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「北斗の拳・外伝 ~零の北斗七星~-02」(2010/02/21 (日) 16:12:08) の最新版変更点
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#navi(北斗の拳・外伝 ~零の北斗七星~)
北斗の拳外伝
~ゼロの北斗七星~
第2話
「使い魔の仕事!
俺は全ての敵から護る盾!!」
・
・
・
・
・
「……」
その日の夜、ケンシロウは上を見上げ絶句した
「…(何故、月が2つあるのだ……)」
そう、月が‘2つ‘あるのである、ケンシロウのいた‘世界‘では絶対にありえない話である。というよりか、寧ろ今日一日だけでありえない事がたくさんあった。
------話は数時間前に戻る。それは春の召喚の儀式が終わり、自分の部屋に戻る時であった。
「ル、ルイズー、お前は歩いてこいよー!!」
「ああ、そこのへ…傭兵と一緒にな!!」そう言いながら飛んでいく生徒達。
本当ならここでもっと酷い罵声を浴びせているのだが、後ろに立っているケンシロウが怖くて言えなかったのだ。
しかし当のケンシロウは別の事に驚いていて彼らの事など眼中に……いや、むしろ彼らに目線が釘つけであった。
「(………空を…飛んでいる…というよりも…浮いている……)」
そう、飛んでいるのである。‘ルイズ達の世界では良くある事’でも、少なくとも‘ケンシロウのいた世界’ではまずない事である。
確かに空を ‘ジャンプで跳ぶ’というならわかる。
ケンシロウもかつては空高く飛んでいたヘリコプターに対して地上から飛び乗りるという離れ業をやってのけた事もある程のジャンプ力はあるし、北斗神拳には空中技が多く存在するのも確かである。
しかし、彼らのはジャンプして飛ぶ、というよりも‘何かに持ち上げられていく’感じである。自力で上まで行くのでは無く、例えるならかつてジャッカルという卑劣漢と人外の巨体を持っていた外道、デビル・リバースと戦った際にデビルがジャッカルを安全な場所へ運ぶ様な、そんな感じだったのだ。
「(…訳が分らぬ…一体どういう処なのだ…)」
「……どうしたのよ、早く着いてきなさいよ?」
唖然としているケンシロウを尻目にルイズは館へ向かおうとする。なぜか空を飛んでいた連中と違い、コチラは徒歩だが
「……お前は飛んでいかないのか?」
「う、うるさいわね!そんなの私の勝手でしょ!?」
何故か激昂しながらケンシロウに怒るルイズ、ケンシロウはルイズの服装を見る。
「(……汚れや穴なんて一切無いな…先ほどの連中も見たところ、余程裕福な暮らしをしていたのだな……)」
ケンシロウは今目の前にいる彼らと今までケンシロウが見てきた子供達を思い出し、比べた。
―見た目は確かにこの子達の方が裕福だろう、しかし……
この子達にあって、あの子達に無かった者…それは……
……一方その頃、自らの部屋へと帰っていく生徒達+コルベール
「いやーまったく、本当に怖かった…あの平民は…」
「マリコルヌお前なに平民風情にビビってたんだよwwwwww」
「うるさいなーお前もビビリまくってたじゃないか」
「ちょwwwww」
「いやー、ホントに情けないねぇ君たちは、そんなだから僕のような……」
男子生徒達はケンシロウの話題で一杯である、といってもそれは殆ど見栄の張り合いであり、言うまでもなく全員ケンシロウにビビっていた。
「まったく…どうも男ってのはつまらない見栄を張りたがる者かしら?」キュルケは見栄の張り合いをしている男子達に呆れていた
「それにしてもルイズが召喚したあの男……なかなか良い男だったわね♪ルイズには勿体ないくらい」
ルイズとキュルケは犬猿の仲である。といってもこの場合彼女達個人ではなく御家柄同士の喧嘩でもある、ある時は戦争をし、ある時は婿を奪い合ったりもした。だが当のキュルケはそんな事は対して気にはしていない、ぶっちゃけ、からかうとすぐに反応するルイズが楽しいのである。
「………」
そのキュルケの隣にいるタバサは、キュルケの発した発言に対し、
「……あの男には近づかない方がいい…」
「えっ?」
「……あの男は、とても危険」
それは他人からしたら無表情ではあるが、タバサの友人であるキュルケには
何かを恐れている様な、怯えた表情だった。
「ちょ、どうしたのよ?貴女らしくない…」
「……」
タバサはあの時、死んだと思った。あの男から発せられた謎の威圧感、
あれはまるで‘死神’に対面したかの様な、今までに無かった恐怖である。
かつてタバサは数々の危機にさらされた。それでもまだあれは希望があった。
しかしあの時、あったのは‘絶望‘である。
タバサは直感で死を覚悟した……
恐らくあの中でそれがわかったのは自分だけであろう。
隣の唯一の友人であるキュルケでも知らなかったであろう、それでもあれはとても恐ろしいものであったろう、
…故に‘アレ‘に近づいてはいけない、’アレ‘は人ではない、もっと恐ろしいなにかである。
「…何があったかはわからないけど、私は貴女の友達なんだから、なにかあったら…相談してよね……」
キュルケはそんな悩める友人に優しく言う
「……ありがとう」
タバサもまた、無表情ながらも、少し照れくさそうな顔で言い返した。
・
・
・
・
―――――― そして現在に至る
「なに、ボーッとしているのよ、早く私の部屋に行きましょう?」
「……おい、確かルイズと言ったな?」
「ええ、そうよ、っていうかご主人にむかってオイってなによ!?」
「…ここじゃ月は2つなのか?」
「?なに当たり前の事を聞いているのよ、月は二つあるものでしょ?」
「俺がいた‘世界’じゃ月は1つだ」
「え、なに?月は1つ?しかも俺のいた世界?なにそれ、どんだけ田舎モンなの?馬鹿なの?死ぬの?」
「…口の悪さはともかく嘘は言ってなさそうだな……」
「だからなによ、世界って、まるで世界が2つあるかのような言い方しちゃって」
「信じたくないが、どうやらその様だな……」
「……は?ま、まぁ良いわ、詳しい話は私の部屋でしましょ」
ルイズはハッキリいって疑った、月が一つ?しかも俺のいた‘世界’?ルイズは自分が召喚した使い魔は、只の平民ではなく
、大ボラ吹きである判明したため、ガックリした。
(……聖ブリミアよ……これも私の試練だと言うのですか?)
