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「秋山異世界物語 天気晴朗ナレドモ風強シ(仮)-04」(2009/10/02 (金) 13:34:22) の最新版変更点
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#navi(秋山異世界物語 天気晴朗ナレドモ風強シ(仮))
人は熱中すると時間が急激に短くなる。
そんな訳で、特に何も無く、ラ・ロシェールに着いた秋山一行。
「実物を初めて見たがほんに飛ぶんじゃのー、がいじゃのー!」
「はい、すごいですね!」
「本当、田舎者の集団だな。さ、そろそろ出発の時間だ、準備しよう!」
「うむ、はやくのりたいな。」
そのはしゃぎ様といえば初めて三輪車を与えられた子のようなもの。
最初は二輪に補助輪がついてても、勝ち誇った感じになれるが、徐々にはずしたくなる、だが恐怖でよく自転車が倒れて、その痛みからまた恐怖が起こるデススパイラルは、慣れで克服するあたり不思議だ。
余談である。
アルビオンに行く為に今回乗る物は、硫黄をたんまり積んだ商船である。
どうやら、アルビオンは上下しながら浮いてるようで、今の時間が一番風石の消費を抑える事が出来る位に下がっているらしい。
それに乗せてもらう事になった、費用も安く済む。
船長によれば、日も眠る少し前には着くようだ。
出航開始。
「おー、おー!ほんとに飛んどる、ほんとにとんどるぞー!!ガイじゃなー!!」
「ほんとう!初めて乗るけど、すごいです!」
「えらいはしゃぎようだね、ほんとに。」
とにかく船の中を隅々まで、見ていった、風石という物質が浮かしている、というのは説明されてもちんぷんかんぷんだったが、実物を見てもちんぷんかんぷんだったのは
言うまでも無く。
要するに風石がフネを浮かせてるだけである。
「これは少し違うのー。」何が違うとは科学で飛ばしてるのではない、魔力だ。
片手で数えられる程度の砲があった、まぁ近代より少し前の大砲だ、隣に砲弾があって、足りなくなったら弾薬庫から運んでくる、そして弾を中に入れて、火の付いた棒を点火口に入れる。
そういう設計であった。
「ふるいのー。」確かに古い、確かに古いが、日本軍の砲だって秋山がいた世界からすれば遅れているのである。
これを古いといってもしょうがない、だから全力でコルベールに砲の研究にあたらせたのである。
正直、装填の所で時間を早める事が出来るなんて思っていない。
復座機とか駐退機のバネ式を作ってくれさえすれば、一々照準を変えなくて良いという点が生まれる、それにより発射から次の発射までの時間を短縮できればよいと考えていた。
後はコルベールの知識量、運、努力頼りである。
この世界の大砲は、まず飛距離が無い。
だから、自分の持ってる知識をコルベールに渡し、それを元にコルベールが自分で考えるしか無いのである。
砲を適当に見ながら、考え事をしていると、シエスタが慌てた様子でこちらに来た。
「――大変です!海賊が!!」
と、言い、シエスタはすぐさまアキヤマの手を繋ぎながら甲板に出た。
「ほー、あれが西洋式海賊かー、ガイなフネじゃのー、でかいのー。」
「の、ののんきな事をよく言えるね、さすが僕を倒した奴だ、み、見直したぞ。」
「面舵一杯!!」
ギーシュの足は短機関銃の反動のように、震えていた。
なら弾は……。
余談である。
「あしの海賊の血もさわぐのー、じゃが、どんぱちしても勝てんのー。」
「ほ、本当のんきですね、流石です。」
「駄目だ!逃げ切れねぇ!!」
シエスタはがっちりアキヤマの腕に組んでいた。
残念ながらアキヤマは身長を見れば頼れる男とは見れない。
だから彼女とかが「きゃっ、こわーい。」「はっは、そんな近づくなよ。」みたいな図は出来ないのである。
余談である。
「ほ、砲をぶっ放してきました!!」
「フネ止めろ!!」
「ほー、砲の性能はやはり、予測通り煙が酷いな、まぁ空の上じゃからすぐ消えるじゃろう。」
秋山は冷静に分析していく、とにかくこの世界での情報を貪欲なまでに集めている。
「というか本当に空に島がういとるのー。」
海賊いや、空賊から目をそらして、船内にいたため見れなかったアルビオンをはじめて目に入れた。
「さっきから見えていたよ……それよりどうするんだい?」
「どうもできんじゃろうな、捕まるしかないぞな。」
「く、空賊の連中どもが!糞っ!!」
フネが商船にくっついて、空賊のフネから空賊が飛び移ってきた。
無精ひげを生やして片目眼帯、たくましい胸筋を持った男も乗り移ってきた。
どうやら、船長のようだ。
「おー、おー拿捕かー、野蛮じゃのー。」
「おい、船長はどこだ。」
「船長は、俺だが。」
船長も威厳を保つのに精一杯だが、全身が硬直と緊張で震えが止まっていない。
「にしてもでかいのー、たかが賊がこんなフネを綺麗にするもんかの、どこが拠点なんじゃろ、とてもでかいんじゃろな。」
「積荷は何だ。」
「硫黄だが……。」
「よし、買った!てめえらの命を売ってな!」
船長が悔しさに顔を歪ませた。
「考えられる事は軍から色々やってうばったんじゃろーな。」
「おいてめぇ、ちょっと黙ってろ!」
「……。」
空賊たちがせっせと商船を占拠して操縦桿を握る、それが終わると、今度はアキヤマ達も収容した。
収容された場所は一般的な監獄をほとんど木製にしたような物だ。
ギーシュはフードとか平民らしい服を着ていた為、貴族という事はばれなかったようだ。
「大変な事になったの。」
「最後まで呑気ですね、アキヤマさん。」
「あわてちゃーても仕方ないじゃろ。短気は損気じゃ。」
本当は地団駄でも踏みたいものだが、短気を直そうとしている為、そんな事はしないであくまで平常を装った。
すると、空賊の一人が飯を持って現れた。
「飯だ。」
それだけ行ってスープを渡して出て行った、秋山は妙に背筋が伸びている事を不思議に思った。
次にやせ細った空賊の一人が来た。
「お前等は船員でも何でもないそうだが、何をしにアルビオンに行こうとしたんだ?」
「姫殿下からアルビオン皇太子への密書を授かったのだ、いち早く僕達を解放する事を要求する!」
あくまで正直に伝える。
「は?お前等みてぇな奴らが?はっはっは、寝言は寝て言え。」
ギーシュは体に密着させていた薔薇の杖を引き抜くと。
「いいから僕等をアルビオンの港に降ろすんだ、そう船長に言え!!」
「き、貴族!!なんだてめぇ平民じゃなかったのか!」
「もう一度言わせる気か!船長を、呼べ!」
「わ、分かった。落ち着け、今から呼んで来るから……。」
「急げ!」
すぐさま看守とやせ細った男はこの部屋から去っていった。
厳重な身体検査などしていない、適当なとこ触るだけで終わった。
女に対しては触れてもいない。
