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#navi(SeeD戦記・ハルケギニア lion heart with revenger)
intermission03 Slide Show Part2
タルブ平原会戦から奇跡の生還を遂げて、家に戻ったルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは両親と姉たちに歓喜と叱咤で迎え入れられていた。
よく生きていた、何故あんな危ない真似をしたのか、ああ、だが無事で良かった、と。
そうして恋しかった家族に会って、穏やかな日々を過ごすうちに、夏期休暇目前にまで迫ってしまっていた。
せめて一度は学院に行っていなければ拙かろうと思い、出かけようとしたが再び父からそれを止められた。
いい加減にこれはおかしいと思い、詰め寄ると、顔を険しくさせて父が告げた。『今の王宮は信用がならない。何時再びお前を利用しようとするか判らない。故にこのままこの家に置く』と。
親としては当然の心境かも知れなかった。
何しろルイズが一歩間違えれば死んでいた状況に至る経緯が経緯である。今回の件での王宮への反感が、元々あった鶏の骨への不信感と合わさって拭いがたい感情のしこりとなっていた。
長姉が休暇で戻ってくれば、そのままアカデミーには退職届を出させるつもりだとも言う。これでは事実上ラ・ヴァリエール家の鎖国である。
もちろんルイズはこれに噛み付いた。
自分は女王とは友人であり、また王家に忠誠を誓ってもいる。そも、家名のために死を厭わぬのが貴族ではないのか、と。
父は一度困ったような顔をすると、仕方有るまいとしぶしぶに頷いた。が、同時にこんな事をルイズに告げた。
『良いかルイズ。忠誠心とはただ唯々諾々と命令に従うだけでは成り立たない。仕える者が誤っているのならば、それを正すのもまた忠誠心なのだ』
では、アンリエッタ女王が間違っていたのかと問うと、公爵は首肯した。
事実、ルイズは任務には失敗してしまっている。だが、任務を受ける際に説明されたように、婚姻の妨害とまでは至らなかったのだ。
もちろんタルブ平原会戦の結果、婚姻そのものがお流れになったが、事はそういう問題ではない。
『此度は確かに、お前は無事だった。だがそれも全て運が良かったからに過ぎない。一歩間違っていればお前は死に、我々は悲しみに暮れ、お前の敬愛する女王陛下はただ一人信じられる者を失っていたことになっていたかも知れんのだ。
……確かに、それが誤っているか誤っていないか拝聴しただけで判るのは難しいだろう。だがそれが判らなければ周りの者が大いに迷惑を被ることとなるのだ。それこそ、家名を汚すほどのな』
忠誠心とは盲信ではないのだ。と公爵は言った。
夜空に浮かぶ双月を見つめながら、ジョゼフはつまらなさそうに呟いた。
「……それらしいモノは見えんな」
「だぁから言ったのでおじゃる!ハルケギニアの月にモンスターは見つからなかったのでおじゃると!」
「ふん……つまらんな」
「オダインにこんな無駄なことをさせて!約束通り、オダインに研究費を寄越すのでおじゃる!」
「好きにしろ」
もう興味は失せたとばかりに踵を返し、部下の竜騎士に命じて砂漠から飛び立つ。
(もしあの月にももんすたーとやらが居れば簡単にハルケギニアを地獄にしてやれると思ったが……そう簡単にもいかんか)
だが、あの巨大なルナティック・パンドラはそれ単体でも中々に使える気がした。
聖地から現れた中でも特別大きい代物。あまりの大きさに、聖地から現れたモノの大半を納めているロマリアの連中も運ぶのを断念したようだが、それが今自分の思い通りになるのは、ほんの少しだけ、楽しく思えた。
(ゲルマニアとトリステインの仕込み次第だが、それももうじき判ることか)
そこでふっと思い至る。
どうも、手段が目的にすり替わっているようだ。
(……それも良いか。どうせこの世界は『下らん』。ならせめて、俺の暇つぶしに成れ)
