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「アノンの法則-07」(2009/08/06 (木) 20:51:31) の最新版変更点
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#navi(アノンの法則)
ここは学院長室。
コルベールは、泡を飛ばしながら、この学院の長であるオスマンに、説明していた。
その手には、ある使い魔のルーンのスケッチと、一冊の古ぼけた書物。
「では、君はミス・ヴァリエールが召喚した使い魔の少年が、始祖ブリミルの用いたという、使い魔『ガンダールヴ』だというのじゃな?」
オスマンはスケッチと書物を、交互に見つめた。
「そうです! あの少年の左手に刻まれたルーンは、伝説の使い魔『ガンダールヴ』に刻まれていたモノとまったく同じなのです!」
「ふむ……。確かに、ルーンが同じじゃ。ルーンが同じということは、ただの平民だったその少年は、『ガンダールヴ』になった、ということになるんじゃろうな」
「いえ、ただの平民というと……」
「なんじゃね、コルベール君。何か気になることでも?」
「確かに彼は魔法が使えないようでしたが、全身に刺青のような模様があり、どうもこの辺りの人間ではないようなのです」
「ほう?」
「ひょっとすると、我々の知らない土地の民族ではないかと……」
「我々の知らぬ土地……ロバ・アル・カリイエか。しかし、それだけで、そう決めつけるのは早計かもしれん」
そんな風に話していると、学院長室のドアがノックされた。
「私です。オールド・オスマン」
声の主は、ミス・ロングビル。
「ヴェストリの広場で、決闘をしている生徒がいるようです。大騒ぎになっています。止めに入った教師がいましたが、生徒たちに邪魔されて、止められないようです」
「まったく、暇をもてあました貴族ほど、性質の悪い生き物はおらんわい。で、誰が暴れておるんだね?」
「一人は、ギーシュ・ド・グラモン」
「あの、グラモンとこのバカ息子か。オヤジも色の道では剛の者じゃったが、息子も輪をかけて女好きじゃ。おおかた女の子の取り合いじゃろう。相手は誰じゃ?」
「……それが、メイジではありません。ミス・ヴァリエールの使い魔の少年のようです」
オスマンとコルベールは顔を見合わせた。
「教師たちは、決闘を止めるために『眠りの鐘』の使用許可を求めております」
オスマンの目が、鋭く光った。
「アホか。たかが子供のケンカを止めるのに、秘宝を使ってどうするんじゃ。放っておきなさい」
「わかりました」
ミス・ロングビルが去っていく足音が聞こえた。
コルベールは、つばを飲み込んで、オスマンを促した。
「オールド・オスマン」
「うむ」
オスマンが杖を振ると、壁にかかった秘宝『遠見の鏡』に、決闘の最中のヴェストリ広場の様子が映し出された。
静まり返ったヴェストリの広場。
ギーシュ自慢のゴーレム、六体のワルキューレは、十秒足らずで壊滅した。
魔法も使えない、武器すら持たない平民によって。
いや、あれは平民などではない。
あれは、悪魔だ。
少なくとも、相対するギーシュには、自分のワルキューレを軽々と屠ったアノンが、悪魔の化身に見えていた。
悪魔は、ワルキューレの残骸を踏み越え、腰を抜かしているギーシュの首を掴んだ。
ギーシュの体が、腕一本で持ち上げられる。
「ぐぅ……!」
「ボクの勝ちだね。ええと……ギーシュくん?」
七体のゴーレムの錬金で、すでにギーシュの精神力は尽きている。いつの間にか杖も手放していた。
ギーシュは悪魔の手を引っかき、足をバタつかせて何とか逃れようとしたが、万力のような力はまったく緩まない。
「決闘の敗者は勝者に何をされても、文句は言えないよね?」
ギーシュの恐怖心を掻き立てる様に、悪魔が告げた。
「…じゃ、悪いケド……」
(殺される…!)
