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「ギーシュ・ド・グラモンと黒バラ女王-08」(2009/12/18 (金) 22:02:58) の最新版変更点
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#navi(ギーシュ・ド・グラモンと黒バラ女王)
「ば、化け物ぉぉぉ!!」
恐怖に駆られた一部の生徒と教師達がその場から逃げ出した。
フライの魔法を使い、地を蹴って走るよりも速く巨人の前から立ち去ろうとした。
しかし茨の蔓は地面を割り、彼らの飛行速度よりも速く伸し出す。
彼らの全身が締め付けられた。
「この私が化け物だと?」
黄金色の眼球を剥き出し、巨人が鬼気迫る表情をする。
三人の教師と十八人の生徒を縛る茨の締め付けが強まった。
「私の名は黒バラ女王……化け物ではない!!」
女王の発した怒りの声が衝撃波となって砂煙を舞い上げる。
耳を劈く轟音は再び逃げ出そうとする者達を怯ませ、身動きを止めさせた。
「ぎゃあああああああああああ!!!」
彼らの周りから無数の悲鳴が聞こえた。
茨に囚われた者達の体が急激に痩せ細り色を失っていく。
「あがっ……かはっ……あ……ぁ」
苦しみ悶え、見る影も無い姿になった彼らの体は黒い鉄の塊と化した。
彼らから全ての生気を奪うと、茨は捕らえていた得物を捨てるように地面に叩き付る。
幸い、鉄の強度が高かったため彼らの像には傷一つつかなかった。
(じょ、女王……!?)
激しい混乱と恐怖の中、コルベールは巨人の言葉を聞き漏らさなかった。
だが、そのことは返って彼の心を動揺させた。
(女王……どこの国の女王だ? 亜人……エルフ、いやあれはどう見てもエルフじゃない)
体勢を整えつつコルベールは考えを張り巡らせる。
(いや、だが我々の知らないエルフがいてもおかしくはない。それとも東方の国の女王か、あるいは……ええい!)
「じょ、女王陛下!」
コルベールは跪き女王に呼びかけた。
「ん、なんだ? そこの小僧」
女王は杖を前に突き刺し、巨大な黒い薔薇で出来た柄の部分を両手で押さえた。
そして顎を手の甲の上に乗せ、女王は覗き込むように身を屈ませながらコルベールを見つめた。
「さ、昨日のコントラクト・サーヴァントにおきましては大変な無礼を働いてしまい、真に申し訳ありませんでした。就きましては、直ちに陛下の御領国に連絡をし、然るべき謝罪と賠償を公式の場を以っていたしますので……」
コルベールはこのことが国同士の戦争に結びつくのを恐れていた。
一国の女王が他国にいきなり連れて来られたのだ、問題にならないはずがない。
現に彼らは今、女王の気分を害してしまったがために皆殺しにされかなねない状況に置かれている。
今彼が考えうる最善の策は、事態をなるべく丸く抑え女王の気を損ねないようにすることだった。
「はぁ、こんとらくとさーばんと。なんだか知らないけど、私は外に出れさえすれば何でもよかったんだけどねぇ」
目蓋を下ろし、気だるそうに目を閉じた女王が艶やかな声で答える。
「え……?」
下げていた頭を上げ、訝るような顔でコルベールは女王の様子を伺った。
(そういえば彼女は召喚されたとき、ガラス玉の中に封印されていた。ということは、どこかの国の女王ではなく……)
首から下を全て覆う紫紺色のローブ、異様なほどに長い骨ばった腕。
女王のローブの裾の下からは足の代わりに無数の茨を覗かせている。
そのおぞましい姿からコルベールは物語や伝説に登場する魔王を連想した。
「まぁ無駄話はこれくらいにして~……」
冷や汗を流しながら黙り込むコルベールを見て、女王は話を切り上げた。
そして左手を徐に前に出し、親指の腹に人差し指の爪甲を乗せると、すぐさまその人指し指を弾く。
直後、一同の後ろで何か大きなものが倒れた。
彼らが後ろを振り向くと、そこには鉄像と化したシルフィードが横たわっていた。
