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開幕
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、通称『ゼロのルイズ』は、イライラと学院中を歩き回っていた。
(まったく……いつだってフラフラとほっつき歩いて! どど、どうしてこうも落ち着きがないのかしら?
いったい、ごご、ご主人様をなんだと思っているのよ! もう!)
ああもう、あの使い魔! 使い魔のクセに! とルイズはムシャクシャして叫ぶ。さっきから、学院中にある空き教室を片っ端からまわっているのだった。
自分の呼び出した『使い魔』はちょっと目を離すといなくなり、どこかの空き教室にしけこむのである。
「ちょっと、ギイ! ギイ・クリストフ・レッシュ! どこにいるのよ!?」
ルイズは使い魔の名前を呼びながら、一つの扉をあける。はたして、そこには自分の使い魔が悠然と座っていた。
すらりとした体に銀色の髪の美男子である。そして何より特徴的な、髪と同じく水銀のように輝く銀色の瞳を持っている。
おまけに、使い魔にしなだれかかるようにして、一人の女生徒がうっとりとその青年を見つめているのであった。
「シェイクスピア曰く……『この世は舞台なり――誰もがそこでは一役、演じなくてはならぬ』……」
ゆったりとセリフをなぞりながら、男は手にしたワインボトルをトクトクとグラスに注いだ。
く、と芝居っけたっぷりにグラスに口をつけ、男はけだるげな微笑を浮かべた。
「だとしたら……僕の演じるのはさしずめ……『生に倦んだバラードを唄う道化(アルルカン)』か……
そして道化を邪魔するのは……如何なる愚者か?」
男の言葉に、クスクスと女生徒が笑う。ルイズの体は怒りにプルプルと震える。
(な、なんで私こんなの召喚したんだろう……)
ルイズは震える声で言った。
「誰が愚者よ……! ギイ・クリストフ・レッシューッ!!」
開幕
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、通称『ゼロのルイズ』は、イライラと学院中を歩き回っていた。
(まったく……いつだってフラフラとほっつき歩いて! どど、どうしてこうも落ち着きがないのかしら?
いったい、ごご、ご主人様をなんだと思っているのよ! もう!)
ああもう、あの使い魔! 使い魔のクセに! とルイズはムシャクシャして叫ぶ。さっきから、学院中にある空き教室を片っ端からまわっているのだった。
自分の呼び出した『使い魔』はちょっと目を離すといなくなり、どこかの空き教室にしけこむのである。
「ちょっと、ギイ! ギイ・クリストフ・レッシュ! どこにいるのよ!?」
ルイズは使い魔の名前を呼びながら、一つの扉をあける。はたして、そこには自分の使い魔が悠然と座っていた。
すらりとした体に銀色の髪の美男子である。そして何より特徴的な、髪と同じく水銀のように輝く銀色の瞳を持っている。
おまけに、使い魔にしなだれかかるようにして、一人の女生徒がうっとりとその青年を見つめているのであった。
「シェイクスピア曰く……『この世は舞台なり――誰もがそこでは一役、演じなくてはならぬ』……」
ゆったりとセリフをなぞりながら、男は手にしたワインボトルをトクトクとグラスに注いだ。
く、と芝居っけたっぷりにグラスに口をつけ、男はけだるげな微笑を浮かべた。
「だとしたら……僕の演じるのはさしずめ……『生に倦んだバラードを唄う道化(アルルカン)』か……
そして道化を邪魔するのは……如何なる愚者か?」
男の言葉に、クスクスと女生徒が笑う。ルイズの体は怒りにプルプルと震える。
(な、なんで私こんなの召喚したんだろう……)
ルイズは震える声で言った。
「誰が愚者よ……! ギイ・クリストフ・レッシューッ!!」
『からくりサーカス・ゼロ』
春の使い魔召喚の儀式……それはメイジにとって、一生のパートナーを決める大切な儀式である。
中庭に集合した生徒たちは、コルベール先生の見守るもと、次々と使い魔を召喚していった。
ふくろう、カエル、果てはグレート・モールからサラマンダーまで。生徒たちは『サモン・サーヴァント』を唱え、呼び出した使い魔と契約していく。
誰かが使い魔を呼び出すたびに、歓声が中庭に響く。そんな中で、一人俯いている少女がいた。
(どど、どうしよう……昨日あんなこと言わなければ良かった……)
既に涙目の少女の名は、ルイズ・フランソワーズ。魔法の才能に乏しい貴族の少女であった。
昨日、同級生にからかわれたときに、ルイズは思わず心にもないことを口走ってしまい、いまさらながら後悔に駆られていた。
『私、サモン・サーヴァントは自信があるの。見てなさい、とびきりの使い魔を召喚してやるわ!』
昨日、自分が吐いた捨て台詞が頭に浮かぶ。本当は召喚の魔法に自信などカケラもない。ただの強がりであった。
そんなルイズをよそに召喚の儀式はちゃくちゃくと進んでいく。
「さて、次は……ミス・ヴァリエール。君の番ですよ」
「はは、はいっ……ミスタ・コルベール」
コルベール先生に呼ばれて、ルイズは慌てて返事をした。途端に周りからヤジと冷やかしが飛んでくる。
「おいおい、次はゼロのルイズか!」
「どうせ失敗するさ、なんたってゼロだもんな!」
「もう、うるさい! 黙ってよ!」
ルイズの怒声にヤジは収まったが、くすくすと忍び笑いが続く。ルイズは怒りに震えながらも、すう、と深呼吸した。
ゆっくりと頭にイメージをつくる。強く、美しく、そして気高い使い魔を……!