その後、ルイズはケンシロウを部屋に連れて行き、双方は大方の事情を話した。
―ケンシロウがいた世界、それはかつて巨大な文明が存在していた。しかしとある一つの兵器が世界を破滅に導いた。
全ての文明は滅び、草木は枯れ、大地は荒れ、人類は絶滅しかけたが、なんとか生き延びた者達もいた。
しかし、あらゆる文明が滅んだ世界、そこには確たる法も無く、国も無かった。力のある者が支配する
、弱肉強食の地獄だったという。
「……そんな話を信じろ、というの?」
「ハッキリ言って信じられないだろう、俺だってここまで豊かな世界はあの戦争以来一度も見ていない」
ちなみにケンシロウは自身の、「北斗神拳」の事は一切触れていない。
「それに‘魔法’なんてものも見たことは無い……」
「まったく、魔法を知らないなんて、とんだ田舎なのね、その世界は」
「だから田舎も何も、恐らく世界が違う……」
「それに、一番信じられないのは、‘民主主義’なるものが繁栄してたなんて、
言っとくけどそのホラ、余所には絶対言わないでよ?」
「……何故だ?」
「何故って、そんな事街で言ってみなさいよ?たちまちアンタは捕まって国家反逆罪に問われて死刑よ?」
「…………」
ケンは少し失望した。この世界は豊かかもしれないが、
‘自分のいた世界’に似てる。血筋や財力と言った‘力’の名の下に、‘平民’は‘貴族’よりも価値が低い、そんな世界だったのだ。
「…では聞くが、もし貴族と平民が揉めて本当は貴族が悪くても平民のせいになるのか?」
「は?なにいってるの?」
ルイズは信じられないような目でケンシロウを見る
「貴族ってのはね、もっと誇り高い人間なの、そんな権力を誇示して平民を虐める奴なんて、
貴族にして貴族にあらず、って感じよ!!」
「そんなのは誰も許さないし、なによりも私が許さない、絶対に許さないんだから」
ケンシロウは少々驚いた。この我が侭娘は、誇りを持っている、それも心優しき誇りが。
「……そうか」
そう答えるケンは微笑んでいた。まるで子供を褒めている時のような、そっと、そして優しい笑みを。
「それならルイズ、その思い、決して忘れるな」
そしてケンは彼女をの事を少し理解した、彼女はただ自分の感情に不器用なだけであり、
本来はとても優しく、そして誇り高い少女だと
「(…なにかしら?この暖かさ……まるで幼い時お父様と寝ていた時のような……)」
「フ、フン使い魔の貴方に言われなくてもわかっているわよ!
そ、それでケン、言い忘れていた使い魔の仕事なんだけど」
「……何だ?」
「まず一つ、契約した使い魔は、主人の眼となり耳となる能力を与えられるの、つまりアンタが聞いたり、見たりしたものを、
私も聞き、見ることが出来るって訳、これは……見えるわけ無いわよね、平民だし」
でもケンシロウみたいな大男の高さから皆を見下ろせたら面白そうだなぁ…と思ったルイズであった。
一方ケンシロウは少しホッとしていた。
「次に……次に秘薬の材料を集める事なんだけど…アンタこれも無理っぽいわね」
「その秘薬というのが何処にあるかだな」
「例えば、火の秘薬だと、硫黄だから火山にあって。水の秘薬だと…確か…何かの精霊の一部とか言われているわ。」
「…水の秘薬というのは良く分からないが、硫黄なら取りに行けそうではあるな」
「そ、そう……(普通の人間が取りに行けないところだから使い魔に行かすんだけど…)」
「ま、まぁ良いわ、それで、3つ目、使い魔は主人の力となり身を守る、まぁ要は私の為に戦って、護って貰う訳ね」
「そうか、わかった」
以外にもケンシロウはあっさりと承諾した。
「あ、あら意外と従順ね…こう、もっと嫌がると思ったのけれど…。」
「今ここで変に抵抗してもどうとなる訳ではない、それに…」
「それに?」
「もしこれも北斗の運命というのなら、俺は受け入れよう」
「は?ホクト?何それおいしいキノコ?」
「…気にするな、お前が知る必要は無い」
「な、何よそれ!主人に隠し事をする気!?
……フ、フンまぁいいわ、という訳で明日からは私の使い魔として働けるんだから感謝しなさい!」
「フッ……わかった」
「ちょ!?い、今笑った?笑ったでしょ!?」
ケンシロウにとってルイズの発言は育ち盛りの少女が必死に背筋を伸ばし、
つま先を立ててえばっている様に見え、
おかしかった。若い子供らしい、瞳に光のある子供である。
「はぁ……まぁ良いわ、もう疲れたから私は寝るわ、それじゃあケンシロウ、着替えるから私の服を脱がせて」
「…それぐらい、1人で出来るだろう」
「主人に反抗する気?良いから脱がせなさいよ」
「…自分でやるんだな、貴族というのは自分の事も出来ないのか?」
「なっ!?で、でで出来るわよ! …ああもう調子狂うわね、まぁいいわ、廊下にメイドがいるから渡しといて!」
ルイズはそう言って服を脱ぐとケンシロウに投げ渡し、そのままベッドに入り、眠りに入った。
「……。」ケンシロウは思わず1人の少年を思い出した。
「(…まるでバットみたいだな。)」
ケンシロウが共に旅をした少年、バット。我が侭なところもありお調子者だった少年、
しかし彼は次第に成長し、そして立派な戦士となった。
「(この子もまた…大きく成長するのだろうか…)」
そう思い、ふっと窓から外の風景を見る。
ー今まで見ていて来た枯れ果てた大地出は無く、とても豊かな世界、
バットはあの荒野の地獄の中を耐え抜いたからこそ立派な戦士になった。
では彼女は?
「……」
ケンシロウはそれ以上考えるのはやめた。
「…とりあえず外に出てみよう」
ケンシロウはそう言うと外に出た、あの森の世界がどうなっているのかを見る為に。
一方その頃……
(……燃やせ……!)
(…やめろ……)
(殺せ……!)
(やめろ…!)
(焼き尽くせ!!!)
「やめろぉぉぉぉぉ!」
コルベールがベッドの中で悲鳴を上げた、そしてハッと我に返り眼を覚ました。
「はぁ……はぁ……ゆ、夢か……!」
彼は大量の汗をかいていた、その顔には恐怖が見えていた。
「まさか……またあの夢を見るとは……」
コルベールが見た夢、それは自身の人生の最大の罪、忌まわしき記憶であった。
燃え盛る村、黒焦げになる人間、それを下卑た笑みで見る人間
そこはまさに、地獄だった。
「彼を…見たからか……やはりあの男…只者では……」
彼は、ケンシロウを見たときに真っ先にあの時の自分を思い出した。
それは彼から発する‘死の臭い’に当てられたからか
「……ん?あれは?」
そう言ってコルベールが窓から見たのはそのケンシロウだった。
何やら壁の前に立っていたが。
「……!?き、消え……!?」
消えた、壁の前で立っていたかと思えば、いきなり姿が消えたのであった。
「……これも夢?……」
試しに自分の頬を捻ってみた
「…痛いから夢じゃないな…では今のは……!」
その日、コルベールは眠る事が出来なかった。
ホアチャア!ホクトノケーン!