ギーシュは恐怖と絶望に、目を瞑る。
「いただきます!」
「え?」
あまりに場違いな台詞に、ギーシュは思わず、目を開けた。
目の前には、大きく開かれた悪魔の口が迫り―――
「待ちなさい!」
静まり返っていたヴェストリの広場に、少女の声が響き渡った。
声のした方を見ると、ルイズが人ごみを掻き分け、広場の真ん中にたどり着いたところだった。
「やあ、ルイズ」
アノンは大きく開いていた口を閉じて、ギーシュを宙吊りにしたまま、いつもと同じ調子で答えた。
ルイズは、よく通る声でアノンを怒鳴りつける。
「その手を離しなさい!」
「なんで? 決闘には勝ったんだから、彼をどうしようとボクの勝手だろ?」
「貴族同士の決闘は、禁止されてるのよ!?」
「ボクは貴族じゃないよ。ここじゃボクは平民なんだよね? 平民と貴族の決闘は、禁止されてるのかい?」
ルイズは言葉に詰まる。
「そ、それは、そんなこと今までなかったから……。と、とにかく! ギーシュを離しなさい!」
「断る」
ルイズの命令を真っ向から拒否して、アノンはギーシュに向き直った。
「さて改めて、いただきま……」
「アノン!!!」
怒鳴り声が響き、アノンのすぐ横の地面が爆発した。
パラパラと砂が舞う。
ルイズはゆっくりと、杖をアノンに向けた。
「もう一度言うわ。ギーシュを離しなさい、アノン」
今度は静かに、怒気をはらませたルイズの声。
辺りの空気が張り詰める。
睨み合う二人。広場に集まった者達は、物音ひとつ立てることができずに、それを見つめた。
「……わかったよ。ボクは、キミの使い魔だったね」
永遠に続くかと思われた睨み合いで、先に折れたのはアノンだった。
肩をすくめて、手を離す。
地面に落とされ、尻もちをついて咳き込むギーシュと、未だ険しい顔のルイズ。
アノンは二人に背を向けて歩き出した。
だが、すぐに振り返り、
「そういえば、キミはさっき初めて、ボクを名前で呼んだね。ルイズ」
そう言い残して、アノンは去っていった。
「大丈夫? ギーシュ」
「ああ。けど、死ぬかと思ったよ」
ルイズに助け起こされて、青い顔で答えるギーシュ。
ルイズが来るのが、もう少し遅かったらと考えると、ぞっとする。
「決闘の理由は、聞いてるわ」
心底申し訳なさそうに、ルイズが言った。
「主の不始末が使い魔の不始末なら、使い魔の不始末は主の不始末だわ。使い魔に代わって、私が謝罪する。ごめんなさい、ギーシュ」
ルイズは深く、頭を下げた。
だが、ギーシュは首を横にを振った。
「よしてくれ。自ら挑んだ決闘に負けて、その上謝罪までされたら、僕は……」
そう言ってギーシュは、俯いたまま背を向け、去っていった。
その背中を見て、ルイズは目をごしごしとこすった。
大切な物を無残に踏み砕かれ、挑んだ決闘にも負けた。その上、相手の主に命を救われたのだ。
それがどれだけ、彼の誇りとプライドを傷つけたかと思うと、申し訳なくて、泣けてしまった。
そして自分の使い魔の実力も、その性質も把握できずに、こんな事態を引き起こした自分が、ひたすらに情けなかった。
『遠見の鏡』で一部始終を見ていたオスマンとコルベールは、顔を見合わせた。
「オールド・オスマン」
コルベールの声は震えていた。
「あの少年、勝ってしまいましたが……」
「うむ」
「ドットメイジのミスタ・グラモンでもただの平民に遅れを取るとは思えません。そしてあの動き、あんな平民見たことがない! やはり彼は『ガンダールヴ』……」
オスマンは険しい表情で唸った。
「うむむ……しかし『ガンダールヴ』は、あらゆる武器を使いこなし、主を守ったという。あの少年、武器など使っておらなんだな」