「ギーシュ、お前はやっぱ何かする男じゃな。」
「はい、今のはかっこよかったです!」
「ふ、ふ、ふいー、いやもう死ぬかとおもったよ……。」
緊張が解けたのか、足から力を失って床に手を付ける。
「にしても、どうしようか。」
「死ぬんでしょうか……。」
「ま、それはないじゃろ。」
「なんでそんな事が分かるのさ。」
「じき、分かる――。」
言い終わると同時に、この部屋に空賊の頭がドアを開けた。
「貴族のぼっちゃんはお前か、良い度胸をしてる。」
「……。」
「で、トリステインのぼっちゃん達が何のようだね?あの廃れた王族に。」
「密書を預かっている、アルビオンの港に連れて行ってくれればいいだけだ。」
床に座りながら、ばっちり杖を船長に向ける。
「威勢のいい若者だ、だが、私も杖は持っているのでね。」
頭が杖を引き抜く、その杖の形はいかにも気品溢れる上品な物、そこらへんの貴族が触れるような物じゃなかった。
そして次に、眼帯を外し、不精ひげの付け髭を取った。
「君みたいな若者が我が国にも多くいればいいがね、さて、私がウェールズ、アルビオン皇太子だ。」
「なっ……!し、知りもせず、さきほどのご無礼をお許しください!」
「よい、よい。さて、まぁこんな狭い部屋に座らせて悪かったね、こっちへ。」
と、言われて船長室に案内された。
「まぁ、ここならまともに話せるんじゃないかな、密書とやらを運ぶ任務なんだろう?見せてくれるかな?」
「は!こ、これです!」
「うむ、ありがとう。」
その手紙を早速広げて、じっくりと読んでいった。
「はは、馬鹿だなぁ、そんな手紙は死ぬ前に燃やすよ……、でも。アンリエッタらしいな。」
ギーシュはずっと直立不動のまま。
秋山はあぐら、シエスタと適当な会話をしていた。
「ふむ、なるほど。まだ、私事と政が混合してる……。ギーシュ君?だったかな、ご苦労様。」
「はい!」
「一旦アルビオンの国まで行く、そしてから君達は姫の手紙を持ってアルビオンが陥落する少し前にこのイーグル号に乗って、アルビオンを脱出させる。安心したまえ。」
「アルビオンは、いつまでもちますか……。」
「城攻めが始まれば、その日に陥落するだろうね。」
自分の命に関する事なのに、その表情はネガティブではなかった。
ようするに死ぬ覚悟が出来ている男である。
じぐざぐと海岸線、空岸線?どちらでもよいが、とにかくそこをジグザグと航行していき、大陸の下にもぐりこみ、王党派空海軍しかしらない秘密の抜け道。
から、この世界で他にだれにもできないような操作をし、ニューカッスル城へ着いた。
イーグル号がまず巨大な鍾乳洞へ入っていき、それに商船が続いた。
イーグル号に一斉にもやいが放たれ、それを船員がフネにくくりつけていく。
その次に木製のタラップがフネの出入り口へつけられる。
そこからギーシュ達を促して、フネから地上へ足をつけた。
「諸君!すごいぞ、硫黄が手に入った!!」
鍾乳洞にいる兵員が歓声を上げる。
まずウェールズの傍に、老メイジがやってくる。
「硫黄とは火の秘薬ではござらんか、しかもこんなにたんまりと……今日ほど嬉しき日は無いですぞ殿下。」
「あぁ、明日の敗北には最高の調味料だと思う。」
「はい……その通りで。それと反乱軍の輩は明日正午から城攻めをはじめるとのうまを通達してきました、間に合ってよかったですな!」
「それは我が生涯最高の運だな!戦場に遅れるなど、武人にあらず。」
「その通りで、今まさに晩餐が始まろうとしております、急いでくだされ。」
「うむ、ギーシュ君とアキヤマとシエスタさんだったかな?美味しいご馳走が食べられる、ついてくるといい。」
「おや、この方達は?」
「うむ、廃れた王国の最後の客人、トリステインからの使者だ。」
パリーという名の老メイジは泣きながら、一人一人に手を握っていった。
「応援してくれる人がいるとは、これこそ最後の舞台にふさわしい……、ささっ、こちらへいそいでください!」
パリーを先頭にウェールズと一緒に城の中へ、流石に腐っても城その作りはとても豪華に、そして広かった。
「さて、ここです。――閣下、ウェールズ皇太子がお帰りになりました!!」
大きな扉を開けると、そこは城のホールだった、簡易な王座によぼよぼな、しかしどこか威風のある爺さんが座っていた。
テーブルには豪勢な料理があって、皆がそれを談笑しながら食べていた。
そこにウェールズがこのホールに現れた時、この部屋全体をつつみこむような拍手が起こった。
ここでも人気なようだ。
「おぉ、ウェールズ、ご苦労じゃった。」
ウェールズは一回軽く礼をすると、ジェームズ一世に耳打ちをした。
それをきいたジェームズ一世は席を立とうとした、が、既に足も老いて、立つ事すらも容易ではなかった。
それをウェールズがささえた。
「さて、この愚鈍な王に反旗を見せた反乱軍が、明日、ようやく我が城へ攻め入るという事、諸君は私によく従って勇ましく戦った。
そんな君達の死ぬ姿を私は見たくない、故に暇を与える、明日イーグル号が女子供を乗せてこのアルビオンから旅立つ、皆はこれにのり脱出するとよい。」
誰も返事はしない、ある貴族が。
「耄碌には早いですな、陛下!」
「私は先の大砲の音で耳がやられておりましてな!全軍前へ、全軍前へ。それしか耳に入らないようになっております!」
その言葉にその場にいる全員が頷いた。
「馬鹿者どもめ……。」と一ついうと咳を一つして、さらに言葉を続けた。
「よかろう、よかろう!なら今夜は飲め歌え食え!楽しもうではないか!今日はよい日だ!なんと、トリステインからのお客が来ておる、まさに奇跡、この奇跡に乗じようではないか!!」
城全体を包むような、歓声がホールから発せられた。
そして、宴が続けられた。
ギーシュは先程、いつもの服に着替えた。
身なりともに貴族になった、為によく王党派貴族が飯を勧めたり話しかけたりする。
それをテンションにあわせ、自分も酔っていった。
そんな中アキヤマの元にウェールズが来た。
「君は、何者なんだい?」
「あしか、あしは日本海軍の秋山真之じゃ、今はルイズという貴族の使い魔をやっとる。」
「人が使い魔になるのか、不思議な国だね、トリステインは。」
「いや、トリステインだけでもあしだけらしい。」
「はっはっは――!うむ、うむ。」
「しかも、この人は貴族を決闘でやっつけちゃった人なんですよ!」
長らく喋っていないシエスタがようやく口を開いた。
「おや、そうなのかい?とても強いんだね。」
「いや、あれはただ運が強かっただけじゃ。」
「ふむ、ふむ。そういえば軍人なんだってね?ここに来たのも視察かい?」
「それもある、もし、たら、れば。という事もある、だから偵察に出た、もう一つは、あしはこの世界の事をあんまり知らんから、様々な事を勉強する為という事もある。」
