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マジシャン ザ ルイズ (3)錬金術の教示
「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ、今朝もささやかな糧を我に与えたもうたことに感謝します」
食堂での朝食が始まった。
ここは若い少年少女達がその旺盛な食欲を満たし、あるいは共同生活を送る仲間との連帯感を高める場である。
そんな若者達の中、初老の男が一人。
そう、ルイズ・ド・ヴァリエールの使い魔となったメイジ・ウルザである。
本来なら使い魔であるし執事という立場を取らせると決めたのであるから、食事はあとで別に取ってもらうのが筋なのだが、生憎とメイジと使い魔の関係初日のルイズがそのような手配を行っているわけが無かった。
しょうがないので、今日は同席ということになり、今ウルザはルイズの横に座っているのだ。
勿論、少年少女達の中にとあって、周囲からは距離をとられている、かなり。
ゼロのルイズが高位のメイジを召喚したということは、すでに学院中に知れ渡っており、同席した生徒は皆そのメイジがルイズの隣に座っている男だということに気付いていた。
(重い、重いわ…空気が重いわ…)
周りがウルザに身体的にも精神的に距離を取っている為なのだが、隣のルイズにはたまったものではない。
(何か…何か考えなくちゃ……っ!)
その時、ルイズはふっと誰かの視線を感じた。
きょろきょろと周りを見回してみると、視線の主は直ぐに見つかった。
長身に、同世代とは思えない発育の良さ、燃えるように赤い髪。
そして、今はその頬も茹で上がったように紅潮している。加えて瞳も潤んでいる。
(ちょっ!ツェルプストー!あんたっ!何で私!そんな趣味はないわよっ!)
昨日から何度目か分からない悪寒を感じで体を震わせた。
しかし、注意深く、かつ相手に気付かれないように視線を追ってみると、微妙に自分が相手では無いことに気付いた。
そう、視線の先は………横にいる男に向けられていた。
キュルケの唇が何事か呟くのが見えた。
当然ながら、ルイズは読唇術も読心術も使えない。
しかし、この時ばかりはキュルケがなんと呟いたのかを明白に理解することが出来た。
――素敵なおじさま…
食事が終わり、教室へ向かう最中のことである。
「ミス!ミス・ヴァリエール!ミスタ・ウルザ!」
「あ、おはようございます。ミスタ・コルベール」
「おはようございます。ミスタ・コルベール」
禿げ上がった頭の教師、コルベールに声をかけられたのである。
「すみませんが、ミスタ・ウルザの左手のルーン文字を見せて頂きたいのですが」
「私は別に構いませんが…ミスタ・ウルザも構わないかしら?」
「無論。私も異議はありません」
ウルザが左手を出すと、コルベールは素早くメモをとり始めた。
「いやはや、召喚の儀式の後、ずっとこのルーンのことを調べているんだよ」
「え?どうかしたんですか?」
「メイジを召喚したなんて前例が無いからね、おまけに君が召喚したというのも……まあ、兎にも角にも知的好奇心が刺激されてしまってね!」
「ふむふむ、成程。そういうことでしたら今晩ご一緒に分かったことについて報告し合うというのは如何ですかな?」
「おお!?既にご自身で解読がお進みでしたか!?流石ですなミスタ・ウルザ!しかし、こちらはまだ報告するほどには…」
「いやいや、ミスタコルベール、私は貴方の意見が……」
「おおっ!……でしたら……!」
「それは……たい……是非……」
「…っ!……!!」
ルイズは妙に盛り上がる二人を置いて教室に急ぐのであった。
「―――というわけで、皆さんご存知の通り、魔法の四大系統「火」「水」「土」「風」「虚無」、五つの系統がある訳ですが、その中で「土」は万物の組成を司る重要な系統なのです」
今日の授業は赤土のシュヴルーズ教師の錬金の授業である。
なお、使い魔であるメイジは先ほどふらりと教室に入り、今は授業を聞きながら一心不乱にメモを取っている。
(メイジなのに、こんな初歩的な授業を受けて楽しいのかしら?)