静かに呪文を唱えると、ルイズは杖を振った。成功して欲しいと心から念じながら……
瞬間、巻き起こる爆発。
「げほっ……げほっ……だからいったんだ! 失敗するって!」
「やっぱりゼロだな! ゼロのルイズ!」
もうもうたる土煙に咳き込みながらも、生徒たちのはやす声が響く。
しかし、その声は当のルイズには聞こえていない。ルイズの目は、自分の目の前に突如現れた男に釘付けられていた。
「やれやれ……やっとママンのところについたと思ったら……なんだここは?
天国がこれほど埃っぽいところとは思いもしなかったな……」
輝くような銀髪に痩身、コートをきちんと身につけた優男が立っていた。美しいといってもいいような顔立ちに、左頬の傷が異様に目立つ。
傍らには、旅に出るように大きな鞄を提げている。銀色の瞳が、じっとルイズを見つめる。
「さて……天使のようなお嬢さん……僕はいったいどこにいるのかな?」
そう言うと、男はにこりと微笑んだ。知らず知らずのうちに、ルイズの頬は赤く染まっていた。
男は騎士のように気高く、貴族のように優雅であった……。
rァ『契約する』
『契約しない』
決意をかためたルイズは契約の魔法『コントラクト・サーヴァント』を行った。
目の前に立つ、気高く、そして優雅なる使い魔と――。
(――――と、思ったわ。ええ、最初だけね。最初は血迷ってたわよ……そそ、それが一体……
なんて使い魔なのよ……! ギイ・クリストフ・レッシュ……!)
ルイズは、目の前で女生徒の肩を抱くギイを睨み付ける。学院中を探し回り、やっと見つけたと思ったらこれである。
コントラクト・サーヴァントを済まし、左手に使い魔のルーンも浮かんだ。紛れもなく、その男はルイズの使い魔のはずである。
「なのに! どーしてアンタは私の言うことを聞かないのよ!! 女ったらし!」
「さあ、僕に言われても困るな」
「こここ、このっ……! つ、使い魔のクセにっ……!!」
ルイズが手にしたムチを振り上げようとすると、急にゲホンゲホンとギイは咳き込んだ。
うっ、とルイズは振り上げた手を止める。咳き込みながらギイがルイズをちら、と見つめた。
「……僕の体は弱っているのだよ……貴族ともあろうもの、よもや病人を殴るまいね、君」
コホコホと咳き込むギイが、はっとしたように手を広げて見せた。
「血だ!」
「ワインでしょ!!」
ギイの言葉に鼻息を荒くするルイズ。ルイズがいくら怒っても、いつもこれでごまかされてしまうのであった。
ギイは、チャラ、と首に下げたペンダントをとり、パチンと開いた。中には女性の肖像が描かれている。
「ママン……狂気と倦怠と、なんでも暴力をふるう『イノシシムスメ』がいる『こちらの』世界で――
美しいのはママンだけだよ……」
ちゅ、とペンダントに口付けるギイ。ルイズは呆れて体の力が抜けていった。怒る気力もなくして、がっくりと膝をつく。
(し、しかもマザコン……終わってるわ……)
……こうして、200体のオートマータを破壊した伝説の『しろがね』……ギイ・クリストフ・レッシュは、一人の少女によってこの世界に召喚された。
3000体のオートマータを道連れに自爆したはずの自分が、一体なぜ生きているのか? ここは一体どこであるのか?
(そして……エレノオールとナルミは幸せになれただろうか……? あのマサルは無事だろうか……?)
そんなことを疑問に思いながらも、自分の目の前で床に手をついて落ち込む少女の姿に、ギイはクスリと笑う。
(ママン……どうしてここに僕がいるかはわからないが……そばに行くのはもう少しだけ先になりそうだよ。
……ママン・アンジェリーナ……)
開幕 おわり
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