砂漠の真ん中に立つ、月明かりに照らされた巨大な影に目を向けたまま、そう心の裡で吐き捨てた。
3ヶ月ほど経って、ルイズは時たま父の言葉を思い出してはいたが、それを実践するような機会が訪れた。
女王からの手紙が届いたのだ。
それは嘆きの悲鳴だった。アンリエッタの思い人であるアルビオンの皇太子ウェールズが生きていた。にも関わらず、再会から1日と置かずに死別してしまったというのだ。
その下手人は、自分が召喚した男、スコール・レオンハート。
仇を討たんと、マザリーニ枢機卿や銃士隊に捜索を命じたが、返ってくるのは現在捜索中との言葉ばかり。そしてそれを軽視するかのように『そんな事よりも、今重要なのはいかにアルビオンという障害を取り除くかです』と言ってくる。
実は、彼らはとっくにスコール・レオンハートの行方を掴んでいるのではないか、とアンリエッタは見ていた。
これに関してはアンリエッタの見立ては正しい。
そもそも現状では戦う必要のない相手。そしてスコール・レオンハートの持つ、擬似魔法とも違う正体不明の力。アンリエッタの証言を聞けば、雲を裂き天を割るかのような技を使っても見せたという。
故にマザリーニは無駄な力の消耗を恐れて戦わぬように銃士隊に提言していたし、出来ることならばその力をトリステイン側に付けるべく、その実力を計ろうとオールド・オスマンを通じての働きかけなども行っている。
本来ならばアンリエッタ直属である銃士隊もマザリーニの言葉があったし、何よりも仲間の仇を討ってくれた男なのである。
その隊士の大半は顔も知らぬその男にどちらかと言えば好感を抱いており、逆に仲間達の流した血を無にするかのような女王の言葉に軽い絶望感すら覚えていた。
かつてアルビオン行きをルイズに頼んだ時に、他に頼れる者がいないと言っていたアンリエッタだが、マザリーニすらその後衛から外れつつある状況で今正にそれは真実になろうとしていた。
もはや誰も信用出来ない。このままでは愛しい人の仇すら自分は討てない。
そんな文章で締めくくられている手紙を見て、スコール・レオンハートを喚んだのが自分であるという罪悪感と女王を悲しませているという憤怒で息が出来なくなりかけた。
そこでふと、父の言葉が思い出される。
――忠誠心とは盲信ではない
ため息を一つ付き、改めて手紙を見る。冷却された頭が、おかしな点を見つけた。
ウェールズ皇太子が、本当に生きていたのだろうか?
何しろ彼は、彼女の目の前で、ワルド子爵によって、殺されたのだ。
(それじゃあ、姫様の言うウェールズ皇太子は、偽物?)
だが愛を囁き合う間柄だった二人だ。偽物との見分けが付かない、というのもおかしい。
では、影武者などを用いて皇太子が生きていたと仮定する。
ならばもちろん仇討ちは手伝いたい。だが狙うのはスコール・レオンハートではない。彼は傭兵だ。その雇い主こそが真に狙うべき相手だ。
だが、そう易々と雇い主を吐くだろうか?脅しをかけようにも、悔しいが自分ではあの男には敵うまい。ゼロと呼ばれる自分に対して相手は擬似魔法を有しており、その身体能力もずば抜けている。
そしてもし、あの男が私的な理由から皇太子を討ったのなら……。
いずれにしても、自分の力では役者不足というものだ。
強くならなければならない。
そんなルイズにとって、アルビオンへの出征に伴い始まった軍事教練はありがたい事だった。更に『新しい魔法だ』として擬似魔法を独自に研究し続けていたコルベールから教えも受けた。
ゼロは貴族の魔法が使えないから平民の魔法を使い始めた、という口さがない連中の言葉も、陛下のためだと歯を食いしばって耐えたし、その甲斐もあった。
自分から抽出出来る擬似魔法アルテマというのは、コルベールも初めて目にした魔法だったらしい。その攻撃方法が爆発だったというのは些かかんに障るが、自分のよくする失敗魔法などより遙かに威力と制御の面で優れていた。
そしてそんな風に、ルイズが着実に力をつけ始めた頃、事件が起きた。学院へ、賊が侵入したのだ。