ケンシロウは壁を飛び越し、学園の外に出ていた。
そこに見えたのは、まぎれもない緑の大地であった。
「久しぶりに見る…緑の大地だ」
ケンシロウはこの時思った、もしあの世界も緑にあふれていたら、
あの様な地獄はなかったであろう、そして北斗も……。
「………」
ケンシロウはそのまま森の中へ入って行った。その時
「……!」
何処か、遠いところから悲鳴が聞こえた。
「……アッチ、か……」
そう言うとケンシロウはそのまままっすぐに走って行った。
――その先の道
「い、いやぁ、お願い、助けてぇ…」
1人の女性が子供を抱きながら命乞いをする、近くには馬車、
剣で斬られた男と背中が燃えている男、
そしてその周りを15人ほどの大男が下卑た笑いをしながら囲んでいた
盗賊である
「うえっへっへ、とんだカモがやってきましたねぇ親分」
「ああ、これだけの宝石と食いモンがあれば当分こまらねぇ」
片目に傷があるモヒカンの大男がマントをし、ハット帽をかぶり
杖を持ったリーダー格の男と話していた。俗にいう没落メイジである。
「そんでよぉ親分、この母娘どうします?」
「ああ、母親の方は好きにしろ、その代わり俺はガキの方を犯らせて貰うぜ」
「げぇっへっへ、親分も好きもんだなぁ…さぁて」
「ひっ!?」
「さぁておばさんよぉ…そのガキを渡しな、そうすれば一緒に可愛がってやるぜ」
「お、お願い私はどうなってもいいからこの子だけは…この子だけは…」
「お母さん……!」
「はぁ?知らないよお前達の事情なんざぁ、まぁいいややっちまおうぜ!」
「い、いやああ!?」
そう言って獣の如く母親に襲いかかろうとする盗賊達、しかし
「やめておけ」
1人の男の声が聞こえた。
「ああん?」
そう言って盗賊達の1人が後ろを向くと、そこにはケンシロウがいた。
「その母娘を放してやれ」
「放せだぁ?コノヤロウ、何様のつもりだテメェ!!」
そう言うと3人ほどの男達がケンシロウに襲いかかった、1人は槍、2人は剣を持っていた。
「死ねぇええええ!」
「ほぉあちゃ!」
ケンシロウは素早く回し蹴りをし、3人を纏めて蹴り飛ばした
「おぶぅ!」「ぎゃあ!」「へぶっ!」
「きゃあ!?」女性が驚きの声を上げる
「チィ!」リーダー格の男が舌打ちをする。
「今のうちに逃げろ」
「は、はい!」母娘は生き残っていた馬で逃げた。
「コ、コノ野郎…せっかくの女を逃がした上にこの俺様の顔を……ヤロォブッコロシテヤルァー!」
「無駄だ」
「な、なんだと…!?」
「お前達はもう、死んでいる」
「死んでいるぅ?何を寝ぼけた事を……ヲッ…ヲッ…!」
「な、おいどうし…ひぃっ!?」
「お、お前あ、頭……!」
「ヲ、ヲババババ…ババ…ァ」
先ほど蹴られた内の男の1人の頭が急に大きくなっていく
それはアンバランスに、グロテスクに、そして他の2人も体に以上が見え始める
「ぎゃっ、ぎゃがあああがばばばば!」
1人は顔が引っ張るように横に広がっていき
「げぶぇ、えべべべべべべ!」
もう1人は顔が捻じれていく
「う、うわああああ!?」
「な、なんだなんだなんだぁ!?」
そして
「マッハァ!!」
そのまま風船の如く破裂し、血肉が周りに飛び散った
「バァマぁ!!」
まるでパンを裂いたかの様に顔が割れ、鯨の様に血が噴出した
「ベンゾォッ!!」
顔面がねじ切れ、顔が無くなった。
「う、うわぁあああああああ!?」
「な、なんなんだ、何が起きたんだ!?」
「ひぃいいいい!?」
「ええいてめぇら、落ち着け!恐らくあれも魔法だ!あれはメイジの仕業じゃ!
(しかしあんなの見たことがない…あれは一体!?)」
「て、てめぇら、所詮奴は1人だ!一斉に攻めれば訳はねぇ、やれ!じゃなきゃ俺がお前らを燃やすぞぉ!」
「う、うおぁああああああああ!」
「おらぁあああああああ!」
盗賊達が輪になって一斉に襲いかかった、全員武器を持っている
「はぁああああ……」
ケンシロウは構えると、まず1人の敵に向かった
「ほぁたぁ!」 「ぶべっ!」
まずは1人、正面から顔面に突きを放つ。
「あぁたたぁ!」 「ぎゃあ!」
そして隣にいた2人の腹部に蹴りを入れる
ほぁちゃあ! 「ぼぶっ!」
そして後ろから襲いかかった1人を裏拳で沈める
「あーたたたたたたたぁ、ほぁっちゃぁあ!」
「「「「「ぐぎゃああああああ!?」」」」」
そして残りの全員を回転しながらの連続の突きで沈めた
この間わずか5秒である。
「ぐ…ぐぐ……なんて奴だ……!」
「さぁ、次はお前だ……!」
「な、何を…!お、おいお前らいつまで寝てやがる!早くコイツを……!」
「お前はさっきのを見て無かったのか?そいつらはもう…死んでいる」
「な、なんだと……うわひぃ!?」
リーダー格の男は部下の山賊達の方を見た。
「うぅぱぁぱぱぱぱぱぱ、るぅぱぁ!!」
顔面を殴られた男は殴られた部分が膨れ上がり、爆破した
「は、はらががっががあっががががっががぁんまぁ!」
腹を蹴られた男達は腹部が膨れ爆破し、真っ二つになった
「もぺ、ぺっぺぺぴぴぴぷぷぅ、ぽぉう!」
裏拳で沈められた男はへこんだ部分がさらにへこみ続け、そのまま後頭部が爆破した。
そして他の仲間も一斉に体の部分が膨れ上がったり、ねじ曲がったり、へこんでいき、爆破した。
あたりには大量の血と臓器がぶちまけられた。
「北 斗 翻 車 爆 裂 拳」
「ほ、ほほほほほくと……!?」
「さぁ、次はお前だ……」
「ま、ままま待ってくれ!俺はア、アンタに降伏する!俺が今まで奪った財産や食糧、全部アンタに譲ろう!
だから許してくれ、なっ!?」
男は必死に命乞いする、しかし実は手には杖があり、さりげなく詠唱をしていた。
「………」
「ほ、ホントに勘弁してくれ、お、俺は元々は貴族だったんだ、それを卑劣な王族に騙されて、没落して、
家族を養う為に、こ、こんな事をしなくちゃならなかったんだ!
