「ゼロの女帝-24」(2009/06/05 (金) 16:54:04) の最新版変更点
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#navi(ゼロの女帝)
&setpagename(ゼロの女帝 第二十四話)
「さて」
とシルフィードの背中でサイトは後ろのタバサに語りかける。
「今回の任務はどんなんだ?まあなんとなく分かるけど」
「王宮に反乱を宣言した土のメイジの捕縛」
「それってひょっとして」
「肯定。
『パペットマスター』の異名を持つ土のスクェアメイジ、名をワィル。
ゴーレムやガーゴイル製造に長けていてそれらの売買で巨大な富を得ている」
「こないだ同じ罪状で俺らが成敗したばかりじゃないか!
・・・・・・・・ひょっとしてわざと反乱させてるのか」
「肯定。
彼は反乱を起こそうとも討伐軍の兵士を決して殺さない。
故に兵の鍛錬に最適だし私達が彼のガーゴイルを倒すことで彼は精進し、更なる強力なガーゴイルを作成する。
それはガリアにとって有益」
「ンなこったろうと思ったよ。
前回わざわざ殺すなっつって指示あったのが変だと思ってたからな」
「捕縛してもそのガーゴイルの技術や機能を提供する事で無罪放免はおろか国から
様々な特権と資金を受けている。
多分、彼の才能がそれなりに尽き、かつ技術を王宮勤務の土メイジが十分吸収した所で
過去の罪状をもって捕縛し、人脈と資産を全て没収する」
「えげつねェな あれがワィルの城・・・・・・かよ」
一目見て全身の力が抜けていくサイト。
「よくきたな、すっとこどっこい凸凹コンビ!
今回こそはキサマらを倒しガリアを!否ハルケギニアを征服してくれる!
キサマらの想像もつかない恐ろしい仕掛けにまみれたこの城に入ってくるがいい!」
「あー・・・・・・ひょっとして『うまくジャンプしないと下の槍に貫かれる穴』とか
炎かなんかで燃えてる床の上で消える足場とかンな罠か」
「うぐっ」
「で、魔力仕込んであって『ファイアーボール』とか『ウィンドカッター』とか放ってくるガーゴイルが六体ほど待ち構えてて
ソイツら全部倒さないとアンタの所にたどり着けないとか」
「うぐぐぐぐっ」
「あー、どこの阿呆も似たようなのがいて、似たようなコト考えるんだな」
頭をボリボリと掻いていたサイトがふと見ると、タバサとシルフィードがキラキラした目で自分を見ているのに気づく。
「サイトってばスゴいのねー」
「城の外観だけという限られた状況であそこまで情報を見抜くとは。
しかもガーゴイルの数や性能まで」
「似たような事考えた挙句実行に移した阿呆を知ってるからな」
まさかゲームの敵役とはいえない。
「しかし、だとするとアレか。
シルフィードがラッ○ュかビ○トでジョゼフのクソ親父がラ○ト博士かよ。
・・・・・・・・・いくらなんでもイザベラがロー○ちゃんってのは受け入れ難いぞ」
「はやく任務を達成して学園に戻る。
学園でまたセトが何かしでかしてるかもしれない」
「それが楽しみなんだろ」
「肯定」
「まあいいさ。
確かにいない所で面白い騒ぎ起こされてたらたまらねぇからな。
パスワードもセーブもないけど再挑戦は可能だからな!行くぜ!」
「で、アンタはご主人様放って置いてタバサと三日三晩イチャついてたってワケね」
「あのなぁ」
「ゲルマニアにもDrワィルの名は聞こえてるわよ。
外見にオリジナリティあり過ぎるけど性能は太鼓判だって。
ただ性能に比べれば値段は安いけど定期的にウィル自身ないし彼の助手とでも言うべきガーゴイルによる
メンテが必要なんで結果的に割高になるって陛下がボヤいてたとか」
「ウチの父様もよ。
でもそれだけの出費にかなう作品だって言ってた」
「で、瀬戸さまは今回何をしようとしてるんだ?」
「さあ。昨日の夜『ちょっと思いついたんだけどさぁ』と言ってたわ。
今調理場に居るみたいよ。
ダーリン何か心当たり無い?」
「カンベンしてくれ」
などと食堂でダベっている一同の前に姿を見せた瀬戸。
シエスタを従え、二人してなにやら大きな荷物を背負っている。
「突然だけどバレンタインディよ!」
「カンベンしてくれ」
頭を抱えたサイトを無視してセトは背の荷物を降ろす。
「アタシの故郷にはね、バレンタインディという風習があるの。
起源とかいうと長くなるから省略するけど、つまりは女の子が意中の殿方にお菓子を送るお祭りね。
基本的にこの(と背から下ろした風呂敷包みからなにやら取り出す)チョコレートなんだけど
クッキーでもいいわ」
「それに身分とか関係ありますか」
「身分なんざ持ち出すのは野暮ってモンよ、シエスタちゃん。
それどころか『彼女が居る』かどうかすら関係無いわ!