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タルブ平原会戦から奇跡の生還を遂げて、家に戻ったルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは両親と姉たちに歓喜と叱咤で迎え入れられていた。
よく生きていた、何故あんな危ない真似をしたのか、ああ、だが無事で良かった、と。
そうして恋しかった家族に会って、穏やかな日々を過ごすうちに、夏期休暇目前にまで迫ってしまっていた。
せめて一度は学院に行っていなければ拙かろうと思い、出かけようとしたが再び父からそれを止められた。
いい加減にこれはおかしいと思い、詰め寄ると、顔を険しくさせて父が告げた。『今の王宮は信用がならない。何時再びお前を利用しようとするか判らない。故にこのままこの家に置く』と。
親としては当然の心境かも知れなかった。
何しろルイズが一歩間違えれば死んでいた状況に至る経緯が経緯である。今回の件での王宮への反感が、元々あった鶏の骨への不信感と合わさって拭いがたい感情のしこりとなっていた。
長姉が休暇で戻ってくれば、そのままアカデミーには退職届を出させるつもりだとも言う。これでは事実上ラ・ヴァリエール家の鎖国である。
もちろんルイズはこれに噛み付いた。
自分は女王とは友人であり、また王家に忠誠を誓ってもいる。そも、家名のために死を厭わぬのが貴族ではないのか、と。
父は一度困ったような顔をすると、仕方有るまいとしぶしぶに頷いた。が、同時にこんな事をルイズに告げた。
『良いかルイズ。忠誠心とはただ唯々諾々と命令に従うだけでは成り立たない。仕える者が誤っているのならば、それを正すのもまた忠誠心なのだ』
では、アンリエッタ女王が間違っていたのかと問うと、公爵は首肯した。
事実、ルイズは任務には失敗してしまっている。だが、任務を受ける際に説明されたように、婚姻の妨害とまでは至らなかったのだ。
もちろんタルブ平原会戦の結果、婚姻そのものがお流れになったが、事はそういう問題ではない。
『此度は確かに、お前は無事だった。だがそれも全て運が良かったからに過ぎない。一歩間違っていればお前は死に、我々は悲しみに暮れ、お前の敬愛する女王陛下はただ一人信じられる者を失っていたことになっていたかも知れんのだ。
……確かに、それが誤っているか誤っていないか拝聴しただけで判るのは難しいだろう。だがそれが判らなければ周りの者が大いに迷惑を被ることとなるのだ。それこそ、家名を汚すほどのな』
忠誠心とは盲信ではないのだ。と公爵は言った。
夜空に浮かぶ双月を見つめながら、ジョゼフはつまらなさそうに呟いた。
「……それらしいモノは見えんな」
「だぁから言ったのでおじゃる! ハルケギニアの月にモンスターは見つからなかったのでおじゃると!」
「ふん……つまらんな」
「オダインにこんな無駄なことをさせて! 約束通り、オダインに研究費を寄越すのでおじゃる!」
「好きにしろ」
もう興味は失せたとばかりに踵を返し、部下の竜騎士に命じて砂漠から飛び立つ。
(もしあの月にももんすたーとやらが居れば簡単にハルケギニアを地獄にしてやれると思ったが……そう簡単にもいかんか)
だが、あの巨大なルナティック・パンドラはそれ単体でも中々に使える気がした。
聖地から現れた中でも特別大きい代物。あまりの大きさに、聖地から現れたモノの大半を納めているロマリアの連中も運ぶのを断念したようだが、それが今自分の思い通りになるのは、ほんの少しだけ、楽しく思えた。
(ゲルマニアとトリステインの仕込み次第だが、それももうじき判ることか)
そこでふっと思い至る。
どうも、手段が目的にすり替わっているようだ。
(……それも良いか。どうせこの世界は『下らん』。ならせめて、俺の暇つぶしに成れ)
砂漠の真ん中に立つ、月明かりに照らされた巨大な影に目を向けたまま、そう心の裡で吐き捨てた。