だから…だぁからぁ…死ねぇ、ファイヤーボール!」
「む!?」
ぼわぁっ!
男が杖を向けた瞬間、炎の弾が飛んでいった、ケンシロウは咄嗟に腕でガードしたが、その腕かた炎が全身に渡っていった
「ひゃあはははは!燃えろ、燃えちまえぇ!ひゃぁあはははははは、はは……!?」
しかし男はとんでもないもの見た。炎に包まれた中、ケンシロウの顔はとても落ち着いていたのだ、そして…
「フンッ!」
軽く腕を振ると全身に広まっていた筈の炎はあっという間に消えていたのだ。
「な、なななななそんなぁ!?」
「それでおしまいか?」
「ひ、ひぃ!?」
コキッ、コキッ ケンシロウは指を鳴らしながら男に詰め寄る。
「あたぁっ!」
「ぎゃぶっ!」
ケンシロウは両指をリーダー格の男のこめかみに突き刺すと、リーダーはそのまま気を失った。
「………おい」
「ひっ!?」
ケンシロウは後ろを見た、すると1人の男がいた、恐らくさっきの一味の1人なのだろう
周りに誰かいないか見回りをしていたと思われる。
「ひ、ひぃすいません、本当に勘弁して下さい!もうわるい事しません、貴方様に逆らいませんだから命だけはお助けを…!」
ケンシロウは男の額に指を置いた。
「ヒィっ!?」
「……行け」
「……え?ええ?」
「行けと言ったのだ」
「は、はいぃいいいいいい!」
男は風の如く逃げて行った。
「……」
ケンシロウは襲われた人たちの遺体を見た、それは自分がいた時代にも見た光景だった。
弱者はただ強者に嬲り殺されるだけの、苛烈な地獄の様な世界。彼はそれを変えたくて、旅をしていた
「(…この世界も、弱者を食い物にし、人々の眼から光を奪う人間がいる…
恐らくあの娘も光を奪われるかもしれない…ならば!)」
ケンシロウは拳をグッと握りしめ、1つの決意をした。
「ならば俺は…未来への光を断たせぬ為に戦う……!」
それは、ケンシロウがルイズの使い魔として過ごすことを決意した時であった。
――一方その頃、都市よりすこし離れた森の所
馬に乗った数人の人間が、明りを持って周りを見回した。
彼らは平民ではあるが国を守る騎士として存在する「衛士隊」の人間であった。
その中に一際目立つ‘女’がいた。
白く細いが、どこか精悍な感じの肉体、美しい短めの金髪に蒼き瞳の女性、名前はアニエスという。
そのアニエスが森の中から何かがこちらに来るのを見た。
「む?あれはなんだ?」
衛士達が明りを向けると、それは見たことのなる顔の男だった。
「ん?おいあれは確かここ最近暴れている盗賊集団の幹部じゃないか?」
「何だと?」
改めてみると確かにそうだった。衛士達は剣を抜いて構えた、しかしよく見ると様子がおかしい。
「なんか……おかしくないか?」
「ああ…まるで何かから逃げている感じだ…」
すると!
「!う、うわぁ!?」
「な、なんだぁ!?」
いきなり男が頭を抑えて苦しんだかと思うと、次の瞬間頭が膨れ上がり、爆破したのだ。
「な、なんだ一体、何が起きたのだ!」
「ま、まさかメイジの仕業か!?」
衛士達はうろたえた、なにせメイジといえばそこらの盗賊よりはるかに手ごわい相手である。
「くっ、皆気をつけろ!」
アニエスが正面をにらみ、構えている。
しかししばらくたっても何も起きなかった。
「な……なんだったんだ?」
「と、とりあえず死体のところへ向かおう…」
彼らは死体のところへ向かった。
「これはひでぇな…」
「どうなってるんだ?まるで内側から爆破しているみたいだぞ」
「ど、どうする…?」
するとアニエスが1つの提案を出した。
「ではここで2手に分かれよう、私とフィンレー、ステファン、デビットの4人でこの男が来た方向に向かう、
ファレリーとデニス、ダレンはこの死体のところにとどまる、
グレアムとスティーヴンは他の仲間を呼んできてくれ」
「だ、大丈夫かアニエス?」
「心配無い、それに私たちはまがりなりにも衛士隊だろ?怯えててはいけない」
「よし、そうしよう」
そうしてアニエス達は男が逃げて来た方へ向かった。
――そして20分ほどたった時、アニエスが見たのは想像を絶する光景であった。
「うっ……」
「こ、これは………」
「い、一体なんなんだこりゃあ!」
そこには先ほどの男の様な死体の山があった
ある者は頭が真っ二つになっており
ある者は顔面がえぐれて
ある者は腹から2つに分かれていた
「こ…これもさっきの男の様に……」
「ひ、ひっどいなこりゃ、こんな死体見た事ねぇや」
「おいアニエス、まだ生きてる奴がいるぞ!」
「何!?」
アニエス達はすぐさまそこへ向かった
「ああ、こいつだけ気を失っている」
「!お、おいこいつ盗賊団の頭領のメイジだぞ!」
「あ、本当だ!」
「お、おい眼を覚ましたぞ!」
「う…うぁ…」
頭領の男は眼を覚ました、しかしその顔は恐怖に歪んでいた
「おい、貴様、これは一体なんだ、誰がやった!?」
「ほ……ほく…と……」
「ほくと?」
「ほ、ほく…とぁあああ!?」
「な!?」
頭領の男の頭が急に膨れ出した
「ま、またか!」
「皆この男から離れろ!」
そういうと衛士達は男から離れた。そして
「あ~、ああ~…… あ べ し !」
盛大に爆破し、当たりに血肉が撒き散らかった。
「う、うわぁあああ!?」
衛士達はパニックになった
「おいおいおい!これは何なんだよ!」
「知るか!それよりもまだこの辺にメイジがいるかもしれないぞ!皆四方に構えろ!」
アニエス達は四方に剣を構えた、しかしいくら待っても攻撃が来ることはなかった。
「な、なんだったんだ……」
「さぁな…しかしヤツが最後に残した‘ホクト’とは一体…」
「さぁ…」
「(……ホクト…か…)」
「アニエス?」
「ん?あ、ああすまない、皆、とりあえず仲間を待とう、この後をどうするかはその後だ」
ふと、アニエスは空を見上げた そこに見えたのはいつも通りの2つの月と、
今まで見たことの無い、7つの星であった……。
テーレッテー
ルイズの使い魔としての生活が始まったケンシロウ、しかしそこで見たのは、貴族と平民の絶望的な格差、
そして力無きものへの手の無き虐待であった!
その頃、トリステインでは「ホクト」の謎に挑もうとする、アニエスの姿が!
次回北斗の拳外伝!ゼロの北斗七星第三話!
