「ゼロの怪盗-03」(2010/10/30 (土) 01:17:57) の最新版変更点
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#navi(ゼロの怪盗)
ルイズの焦燥は並大抵のものではなかった。
同級生に『ゼロのルイズ』と揶揄され、不当な辱めを受け続けてきた彼女にとってこの召喚の儀は、
彼女を馬鹿にしてきた連中を見返す最大のチャンスでもあったのだ。
それが、召喚には何度も失敗し、ようやく成功したと思ったら、現れたのは平民の男。
しかも、使い魔の契約を結んだにも関わらず、男はすぐに自分の元から去っていったのだ。
ルイズにとっては、人生最大の恥といっても過言ではなかった。
「何処!?何処なの!!?」
その苛立ちは言葉となり、自然にルイズの口をついて出た。
「アイツ……いや、もうアイツなんて人呼ばわりしないわ!!
犬よ!それもバカ犬!!……犬だって少しは主人を慕うものよ?全く……」
ルイズの口元が歪む。
「ふっふっふっ……どうやら躾が必要なようね。ふっふっふっ……」
そんな風にブツブツと言いながら歩いていると、宝物庫の近くで海東を発見した。
ミス・ロングビルとイチャついている。……様にルイズの目には見えた。
「あのバカ犬ッ!!私がこんなに苦労しているのに!!」
ルイズは怒りに身を任せて、杖を海東の背中へと向ける。
すると次の瞬間、ルイズの目の前に何か光の弾のようなものが飛んできた。
地面へ着弾すると、土埃を高らかに舞い上げ、魔法を唱えようとしたルイズの手を止めた。
「……………………へ?」
一瞬の出来事にルイズの体が固まる。
目の前で何が起きたのか理解出来ない。
散漫していた瞳を海東へ移すと、海東はこちらに背を向けながら何かをルイズの方へ向けていた。
それは鉄砲のようにも見えたが、あんな鉄砲はこの世界には存在しない。
「やれやれ、とんだ邪魔が入ったね」
海東はそう言うと、ルイズの方へゆっくりと振り返った。
そして、その鉄砲のようなものをルイズへ向けた。
「え?え?な、何?」
ルイズは目の前の出来事に、頭が真っ白になる。
「僕は自分が邪魔されるのはあまり好きじゃないんだ」
海東は表情を変えずにそう言い放つと、引き金に指をかける。
「ちょ、ちょっとお待ちください!」
ロングビルは慌てて海東を制止する。
彼女にとって、魔法の使えないゼロのルイズなどどうでもよかったが、
仮にも学院長の秘書である立場の自分が彼女を見捨てるのはあまりに不自然であった。
「彼女はミス・ヴァリエール。ヴァリエール公爵家の三女です。
それを傷付けた、或いは殺したなどあったら政治的問題になります!」
「関係ないね。興味もない」
海東は冷たくそう言い放つ。
そんな海東を見て、ロングビルは戦慄した。
(何て奴だい……)
ロングビルは海東の視線の先を見つめる。
(本当に興味が無いんだねえ…。まるでそこに何もいないみたいじゃないか)
そこには怒りなのか恐怖なのか、わなわなと震えるルイズがいたが、
海東の目にちゃんと彼女が映っているかは甚だ疑問であった。
「ま、いっか。お宝に障害はつきものだしね」
海東は感情のこもってない笑顔を浮かべると、ルイズに向けていたそれを下ろす。
と、同時にルイズはその場にへたり込んだ。
どうやら腰が抜けたようである。
「じゃあ僕はこれで失礼させて頂くよ」
そう言うと、素早く海東はその場から立ち去った。
「あ……。ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
ルイズは追いかけようとするが、足が動かない。
再び自分の元から去っていく海東の背中をただ見つめることしか出来なかった。
「…………!!」
ルイズは声にならない声を上げて地面を叩いた。
使い魔に対して恐怖を抱いたことへの屈辱、そして二度も使い魔に逃げられたことの悲しみ。
様々なものがない交ぜになり、自然と涙がこぼれている。
そんなルイズを気にも止めず、ロングビルは怪盗『土くれのフーケ』として海東の背中を見送った。
(あの身のこなし……あいつがただ者で無いのは確かだねえ。
それに、あのヴァリエールの嬢ちゃんが現れた時……。
背中に目でも付いてるかのような動きだった。……敵には回したくないねえ
…………さて!)