「勉強熱心はすばらしいと思う。あんまり知らないという事はこの大陸からはなれた所からきたのかい?」
「まぁ、そうじゃ。」
「にしては、いい顔をしてるね、君みたいな軍人がいれば王党派も後一ヶ月は保ってたかな……。」
ホールのドアが突然開けられた、王党派の貴族だ、陛下の前に行くと方膝を床にした。
「何じゃ。」
「報告にございます。夜間に乗じて敵兵士が城壁前を通過していた為、これを捕らえました、すると、一枚の手紙を持っていました。」
「みせい。」
と王党派貴族から差し出された一枚の紙を見ていくと。
「ふむむ。」
と難しい顔をした。
ウェールズが父王の近くへ行った。
「どうしたのです父上。」
「これを見てみい。」
アンリエッタの手紙をみていた時とは違う表情で、その紙を読んでいった。
「王党派制圧後、トリステイン制圧の為の弾薬、補給船、食料の確保を忘れぬよう、これを念頭に置いて城攻めを開始せよ。……。」
「あいつらはわしらの国を制圧した後、トリステインにまで手を付けようという事らしい、まったく貪欲な奴等じゃ。」
「アキヤマ君!」
「なんじゃ。」
「君のいる国にすぐさま危機が迫っている。」
「じゃろうな、だからあしがここに来たぞな。」
「えらく落ち着いているな、頼もしい、一つ手紙を書いてくる、それを無事、アンリエッタの元へ送ってほしい。」
「まかされた。」
せっせかせっせかと、ウェールズはホールを出て行く、されど宴は続いて言った。
「陛下殿。」
「うむ?君は、トリステインからのお客さんアキヤマ君じゃな、なんの用かな。」
普通はたかが平民や一般市民程度が話せる人ではないが、もはやこの城の中にそんなしきたりは無い、王はどんな人にも微笑みながら接していく。
「ご武運を祈ります。」
「うむ、うむ!ありがたい、明日は精一杯戦ってみせようぞ!」
少し時間が経つと、一人の貴族が秋山に駆け寄ってきた。
「ウェールズ皇太子が呼んでおります、ついてきてください。」
「うむ。」
ウェールズ皇太子の部屋はとても質素な作りになっていた。
本棚があってベッドがあってランプに机、椅子がある、それ以外は何も無い。
その椅子に座りながら秋山を待っていた。
「この手紙、どうか渡しておいてくれ。」
「まかされた、一つ聞きたい事があるんじゃが。」
「なんだね?分かる範囲でなら、答えるよ。」
「何故、反乱が?」
この事を聞くとウェールズが、空に指を上げて。
「今上にある、レキシントンっていう我が国の全てを導入した船が、暴動を起こしてからがこの事の始まりだ。」
「そのフネはどんなものぞな?」
「設計図があったな、うむ、これだ。」
「えらく砲をつんどるのー。」
「うむ、すごいぞ砲台数は百門を超える、まさに我が国の全てだ。」
「この設計図、くれんか?」
「あぁ、良いだろう、ゆっくり研究してくれ、だがこのフネは厄介だ、隔壁が大量にあるせいで、生半可な砲じゃ、風石にも弾薬庫にも到達しないんだ。」
「ほら。」とフネの中心を指差した。
「まずこのフネはね、200m近づいて、砲をぶっぱなしても、風石を貫通する事が出来ないくらいに隔壁を多くしてる。」
確かに、見れば分厚い木製の隔壁が、10cm程度の感覚で、風石の周りを囲っているように描いてある。
「ふむ、ふむ。下からは弱いようじゃな。」
「あぁ、下からなんて砲撃できるわけが無い、重力によって砲の距離が狭まるしね、威力もよわまる、貫通なんて出来るわけが無い。」
「ほう、ほう……。」
「で、近づけば片方50近くの門が一気にずどん、やれやれ。」
秋山の目論見が当たった、船の下から攻撃という事を誰も実行しない、技術力が無いからだ。
「そうだな、私も暇だ、少し遊びに付き合わないか?」
と、机の下からなにやら大きなマップを出して、床に広げた。
「昔は、これでよくパリーと机上の戦争をやったものだよ。」
床に置かれたものは、様々なハルケギニアの地図、そこには色々な施設とか、町色々なものが正確に描きだされていた。
そして隣にあるものはちっさなフネの模型、弓を持った兵士、剣や槍を持った兵士だ。
「やり方はわかるかね?」
秋山は首を横に振る、なんとなく予想はついているが。
「そうだね、これはアルビオン空海軍の司令官が、実際の戦闘で作戦を立てるときに使う物だ。」
秋山の世界では、この方式はアメリカ海軍が始めて採用したものだ。
もちろん秋山も知らない、これを知るのは秋山が10年たってからだ。
「この兵士は何人、この兵士は何人。勝利条件は~~、といった具合に色々シチュエーションを変えるんだ。」
「おもしろそうじゃな。」
「では、じゃんけんだ。」
秋山が守る側になった。
戦力は歩兵ユニット12内、歩兵6弓6、一ユニット600人本隊に800人、野砲は6門フネは登場しない、野戦である。
ウェールズの方は歩兵ユニット18内、歩兵16弓2、一ユニット900人本隊に1600人
始まった、秋山は背後にある砦から弓兵を速攻で出して、攻撃、引く。攻撃、引く。
を繰り返し、その間に歩兵に砦を中心に丸いUの形にユニットを配置していく。
「なるほど、確かに囲まれて戦うことはできない。」
と、歩兵を退かせたところで敗因が決まった。
ウェールズはこのひかせた時に、長方形のまま引かせてしまった。
16番目になった時に秋山が全部隊を円形に配置させようとする。
18番目、円形が出来た、この時ウェールズもこれを迎え撃つ陣形を構築した。
鋒矢、↑左のような形で配置していく陣だ。
19番目最前線がぶつかる。
20番目円形が右回転をして、最前線の部隊が変わった。
21番目さらに一回右回転をしてウェールズ側の最前線の兵数の被害が広くなったところで。
「まいった、降参だ。」
といって第一試合は終わった。車掛の陣形を用いた秋山の勝利だった。
「なるほど、考えた事もない作戦だった。では次は艦隊戦をやろう。」
「うむ。」
ジグザグに配置していったウェールズに対して、秋山は一直線に艦を並べた。
戦いはすぐ終わった、相手は砲全体を一隻でなく、全体に向けようとした、が秋山は全砲を一隻に向けた。
これにより各個撃破されてしまった為28番目には全艦大破、または消失となった。
その後も4戦した、がそのつど秋山が勝利した
「君は、君は天才だな!君がいれば王党派は革命派を倒せたかもしれない。あぁ、なんという不運だ!さて、最後のゲームだ。これでしまいにしよう。」
「はっはっは、いや、これはただ前からある知識の流用じゃな、まだまだ。」
最後に用意された舞台は陸だった、城があって、守り側は300、攻め側は5万、攻め側にはフネまである。
守り側は秋山になった。
「降参じゃ!はっはっはっ!」
「流石の君も無理かい?はっはっは!」
「いや、はや、これは無理じゃのー流石に。」
「そうだね、でもトリステインにはまだ戦力がある、こうはならないよう、君にトリステインを任せたい。」
