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#navi(ゼロみたいな虚無みたいな)
――ザッ、ザッ……
ルイズは無言で中庭の掃き掃除をしている。
「………」
ふと視線を向けた先では、タバサが2人羽織のようにシルフィードの背後から前方に手を回す形で箒を使っている。
「それで掃除できるの?」
「だってシルフィ、お姉様大好きなのね~!」
と今度はシルフィードが体の向きを変えてタバサにしがみついた。
「あんた達本当に女同士?」
あまりの雰囲気にそうツッコミを入れたルイズなど眼中に無い様子でタバサはシルフィードの頬をそっと撫で、
「……シルフィード……嬉しい……」
その時、何やら棒状の物体がタバサのスカートの前部を押し上げ始めた。
「!! ちょっ、ちょっと、そっ、それ何何何!?」
慌ててタバサからシルフィードを引き剥がしたルイズだったが、
「あー、ごめーん。箒が……」
「……いいよ……」
あぽろの使っていた箒の柄が、誤ってタバサの股の間に突っ込まれていたのだった。
「アポローっ!」
何となくいづらくなってその場から逃げた後、ルイズは地面に座り込んで大きく息を吐く。
「はー……」
「びっくりしたね」
能天気にもそんな発言をしたあぽろの頬を、ルイズはひとしきり引っ張るのだった。
「いひゃ……、いひゃ……い」
ようやく頬引っ張りの仕置きから解放されたあぽろは頬をさすりつつ、
「そうだルイズちゃん、タバサちゃんとシルフィードちゃんの指見た?」
「指?」
「うんっ、ほらほら」
そう言いつつあぽろが指差した先では、茂みの向こうでタバサ・シルフィードが抱き合いつつ何やら話していた。
あぽろの言葉通り、2人の指にはペアになった指輪が光っている。
「ねっねっ、見た?」
「うん……」
「あれ、先週の虚無の曜日に買ったんだって」
「ふーん」
「私も何か欲しーなー」
「ふーん。自分で買えば?」
そう言ってその場を後にしようとするルイズを追い、あぽろは彼女の腕に手を回す。
「じゃあ2人で買いに行こっか。で、交換!」
「……アポロ」
「はい?」
「今クラスで友達同士大切な物を交換し合ったり揃いの物買うの流行ってるけど、私はしないわよ」
「何でー? みんなしてるよ?」
手をばたつかせて不満げに訴えたあぽろだったが、ルイズはつれない態度で、
「みんながしてるからするなんて、心の弱い人間がする事よ。さ、帰るわよ」
(でも、でも……、ルイズちゃんの持ち物欲しいんだもん。どうしても駄目ならお揃いの物買うのっ)
「ルイズちゃんっ!」
その夜、寮の自室であぽろは満面の笑みと共にルイズに声をかけた。
「何?」
ルイズが読んでいた本から顔を上げると、あぽろはルイズのストッキング片手にルイズのベッドに歩み寄ってきていた。
「これルイズちゃんが今日穿いてたストッキング?」
「うん、そこ置いといて」
そのまま視線を本に戻したルイズだったが、何やら聞こえてきた物音を不審に感じてあぽろの方に向き直る。
するとそこにいたあぽろはルイズのストッキングを穿いて、自分が脱いだニーソックスをルイズに差し出していた。
「こらああああ! 何してんのよおお!!」
「ルイズちゃんは私の穿いてーっ」
「こんな萌え萌えソックス穿けないわよーっ!!」
「酷~い、ニーソックスだよー」
手渡されたニーソックスを投げ返したルイズだったが、あぽろはまったくめげた様子も無く頭に投げ返されたニーソックスが乗ったまま、
「あ、じゃあ何か買いに行く?」
「行かないってば。……とにかくそういうのしないの。それにしつこいの大っ嫌い」
「ふんだ……。ふーんだ、ケチっ。ルイズちゃんなんて寝てる時凄い歯ぎしりするし、いつも部屋にパンツ見える格好でいるしっ! (中学生)のくせにレースだらけのパンツ穿いて……えっち!」
「ほっときなさいよっ!」
赤面して反論したルイズに、あぽろはルイズのストッキングを手にしたまま涙を流し始める。
「ルイズちゃんと1番仲いいんだよって……、クラスの子に自慢したいんだもんっ! ルイズちゃん大好きなんだもん! ……もう帰るっ!」
そしてそのままあぽろは部屋を飛び出していってしまった。
「どこにっ!?」
残されたルイズは赤面したまま扉の向こうを眺め、
「……もう、最初からそう言いなさいよ」
魔法学院を取り巻く夜の森を2つの月が照らしている。
「うう……、ぐす……、みっ、道迷っちゃった。ママー」
その森の中をあぽろは1人泣きじゃくりつつさまよい歩いていた。
「私……、このままここで暮らす事になったりして」
森の中での野宿生活を想像しあぽろは思わず震えあがるが、それも一瞬の事、
「その方がいいわ。もうルイズちゃんなんて大っ嫌いだもんっ」
口ではそう言ってみたものの、裏腹にあぽろの目にはみるみるうちに涙が溜まっていった。
(嘘だよ……。本当は今だって凄く楽しいし満足してたの。ルイズちゃんと毎日一緒にいられるだけでよかったの。それなのに私、いつの間にかもっともっとってルイズちゃんに要求ばかりしてた。ルイズちゃんの気持ち無視してたよ……。やっぱりちゃんと謝るっ)
「ルイズちゃ……」
そう言いつつ学院に戻ろうとあぽろが回れ右をした時、
「何?」
あぽろの目の前には、汗だくになったルイズが険しい表情であぽろの肩をつかんでいた。
そしてルイズは、あぽろの頭を叩くと胸倉をつかんで睨みつける。
「あう」
「いつまでほっつき歩いてんのよ!」
「ごめんなさい……」
「まあ無事でよかったけど、あんまり心配させるんじゃないわよ」
そう言ってルイズは元来た道を戻り始めた。
(あ、ルイズちゃん凄い汗……)
あぽろはルイズがどれだけ必死で自分の事を探していたかを悟り、思わず抱きつくのだった。
「ルイズちゃ~ん」
「なっ何よ、暑いのに」
「ごめんね、ごめんなさい(私の事探してくれてたんだ……)」
そして抱きついたまま学園への道を行く2人。
「ルイズちゃ~ん、ごめんねー」
「わかったから放しなさいよ……」
そんな2人を2つの月が優しく照らしていた。
(大好きだよーっ)
「いー天気だー」
翌朝、あぽろはそう言いつつルイズの部屋の窓を勢いよく全開にした。
「まだ起きるのに10分早いわよ……」
ベッドの中ではルイズがまだ布団の中で蠢いている。
「だってー、今日から衣替えの日だよー♪ 張り切っちゃうっ。さあっ、ルイズちゃんも起きてっ」
「はいはい」
そう言いつつ、ルイズはようやく布団から這い出して着替え始める。
ルイズが着替えを終えると、ふと思い出したようにあぽろに向かって手招きする。
「あ、そうだわ。アポロ、こっち来て。あげるわ」
あぽろの襟につい先程まで耳に着けられていたルイズのピアスが付けられた。
「交換よ。あんたのピアスちょうだい。私の制服の襟に付けるから」
そう言って自分の襟をつかんで見せたルイズだったが、あぽろは体を振るわせるばかりで微動だにしない。
「……何よ」
「う、嬉しーっ!」
叫びと共にルイズに飛びかかり抱きつくあぽろ。
「ルイズちゃーん!」
「もーっ、暑苦しいーっ!」
初夏のトリステイン魔法学院に2人の声が響いていた。
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