「……!?」
タバサは無言のまま立ち尽くした。
涙こそないものの、彼女の目からは悲しみの色が見て取れる。
「そろそろ目障りな色の奴らには消えて貰いたいね」
女王はしなるように体を反り起こすと、右手に杖を取り大きな黒薔薇を一同に向けた。
その時、彼らには逃げる隙など無かった。
女王は首を下に伸ばすと、置物を見るような目で彼らを凝視する。
緊迫した数秒間の後、心臓を射抜くような視線は一転してにこやかに微笑みに変わった。
「すぐに私好みの美しい色にしてやるからね」
黒薔薇の周りを闇が包み込んだ。
周囲の光を呑み込む黒い靄は徐々に膨らんでいった。
「あ、あの時と同じ魔法!!」
ルイズは頭上を見上げながら叫んだ。
ヴェストリの広場での惨劇が頭をよぎる。
突然、巨大な金属同士が激しくぶつかり合ったような音が響いた。
「何だ?」
女王は魔法の発動を中断し後ろを見返る。
身の丈30メイルほどの、土くれで出来たゴーレムが女王の足元に佇んでいた。
鉄の塊に錬金されたゴーレムの右の拳は女王を殴りつけていた。
「誰だいお前は。どこから現れた?」
ゴーレムは女王の問い掛けに答えない。
女王の眉間に皺が寄る。
「私を無視するとは……なんて生意気な!」
女王の巨大な手がゴーレムの頭部を鷲掴みにする。
黒金の指が突き刺さりゴーレムの上半身に亀裂が走った。
そのまま女王の目の前まで持ち上げられたゴーレムの体は解けるように崩れる。
「は?」
口をぽかんと開け目を丸くした女王の視界を土煙が塞いだ。
「ええい、鬱陶しい!」
150メイル以上ある腕を振るい女王は煙を薙ぎ飛ばす。
「おお!?」
先ほどまで女王の足元で震え上がっていた人間達の姿が消えていた。
地上には二十二人の人間と一匹の竜の鉄像が転がっているだけだった。
「フ、そういうことかい」
黒い唇を吊り上げ、はにかみながら女王は頷く。
「人形で私の気を引いて、その間みんなしてどこかへ逃げたんだね」
女王は両腕を胸の前で交差させる。
仄暗い紅色の空の下、生気の無い荒野が大きく揺れ始める。
「面白い、面白い!」
女王は、恐れ戦き泣き喚きながら逃げる人間達の姿を思い描く。
「楽しい鬼ごっこを始めようじゃないかぁ!」
#navi(ギーシュ・ド・グラモンと黒バラ女王)
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「ば、化け物ぉぉぉ!!」
恐怖に駆られた一部の生徒と教師達がその場から逃げ出した。
フライの魔法を使い、地を蹴って走るよりも速く巨人の前から立ち去ろうとした。
しかし茨の蔓は地面を割り、彼らの飛行速度よりも速く伸し出す。
彼らの全身が締め付けられた。
「この私が化け物だと?」
黄金色の眼球を剥き出し、巨人が鬼気迫る表情をする。
三人の教師と十八人の生徒を縛る茨の締め付けが強まった。
「私の名は黒バラ女王……化け物ではない!!」
女王の発した怒りの声が衝撃波となって砂煙を舞い上げる。
耳を劈く轟音は再び逃げ出そうとする者達を怯ませ、身動きを止めさせた。
「ぎゃあああああああああああ!!!」
彼らの周りから無数の悲鳴が聞こえた。
茨に囚われた者達の体が急激に痩せ細り色を失っていく。
「あがっ……かはっ……あ……ぁ」
苦しみ悶え、見る影も無い姿になった彼らの体は黒い鉄の塊と化した。
彼らから全ての生気を奪うと、茨は捕らえていた得物を捨てるように地面に叩き付る。
幸い、鉄の強度が高かったため彼らの像には傷一つつかなかった。
(じょ、女王……!?)
激しい混乱と恐怖の中、コルベールは巨人の言葉を聞き漏らさなかった。
だが、そのことは返って彼の心を動揺させた。
(女王……どこの国の女王だ? 亜人……エルフ、いやあれはどう見てもエルフじゃない)
体勢を整えつつコルベールは考えを張り巡らせる。
(いや、だが我々の知らないエルフがいてもおかしくはない。それとも東方の国の女王か、あるいは……ええい!)