ルールはただ二つだけ!
『女の子から意中の男に送る』と『貰った男は一ヵ月後にプレゼント返しをせねばならない』だけ!」
「瀬戸さま、止めたほうがいいと思いますよ」
「おや、なんでだい」
「ギーシュ、お前にゃ分からんだろうがな、これはある種の男にとってすっげ過酷な試練なんだよ」
「GMコマンドカスタム」とか「二月ないし三月十四日限定ステルス男」の異名を誇ったヒラガサイトは語る。
「ぶっちゃけ女の子に人気あるかないかを露骨に本人のみならず周囲にも知らしめるイベントなんだ」
ああそういえばサイトはセトと同郷なんだ、と皆が思う中彼の演説は続く。
「言っちゃナンだがその『ある種の男』が気の毒だろうが! マリコルヌとかマリコルヌとか、あと特にマリコルヌとか」
「なんでボク限定で気の毒なんだよ!」
「ああ、確かにマリコルヌには気の毒だね」
「だからなんでボクだけ!」
「お前だって他人事じゃねぇぞ。
こないだまたフタマタ騒ぎ起こしたそうじゃないか。
モンモランシーがアレでお前に愛想尽かしてたらどうする?
彼女が他の男にチョコ渡す様を見せ付けられてお前正気でいられるのか」
「はっはっは、そんなことある訳無いじゃないか。
ねえモンモランシー」
ギーシュの問いかけに視線をそらすモンモランシー。
「ど、どうしたんだい、何故僕の方を見てくれないんだぁ!」
「まあそんなだからやっぱりやめない、セト?
いくらなんでも気の毒だわ、マリコルヌとかギーシュとか」
「そうね、マリコルヌちゃんとかギーシュちゃんとか可哀想よね」
「だからなんでボクばっかり!」
「ボクは気の毒なんかじゃない!」
「やめる必要は無いと思います!」
「どうしたのよシエスタ」
「ただの平民がメイジの方が使役する使い魔に告白してもかまわないとこのイベント!
止めるなんて勿体無いです!
夕べから徹夜でやらされたセトさんのお手伝いが無駄になるのもヤですし。
キュルケさまやタバサさまもそう思われますよね!」
「まあ情熱のお祭りって事でアタシは賛成よ」
「わたしは別に」
「メイジのお方が他のメイジのお方が使役するメイジに贈り物しても構わないんですよ!