「オホンッ!ミス・ヴァリエール!」
「は、はい!」
余所見をしている生徒を当てるのは、どの世界でも共通である。
「では、土の基本魔法を説明してください」
「え、あ、はい……
『土』の系統の基本魔法は『錬金』です。
金属を作り出したり建物を建てる石を切り出したり、農作物を収穫するなどの生活により関係した魔法が『土』です」
「よろしい、ミス・ヴァリエール、よく出来ました。……では次に、実際に錬金を行ってみます」
そう言うとシュヴルーズは錬金の実技を披露してみせた。
シュヴルーズが呪文を唱えると、教壇の上に置かれた石が輝き、金属へと姿を変えたのだった。
これを見たウルザが「ほお…」と呟くのをルイズは聞いた。
「先生!ゴールドですか!?」キュルケが聞くと
「いいえ、真鍮です。」と応えるシュヴルーズ。
「さて、次は誰かに錬金をやってもらいましょうか……ミス・ヴァリエール!」
「え、はい!」
また自分かという考えを払って姿勢を正す。
「貴女は……随分と変わった使い魔を召喚したそうですね。
どうでしょう?その使い魔の方に錬金の実演をして頂けませんか?」
教室中の生徒がルイズとその使い魔に注目する。
あ、ちょっとこの感じいいかも、とほんの少しだけ抱いたが、それを出さずに、ウルザに声をかける。
「ミスタ・ウルザ、先生の仰るとおりに」
「……分かりました、ミス・ルイズ」
ルイズはウルザが軽くため息をついたのを感じた。
(別に錬金くらい初歩の術じゃない、減るもんじゃないし…そりゃ、私は使えないけど…)
ウルザが教壇に立つ。
(さて、このように生徒に囲まれ教壇に経つなど久しいことだ…)
さて、目の前には先ほど錬金された石と同じくらいの大きさの石が置かれている。
確かに、ウルザは数々の世界を渡り歩いた魔法使いであるが、初めて接した魔法系統を直ぐに使いこなすような超人ではない。
よって、ハルケギニアの系統魔法を使えるわけが無い。
しかし、今メイジという立場をこの世界で失うのは得策ではない。
ウルザが何事か呟き、呪文が完成して、石が輝く。
そして、石はシュヴルーズ教師が錬金したのと同様に、真鍮へと姿を変えてきた。
「おおおおおお!!」「凄い!」「ルイズの使い魔はスクエアメイジか!」
教室中が喧騒に包まれる。
「こんなものでよろしいかな?」
「ええ、結構です、ええと…ミスタ・ウルザ」
ただ一人、首を捻っていたのはモンモランシーである。
「あ、あれ?今、水の系統魔法を使って、なかっ…た、…わよね。私の勘違いね、きっと」
「さて、次はミス・ヴァリエール。あなたがやって御覧なさい」
「先生!」
キュルケが声を上げる。
「ルイズは危ないです!ゼロのルイズですよ!?」
それを聞いたシュヴルーズが応える。
「ミス・ツェルプストー、貴女は彼女をまだゼロのルイズと呼ぶのですか?彼女の使い魔であるミスタ・ウルザが錬金を成功させたのを見たでしょう。
使い魔が出来て、主人が出来ないなんてことがありますか」
それを聞いてルイズが立ち上がる。
「私、やります!」
ルイズが教壇に立つ、前には先ほどと同様の石が置かれている。
「ふむ、これは興味深い」
ルイズはウルザの魔法が見たいと思っていたが、それはウルザとて同じことである。
プレインズウォーカーである自分を強引に召喚するほどの腕前である、そしてその手による知らぬ魔法体系の呪文、狂人ならずとも魔法使いなら心引かれる演目である。
ルイズが呪文の詠唱を始める。
同時に、一斉に机の下に避難を始める生徒達。
意味を理解出来ないまでも、何処かで見たような既視感を覚える。
ルイズの呪文が完成する。
爆発
なんの防御もしていなかったウルザは爆発に巻き込まれたのだった。
危険に対して敏感なのは、いつだって生徒だ。
――ウルザ
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マジシャン ザ ルイズ (3)錬金術の教示