「じゃが、あしはトリステイン軍人じゃないただの軍人じゃが。」
「うむ、その手紙に追記しておこう『このアキヤマ君は稀代の天才だ、この者に軍事を任せておけばトリステインは絶対的な平和を手にするだろう。』とでも、付け加えておこう。」
「そんな事で、できるのかの。」
「私の遺言だ、愛しいアンリエッタは必ずこれを守るよ、後はそうだな、私の配下の空海軍を君に任せたい。と、言っても数も少ないがね。」
「そんな、あしはそんな身分じゃ――。」
「友人の最初で最後の頼み事だ、頼むよ?」
「……あい分かった、あしが最強の空海軍にしちゃる、任せちゃらい。」
ウェールズはこくりと頷くと、すぐ机の上で一枚の手紙を書き、もう一枚の既に書いてある手紙に追記していった。
「ほら、これを。」
「うむ。」
「さ、宴ももう既に終わってるだろう。今日は、寝て。明日の朝、イーグル号に向かいたまえ。」
今度は秋山が頷き、部屋から出て行った、ドアを閉める前に一度敬礼をする。
それに、ウェールズも合わせる。
少ない時間だったが、ウェールズと秋山の中にはその少ない時間以上の友情が出来ていた。
日が変わった。
アルビオン王国の滅亡が始まった既に攻城が始まって30分は経つ、外の貴族達が何もかもを使って応戦している、そろそろ崩れるだろう。
「はっはっは――。」
「どうしました皇太子様。」
「いや、昨日の事を思い出してな、アキヤマとあれをやっていたのだ。」
「あぁ、あれですか、私との戦績は確かウェールズ様が23勝6敗5引でしたな、いやはや、本当に強かった、であの軍人とはどのように?」
「なんとな、私が1勝、彼は6勝だ、あれは100年に一度の天才だった。」
「左様で!?皇太子様の負け数のほうが多いなんて……。」
「そうさ、さて……と、パリー、馬を連れてきてくれるかな?もう限界だろう、それと同時に相手の本隊に突撃を仕掛けて、勇ましく死のう。」
「そうですな!王党派の最後、立派に飾りましょうぞ!!」
早速用意された馬に乗り、最後の号をかける。
「諸君、最後の突撃だ!馬をひけ、敵のど真ん中を突っ切れ、しからば勇ましく死のう!」
最後の男達の歓声があがる、砲から手を離し、城壁から降りる、馬の数は足りた、それまでに死んだ人数は40人位。
ただし相手に与えた打撃はそれの100倍はあるだろう。
「アルビオン万歳!!」
馬の駆ける音が無数に轟いた、浮いた大地を踏んで前へ、ただ、敵の大群の中へ。
風を操るウェールズは器用にエアシールド展開を使う最中に詠唱、氷の矢を出し、敵を一度に倒していく。
この騎馬隊は、殆どがメイジの為、たかが傭兵の群衆如き、どうという事はない。
だが、しだいに精神力が切れていくと、一人ずつ槍で貫かれていった。
パリーとウェールズ、その他の数人も、この騎馬隊を崩す事なくただ前進した。
栄光の為だけに走った。
突如、ウェールズの右肩に、エア・ニードルが突き刺さった、見てみれば相手の持ってる魔法の杖がフェンシングで使うそれであった、何かの部隊だろう。
「ぐぅっ……。」
「大丈夫ですかぁっ!」
「この程度……!!」
風に操られるマントを片手で器用に取ると、それを肩に巻いた。
「流石、流石です。皇太子!」
「ウェールズで良い、既に城は無いのだから。」
そのフェンシングのような杖を持った男を無視してそのまま突き進んだ。
死ぬ為に。
「――逃げるか、ウェールズ!!」
馬を反転させて、ウェールズを追う。
詠唱を素早く唱えると、エア・カッターを繰り出した。
「ぐ……くっ…。」
「ウェールズ様!!」
またも右肩に命中、すでに右肩は胴体から切り離されてしまった。
「よくよけるっ……!!」
「このっ、反乱分子風情がぁっ!」
パリーが急遽馬をワルドの方へ向け魔法を唱えた。
「ふんっ、そんなもの!」
軽々しくよけると、それは間も無く、エア・ニードルを放ち、パリーの胴体を貫いた。
「ぐっ、く……陛下、お先に。」
パリーが最後に見た物は、片手を失い、ながらも優雅に奮戦していく皇太子の姿であった。
しかし、この詠唱のすばやい男に一矢報う事が出来た事を、パリーは永遠に知る事は無かった。
そのままその男に向けた馬が、停止もせずそのまま突撃したので、その男の馬はこけてしまい、上の男も落ちてしまった。
「パリー……良い死に様だった、パリーに続け!!」
既に着いてくる貴族は、たったの2人。
だが、既に精神力も切れかけていた。
また一人、走っている時に槍が刺さってしまい絶命。
2人。
「私が最後になりそうだな。」
「王は最後にしぬものですからの。」
「はっはっは、たしかに……な……。」
「皇太子様、皇太子様!?」
どうやら死んではいない、肩から出てる血の量からの気絶だろう。
「こんな死に方を皇太子様は望まないだろう……。」
結構走った、故に兵の塊の端が見えた。
馬を併走させ、ウェールズに紐を通して、レビテーションを掛けた、それを後は自分の馬の後ろに乗せるだけだ。
そして全力で走らすと、すぐに兵の塊から脱出した。
後は市街に入るだけだ。
大分兵を遠ざけると、最後の王党派メイジが馬を止めて、地面に降りた。
ウェールズの腕に止血と増血させる魔法をかけた、既に精神力はない。
「なるほど、ここで死ぬか。綺麗な場所じゃないか。」
と、言って馬の尻を思いっきり叩いた。
馬は疲れながらも、驚いて、走っていった。
上には、ウェールズが乗っている。
「ご無事で。」
既に精神力が切れた貴族は、メイジとはいえない、ただの平民と同じである。
そんな平民がメイジに対抗する為に作った剣を腰から引き抜くと、後から追いかけてきた兵士達を待った。
ぞろぞろと追いかけてきた。
「これぞ、我が最後。」
そういうとただ一人剣を振り上げ、この傭兵達に振り下ろした。
剣が、折れた。
アルビオン大陸より上の空から、この様子を眺め、敬礼する指揮官、ボーウッドがいた。
そしてアルビオン大陸より下の空で、甲板に出てきた異世界の軍人もアルビオン大陸ニューカッスル城に向けて敬礼をしていた。
#navi(秋山異世界物語 天気晴朗ナレドモ風強シ(仮))
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「……ごほっ」
突然だが、秋山(真之)が倒れていた。
理由は、深夜コルベールと語らい合いが勢いを増し。
酒にまで手を付ける事になり、泥酔してる所をルイズがコルベールの研究所にまで来て、発見。
素敵な衣装を着けている、とても着飾ったのだろう。
素敵な衣装を着てる少女は、とても顔が赤い、酔っているのか、否。
怒っていた、いや、この表現だけでは生温い。
とにかくすぐさま秋山の襟を掴むと、少女とは思えない腕力を発揮、頭から叩き付けた。
酔ってる事もあり、痛みは少なかったが、気絶した。