ごくり、と唾を飲み込むと、今度はミス・ロングビルとして泣き崩れるルイズの元へと向かった。
「……また、印が輝いてる」
海東は森の中で身を隠しながら、発光する自身の右手を見つめた。
(今のところ害は無いみたいだけど……このままにしておくわけにもいかない……か)
この印は何なのか、また自身の体に何が起きてるのか。
知らないということがいかに危険なことだということを海東はよく知っている。
今後の為にも、この印のことを知っておく必要を海東は感じた。
その時、海東の脳裏にルイズの顔が浮かぶ。
(全てはあの子から……か)
やれやれ、といった感じで海東を首を振る。
「……仕方ないね」
そう呟くと、海東は森の中へと消えていった。
ルイズはどうやって学院内へ戻ってきたのか覚えていなかった。
気付いた時には、コルベールの使い魔の捜索についての話が終わっていた。
当然、コルベールの話など1ミリも覚えていない。
半ば茫然自失のまま、ふらふらとした足付きで自室へ戻る。
(はははは……。もう、何が何やら……)
取り敢えず寝よう。
寝て起きたら、きっと悪い夢も覚めるだろう。
ルイズはもう他に何も考えたく無かった。
力無く自室の扉を開く。
「やあ」
「えっ?」
誰もいない筈の部屋から声がする。
ルイズは急いで中へ入る。
すると、 そこには飄々とした顔でベッドに腰掛ける男がいた。
その男はルイズが呼び出したあの使い魔、海東大樹であった。
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#navi(ゼロの怪盗)
#navi(ゼロの怪盗)
ルイズの焦燥は並大抵のものではなかった。
同級生に『ゼロのルイズ』と揶揄され、不当な辱めを受け続けてきた彼女にとってこの召喚の儀は、
彼女を馬鹿にしてきた連中を見返す最大のチャンスでもあったのだ。
それが、召喚には何度も失敗し、ようやく成功したと思ったら、現れたのは平民の男。
しかも、使い魔の契約を結んだにも関わらず、男はすぐに自分の元から去っていったのだ。
ルイズにとっては、人生最大の恥といっても過言ではなかった。
「何処!?何処なの!!?」
その苛立ちは言葉となり、自然にルイズの口をついて出た。
「アイツ……いや、もうアイツなんて人呼ばわりしないわ!!
