのか、それが分からん」
「『この世界』って、まるで別の世界から来たみたいな言い方ね」
「あ、いや、ほ、ほら俺のいたところってさあ、田舎も田舎でそういうのから隔離されてたっつーか」
ポロンは別の世界から来たということをなるべく表に出さないように努めた。
仮にそれをルイズに説明したところで信じないだろうし、ややこしくなるだけだ。
下手すれば自分に不信感さえ抱きかねない。
余計なトラブルはなるべく避けたかった。
「ふぅん、まあいいわ。じゃあ無知なアンタに優しい私が『貴族』と『平民』の関係について簡単に説明してあげるわね」
何処か棘のある言い方だったが、ルイズはそれ以上追及することはせずポロンに説明した。
その内容を要約するならば、以下の様なことであった。
『貴族』とは一部を除いて魔法が使えるメイジであり、この世界の支配階級であるということ。
『平民』とは魔法の使えない者を指し、貴族に従う者であるということ。
また『平民』は決して『貴族』に逆らうことは出来ないのだということ。
それを聞くとポロンは「う~む」と考え込んだ。
(話を聞く限りじゃ『貴族』と『平民』にはどうしても越えられない壁があるみたいだな。でも、こんだけ『貴族』側が『平民』を縛り付けてたら、その内暴動や革命に発展するんじゃないのか?)
それにどうやらポロン自身も周りから見れば『平民』という立場らしい。
この先のことが途端に不安になって来る。
ポロンは浮かない顔でルイズに尋ねた。
「・・・で、平民であり使い魔である俺はこの先何すりゃいいんだ?」
ルイズはコホンと咳払いすると、腰に手を当てて胸を精一杯反らした。
丁度座り込んでるポロンを見下ろす様な形になる。
「いい?使い魔って言うのはまず主人の目となり、耳となる能力が与えられるの。使い魔が見たり聞いたりしたことを、主人も同時に知ることが出来るのよ」
「ほう・・・。そいつぁ凄いがこっちにも一応プライベートってもんがあるぞ?」
「安心なさい、アンタじゃ無理みたい。何も見えないし聞こえないから」
「そうか」
「私にとってはちょっと残念だけどね。・・・それから、使い魔は主人の望むものを見つけて来るのよ。秘薬の材料の苔とか硫黄とかね。どう?アンタ、そういうの得意?」
「知識はあるけど、それがここでも通じるかはわかんねーな。第一何処にあるのか知らねーしな」
「そう。まあ期待はしていなかったから別にいいわ。それでね・・・」
ルイズは一旦呼吸を置いてからポロンの顔を見た。
そして残念そうにため息をついた後、言葉を続けた。
「そしてこれが一番なんだけど、使い魔はご主人様を守らなきゃいけないの。でも、アンタ弱そうだし、きっと無理ね」
「これまた厳しいご意見で」
(まあ、今の俺じゃあ何処まで戦えるかまだ分かんねーしな)
ポロンの身体能力はそれ程高くは無い。
遊び人としてアルスと同行していた時もまともな戦闘はなるべく避けていたし、
賢王として目覚めた後は呪文主体で戦っていた為、体を使って戦うということはあまり無かったのだ。
それではいけないと思い、仲間であり親友である剣王キラや拳王ヤオに稽古をつけてもらったこともあったが、2人揃って「才能が無い」と言われてしまったくらいである。
その為、呪文が使えなくなってからは自分の弱さに苦労させられることがとにかく多かった。
それでもモンスターと心を通わせることが出来た為、旅先でモンスターに襲われそうになっても、
モンスターと交渉することで度々回避することも出来たが、たまに襲ってくるモンスターがいた時は全力で逃げていた。
(今思えば俺はよく今まで生きて来れたな・・・。ま、昔から悪運だけは強かったからな)
ポロンはルイズに気付かれない様にフッと笑った。