「ドットメイジ相手なら、武器を使うまでもなかった…と言うことでしょうか?」
「だとするなら、武器を持てばさらに凶悪な力を発揮するということになるの」
ゴクリと、コルベールは唾を飲み込んだ。
「ドットとは言え、メイジのゴーレムを圧倒するあの力。いや、それよりも問題なのは……」
コルベールが後を引き継ぐ。
「彼自身、ですね」
「うむ。あの少年は明らかに、戦いを好んでおる。そして、敵の命を奪うことに、躊躇いがない」
「オールド・オスマン。このことは、すぐに王室に報告して、指示を仰ぐべきです」
「それは、ならん」
「どうしてですか? 彼は危険です! 今の決闘もミス・ヴァリエールが止めなければ、どうなっていたか」
「ミスタ・コルベール、『ガンダールヴ』はただの使い魔ではない。あらゆる武器を使いこなし、千人もの軍隊を一人で壊滅させるほどの力を持っておったと伝えられる」
コルベールが頷く。
「はい、並のメイジではまったく歯が立たなかったとか」
「そんなオモチャを、王室のボンクラどもに与えるわけにはいくまい。あやつら、また戦でも引き起こすぞ。宮廷で暇をもてあましている連中はまったく、戦が好きじゃからな」
はっとして、コルベールが言った。
「確かに……学院長の深謀には恐れ入ります」
「それにの、凶暴な使い魔の召喚など、過去にいくらでも例がある。要は主が…ミス・ヴァリエールが、あの使い魔を制御できればよいのじゃ」
「もし、できなければ……?」
「……」
オスマンは、その問いには答えなかった。
「この件は私が預かる。他言は無用じゃ。ミスタ・コルベール」
「…はい。かしこまりました」
コルベールは軽く頭を下げて、退室した。
「そのときは……」
学院長室に残ったオスマンは、ひとり杖を握り締めた。
#navi(アノンの法則)
#navi(アノンの法則)
ここは学院長室。
コルベールは、泡を飛ばしながら、この学院の長であるオスマンに、説明していた。
その手には、ある使い魔のルーンのスケッチと、一冊の古ぼけた書物。
「では、君はミス・ヴァリエールが召喚した使い魔の少年が、始祖ブリミルの用いたという、使い魔『ガンダールヴ』だというのじゃな?」
オスマンはスケッチと書物を、交互に見つめた。
「そうです! あの少年の左手に刻まれたルーンは、伝説の使い魔『ガンダールヴ』に刻まれていたモノとまったく同じなのです!」
「ふむ……。確かに、ルーンが同じじゃ。ルーンが同じということは、ただの平民だったその少年は、『ガンダールヴ』になった、ということになるんじゃろうな」
「いえ、ただの平民というと……」
「なんじゃね、コルベール君。何か気になることでも?」
「確かに彼は魔法が使えないようでしたが、全身に刺青のような模様があり、どうもこの辺りの人間ではないようなのです」
「ほう?」
「ひょっとすると、我々の知らない土地の民族ではないかと……」
「我々の知らぬ土地……ロバ・アル・カリイエか。しかし、それだけで、そう決めつけるのは早計かもしれん」
そんな風に話していると、学院長室のドアがノックされた。
「私です。オールド・オスマン」
声の主は、ミス・ロングビル。
「ヴェストリの広場で、決闘をしている生徒がいるようです。大騒ぎになっています。止めに入った教師がいましたが、生徒たちに邪魔されて、止められないようです」
「まったく、暇をもてあました貴族ほど、性質の悪い生き物はおらんわい。で、誰が暴れておるんだね?」
「一人は、ギーシュ・ド・グラモン」
「あの、グラモンとこのバカ息子か。オヤジも色の道では剛の者じゃったが、息子も輪をかけて女好きじゃ。おおかた女の子の取り合いじゃろう。相手は誰じゃ?」