3ヶ月ほど経って、ルイズは時たま父の言葉を思い出してはいたが、それを実践するような機会が訪れた。
女王からの手紙が届いたのだ。
それは嘆きの悲鳴だった。アンリエッタの思い人であるアルビオンの皇太子ウェールズが生きていた。にも関わらず、再会から1日と置かずに死別してしまったというのだ。
その下手人は、自分が召喚した男、スコール・レオンハート。
仇を討たんと、マザリーニ枢機卿や銃士隊に捜索を命じたが、返ってくるのは現在捜索中との言葉ばかり。そしてそれを軽視するかのように『そんな事よりも、今重要なのはいかにアルビオンという障害を取り除くかです』と言ってくる。
実は、彼らはとっくにスコール・レオンハートの行方を掴んでいるのではないか、とアンリエッタは見ていた。
これに関してはアンリエッタの見立ては正しい。
そもそも現状では戦う必要のない相手。そしてスコール・レオンハートの持つ、擬似魔法とも違う正体不明の力。アンリエッタの証言を聞けば、雲を裂き天を割るかのような技を使っても見せたという。
故にマザリーニは無駄な力の消耗を恐れて戦わぬように銃士隊に提言していたし、出来ることならばその力をトリステイン側に付けるべく、その実力を計ろうとオールド・オスマンを通じての働きかけなども行っている。
本来ならばアンリエッタ直属である銃士隊もマザリーニの言葉があったし、何よりも仲間の仇を討ってくれた男なのである。
その隊士の大半は顔も知らぬその男にどちらかと言えば好感を抱いており、逆に仲間達の流した血を無にするかのような女王の言葉に軽い絶望感すら覚えていた。
かつてアルビオン行きをルイズに頼んだ時に、他に頼れる者がいないと言っていたアンリエッタだが、マザリーニすらその後衛から外れつつある状況で今正にそれは真実になろうとしていた。
もはや誰も信用出来ない。このままでは愛しい人の仇すら自分は討てない。
そんな文章で締めくくられている手紙を見て、スコール・レオンハートを喚んだのが自分であるという罪悪感と女王を悲しませているという憤怒で息が出来なくなりかけた。
そこでふと、父の言葉が思い出される。
――忠誠心とは盲信ではない
ため息を一つ付き、改めて手紙を見る。冷却された頭が、おかしな点を見つけた。
ウェールズ皇太子が、本当に生きていたのだろうか?
何しろ彼は、彼女の目の前で、ワルド子爵によって、殺されたのだ。
(それじゃあ、姫様の言うウェールズ皇太子は、偽物?)
だが愛を囁き合う間柄だった二人だ。偽物との見分けが付かない、というのもおかしい。
では、影武者などを用いて皇太子が生きていたと仮定する。
ならばもちろん仇討ちは手伝いたい。だが狙うのはスコール・レオンハートではない。彼は傭兵だ。その雇い主こそが真に狙うべき相手だ。
だが、そう易々と雇い主を吐くだろうか? 脅しをかけようにも、悔しいが自分ではあの男には敵うまい。ゼロと呼ばれる自分に対して相手は擬似魔法を有しており、その身体能力もずば抜けている。
そしてもし、あの男が私的な理由から皇太子を討ったのなら……。
いずれにしても、自分の力では役者不足というものだ。
強くならなければならない。
そんなルイズにとって、アルビオンへの出征に伴い始まった軍事教練はありがたい事だった。更に『新しい魔法だ』として擬似魔法を独自に研究し続けていたコルベールから教えも受けた。
ゼロは貴族の魔法が使えないから平民の魔法を使い始めた、という口さがない連中の言葉も、陛下のためだと歯を食いしばって耐えたし、その甲斐もあった。
自分から抽出出来る擬似魔法アルテマというのは、コルベールも初めて目にした魔法だったらしい。その攻撃方法が爆発だったというのは些かかんに障るが、自分のよくする失敗魔法などより遙かに威力と制御の面で優れていた。
そしてそんな風に、ルイズが着実に力をつけ始めた頃、事件が起きた。学院へ、賊が侵入したのだ。
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