「豊かな世界の真実
力が弱者をいたぶる世界!!」
「お前はもう……死んでいる!」
#navi(北斗の拳・外伝 ~零の北斗七星~)
#navi(北斗の拳・外伝 ~零の北斗七星~)
北斗の拳外伝
~ゼロの北斗七星~
第2話
「使い魔の仕事!
俺は全ての敵から護る盾!!」
・
・
・
・
・
「……」
その日の夜、ケンシロウは上を見上げ絶句した
「…(何故、月が2つあるのだ……)」
そう、月が‘2つ‘あるのである、ケンシロウのいた‘世界‘では絶対にありえない話である。というよりか、寧ろ今日一日だけでありえない事がたくさんあった。
……話は数時間前に戻る。それは春の召喚の儀式が終わり、自分の部屋に戻る時であった。
「ル、ルイズー、お前は歩いてこいよー!!」
「ああ、そこのへ…傭兵と一緒にな!!」そう言いながら飛んでいく生徒達。
本当ならここでもっと酷い罵声を浴びせているのだが、後ろに立っているケンシロウが怖くて言えなかったのだ。
しかし当のケンシロウは別の事に驚いていて彼らの事など眼中に……いや、むしろ彼らに目線が釘つけであった。
「(………空を…飛んでいる…というよりも…浮いている……)」
そう、飛んでいるのである。‘ルイズ達の世界では良くある事’でも、少なくとも‘ケンシロウのいた世界’ではまずない事である。
確かに空を ‘ジャンプで跳ぶ’というならわかる。
ケンシロウもかつては空高く飛んでいたヘリコプターに対して地上から飛び乗りるという離れ業をやってのけた事もある程のジャンプ力はあるし、北斗神拳には空中技が多く存在するのも確かである。
しかし、彼らのはジャンプして飛ぶ、というよりも‘何かに持ち上げられていく’感じである。自力で上まで行くのでは無く、例えるならかつてジャッカルという卑劣漢と人外の巨体を持っていた外道、デビル・リバースと戦った際にデビルがジャッカルを安全な場所へ運ぶ様な、そんな感じだったのだ。
「(…訳が分らぬ…一体どういう処なのだ…)」
「……どうしたのよ、早く着いてきなさいよ?」
唖然としているケンシロウを尻目にルイズは館へ向かおうとする。なぜか空を飛んでいた連中と違い、コチラは徒歩だが
「……お前は飛んでいかないのか?」
「う、うるさいわね!そんなの私の勝手でしょ!?」
何故か激昂しながらケンシロウに怒るルイズ、ケンシロウはルイズの服装を見る。
「(……汚れや穴なんて一切無いな…先ほどの連中も見たところ、余程裕福な暮らしをしていたのだな……)」
ケンシロウは今目の前にいる彼らと今までケンシロウが見てきた子供達を思い出し、比べた。
―見た目は確かにこの子達の方が裕福だろう、しかし……
この子達にあって、あの子達に無かった者…それは……
……一方その頃、自らの部屋へと帰っていく生徒達+コルベール
「いやーまったく、本当に怖かった…あの平民は…」
「マリコルヌお前なに平民風情にビビってたんだよwwwwww」
「うるさいなーお前もビビリまくってたじゃないか」
「ちょwwwww」
「いやー、ホントに情けないねぇ君たちは、そんなだから僕のような……」
男子生徒達はケンシロウの話題で一杯である、といってもそれは殆ど見栄の張り合いであり、言うまでもなく全員ケンシロウにビビっていた。
「まったく…どうも男ってのはつまらない見栄を張りたがる者かしら?」キュルケは見栄の張り合いをしている男子達に呆れていた
「それにしてもルイズが召喚したあの男……なかなか良い男だったわね♪ルイズには勿体ないくらい」
ルイズとキュルケは犬猿の仲である。といってもこの場合彼女達個人ではなく御家柄同士の喧嘩でもある、ある時は戦争をし、ある時は婿を奪い合ったりもした。だが当のキュルケはそんな事は対して気にはしていない、ぶっちゃけ、からかうとすぐに反応するルイズが楽しいのである。
「………」
そのキュルケの隣にいるタバサは、キュルケの発した発言に対し、
「……あの男には近づかない方がいい…」
「えっ?」
「……あの男は、とても危険」
それは他人からしたら無表情ではあるが、タバサの友人であるキュルケには
何かを恐れている様な、怯えた表情だった。
「ちょ、どうしたのよ?貴女らしくない…」
「……」
タバサはあの時、死んだと思った。あの男から発せられた謎の威圧感、
あれはまるで‘死神’に対面したかの様な、今までに無かった恐怖である。
かつてタバサは数々の危機にさらされた。それでもまだあれは希望があった。
しかしあの時、あったのは‘絶望‘である。
タバサは直感で死を覚悟した……
恐らくあの中でそれがわかったのは自分だけであろう。
隣の唯一の友人であるキュルケでも知らなかったであろう、それでもあれはとても恐ろしいものであったろう、
…故に‘アレ‘に近づいてはいけない、’アレ‘は人ではない、もっと恐ろしいなにかである。
「…何があったかはわからないけど、私は貴女の友達なんだから、なにかあったら…相談してよね……」
キュルケはそんな悩める友人に優しく言う
「……ありがとう」
タバサもまた、無表情ながらも、少し照れくさそうな顔で言い返した。
・
・
・
・
―――――― そして現在に至る
「なに、ボーッとしているのよ、早く私の部屋に行きましょう?」
「……おい、確かルイズと言ったな?」
「ええ、そうよ、っていうかご主人にむかってオイってなによ!?」
「…ここじゃ月は2つなのか?」
「?なに当たり前の事を聞いているのよ、月は二つあるものでしょ?」
「俺がいた‘世界’じゃ月は1つだ」
「え、なに?月は1つ?しかも俺のいた世界?なにそれ、どんだけ田舎モンなの?馬鹿なの?死ぬの?」
「…口の悪さはともかく嘘は言ってなさそうだな……」
「だからなによ、世界って、まるで世界が2つあるかのような言い方しちゃって」
「信じたくないが、どうやらその様だな……」
「……は?ま、まぁ良いわ、詳しい話は私の部屋でしましょ」
ルイズはハッキリいって疑った、月が一つ?しかも俺のいた‘世界’?ルイズは自分が召喚した使い魔は、只の平民ではなく
、大ボラ吹きである判明したため、ガックリした。
(……聖ブリミアよ……これも私の試練だと言うのですか?)