「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ、今朝もささやかな糧を我に与えたもうたことに感謝します」
食堂での朝食が始まった。
ここは若い少年少女達がその旺盛な食欲を満たし、あるいは共同生活を送る仲間との連帯感を高める場である。
そんな若者達の中、初老の男が一人。
そう、ルイズ・ド・ヴァリエールの使い魔となったメイジ・ウルザである。
本来なら使い魔であるし執事という立場を取らせると決めたのであるから、食事はあとで別に取ってもらうのが筋なのだが、生憎とメイジと使い魔の関係初日のルイズがそのような手配を行っているわけが無かった。
しょうがないので、今日は同席ということになり、今ウルザはルイズの横に座っているのだ。
勿論、少年少女達の中にとあって、周囲からは距離をとられている、かなり。
ゼロのルイズが高位のメイジを召喚したということは、すでに学院中に知れ渡っており、同席した生徒は皆そのメイジがルイズの隣に座っている男だということに気付いていた。
(重い、重いわ…空気が重いわ…)
周りがウルザに身体的にも精神的に距離を取っている為なのだが、隣のルイズにはたまったものではない。
(何か…何か考えなくちゃ……っ!)
その時、ルイズはふっと誰かの視線を感じた。
きょろきょろと周りを見回してみると、視線の主は直ぐに見つかった。
長身に、同世代とは思えない発育の良さ、燃えるように赤い髪。
そして、今はその頬も茹で上がったように紅潮している。加えて瞳も潤んでいる。
(ちょっ!ツェルプストー!あんたっ!何で私!そんな趣味はないわよっ!)
昨日から何度目か分からない悪寒を感じで体を震わせた。
しかし、注意深く、かつ相手に気付かれないように視線を追ってみると、微妙に自分が相手では無いことに気付いた。
そう、視線の先は………横にいる男に向けられていた。
キュルケの唇が何事か呟くのが見えた。
当然ながら、ルイズは読唇術も読心術も使えない。
しかし、この時ばかりはキュルケがなんと呟いたのかを明白に理解することが出来た。
――素敵なおじさま…
食事が終わり、教室へ向かう最中のことである。
「ミス!ミス・ヴァリエール!ミスタ・ウルザ!」
「あ、おはようございます。ミスタ・コルベール」
「おはようございます。ミスタ・コルベール」
禿げ上がった頭の教師、コルベールに声をかけられたのである。
「すみませんが、ミスタ・ウルザの左手のルーン文字を見せて頂きたいのですが」
「私は別に構いませんが…ミスタ・ウルザも構わないかしら?」
「無論。私も異議はありません」
ウルザが左手を出すと、コルベールは素早くメモをとり始めた。
「いやはや、召喚の儀式の後、ずっとこのルーンのことを調べているんだよ」
「え?どうかしたんですか?」
「メイジを召喚したなんて前例が無いからね、おまけに君が召喚したというのも……まあ、兎にも角にも知的好奇心が刺激されてしまってね!」
「ふむふむ、成程。そういうことでしたら今晩ご一緒に分かったことについて報告し合うというのは如何ですかな?」
「おお!?既にご自身で解読がお進みでしたか!?流石ですなミスタ・ウルザ!しかし、こちらはまだ報告するほどには…」
「いやいや、ミスタコルベール、私は貴方の意見が……」
「おおっ!……でしたら……!」
「それは……たい……是非……」
「…っ!……!!」
ルイズは妙に盛り上がる二人を置いて教室に急ぐのであった。
「―――というわけで、皆さんご存知の通り、魔法の四大系統「火」「水」「土」「風」「虚無」、五つの系統がある訳ですが、その中で「土」は万物の組成を司る重要な系統なのです」
今日の授業は赤土のシュヴルーズ教師の錬金の授業である。
なお、使い魔であるメイジは先ほどふらりと教室に入り、今は授業を聞きながら一心不乱にメモを取っている。
(メイジなのに、こんな初歩的な授業を受けて楽しいのかしら?)