「他にアンタに出来そうな仕事は・・・そうね、洗濯、掃除、その他雑用なんかはどう?」
「おいおい、俺は召使いかよ?使い魔ってそういうことじゃ無いんじゃねーの?」
「でも、アンタに出来そうなのってそのくらいよ?」
「・・・まあ、その辺はサクヤの代わりに俺がやることもあるし、出来ないことは無いけどな」
「それじゃあ決まりね。・・・ところでサクヤって誰?」
「俺の愛する妻だが・・・」
「え?アンタ妻帯者だったの?」
ルイズが驚いた顔をしたのを見ると、ポロンは少し落ち込んだ。
「・・・そんなに驚くことかよ?」
「ふ~ん、そうなんだ・・・ねえ、ポロン。一つ聞いていい?」
ルイズは声のトーンを落とす。
ポロンはルイズの態度が急に変わったのを見て、不思議がった。
「何だ?どうした?」
「その・・・サクヤさんと会いたい?」
「そりゃあ、会いたいに決まってんだろ」
「・・・そっか。そうよね」
「・・・お前まさか『それなら使い魔なんてやらなくていいわよ』とか言うつもりじゃ無いよな?」
「え?」
ルイズは不意を付かれて驚いた。
ポロンは先程までとは違い、真剣な眼差しでルイズを見ている。
その視線に思わずルイズはドキッとしていた。
「俺が『お前の使い魔になる』って言ったのはその場しのぎの方便でも、ご機嫌取りでも無いからな」
「でも・・・使い魔になったらサクヤさんに逢えなくなるかも知れないのよ?」
「ああ、それは確かに困る。サクヤに逢えなくてもいい。なんてこれっぽちも思っちゃいねえ!帰れるなら今すぐにでも帰りたいさ!・・・でもよお、俺の性分って奴なのかねえ。お前みたいに俺を必要としている人間が目の前にいるのにそれを無視する。なんてことは俺には出来ねえ!」
ポロンはかつてアリアハンで幼い兄妹と出会い、彼らを自分の弟子にして一緒に行動していたことがあった。
3人で森の中へ入ったところでモンスターに襲われてしまったのだが、
その時、ポロンは幼い兄妹を残してその場から逃げてしまった。
当時のポロンは賢王としての力も目覚めておらず、戦闘能力も無かったのだからその行動は仕方の無いことであった。
だが、ポロンは逃げる途中で立ち止まると、震える足を抑えて再びモンスターの元へと戻って行ったのである。
ポロンは昔から自分を必要としてくれる人を見捨てることは出来ない人間であった。
それは賢王としての義務ではなく、ポロン本来の人間の優しさなのだろう。
「だからよ、お前はそんな心配しなくていいんだぜ?」
「ポロン・・・」
「ったく、ガキがいっちょ前に気なんか利かせやがって・・・」
「ガ・キ?(ピキッ)・・・さっきからガキガキってご主人様に対する口の利き方がなってないみたいねえ?」
「あん?」
「そうね・・・使い魔の躾は早めにしておかないと、どんどん悪い子になっちゃうもんねえ」
そう言うとルイズは何処からか乗馬用の鞭を取り出した。
それを見てポロンは青ざめる。
「おい、そんな空気じゃ無かっただろ!何だその心変わりは!?秋の空だってそんな急変しねえぞ!?」
「うるさい!うるさい!うるさーーーい!!」
「イデェ!!!・・・ったく、とんだ癇癪持ちだ。ま、ポジティブに照れ隠しと受け取っておくか」
そう言いながらポロンはやんちゃな子供を見る親の気持ちになっていた。
その後、鞭で叩くのに疲れたルイズは洗濯物をポロンに渡してベッドに入り、さっさと寝てしまった。
ポロンは仕方無いので、床で寝ることにする。
(さあて、これからどうなるか・・・。ま、なるようになるだろう)
ポロンのハルケギニアでの一日はこうして終わった。
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