むしろ気絶したから痛みが無いのだろう。
その秋山が頭から叩きつけられた時の音により、コルベールまで。
「おや、ミス・ヴァリエールじゃないか、何をしてるのだね?」
「それは――」
コルベールは、酔いが醒めた。
「……すいませんでした」
「説明の手間をはぶかさせていただき、ありがとうございます」
血管を浮かべながら笑顔を作った。
「とにかく、こいつは回収します」
「わ、分かった、借りてすみませんでした」
襟を掴んでどかどかと、一々足音を鳴らして出て行った。
「……おぉ、こうしてる場合じゃない……アキヤマ君のおかげで、こいつらの手がかりを見つけたぞ……とはいえ、金が無いか、どうしたものか」
酔いが醒めたコルベールは、紙上に書かれている、一つの船に、手を加えていった。
夜が明けた。
昨日何事も無かったかのように、朝起きた秋山は後頭部に少し痛みを感じていた。
原因を脳内で探ってみた、コルベールって人に捕まって、話してみれば、良い人で、キーパーソンだと思っていたら。
「……思いだせん」
とにかく主人を起こさないと、彼の仕事はこれから始まる。
ゆさゆさと体を揺さぶり、起こす。
体を起こして、秋山の方を見やると、顔面パンチを浴びせた。
「何をするんじゃ!」
「昨日の貴方に聞きなさい」
「知ら――」
秋山の顎にパンチ。
こいつは私の顔に泥を塗るような大罪を犯したのだ、そう日が立って許せる物ではない。という事。
とにかく秋山は気絶。
ルイズはその秋山をそのままにして、授業を受ける仕度をしていった。
が、意外と浅かったのか、ルイズが出てってすぐ起き上がる事が出来た。
「……思い出した、じゃが。なんであそこまでおこるんじゃ?」
と腹で考えてはみたが、逆におなかが減ったので、とにかくふらつく事にした。
中庭とかで粟とか見つける気で、ルイズの部屋から出て行った。
が、粟なんかよりもっといい食物が、この後現れるのである。
「ん、おぬしは……」
「あっ――」
「あぁ、メイドの――」
「シエスタです!アキヤマさん!どうしてここにいるんですか!」
「ん、あぁ腹が減ってな」
「なら、こっちにいらっしゃってください!!」
何時の日かフレイムに裾を引っ張られていった時を思い出した。
「おぉ、シエスタ、どうした息巻いて……って貴方は、まさか!!」
「はい!マルトーさん、彼がアキヤマですよ!!」
「貴族に勝ったって言う、アキヤマか!?」
「はい、おなかが空いたというので、つれてきました!」
「でかした、おい手前ら、アキヤマさんが来てくれたぞ!すぐさま絶品料理を作らねえか!」
その太った親父から発せられた声がキッチンをつつむと、周りのコックがそれに応答する。
全員がすぐさま、仕度に入り、調理に入った。
シエスタに誘導されて、テーブルのある椅子にすわった。
「おぉ、おぉ、なんぞな」
「いいから座ってください!」
「あし何かしたか?」
「そりゃ、すげぇ事したさ!貴族に勝ったんだぜ?魔法使う奴に真正面から、武器も無くてよ!」
「そんなに凄い事なのか?」
「おいおいおいおい、聞いたか野郎共、こいつが本当の武人だぜ、武人は誇らない!」
「武人は誇らない!」コック達全員が復唱。
「本当に、あの時は逃げてすいません、でもアキヤマさんのおかげで希望が生まれました!人って何でもできるんですね!」
こう語っていく内に、大変な量の料理が並べられていく。
「待て、待て。こんなに食べ切れん」
「でもよ、俺等はこの日を待ってたんだ、精一杯作らせてくれよ」
「毎日通うから、その日その日の分に分けて作ってくれんか?」
「……アキヤマがそういうならしかたねぇな。シエスタ、最後に奥から取っておきの酒取り出して来い!」
「はい!」そういうとシエスタは奥の酒蔵庫に行き、すぐさま酒を持ってきた。
そして手際良く酒をついでいく。
「いただきます」
「ん、どんどん食ってくれよ!」
「うむ、ほんに旨いのしー!!」
「そうか!そうか!どんどん食ってくれよ!!」
どんどん頬張っていくアキヤマの姿をにこやかに見守るシエスタがいた……。
そんなことがキッチンであった時、ルイズは。
「何で部屋にいないのよあの馬鹿は!!」
何故部屋に戻っているか、突然コルベールがミスターギトーの授業に乱入し、王女がこの学院に来るという報を伝えた為。
授業が中止になった、アキヤマを呼んで、そのパレードを見に行くつもりだったのだが、部屋にいない。
仕方ないので怒りながら、一人でパレードを見に行った。
「さてっと……食った食った、本当に旨かった、ありがとう」
「あぁ、それくらいに良い食いっぷりなら逆に礼を言いたい位だ」
「お、そうだ。そろそろ部屋に戻ってないと、お上に何言われるか知らん、という事で、飯は本当に旨かった、明日も来る」
「おう、またこいな!」
完全なすれ違いである、部屋に戻ってもだれもいなかった。
本当はコルベールと話していたかったが、また。「なんでいないのよ!馬鹿!」とか言われて頭を殴られたら敵わない。
という事で待機を選んだ。
部屋で戦術書を読んでいると、ドアを叩く音がした。
来客か、と。本を閉じてドアを開ける。
すると、フードを被った女性がいた。自分より5cm近くでかい。
自分が小さすぎるだけなのだが。
「あら……、間違えたかしら」
「ルイズに用でないのなら、間違いです」
「あぁ、でしたら合ってます。で、ルイズは?」
「出掛けております」
「……あなたは?」
「お上の使い魔だぞな」
「お上?」
「ルイズのことです」
「あぁ」
このどうでもいい話の展開から、ルイズが来るまでの10分間。
秋山は暇だったので自分がいた場所、自分の国はどういうところかを説明した。
「あなたの国は鉄の船が浮かぶのですか、そして工場という場所で大量の物が作る事が……へぇ――」
ガチャっと、ドアが開いた。ようやくルイズが部屋に戻ってきた。
「アキヤマ!どこに――姫様!?」
「おぉっ!ルイズ!あぁ、もう、遅いじゃないですか」
「すいません!姫様、でもこんなところになんのようで!?」
「あなたに、用があったのです」
「おぉ、姫様からの任務、例えどんな」
まるで劇の芝居を見てるようだったので、ポケットから炒り豆を取って食べていた。
が、炒り豆が無くなった。
「―――」
言葉が出ない、炒り豆が無くなった、この世界での補給を絶たれた師団みたいな、そんな感じだ。
太陽を失った地球、酸素の無い海。炒り豆の無い秋山。
こうなったら全力でこの世界から脱出しなければいけない、だが。
このハルケギニアではまだしなきゃいけない事がある。
それでも炒り豆が無いとつらい、涙が出てくる。
「……というわけなのです」
「アルビオン皇太子に送った恋文のせいで、トリステインとゲルマニアの同盟が反故にされてしまうかもしれない……それは重大事ですわ!」
「ぶはっ」
重大事ですわ!