「オホンッ!ミス・ヴァリエール!」
「は、はい!」
余所見をしている生徒を当てるのは、どの世界でも共通である。
「では、土の基本魔法を説明してください」
「え、あ、はい……
『土』の系統の基本魔法は『錬金』です。
金属を作り出したり建物を建てる石を切り出したり、農作物を収穫するなどの生活により関係した魔法が『土』です」
「よろしい、ミス・ヴァリエール、よく出来ました。……では次に、実際に錬金を行ってみます」
そう言うとシュヴルーズは錬金の実技を披露してみせた。
シュヴルーズが呪文を唱えると、教壇の上に置かれた石が輝き、金属へと姿を変えたのだった。
これを見たウルザが「ほお…」と呟くのをルイズは聞いた。
「先生!ゴールドですか!?」キュルケが聞くと
「いいえ、真鍮です。」と応えるシュヴルーズ。
「さて、次は誰かに錬金をやってもらいましょうか……ミス・ヴァリエール!」
「え、はい!」
また自分かという考えを払って姿勢を正す。
「貴女は……随分と変わった使い魔を召喚したそうですね。
どうでしょう?その使い魔の方に錬金の実演をして頂けませんか?」
教室中の生徒がルイズとその使い魔に注目する。
あ、ちょっとこの感じいいかも、とほんの少しだけ抱いたが、それを出さずに、ウルザに声をかける。
「ミスタ・ウルザ、先生の仰るとおりに」
「……分かりました、ミス・ルイズ」
ルイズはウルザが軽くため息をついたのを感じた。
(別に錬金くらい初歩の術じゃない、減るもんじゃないし…そりゃ、私は使えないけど…)
ウルザが教壇に立つ。
(さて、このように生徒に囲まれ教壇に立つなど久しいことだ…)
さて、目の前には先ほど錬金された石と同じくらいの大きさの石が置かれている。
確かに、ウルザは数々の世界を渡り歩いた魔法使いであるが、初めて接した魔法系統を直ぐに使いこなすような超人ではない。
よって、ハルケギニアの系統魔法を使えるわけが無い。
しかし、今メイジという立場をこの世界で失うのは得策ではない。
ウルザが何事か呟き、呪文が完成して、石が輝く。
そして、石はシュヴルーズ教師が錬金したのと同様に、真鍮へと姿を変えてきた。
「おおおおおお!!」「凄い!」「ルイズの使い魔はスクエアメイジか!」
教室中が喧騒に包まれる。
「こんなものでよろしいかな?」
「ええ、結構です、ええと…ミスタ・ウルザ」
ただ一人、首を捻っていたのはモンモランシーである。
「あ、あれ?今、水の系統魔法を使って、なかっ…た、…わよね。私の勘違いね、きっと」
「さて、次はミス・ヴァリエール。あなたがやって御覧なさい」
「先生!」
キュルケが声を上げる。
「ルイズは危ないです!ゼロのルイズですよ!?」
それを聞いたシュヴルーズが応える。
「ミス・ツェルプストー、貴女は彼女をまだゼロのルイズと呼ぶのですか?彼女の使い魔であるミスタ・ウルザが錬金を成功させたのを見たでしょう。
使い魔が出来て、主人が出来ないなんてことがありますか」
それを聞いてルイズが立ち上がる。
「私、やります!」
ルイズが教壇に立つ、前には先ほどと同様の石が置かれている。
「ふむ、これは興味深い」
ルイズはウルザの魔法が見たいと思っていたが、それはウルザとて同じことである。
プレインズウォーカーである自分を強引に召喚するほどの腕前である、そしてその手による知らぬ魔法体系の呪文、狂人ならずとも魔法使いなら心引かれる演目である。
ルイズが呪文の詠唱を始める。
同時に、一斉に机の下に避難を始める生徒達。
意味を理解出来ないまでも、何処かで見たような既視感を覚える。
ルイズの呪文が完成する。
爆発
なんの防御もしていなかったウルザは爆発に巻き込まれたのだった。
危険に対して敏感なのは、いつだって生徒だ。
――ウルザ
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