その後、ルイズはケンシロウを部屋に連れて行き、双方は大方の事情を話した。
―ケンシロウがいた世界、それはかつて巨大な文明が存在していた。しかしとある一つの兵器が世界を破滅に導いた。
全ての文明は滅び、草木は枯れ、大地は荒れ、人類は絶滅しかけたが、なんとか生き延びた者達もいた。
しかし、あらゆる文明が滅んだ世界、そこには確たる法も無く、国も無かった。力のある者が支配する
、弱肉強食の地獄だったという。
「……そんな話を信じろ、というの?」
「ハッキリ言って信じられないだろう、俺だってここまで豊かな世界はあの戦争以来一度も見ていない」
ちなみにケンシロウは自身の、「北斗神拳」の事は一切触れていない。
「それに‘魔法’なんてものも見たことは無い……」
「まったく、魔法を知らないなんて、とんだ田舎なのね、その世界は」
「だから田舎も何も、恐らく世界が違う……」
「それに、一番信じられないのは、‘民主主義’なるものが繁栄してたなんて、
言っとくけどそのホラ、余所には絶対言わないでよ?」
「……何故だ?」
「何故って、そんな事街で言ってみなさいよ?たちまちアンタは捕まって国家反逆罪に問われて死刑よ?」
「…………」
ケンは少し失望した。この世界は豊かかもしれないが、
‘自分のいた世界’に似てる。血筋や財力と言った‘力’の名の下に、‘平民’は‘貴族’よりも価値が低い、そんな世界だったのだ。
「…では聞くが、もし貴族と平民が揉めて本当は貴族が悪くても平民のせいになるのか?」
「は?なにいってるの?」
ルイズは信じられないような目でケンシロウを見る
「貴族ってのはね、もっと誇り高い人間なの、そんな権力を誇示して平民を虐める奴なんて、
貴族にして貴族にあらず、って感じよ!!」
「そんなのは誰も許さないし、なによりも私が許さない、絶対に許さないんだから」
ケンシロウは少々驚いた。この我が侭娘は、誇りを持っている、それも心優しき誇りが。
「……そうか」
そう答えるケンは微笑んでいた。まるで子供を褒めている時のような、そっと、そして優しい笑みを。
「それならルイズ、その思い、決して忘れるな」
そしてケンは彼女をの事を少し理解した、彼女はただ自分の感情に不器用なだけであり、
本来はとても優しく、そして誇り高い少女だと
「(…なにかしら?この暖かさ……まるで幼い時お父様と寝ていた時のような……)」
「フ、フン使い魔の貴方に言われなくてもわかっているわよ!
そ、それでケン、言い忘れていた使い魔の仕事なんだけど」
「……何だ?」
「まず一つ、契約した使い魔は、主人の眼となり耳となる能力を与えられるの、つまりアンタが聞いたり、見たりしたものを、
私も聞き、見ることが出来るって訳、これは……見えるわけ無いわよね、平民だし」
でもケンシロウみたいな大男の高さから皆を見下ろせたら面白そうだなぁ…と思ったルイズであった。
一方ケンシロウは少しホッとしていた。
「次に……次に秘薬の材料を集める事なんだけど…アンタこれも無理っぽいわね」
「その秘薬というのが何処にあるかだな」
「例えば、火の秘薬だと、硫黄だから火山にあって。水の秘薬だと…確か…何かの精霊の一部とか言われているわ。」
「…水の秘薬というのは良く分からないが、硫黄なら取りに行けそうではあるな」
「そ、そう……(普通の人間が取りに行けないところだから使い魔に行かすんだけど…)」
「ま、まぁ良いわ、それで、3つ目、使い魔は主人の力となり身を守る、まぁ要は私の為に戦って、護って貰う訳ね」
「そうか、わかった」
以外にもケンシロウはあっさりと承諾した。
「あ、あら意外と従順ね…こう、もっと嫌がると思ったのけれど…。」
「今ここで変に抵抗してもどうとなる訳ではない、それに…」
「それに?」
「もしこれも北斗の運命というのなら、俺は受け入れよう」
「は?ホクト?何それおいしいキノコ?」
「…気にするな、お前が知る必要は無い」
「な、何よそれ!主人に隠し事をする気!?
……フ、フンまぁいいわ、という訳で明日からは私の使い魔として働けるんだから感謝しなさい!」
「フッ……わかった」
「ちょ!?い、今笑った?笑ったでしょ!?」
ケンシロウにとってルイズの発言は育ち盛りの少女が必死に背筋を伸ばし、
つま先を立ててえばっている様に見え、
おかしかった。若い子供らしい、瞳に光のある子供である。
「はぁ……まぁ良いわ、もう疲れたから私は寝るわ、それじゃあケンシロウ、着替えるから私の服を脱がせて」
「…それぐらい、1人で出来るだろう」
「主人に反抗する気?良いから脱がせなさいよ」
「…自分でやるんだな、貴族というのは自分の事も出来ないのか?」
「なっ!?で、でで出来るわよ! …ああもう調子狂うわね、まぁいいわ、廊下にメイドがいるから渡しといて!」
ルイズはそう言って服を脱ぐとケンシロウに投げ渡し、そのままベッドに入り、眠りに入った。
「……。」ケンシロウは思わず1人の少年を思い出した。
「(…まるでバットみたいだな。)」
ケンシロウが共に旅をした少年、バット。我が侭なところもありお調子者だった少年、
しかし彼は次第に成長し、そして立派な戦士となった。
「(この子もまた…大きく成長するのだろうか…)」
そう思い、ふっと窓から外の風景を見る。
ー今まで見ていて来た枯れ果てた大地出は無く、とても豊かな世界、
バットはあの荒野の地獄の中を耐え抜いたからこそ立派な戦士になった。
では彼女は?
「……」
ケンシロウはそれ以上考えるのはやめた。
「…とりあえず外に出てみよう」
ケンシロウはそう言うと外に出た、あの森の世界がどうなっているのかを見る為に。
一方その頃……
(……燃やせ……!)
(…やめろ……)
(殺せ……!)
(やめろ…!)
(焼き尽くせ!!!)
「やめろぉぉぉぉぉ!」
コルベールがベッドの中で悲鳴を上げた、そしてハッと我に返り眼を覚ました。
「はぁ……はぁ……ゆ、夢か……!」
彼は大量の汗をかいていた、その顔には恐怖が見えていた。
「まさか……またあの夢を見るとは……」
コルベールが見た夢、それは自身の人生の最大の罪、忌まわしき記憶であった。
燃え盛る村、黒焦げになる人間、それを下卑た笑みで見る人間
そこはまさに、地獄だった。
「彼を…見たからか……やはりあの男…只者では……」
彼は、ケンシロウを見たときに真っ先にあの時の自分を思い出した。
それは彼から発する‘死の臭い’に当てられたからか
「……ん?あれは?」
そう言ってコルベールが窓から見たのはそのケンシロウだった。
何やら壁の前に立っていたが。
「……!?き、消え……!?」
消えた、壁の前で立っていたかと思えば、いきなり姿が消えたのであった。
「……これも夢?……」
試しに自分の頬を捻ってみた
「…痛いから夢じゃないな…では今のは……!」
その日、コルベールは眠る事が出来なかった。
ホアチャア!ホクトノケーン!