別に愛の告白とかじゃなくて日頃手助けして貰ってるお礼に、という口実で渡しても一向に構わないんですし」
「構うわよ!っていうかタバサ!アンタやっぱり!」
「誤解。
しかし日頃のお礼と言うなら」
「やっぱりぃぃぃぃぃぃ!」
しかし後日、このイベントはきっちり開催されハルケギニア全域へと広まっていったという。
後世、このイベントはコレをもたらした人物の名にちなんで「セト・バレンタインディ」と呼ばれるようになったとか。
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「ていやぁ!」「たぁ!」
次々と木刀で瀬戸に切りかかっては、あしらわれる男子生徒たち。
十人を超える数で一斉に切りかかるのだが、その手の扇に防がれ、弾かれ、受け流されてしまう。
「ほいっ」 「あぎゃ」
「とりゃ」 「痛っ」
「ちょいさ」「ああ、もっと」
「ダメよサイトちゃん。
全力で飛び込んでの突きが得意みたいだけど、そういった得意技ってのはたいていかわされるか
崩されると無様なまでに体勢崩れるわ。
注意なさい」
「はーい、今日の鍛錬はおしまいよ。
午後の授業に備えて男衆はきっちり休んどきなさい」
その言葉を聞いて、一斉に地に倒れ崩れる男子生徒たち。
水属性の女生徒らがかけより、彼らの傷と疲れを癒していく。
「ギーシュ、なんでこんな無茶をするの?
しかもあなた達メイジじゃない。メイジが剣振るうなんて親族会議で袋叩きよ」
「じゃあその時はスケキヨとでも名乗ろうか 真っ白いマスク被って」
「真面目に話してるのよ!」
「じゃあ真面目に答えよう。
剣を振るう、というより体力をつけたいのさ。
アルビオンの叛徒どももいずれトリステインに攻めて来るだろう。
その時はグラモン家の男子として僕も当然戦場に向かわなければならない。
そして魔法とは絶対ではない、と知ったからね」
「セトはもう常識外でしょ!サイトだってセトの眷属なんだから非常識なのもあたりまえよ!
あんなのめったに居やしないしホコホコいられたら迷惑よ!」
「でも『メイジ殺し』と呼ばれる規格外は間違い無く存在する。
規格外が目の前に現れた時『反則だ』と喚いて死んでは意味が無いんだ。
それになにより」
「なにより?」
「どんな状況でも、君を守りたいんだモンモランシー」
「ぽ」
「マリコルヌ、本当に治さなくていいの?」
「ああ、この傷、この痛みはボクが未熟な証だからね。
これを忘れてしまっては強くなれない、そう思うんだ」
「へー」(あ、なんかちょっと格好良いかも)
「それに、イイんだ」
「へ?」
「こ、この痛みが・・・・・・・・イイ」
(前言撤回だわ)
「こおらぁ!このバカ犬!何やってんのよさっさと昼のお茶の用意しなさいよ!」
「あ、あのミス・ヴァリエール、わたしが」
「メイドは引っ込んでなさい。あ!た!し!は!このバカ犬にやれって言ってんのよ!」
「あいたたた・・・・わかったわかった。すぐ準備しますよご主人様」
そんなサイトにキュルケが声をかける。
「あなたもよく辛抱するわね」
「知り合いに似たのが居たんでね。
とにかくひたすら運が悪くて。
道を歩けば糞を踏み椅子に座ればすぐ壊れ楽しみにしてたイベントは必ず雨天中止。
そんな自分に絶望して、腐ってはぶてていらついてたんだ。
でもその人は自分の運の悪さを受け入れる強さを身に付けた。
ルイズを見てるとその人思い出すんだ」
なるほど、とキュルケは納得する。
「で、その人いまなにしてんの?」
「よくは知らないけど就職して嫁さん四人と愛人四人囲ってるらしい」
深夜 誰も彼もがぐっすりと眠る夜。
ルイズ・フランソワ-ズ・ル・ブラン・ド・ヴァリエ-ル嬢は、使い魔をドツき倒すという程好い運動を終え
心地よい疲れとともに穏やかな眠りについていた。
そんな寝室の片隅の闇が三つほど立ち上がり、部屋の主に魔法を掛ける。
『眠りの雲』らしきその魔法は彼女をさらに深い眠りへと誘う。
そして影どもは彼女の毛布をめくり(そこまでにしてくんない?)
