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「異世界BASARA-02」(2008/02/29 (金) 12:28:56) の最新版変更点
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#navi(異世界BASARA)
「そ、そんな馬鹿な…何だあれは…」
この世界に来て、男はどれだけ走ったのだろうか。辺りは既に夜になっていた。
場所もトリステインからかなり離れ、今は空のよく見える草原にいる。
そして空を見上げ、男は我が目を疑った。
月…それだけなら自分のいた国でも見られる。しかしそれが2つも並んで輝いているとなると話は別だ。
自分のいた甲斐には月が2つもない。
いや、甲斐だけでなく最北端から最南端の九州まで行っても月が2つも見える場所などないだろう。
それはここが日本ではない事を、自分の知らない世界である事を裏付けるのに充分だった。
「で、ではここは…ここは何処なのだ…」
「やっと追いついた!!」
呆然と立ち尽くしていると、背後から声が聞こえた。振り返ると息を切らした少女が立っている。
「…お主は…確かさっきの南蛮人…」
「ハァハァ…あんた…あんたねぇ…こっちは待てって何度も言ったのに!」
桃色の髪を揺らし、少女はこっちへ歩いてくる。この女子なら、この世界について知っているのでは…
「教えてくれ!ここは甲斐では…いや、日本ではないのだろう!?ここは何処なのだ!」
「カイ?ニホン?聞いた事ないわね。ここはハルケギニアのトリステインよ」
とりすていん?やはり自分は南蛮に来てしまったのだろうか。
「そして!あんたは私に召喚された使い魔なの!」
状況があまり理解出来ていない男に少女は指を指して言い放った。
「召喚…?お主が俺をこの世界に連れてきたのか?」
「そうよ、だからあんたは私の命令を…」
「ならばっ!ならば俺を元の世界へ戻してくれ!俺はお館様の策を成さねばならぬのだ!」
「痛!痛いちょっと……離しなさい!!」
男は知らぬ内に少女の肩を掴んでいるのに気づき、慌てて手を離す
「す、すまぬ…女子にこのような手荒な真似をしてしまうとは…だ、だがお主なら知っているのであろう?戻る方法を…」
「無理」
少女の言葉に、男は耳を疑う。
「な、何…だと?」
「何度も言わせない!無理って言ったのよ。一度召喚したらもうやり直す事は出来ないの!」
帰れない…
武田に仕え、必ず天下をお館様にと心に決めたのに…こんな世界で一生を?
『お館様!この幸村、必ずやお館様と共に天下を!』
『うむ…!幸村よ、儂に付いて来れるか!?』
『ははっ!この幸村!どこまでも付き従う所存!』
「う…う…うおおおおぉぉぉぉぉぉあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
男は突然持っていた2本の槍を叩きつけ、暴れだした。
「ちょっと、どうしたのよ!?」
「ぬあぁ!うおあぁ!このような場所で本懐を遂げずに果てるなどっ!!くそおぉー!!」
一通り暴れると、次に泣き出してしまった。
「うぅ…畜生…畜生ぅ…」
「あんた、泣きたいのはこっちなのよ…」
見た所この男は貴族に見えない。人間の…しかも平民を使い魔にするなんて…
帰ればキュルケ達のいい笑い者だろう。
だが一度呼び出したら使い魔が死ぬ事でもない限り、再び召喚の儀式を行う事は出来ない。
覚悟を決めてこの平民を使い魔にするしかないのだ。
「…我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
五つの力を司るペンタゴン この者に祝福を与え、我の使い魔と成せ」
俯いていた男の顔が不意に持ち上げられる。
「な、何だ?何をする気だお主…」
「仕方ないから契約するのよ。い、いい?平民が貴族にこんな事されるなんて普通はないんだから!」
男の顔に少女の唇が近づいてくる。
待て、これはまさか…いや間違いない!この女子…!
「ままま待たれよ!お、俺はそのような破廉恥な事は…むぅ!?」
少女と…唇が重なった。
『あんた、恋はしているかい?』
『こ、恋だと!?破廉恥極まりないっ!!』
『何だまだなのかい?恋はいいよ!人を熱く…強くしてくれる』
以前出会った風来坊の言葉が思い出される。
(俺が接吻を…女子と接吻…せせせせせせっぷせっぷぷぷぷんせっぷ)
男の顔がどんどん赤くなっていく。そして
「ブフウウウウウゥゥゥゥゥーーッッ!!!!!」
「きゃあぁぁっ!?」
まるで噴水のごとく、男は鼻血を噴き出し、そして倒れた。
「貴族に何て事するのあんた!起きなさい!起きなさいってば!」
倒れた男を引っ叩いて起こそうとするが、男は鼻血を流したまま意識を取り戻さない。
(冗談じゃないわよ…こんなの担いで帰れるわけないじゃない!)
少女が途方にくれていると、地鳴りのような音が聞こえてくる。
振り返ると同時に、音の発信源が地響きを立てて着地した。
「ひっ…何よコレ…ゴーレム…?」
いや、よく見ると体は土ではなく、鎧を着込んでいる。
そして顔を殆ど覆った兜からは鋭い目がこっちを睨んでいた、少女は蛇に睨まれた蛙のように動けなくなってしまう。
「…見つけた」
と、巨人の肩に見慣れた2人がいた。
「やっと見つけたわよルイズ!あなた達こんな所まで来てたの」
キュルケとタバサであった。夜になっても戻らない2人を探しに来たのである。
「…ちょ、ちょっとルイズ!あなた何それ!!」
ルイズの姿を見たキュルケは驚く、彼女は男が鼻血を噴いて倒れた際、その血を浴びていたのだ。
そのせいで彼女は血まみれ、そして男は鼻血で出来た血の海に倒れている…
「あ、あんたまさか…いくら使い魔が気にいらないからって殺し…」
「違うわよ!!いきなり鼻血噴いて倒れたの!」
「そ、そうだったの。じゃあ無事だって事ね…」
「……何よ、馬鹿にしないの?平民が使い魔なんて…お笑いでしょ?」
「へ?あ、えーと……い、いいんじゃない?珍しくて、あ、あはは…ははは…」
「キュルケ、変よ…」
「帰る、乗って」
倒れた男を巨人の背中に乗せ、ルイズもタバサ達と一緒に乗る。
「…飛んで…」
タバサが言うと、巨人が背負っている箱から噴射口が現れた。
そして青い火炎が噴射され、空を飛んで学園へと戻っていく。
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