ケンシロウは壁を飛び越し、学園の外に出ていた。
そこに見えたのは、まぎれもない緑の大地であった。
「久しぶりに見る…緑の大地だ」
ケンシロウはこの時思った、もしあの世界も緑にあふれていたら、
あの様な地獄はなかったであろう、そして北斗も……。
「………」
ケンシロウはそのまま森の中へ入って行った。その時
「……!」
何処か、遠いところから悲鳴が聞こえた。
「……アッチ、か……」
そう言うとケンシロウはそのまままっすぐに走って行った。
――その先の道
「い、いやぁ、お願い、助けてぇ…」
1人の女性が子供を抱きながら命乞いをする、近くには馬車、
剣で斬られた男と背中が燃えている男、
そしてその周りを15人ほどの大男が下卑た笑いをしながら囲んでいた
盗賊である
「うえっへっへ、とんだカモがやってきましたねぇ親分」
「ああ、これだけの宝石と食いモンがあれば当分こまらねぇ」
片目に傷があるモヒカンの大男がマントをし、ハット帽をかぶり
杖を持ったリーダー格の男と話していた。俗にいう没落メイジである。
「そんでよぉ親分、この母娘どうします?」
「ああ、母親の方は好きにしろ、その代わり俺はガキの方を犯らせて貰うぜ」
「げぇっへっへ、親分も好きもんだなぁ…さぁて」
「ひっ!?」
「さぁておばさんよぉ…そのガキを渡しな、そうすれば一緒に可愛がってやるぜ」
「お、お願い私はどうなってもいいからこの子だけは…この子だけは…」
「お母さん……!」
「はぁ?知らないよお前達の事情なんざぁ、まぁいいややっちまおうぜ!」
「い、いやああ!?」
そう言って獣の如く母親に襲いかかろうとする盗賊達、しかし
「やめておけ」
1人の男の声が聞こえた。
「ああん?」
そう言って盗賊達の1人が後ろを向くと、そこにはケンシロウがいた。
「その母娘を放してやれ」
「放せだぁ?コノヤロウ、何様のつもりだテメェ!!」
そう言うと3人ほどの男達がケンシロウに襲いかかった、1人は槍、2人は剣を持っていた。
「死ねぇええええ!」
「ほぉあちゃ!」
ケンシロウは素早く回し蹴りをし、3人を纏めて蹴り飛ばした
「おぶぅ!」「ぎゃあ!」「へぶっ!」
「きゃあ!?」女性が驚きの声を上げる
「チィ!」リーダー格の男が舌打ちをする。
「今のうちに逃げろ」
「は、はい!」母娘は生き残っていた馬で逃げた。
「コ、コノ野郎…せっかくの女を逃がした上にこの俺様の顔を……ヤロォブッコロシテヤルァー!」
「無駄だ」
「な、なんだと…!?」
「お前達はもう、死んでいる」
「死んでいるぅ?何を寝ぼけた事を……ヲッ…ヲッ…!」
「な、おいどうし…ひぃっ!?」
「お、お前あ、頭……!」
「ヲ、ヲババババ…ババ…ァ」
先ほど蹴られた内の男の1人の頭が急に大きくなっていく
それはアンバランスに、グロテスクに、そして他の2人も体に以上が見え始める
「ぎゃっ、ぎゃがあああがばばばば!」
1人は顔が引っ張るように横に広がっていき
「げぶぇ、えべべべべべべ!」
もう1人は顔が捻じれていく
「う、うわああああ!?」
「な、なんだなんだなんだぁ!?」
そして
「マッハァ!!」
そのまま風船の如く破裂し、血肉が周りに飛び散った
「バァマぁ!!」
まるでパンを裂いたかの様に顔が割れ、鯨の様に血が噴出した
「ベンゾォッ!!」
顔面がねじ切れ、顔が無くなった。
「う、うわぁあああああああ!?」
「な、なんなんだ、何が起きたんだ!?」
「ひぃいいいい!?」
「ええいてめぇら、落ち着け!恐らくあれも魔法だ!あれはメイジの仕業じゃ!
(しかしあんなの見たことがない…あれは一体!?)」
「て、てめぇら、所詮奴は1人だ!一斉に攻めれば訳はねぇ、やれ!じゃなきゃ俺がお前らを燃やすぞぉ!」
「う、うおぁああああああああ!」
「おらぁあああああああ!」
盗賊達が輪になって一斉に襲いかかった、全員武器を持っている
「はぁああああ……」
ケンシロウは構えると、まず1人の敵に向かった
「ほぁたぁ!」 「ぶべっ!」
まずは1人、正面から顔面に突きを放つ。
「あぁたたぁ!」 「ぎゃあ!」
そして隣にいた2人の腹部に蹴りを入れる
ほぁちゃあ! 「ぼぶっ!」
そして後ろから襲いかかった1人を裏拳で沈める
「あーたたたたたたたぁ、ほぁっちゃぁあ!」
「「「「「ぐぎゃああああああ!?」」」」」
そして残りの全員を回転しながらの連続の突きで沈めた
この間わずか5秒である。
「ぐ…ぐぐ……なんて奴だ……!」
「さぁ、次はお前だ……!」
「な、何を…!お、おいお前らいつまで寝てやがる!早くコイツを……!」
「お前はさっきのを見て無かったのか?そいつらはもう…死んでいる」
「な、なんだと……うわひぃ!?」
リーダー格の男は部下の山賊達の方を見た。
「うぅぱぁぱぱぱぱぱぱ、るぅぱぁ!!」
顔面を殴られた男は殴られた部分が膨れ上がり、爆破した
「は、はらががっががあっががががっががぁんまぁ!」
腹を蹴られた男達は腹部が膨れ爆破し、真っ二つになった
「もぺ、ぺっぺぺぴぴぴぷぷぅ、ぽぉう!」
裏拳で沈められた男はへこんだ部分がさらにへこみ続け、そのまま後頭部が爆破した。
そして他の仲間も一斉に体の部分が膨れ上がったり、ねじ曲がったり、へこんでいき、爆破した。
あたりには大量の血と臓器がぶちまけられた。
「北 斗 翻 車 爆 裂 拳」
「ほ、ほほほほほくと……!?」
「さぁ、次はお前だ……」
「ま、ままま待ってくれ!俺はア、アンタに降伏する!俺が今まで奪った財産や食糧、全部アンタに譲ろう!
だから許してくれ、なっ!?」
男は必死に命乞いする、しかし実は手には杖があり、さりげなく詠唱をしていた。
「………」
「ほ、ホントに勘弁してくれ、お、俺は元々は貴族だったんだ、それを卑劣な王族に騙されて、没落して、
家族を養う為に、こ、こんな事をしなくちゃならなかったんだ!
だから…だぁからぁ…死ねぇ、ファイヤーボール!」
「む!?」
ぼわぁっ!