「……それが、メイジではありません。ミス・ヴァリエールの使い魔の少年のようです」
オスマンとコルベールは顔を見合わせた。
「教師たちは、決闘を止めるために『眠りの鐘』の使用許可を求めております」
オスマンの目が、鋭く光った。
「アホか。たかが子供のケンカを止めるのに、秘宝を使ってどうするんじゃ。放っておきなさい」
「わかりました」
ミス・ロングビルが去っていく足音が聞こえた。
コルベールは、つばを飲み込んで、オスマンを促した。
「オールド・オスマン」
「うむ」
オスマンが杖を振ると、壁にかかった秘宝『遠見の鏡』に、決闘の最中のヴェストリ広場の様子が映し出された。
静まり返ったヴェストリの広場。
ギーシュ自慢のゴーレム、六体のワルキューレは、十秒足らずで壊滅した。
魔法も使えない、武器すら持たない平民によって。
いや、あれは平民などではない。
あれは、悪魔だ。
少なくとも、相対するギーシュには、自分のワルキューレを軽々と屠ったアノンが、悪魔の化身に見えていた。
悪魔は、ワルキューレの残骸を踏み越え、腰を抜かしているギーシュの首を掴んだ。
ギーシュの体が、腕一本で持ち上げられる。
「ぐぅ……!」
「ボクの勝ちだね。ええと……ギーシュくん?」
七体のゴーレムの錬金で、すでにギーシュの精神力は尽きている。いつの間にか杖も手放していた。
ギーシュは悪魔の手を引っかき、足をバタつかせて何とか逃れようとしたが、万力のような力はまったく緩まない。
「決闘の敗者は勝者に何をされても、文句は言えないよね?」
ギーシュの恐怖心を掻き立てる様に、悪魔が告げた。
「…じゃ、悪いケド……」
(殺される…!)
ギーシュは恐怖と絶望に、目を瞑る。
「いただきます!」
「え?」
あまりに場違いな台詞に、ギーシュは思わず、目を開けた。
目の前には、大きく開かれた悪魔の口が迫り―――
「待ちなさい!」
静まり返っていたヴェストリの広場に、少女の声が響き渡った。
声のした方を見ると、ルイズが人ごみを掻き分け、広場の真ん中にたどり着いたところだった。
「やあ、ルイズ」
アノンは大きく開いていた口を閉じて、ギーシュを宙吊りにしたまま、いつもと同じ調子で答えた。
ルイズは、よく通る声でアノンを怒鳴りつける。
「その手を離しなさい!」
「なんで? 決闘には勝ったんだから、彼をどうしようとボクの勝手だろ?」
「貴族同士の決闘は、禁止されてるのよ!?」
「ボクは貴族じゃないよ。ここじゃボクは平民なんだよね? 平民と貴族の決闘は、禁止されてるのかい?」
ルイズは言葉に詰まる。
「そ、それは、そんなこと今までなかったから……。と、とにかく! ギーシュを離しなさい!」
「断る」
ルイズの命令を真っ向から拒否して、アノンはギーシュに向き直った。
「さて改めて、いただきま……」
「アノン!!!」
怒鳴り声が響き、アノンのすぐ横の地面が爆発した。
パラパラと砂が舞う。
ルイズはゆっくりと、杖をアノンに向けた。
「もう一度言うわ。ギーシュを離しなさい、アノン」
今度は静かに、怒気をはらませたルイズの声。
辺りの空気が張り詰める。
睨み合う二人。広場に集まった者達は、物音ひとつ立てることができずに、それを見つめた。
「……わかったよ。ボクは、キミの使い魔だったね」
永遠に続くかと思われた睨み合いで、先に折れたのはアノンだった。
肩をすくめて、手を離す。
地面に落とされ、尻もちをついて咳き込むギーシュと、未だ険しい顔のルイズ。
アノンは二人に背を向けて歩き出した。
だが、すぐに振り返り、
「そういえば、キミはさっき初めて、ボクを名前で呼んだね。ルイズ」