呆れて物が言えない、いや、笑ってるせいで物が言えない。
「久しぶりに笑った」
「何笑ってるのよ、重大事じゃない!?」
「何処が」
「え?」
ルイズは、こいつは馬鹿かと、心の中で思った。
アキヤマは、こいつらは馬鹿かと、心の中で思った。
「そんな物があればよっぽどの馬鹿でない限り、燃やすじゃろう」
「……」
「それに、そんな恋文一枚で反故?ありえん、ゲルマニアの王様さんも本気で自分の事を愛しとるって勘違いでもしとるんか?相手だって理解くらいしちょるぞな」
「でも……」
「でももかかしもあるかい、その反乱勢とやらが、本気でその恋文でも探してると思ってるのか?恋文探しの軍隊なんてはずかしいじゃろ、死んだほうがマシじゃ」
「早く王宮に攻め入って、トリステインの姫の恋文を探さないと、トリステインとゲルマニアが同盟してしまう、それだけはとめたいなぁ」
上記馬鹿一号
「そ、それでももしもの事があります!」
「お主、いや、姫さんはそんな大事そうにしてる友人を戦地に向かわせる気かな?それに、もし御見さんの国と、ゲルマニアの国の同盟を阻止したいなら、そんな手紙軽々捏造できる」
「……」
ルイズが怒鳴ろうと肩をぴくぴくさせていたので、顔の前に手を出し先に抑える。
「よい、よい。もしもの事で眠れないのなら、あしだけ行く、この世界の事を良く知らんといかんからな」
「そんな、使い魔がいくのに主人がいかないなんて――」
「御見さん、年はまだ15、6だったな」
「……」
「危ないとこに行くには少し若い、足手まといになるやもしれん」
ルイズが下を向く、まだ行く気がある様子だ。
「あの、一人は危ないのでは?案内を付けます」
「貴族ならいらん、このトリステインはどうやら、秩序を取り替えんでずっと進んできたから、どうやら貝殻や藻屑が大量に付いておるようじゃ、となると基盤がそろそろがたつくだろう。
なら、万が一かもしれんが、アルビオンの反乱勢に加担するつもりで、行く奴もおるかもしれん、世の中一寸先は闇じゃ、何が起こるかわからん。どうやら反乱勢は、貴族中心社会を作ろうとしとるみたいじゃが?」
全部コルベールとの会話で分かった事だ。
それならこの姫も分かっている、国王が亡くなり自身が象徴となってる今、忠誠など無く、いばるためだけに国にいる貴族の存在。
なんどか枢機卿に注意されている。
しかし、貴族の中にもいる、忠臣が。
ただ、姫の目には映っていないだけであった。
「でも、一人は……」
「そうよ、あんたこの世界でどうやって外で過ごすのよ」
「この世界?」
「あ……」
少しの時間も惜しい姫に、仕方なく秋山の事情を話した。
「なるほど、別世界とやらが……」
「そうです、さっき会話の中にでてきた鉄の船が水の上で浮くとか、そういうのは全部あしらの世界での事」
「信じがたいですね」
「そうでしょうな、ですがあしみたいな肌の人種はこの世界におりますかな?」
「そういえば、そうですね。気づきませんでした」
そういってくすりと笑う。
どうにもルイズが魔法を使うと、そのつど常識を吹っ飛ばして――いや、無くしてしまうのだ。
それがおかしくて笑った。
「あなたの魔法が本当の魔法ですよ、ルイズ」
「はぁ……?」
「じきに分かります」
「……?」
秋山が持ち前のせっかちを発揮して、手軽な荷物だけを風呂敷に入れてく。
「早く出発した方が良いのでしょう、案内は最近仲良くなったシエスタとかいうのと行きます。という事で呼んできます」
「え?シエスタ?誰よそれ」
聞こえているが、説明も面倒くさい、聞こえないフリをし、ドアを思いっきり開けた。
ガチャッと音がし、扉が開く、はずだったのだが、バンッと言った音が鳴り、ドサッと、次にキューと人の声が聞こえた。
この前決闘を持ち込んで負けた人、確かギーシュだ。
「何しとる」
「あ、いや。通りかかっただけ……」
「ほうか」
何事も無く、通り過ぎて行く。
が、一回だけ、片目でギーシュを覗いた。
ばれている、そりゃそうだ。
あれでばれてない方がおかしいのではないか。
「……すまない、俺も連れて行ってくれないかね!」
「来たければくればいい」
意外な返事だった、故にルイズが納得しない。
「なんでギーシュは良くて、私は駄目なのよ!」
「御見さんは死ぬ覚悟を知らん、その上姫の相談役にもなりうる位置、死なれたら姫が困るじゃろ」
「ぼ、僕は死んでも姫殿下が困らないから……と?」
肩を落とす。
「そんなことは、知らん。ただ、御見さんは何かやりそうな顔じゃ、大きな一仕事をな、だから付いて来て世間を広めても、よかろう」
「そ、そうかい?僕は何かするのかい?」
「知らんぞな、それは御見さんの仕事じゃ」
褒められたらすぐ立ち直る、なんとも単純な性格だ。
「まぁまず姫さんに挨拶してこい、あしは少し、野暮用を済ます」
「……?」
野暮用とは何なのか、気になったが、まずは姫殿下に挨拶だ。
まさかこんな間近で見る事が出来るなんて思わなかったギーシュの血圧は、いつもより高くなっている事は言うまでも無く。
そんなギーシュの様子はさて、置き。
秋山は、コルベールの研究室に行く事にした。
「コルベール殿、あしはこれからアルビオンとかいう場所に行って来る」
「えぇ?そんな突然どうして」
「まぁ、野暮用ですな、そこで、アルビオンの事を聞きたいぞな」
「あぁ、はい。アルビオンはまず島が空に浮いてます」
「聞いてはいたが、それは本当ぞな?」
「浮いてます、確実に」
「分かった、で、現在の政情は?」
「レコン・キスタとかいう反乱軍が本城に追い詰めていて、王国は瀕死寸前とかなんとか」
「うむ、うむ。兵力は?」
「王国が倒れた後、何事も無ければアルビオンには竜騎兵という空飛ぶ龍にまたがる部隊と空海軍、つまりフネに戦力が割れるでしょうな、まぁ、陸は全て傭兵ですな。
だとしても脅威ですぞ、アルビオン艦隊は最強と言っても恥ずかしくない」
「空飛ぶ、船か、どういう形をしてるのか?」
そこらへんに散らばってる本達から一発でその本を引き出してきた事に驚いた。