犬よ!それもバカ犬!!……犬だって少しは主人を慕うものよ?全く……」
ルイズの口元が歪む。
「ふっふっふっ……どうやら躾が必要なようね。ふっふっふっ……」
そんな風にブツブツと言いながら歩いていると、宝物庫の近くで海東を発見した。
ミス・ロングビルとイチャついている。……様にルイズの目には見えた。
「あのバカ犬ッ!!私がこんなに苦労しているのに!!」
ルイズは怒りに身を任せて、杖を海東の背中へと向ける。
すると次の瞬間、ルイズの目の前に何か光の弾のようなものが飛んできた。
地面へ着弾すると、土埃を高らかに舞い上げ、魔法を唱えようとしたルイズの手を止めた。
「……………………へ?」
一瞬の出来事にルイズの体が固まる。
目の前で何が起きたのか理解出来ない。
散漫していた瞳を海東へ移すと、海東はこちらに背を向けながら何かをルイズの方へ向けていた。
それは鉄砲のようにも見えたが、あんな鉄砲はこの世界には存在しない。
「やれやれ、とんだ邪魔が入ったね」
海東はそう言うと、ルイズの方へゆっくりと振り返った。
そして、その鉄砲のようなものをルイズへ向けた。
「え?え?な、何?」
ルイズは目の前の出来事に、頭が真っ白になる。
「僕は自分が邪魔されるのはあまり好きじゃないんだ」
海東は表情を変えずにそう言い放つと、引き金に指をかける。
「ちょ、ちょっとお待ちください!」
ロングビルは慌てて海東を制止する。
彼女にとって、魔法の使えないゼロのルイズなどどうでもよかったが、
仮にも学院長の秘書である立場の自分が彼女を見捨てるのはあまりに不自然であった。
「彼女はミス・ヴァリエール。ヴァリエール公爵家の三女です。
それを傷付けた、或いは殺したなどあったら政治的問題になります!」
「関係ないね。興味もない」
海東は冷たくそう言い放つ。
そんな海東を見て、ロングビルは戦慄した。
(何て奴だい……)
ロングビルは海東の視線の先を見つめる。
(本当に興味が無いんだねえ…。まるでそこに何もいないみたいじゃないか)
そこには怒りなのか恐怖なのか、わなわなと震えるルイズがいたが、
海東の目にちゃんと彼女が映っているかは甚だ疑問であった。
「ま、いっか。お宝に障害はつきものだしね」
海東は感情のこもってない笑顔を浮かべると、ルイズに向けていたそれを下ろす。
と、同時にルイズはその場にへたり込んだ。
どうやら腰が抜けたようである。
「じゃあ僕はこれで失礼させて頂くよ」
そう言うと、素早く海東はその場から立ち去った。
「あ……。ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
ルイズは追いかけようとするが、足が動かない。
再び自分の元から去っていく海東の背中をただ見つめることしか出来なかった。
「…………!!」
ルイズは声にならない声を上げて地面を叩いた。
使い魔に対して恐怖を抱いたことへの屈辱、そして二度も使い魔に逃げられたことの悲しみ。
様々なものがない交ぜになり、自然と涙がこぼれている。
そんなルイズを気にも止めず、ロングビルは怪盗『土くれのフーケ』として海東の背中を見送った。
(あの身のこなし……あいつがただ者で無いのは確かだねえ。
それに、あのヴァリエールの嬢ちゃんが現れた時……。
背中に目でも付いてるかのような動きだった。……敵には回したくないねえ
…………さて!)
ごくり、と唾を飲み込むと、今度はミス・ロングビルとして泣き崩れるルイズの元へと向かった。
「……また、印が輝いてる」
海東は森の中で身を隠しながら、発光する自身の左手を見つめた。
(今のところ害は無いみたいだけど……このままにしておくわけにもいかない……か)
この印は何なのか、また自身の体に何が起きてるのか。
知らないということがいかに危険なことだということを海東はよく知っている。
今後の為にも、この印のことを知っておく必要を海東は感じた。
その時、海東の脳裏にルイズの顔が浮かぶ。
(全てはあの子から……か)
やれやれ、といった感じで海東を首を振る。
「……仕方ないね」
そう呟くと、海東は森の中へと消えていった。
ルイズはどうやって学院内へ戻ってきたのか覚えていなかった。
気付いた時には、コルベールの使い魔の捜索についての話が終わっていた。
当然、コルベールの話など1ミリも覚えていない。
半ば茫然自失のまま、ふらふらとした足付きで自室へ戻る。
(はははは……。もう、何が何やら……)
取り敢えず寝よう。
寝て起きたら、きっと悪い夢も覚めるだろう。
ルイズはもう他に何も考えたく無かった。
力無く自室の扉を開く。
「やあ」
「えっ?」
誰もいない筈の部屋から声がする。
ルイズは急いで中へ入る。
すると、 そこには飄々とした顔でベッドに腰掛ける男がいた。
その男はルイズが呼び出したあの使い魔、海東大樹であった。
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