掛けられたささやき声に、一斉に、しかし風すら揺るがせず飛びのく三つの影。
(そいつに夜這い掛けるのはおれが一番と決まってるんだ。とりあえず表ェ出な)
「ここまでくりゃいいか。
さて、一応名前と目的聞いておこうか。俺の名は平賀才人。ルイズの使い魔ってモンやってる」
「あの娘の使い魔はいささかとうのたった女、と聞いておるのだがな。
吾が名はコウリュウ」
「リシュウ」
「フシュウ。
我等はワルドさまにお仕えする烈風三兄弟
使命はかの娘をワルドさまの御前に連れて行くこと」
「そこまでバラしていいのかい」
「かまわん。どのみち貴様は誰にも語る事など出来んのだから」
一斉に短め(20サントほど)の剣を抜く。
「メイジなんだろ。剣使って良いのかい」
「闇なれば それに我等が剣を振るう事を知る生者など居らぬ」
その言葉に、背負ったデルフリンガーを構えるサイト。
「おーおー、ホンマモンの修羅場だねぇ。
このまま出番終わるかと思ってどきどきしてたよ」
キイン!ガイン!鋼が打ち合わされる音が、深夜の森に鳴り響く。
三人の刺客が、サイトと剣を交えている。
互角、否ややサイトが押し気味だ。
そんな彼らを、学園の外壁上から見守る影ひとつ。
「手伝わないのですか」
その影のとなりに、ふわりともうひとつの影が現れる。
「サイトちゃんはね、コルベールちゃん。
この先ルイズちゃんと共に、尋常でない地獄を巡って行くことになるわ。
多分、だけどね。
今この場を乗り切れないならいっそここで死なせてあげたほうが親切というものよ」
「ふふっ 彼が切り抜けられると信じてるんですね」
ザッと距離を取り、体制を整える三人組。
「ふむ、恐れるほどではないが、手ごわいのは認めよう。
吾が兄弟の秘技、受けてみるがいい」
そういうとコウリュウは、まっすぐサイトに向かって突っ込む。
「何考えてるんだ!」
ギン!
すれ違う両者。そしてサイトの右肩と左側頭部から血が迸る。
「てめぇら・・・・・」
「天をかわせど地が襲い」「地を防げども人が来る」「我等兄弟の三身一体陣、受けてみよ!」
「くっ 風魔法を自分ないし味方の背に放って加速してやがる」
(得意技ってのはたいていかわされるか崩されると無様なまでに体勢崩れるわ)
「・・・・・・・・・・いいだろう 三身一体陣とやら、正面から相手してやんよ」
「いくぞ!三身一体陣!」
(宣言してしかけちゃマズいだろ)
内心呟きながら三身一体陣とやらに突っ込むサイト。
(思ったとおりだ
先頭のやつは後ろの二人の邪魔をしないために突きしか出来ない)
先頭の、コウリュウの刃を左手で受け、そのまま横へと流す。
「何!?」
デルフリンガーで体勢を崩したコウリュウの喉を薙ぐと、崩れ落ちる相手の死骸を踏み台に高く飛び上がりデルフを両手に持ち直す。
「ミデアの援護はないからな」
謎な言葉を呟き、そのまま落ちるに任せリシュウの頭部に刃を叩き込む。
「あ、兄者?」
何が起きたか理解できず混乱するフシュウの腹に、横殴りの一太刀。
「やれやれ、相棒はお人好しだね。こんな連中わざわざ埋めてやるなんて」
「死者を咎めるのはタブーなんだよ、俺の故郷では。
死ねば皆等しく仏ってね」
「・・・・・・・・つらくねぇか」
「つらいよ。 でも人を殺してつらくない人間になんかなりたくないし、
なによりそれでも俺は守ると誓った。
ルイズを」
「こおらぁ!このバカ犬!!メイドやらツェルプストーやらといちゃいちゃいちゃいちゃ!」
どっかぁん
「ほんぎゃああ」
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