「えーっと、ここらへんに……ありました、こんな感じです」
「なんじゃ」と、一言言って笑った、戦列艦そのものだった、それが浮いている。
笑うしかない、それと。
この程度の技術力なら、戦術はまだ要らない、いるのは技術力だ。
「分かった、コルベール殿、砲の研究と設計を急ぎしてくれんか」
「は、はぁ……何故ですか?」
「レコン・キスタに対抗する為じゃ、砲弾の形は球体じゃいかん、よく飛ぶようにするには、この形にする必要がある」
といってさらさらと紙に形を書く、現代でも良く見る形の砲弾だ。
「確かに簡単に貫けそうなデザインですね……、なるほど、フネを倒す事に重点を置いたデザインですか」
「それもある、が、この形は飛距離が倍以上になる、これの中に火薬を入れれば、最強じゃ」
「そんなことをすると、発射時に爆発しちゃうのでは?」
「まぁ、聞け。これな、まず砲弾の先に、信管を付けてな、これがつぶれると、中の火薬が反応するようにする、と、敵艦にぶつかれば火災やら色々起こす事が出来る」
そこらへんにあった白紙の紙はどんどん秋山の絵で白を失っていく、一度裏を見てみたら、なんか重要そうな書類だったけどもはや気にしない。
ちなみに秋山は絵心もあった、詩も巧かったことは余談だろう。
「次に砲じゃ、これも重要じゃ、現在の技術レベルでギリギリな位に装填から発射を速く出来るようにしてくれ。そして、できるだけ射角を高くしてくれ、30°から70°まで高くできればよい」
コルベールが少し苦い顔をする。
「……」
「なんじゃ」
「いえ……技術とは、戦争に使われていいのか、私には分からなくて……火薬は、火です……、火は、戦争でしか役に立たないのでしょうか」
「はっはっは――、んなこっちゃないがな。まず、戦争で。俺等の技術で作ったこいはすごいぞーってとこみせんと、王国は目をつけてくれんじゃろ、そのあと、とんとんやればええ」
「……そう、ですな!はっはっは――」
陽気に笑ってみせはしたものの、やはり少し哀しみが残る。
「そうじゃ!火ってのは生活の基本じゃ!戦争だけじゃない、料理にも使う、花火にも使う、陶器を作るのにも使う、火が唯一鉄を溶かす事が出来るじゃないかの、鉄をどんな形にでも出来るんじゃ」
秋山がそういうと、コルベールは苦い顔を解いた。
「そうですな!火は、やはり戦争以外にも役に立ちますな!」
「うむ、とにかく、頼んだ、これはコルベール殿、あなたにしかできない、これを機に、技術がどれくらいすごいか示すんじゃ、」
「しかし、設計は良いけど、作れるのでしょうか、金が無い」
「安心しろ、その事はあしが帰って来てから、上手く運ばせる」
「そんな簡単にできるのかい?」
「うむ、できる」
「頼んだぞな!」最後にそう言って、そそくさ研究所から出て行った。
空飛ぶ船が主力、その上戦列艦。
なら、死角は下、トリステインの空海軍戦力は大きく劣る。
ならどうするべきか、簡単な事だ。
そのままルイズの部屋に戻っていった。
姫様はまだ残っていた。
「姫さん」
「はい?」
「あしは軍人じゃ、じゃから予想だけで語れば、アルビオンとは近く戦が起こると考えておる、注意せい」
「……?」
分かってないようだが、じきに分かる。
シエスタにもとっとと連絡をしてこなければならない。
さっと、部屋を出て食堂まで走った。
「では、私も長くここにいすぎましたので、王宮に戻ります」
「はっ!姫殿下、任務を遂行いたします!」
「はい、頑張ってくださいね」
そういって王女は微笑んだが、その瞬間ギーシュは昇天した。
「シエスター、おるかー」
「なんだ、夕食でも食いに来たのか!こりゃ夜食の時間だぞ!」
「あぁ、軽い物作ってくれんか、後明日の分の弁当がほしい」
「ん?どっかいくのか」
「少し野暮用なんじゃ、頼む」
「うむ、明日の朝、来い。まぁ夜食はちょっと待ってろな!」
すぐ様軽食の用意をしだした、なんとも優しいおっさんだろうか。
それと同時に、シエスタが来た。
「はいはい、なんでしょうか!アキヤマさん!」
「うむ、明日アルビオンに行く、よければ着いて来てほしい」
「なんでぇなんでぇ!デートかい!にしても物騒な所にデートにいくなぁっ!俺は止めねぇ、これほど名誉な事はないからな!」
「私も別にかまいません!空飛ぶ島らしいですが、アキヤマさんがいれば大丈夫です!!」
「おう、言って来い!アキヤマよ、どうかシエスタを頼むよ」
「うむ」
「できた!さぁ、これを食え、そして明日の弁当を食え、すると力がみなぎるぞ!!」
このテンションは薩摩に似た感じがある、なんとも覇気に押されるのだ。
ともかく軽食を食べて、腹を満たした秋山は。
シエスタに「では、明日」と言って、ルイズの部屋へ戻った。
帰ると早々。
「本当に私を連れて行かない気?」
「あぁ、御見さんは、貴族という雰囲気がどんな服着てても一瞬でわかってしまう、それじゃ、駄目なんじゃ、今回する事は目立っちゃいかん」
「そう、必ず無事に帰ってくるんでしょうね」
「分からんなぁ」
と、いいつつ死ぬ気もないし、死ぬとは微塵にも思っていなかった。
とにかく今するべき事は全てしたので、仮眠程度にハンモックに横になった。
ルイズがついてくるなと言われて、素直について来なかったのには理由があった。
破壊の杖を触った時の映像である、ルイズ自身は見た瞬間に内容を殆ど忘れている。
その為、ルイズ自身何故それが自身に対して拒否反応を出しているのかが、理解できない。
とにかくそれが気持ち悪いのである、いや、この気持ち悪さの原因は違う、その映像の内容が、とても、残酷で。
アルビオンに行く事で、いや、とにかく何か自身が行動を起こしたら、今とぎれとぎれの映像が鮮明に映ってしまうかもしれない、それが恐かったのだ。
とにかく、行動を恐れた。
夜も早く明ける。
ルイズの部屋に鳴った一番の目覚ましは、シエスタの声だった。
が、ルイズは寝ている、秋山は既に仕度が出来ていた。
4時、ルイズが起きれる時間ではない。
「おはようございます、早速出発しましょう!」
「あせるな、ギーシュをよんでこなけりゃいかん」