そう言い残して、アノンは去っていった。
「大丈夫? ギーシュ」
「ああ。けど、死ぬかと思ったよ」
ルイズに助け起こされて、青い顔で答えるギーシュ。
ルイズが来るのが、もう少し遅かったらと考えると、ぞっとする。
「決闘の理由は、聞いてるわ」
心底申し訳なさそうに、ルイズが言った。
「主の不始末が使い魔の不始末なら、使い魔の不始末は主の不始末だわ。使い魔に代わって、私が謝罪する。ごめんなさい、ギーシュ」
ルイズは深く、頭を下げた。
だが、ギーシュは首を横にを振った。
「よしてくれ。自ら挑んだ決闘に負けて、その上謝罪までされたら、僕は……」
そう言ってギーシュは、俯いたまま背を向け、去っていった。
その背中を見て、ルイズは目をごしごしとこすった。
大切な物を無残に踏み砕かれ、挑んだ決闘にも負けた。その上、相手の主に命を救われたのだ。
それがどれだけ、彼の誇りとプライドを傷つけたかと思うと、申し訳なくて、泣けてしまった。
そして自分の使い魔の実力も、その性質も把握できずに、こんな事態を引き起こした自分が、ひたすらに情けなかった。
『遠見の鏡』で一部始終を見ていたオスマンとコルベールは、顔を見合わせた。
「オールド・オスマン」
コルベールの声は震えていた。
「あの少年、勝ってしまいましたが……」
「うむ」
「ドットメイジのミスタ・グラモンでもただの平民に遅れを取るとは思えません。そしてあの動き、あんな平民見たことがない! やはり彼は『ガンダールヴ』……」
オスマンは険しい表情で唸った。
「うむむ……しかし『ガンダールヴ』は、あらゆる武器を使いこなし、主を守ったという。あの少年、武器など使っておらなんだな」
「ドットメイジ相手なら、武器を使うまでもなかった…と言うことでしょうか?」
「だとするなら、武器を持てばさらに凶悪な力を発揮するということになるの」
ゴクリと、コルベールは唾を飲み込んだ。
「ドットとは言え、メイジのゴーレムを圧倒するあの力。いや、それよりも問題なのは……」
コルベールが後を引き継ぐ。
「彼自身、ですね」
「うむ。あの少年は明らかに、戦いを好んでおる。そして、敵の命を奪うことに、躊躇いがない」
「オールド・オスマン。このことは、すぐに王室に報告して、指示を仰ぐべきです」
「それは、ならん」
「どうしてですか? 彼は危険です! 今の決闘もミス・ヴァリエールが止めなければ、どうなっていたか」
「ミスタ・コルベール、『ガンダールヴ』はただの使い魔ではない。あらゆる武器を使いこなし、千人もの軍隊を一人で壊滅させるほどの力を持っておったと伝えられる」
コルベールが頷く。
「はい、並のメイジではまったく歯が立たなかったとか」
「そんなオモチャを、王室のボンクラどもに与えるわけにはいくまい。あやつら、また戦でも引き起こすぞ。宮廷で暇をもてあましている連中はまったく、戦が好きじゃからな」
はっとして、コルベールが言った。
「確かに……学院長の深謀には恐れ入ります」
「それにの、凶暴な使い魔の召喚など、過去にいくらでも例がある。要は主が…ミス・ヴァリエールが、あの使い魔を制御できればよいのじゃ」
「もし、できなければ……?」
「……」
オスマンは、その問いには答えなかった。
「この件は私が預かる。他言は無用じゃ。ミスタ・コルベール」
「…はい。かしこまりました」
コルベールは軽く頭を下げて、退室した。
「そのときは……」
学院長室に残ったオスマンは、ひとり杖を握り締めた。
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