「じょ、女王陛下!」
コルベールは跪き女王に呼びかけた。
「ん、なんだ? そこの小僧」
女王は杖を前に突き刺し、巨大な黒い薔薇で出来た柄の部分を両手で押さえた。
そして顎を手の甲の上に乗せ、女王は覗き込むように身を屈ませながらコルベールを見つめた。
「さ、昨日のコントラクト・サーヴァントにおきましては大変な無礼を働いてしまい、真に申し訳ありませんでした。就きましては、直ちに陛下の御領国に連絡をし、然るべき謝罪と賠償を公式の場を以っていたしますので……」
コルベールはこのことが国同士の戦争に結びつくのを恐れていた。
一国の女王が他国にいきなり連れて来られたのだ、問題にならないはずがない。
現に彼らは今、女王の気分を害してしまったがために皆殺しにされかなねない状況に置かれている。
今彼が考えうる最善の策は、事態をなるべく丸く抑え女王の気を損ねないようにすることだった。
「はぁ、こんとらくとさーばんと。なんだか知らないけど、私は外に出れさえすれば何でもよかったんだけどねぇ」
目蓋を下ろし、気だるそうに目を閉じた女王が艶やかな声で答える。
「え……?」
下げていた頭を上げ、訝るような顔でコルベールは女王の様子を伺った。
(そういえば彼女は召喚されたとき、ガラス玉の中に封印されていた。ということは、どこかの国の女王ではなく……)
首から下を全て覆う紫紺色のローブ、異様なほどに長い骨ばった腕。
女王のローブの裾の下からは足の代わりに無数の茨を覗かせている。
そのおぞましい姿からコルベールは物語や伝説に登場する魔王を連想した。
「まぁ無駄話はこれくらいにして~……」
冷や汗を流しながら黙り込むコルベールを見て、女王は話を切り上げた。
そして左手を徐に前に出し、親指の腹に人差し指の爪甲を乗せると、すぐさまその人指し指を弾く。
直後、一同の後ろで何か大きなものが倒れた。
彼らが後ろを振り向くと、そこには鉄像と化したシルフィードが横たわっていた。
「……!?」
タバサは無言のまま立ち尽くした。
涙こそないものの、彼女の目からは悲しみの色が見て取れる。
「そろそろ目障りな色の奴らには消えて貰いたいね」
女王はしなるように体を反り起こすと、右手に杖を取り大きな黒薔薇を一同に向けた。
その時、彼らには逃げる隙など無かった。
女王は首を下に伸ばすと、置物を見るような目で彼らを凝視する。
緊迫した数秒間の後、心臓を射抜くような視線は一転してにこやかに微笑みに変わった。
「すぐに私好みの美しい色にしてやるからね」
黒薔薇の周りを闇が包み込んだ。
周囲の光を呑み込む黒い靄は徐々に膨らんでいった。
「あ、あの時と同じ魔法!!」
ルイズは頭上を見上げながら叫んだ。
ヴェストリの広場での惨劇が頭をよぎる。
突然、巨大な金属同士が激しくぶつかり合ったような音が響いた。
「何だ?」
女王は魔法の発動を中断し後ろを見返る。
身の丈30メイルほどの、土くれで出来たゴーレムが女王の足元に佇んでいた。
鉄の塊に錬金されたゴーレムの右の拳は女王を殴りつけていた。
「誰だいお前は。どこから現れた?」
ゴーレムは女王の問い掛けに答えない。
女王の眉間に皺が寄る。
「私を無視するとは……なんて生意気な!」
女王の巨大な手がゴーレムの頭部を鷲掴みにする。
黒金の指が突き刺さりゴーレムの上半身に亀裂が走った。
そのまま女王の目の前まで持ち上げられたゴーレムの体は解けるように崩れる。
「は?」
口をぽかんと開け目を丸くした女王の視界を土煙が塞いだ。
「ええい、鬱陶しい!」
150メイル以上ある腕を振るい女王は煙を薙ぎ飛ばす。
「おお!?」
先ほどまで女王の足元で震え上がっていた人間達の姿が消えていた。
地上には二十二人の人間と一匹の竜の鉄像が転がっているだけだった。
「フ、そういうことかい」
黒い唇を吊り上げ、はにかみながら女王は頷く。
「人形で私の気を引いて、その間にみんなしてどこかへ逃げたんだね」
女王は両腕を胸の前で交差させる。
仄暗い紅色の空の下、生気の無い荒野が大きく揺れ始める。
「面白い、面白い!」
女王は、恐れ戦き泣き喚きながら逃げる人間達の姿を思い描く。
「楽しい鬼ごっこを始めようじゃないかぁ!」
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