「ギーシュといいますと貴方に倒された貴族ですね?何でですか?」
「あいつは、何か仕事をする、だからあいつに役に立ちそうな事はするんじゃ」
という事で、秋山が一歩部屋から出ようとすれば。
「でも、ここにいますよ?」
「へ?」
部屋から顔を出して見れば、部屋の扉の左側に、ギーシュが座りながら寝ていた。
秋山が兄と白川と寝るときによくやった寝方だ、最初の頃は体の節々が疲れていた。
「おい、おきぃ」
「……んむ、何だね……」
「もう行くぞ、姫さんの任務はよいのか」
「おぉっ!任務遂行の時はきたか!よしいこう!」
元気な奴である。
ギーシュが昨日、姫からの命令で様々な手筈を整えていた、姫殿下の手紙も、馬も。
その為、日も上がっていない朝に馬が3頭用意されていた。
しかし、秋山好古は馬に乗れても、秋山真之は馬に乗れない、手も足も足りないのだ。
「もしかして、馬に乗れないのかい?」
「うむ、この通りの体格じゃ、欧州の馬は乗れん」
「なら!私が馬を操りますので、後ろに乗ってください!」
咄嗟のシエスタの提案、シエスタですら乗れるのに秋山ときたら……。
という事に秋山は恥を持たない。
乗れないなら乗れない、事実は否定できないものだ。
早朝、馬1頭を返して、2頭だけで出発することになった。
秋山26歳始めてのおつかいである。
「何日かかるんじゃ、そのラ・ロシェールとかいうんは」
「2日は掛かるそうですよ?」
「ほうか……」
その貴族1、軍人1、平民1の奇妙なパーティーを、遠くから見送る人がいた。
姫とオスマン氏である。
「彼等に始祖ブリミルのご加護がありませんことを……」
「心配そうな顔をおくりなさんな」
「しかし……」
「アキヤマの判断は正しい、ルイズを連れて行けば、逆に目立ってしまう」
「ですが、彼等の護衛にとワルドを付けようとしたら、行方不明。あぁ、不安だけが募ります」
姫の考えは確かだ、戦場になっている中にあの3人、誰でも心配するだろう。
「アキヤマはやりますぞ、彼の顔は、何か大きな事をします、それにガンダ……うぉっほん」
「……?」
「気にしないで下され、まぁ、彼等は、目立ちませんからな、それが一番重要ですの、ちゃんとギーシュにも常にフード着用、服を平民の服に変えさせる事も命じたのじゃろう?」
「えぇ」
「なら、大丈夫でしょう、事故も起こしますまい」
「異世界から来た風、ですか……」
突然の姫の言葉に何かが器官に入った。
「ごほっごほっ!!……その話をどこで?」
「ルイズが」
あの小娘が……、アカデミーにつかまるかもしれんというに……。という事を言葉には出さず、心の中で呟いた。
場を移す、コルベールの研究室に。
とにかく言われたとおり、砲の研究をしていた。
まず、頭の中の研究室との戦いである、どのように配置すれば砲を上に向けたまま、飛距離を出せるか。
秋山から言われた、弾の形を円錐と円柱を合わせた形にすれば、飛距離はなるほど、伸びるだろう。
が、この砲弾が問題だ、砲の中に火薬を入れて、目標物を爆破しろというのである。
どうすればぶつかった瞬間に炸薬が起動するのか、最初は衝撃に頼ろうとしたが、それでは不発率が高い上に事故が多いだろう。
次に円錐部分の中に導火線を曲げながら入れて点火し、~~秒後に爆破という方式を立てようとした。
そうなると不発率が多い上、相手の高さ、場所を考慮して導火線を調整しなきゃいけないという面倒臭さがあったのだが、今現時点では結局この方式にした。
次は砲身だ、空に向けて撃つのだから、なるべく空に近づけた方がよいという事で、従来の青銅砲より、2倍は砲身を長くした。
結果、これは功を為す事になる。
が、次の問題が出る、どうやって弾を充填するのか、後ろから入れる、なるほど理論上では楽だ、が。
技術力が付いていけない、これにはコルベールの禿頭を悩ませた、が、簡単な事に気づいた。
台を使えばよい、そこから前装式で火薬と砲弾を入れればよい。とても単純な事だ。
こうなると速射がしにくいが、仕方ない、アキヤマも納得してくれるだろう。
次は発射の時もちいる火薬だ、これは量を多くすれば遠くに飛ばす事もできるが、寿命を短くしてしまう。
それに、多くいれれば入れるほど、この砲身の長い青銅砲は恐いのだ、火薬を装着する事が。
ここで紙に目をつけた、紙で円柱状に火薬を覆って底に綿をつめれば、衝撃による暴発の危険性を薄くする事が出来る。
後する事は、従来の火薬に少しだけでも進化をもたらす事だ、火を扱う分コルベールは楽しみながらやった。
まず、普通の火薬を燃やす前に一個一個薬品を垂らす、とにかくコルベールの家系の財力を惜しみなく使った薬物がそこにはある。
そこで一個の薬品が、効果を出した。
前までの研究で、色々な薬品を混ぜていき、何か化学変化は起きないかという研究をしていた。
その薬品を流す事が惜しかった為、取って置いた、一個の調合物である、しかも鉄を入れたり、熱したりした物である。
この世界では化学が無いといっていいほど発達していない為。
化学式なんてものはない、ただの偶然が偶然を生み出して出来た結果である。
この薬品の中身はなんだったか思い出す、適当に瓶と瓶を合わせて、熱を加えると、さっきしみこませた物と同じような白色の結晶粉末、火薬にしみこませてみた、同じような物になった。
これで、大体の問題は解決した、が、まだまだ考える所はある、流石に今回は没頭しすぎたなと窓を見つめながら思った。
外を見てみれば、既に夜になっていたのだ、コルベールが外に出ると、えらく腹が減っていた事に気づいた。
マルトーの親父に料理を食べさせてもらおうと、食堂に足を運んだ、すると、食堂にあるカレンダーの日付があの日から2日経っているのに気づいた。
自分の目を疑い、こすってからもう一度見ても、2日経っていた。
コルベールはまるまる2日、研究室で砲の研究をしていたことになる、よく自分の精神力が持った物だと、自分で自分を褒めた。
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