男が杖を向けた瞬間、炎の弾が飛んでいった、ケンシロウは咄嗟に腕でガードしたが、その腕かた炎が全身に渡っていった
「ひゃあはははは!燃えろ、燃えちまえぇ!ひゃぁあはははははは、はは……!?」
しかし男はとんでもないもの見た。炎に包まれた中、ケンシロウの顔はとても落ち着いていたのだ、そして…
「フンッ!」
軽く腕を振ると全身に広まっていた筈の炎はあっという間に消えていたのだ。
「な、なななななそんなぁ!?」
「それでおしまいか?」
「ひ、ひぃ!?」
コキッ、コキッ ケンシロウは指を鳴らしながら男に詰め寄る。
「あたぁっ!」
「ぎゃぶっ!」
ケンシロウは両指をリーダー格の男のこめかみに突き刺すと、リーダーはそのまま気を失った。
「………おい」
「ひっ!?」
ケンシロウは後ろを見た、すると1人の男がいた、恐らくさっきの一味の1人なのだろう
周りに誰かいないか見回りをしていたと思われる。
「ひ、ひぃすいません、本当に勘弁して下さい!もうわるい事しません、貴方様に逆らいませんだから命だけはお助けを…!」
ケンシロウは男の額に指を置いた。
「ヒィっ!?」
「……行け」
「……え?ええ?」
「行けと言ったのだ」
「は、はいぃいいいいいい!」
男は風の如く逃げて行った。
「……」
ケンシロウは襲われた人たちの遺体を見た、それは自分がいた時代にも見た光景だった。
弱者はただ強者に嬲り殺されるだけの、苛烈な地獄の様な世界。彼はそれを変えたくて、旅をしていた
「(…この世界も、弱者を食い物にし、人々の眼から光を奪う人間がいる…
恐らくあの娘も光を奪われるかもしれない…ならば!)」
ケンシロウは拳をグッと握りしめ、1つの決意をした。
「ならば俺は…未来への光を断たせぬ為に戦う……!」
それは、ケンシロウがルイズの使い魔として過ごすことを決意した時であった。
――一方その頃、都市よりすこし離れた森の所
馬に乗った数人の人間が、明りを持って周りを見回した。
彼らは平民ではあるが国を守る騎士として存在する「衛士隊」の人間であった。
その中に一際目立つ‘女’がいた。
白く細いが、どこか精悍な感じの肉体、美しい短めの金髪に蒼き瞳の女性、名前はアニエスという。
そのアニエスが森の中から何かがこちらに来るのを見た。
「む?あれはなんだ?」
衛士達が明りを向けると、それは見たことのなる顔の男だった。
「ん?おいあれは確かここ最近暴れている盗賊集団の幹部じゃないか?」
「何だと?」
改めてみると確かにそうだった。衛士達は剣を抜いて構えた、しかしよく見ると様子がおかしい。
「なんか……おかしくないか?」
「ああ…まるで何かから逃げている感じだ…」
すると!
「!う、うわぁ!?」
「な、なんだぁ!?」
いきなり男が頭を抑えて苦しんだかと思うと、次の瞬間頭が膨れ上がり、爆破したのだ。
「な、なんだ一体、何が起きたのだ!」
「ま、まさかメイジの仕業か!?」
衛士達はうろたえた、なにせメイジといえばそこらの盗賊よりはるかに手ごわい相手である。
「くっ、皆気をつけろ!」
アニエスが正面をにらみ、構えている。
しかししばらくたっても何も起きなかった。
「な……なんだったんだ?」
「と、とりあえず死体のところへ向かおう…」
彼らは死体のところへ向かった。
「これはひでぇな…」
「どうなってるんだ?まるで内側から爆破しているみたいだぞ」
「ど、どうする…?」
するとアニエスが1つの提案を出した。
「ではここで2手に分かれよう、私とフィンレー、ステファン、デビットの4人でこの男が来た方向に向かう、
ファレリーとデニス、ダレンはこの死体のところにとどまる、
グレアムとスティーヴンは他の仲間を呼んできてくれ」
「だ、大丈夫かアニエス?」
「心配無い、それに私たちはまがりなりにも衛士隊だろ?怯えててはいけない」
「よし、そうしよう」
そうしてアニエス達は男が逃げて来た方へ向かった。
――そして20分ほどたった時、アニエスが見たのは想像を絶する光景であった。
「うっ……」
「こ、これは………」
「い、一体なんなんだこりゃあ!」
そこには先ほどの男の様な死体の山があった
ある者は頭が真っ二つになっており
ある者は顔面がえぐれて
ある者は腹から2つに分かれていた
「こ…これもさっきの男の様に……」
「ひ、ひっどいなこりゃ、こんな死体見た事ねぇや」
「おいアニエス、まだ生きてる奴がいるぞ!」
「何!?」
アニエス達はすぐさまそこへ向かった
「ああ、こいつだけ気を失っている」
「!お、おいこいつ盗賊団の頭領のメイジだぞ!」
「あ、本当だ!」
「お、おい眼を覚ましたぞ!」
「う…うぁ…」
頭領の男は眼を覚ました、しかしその顔は恐怖に歪んでいた
「おい、貴様、これは一体なんだ、誰がやった!?」
「ほ……ほく…と……」
「ほくと?」
「ほ、ほく…とぁあああ!?」
「な!?」
頭領の男の頭が急に膨れ出した
「ま、またか!」
「皆この男から離れろ!」
そういうと衛士達は男から離れた。そして
「あ~、ああ~…… あ べ し !」
盛大に爆破し、当たりに血肉が撒き散らかった。
「う、うわぁあああ!?」
衛士達はパニックになった
「おいおいおい!これは何なんだよ!」
「知るか!それよりもまだこの辺にメイジがいるかもしれないぞ!皆四方に構えろ!」
アニエス達は四方に剣を構えた、しかしいくら待っても攻撃が来ることはなかった。
「な、なんだったんだ……」
「さぁな…しかしヤツが最後に残した‘ホクト’とは一体…」
「さぁ…」
「(……ホクト…か…)」
「アニエス?」
「ん?あ、ああすまない、皆、とりあえず仲間を待とう、この後をどうするかはその後だ」
ふと、アニエスは空を見上げた そこに見えたのはいつも通りの2つの月と、
今まで見たことの無い、7つの星であった……。
テーレッテー
ルイズの使い魔としての生活が始まったケンシロウ、しかしそこで見たのは、貴族と平民の絶望的な格差、
そして力無きものへの手の無き虐待であった!
その頃、トリステインでは「ホクト」の謎に挑もうとする、アニエスの姿が!
次回北斗の拳外伝!ゼロの北斗七星第三話!
「豊かな世界の真実
力が弱者をいたぶる世界!!」
「お前はもう……死んでいる!」
#navi(北斗の拳・外伝 ~零の北斗七星~)
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