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「アーカードはそこにいる-2」(2007/08/08 (水) 20:12:22) の最新版変更点
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「…ふむ、珍しいルーンですね。」
先程までどことなく物憂げだったコルベールの表情が、死体に刻まれたルーンを見た途端、研究者のそれになった。
ノートを取り出してスケッチを始める。
儀式を行う前は……それでも、少しは期待していた。
自分を馬鹿にし続けてきた連中を見返せるような、神聖で美しく、強力な使い魔を召還する。
そんな都合のいい期待をしていた。
確かに召還は成功した。
生まれて初めて魔法が成功したのだ。嬉しくない筈がない。
だが、その結果がよりにもよって死体である。
御丁寧なことに棺付だ。
(フッ、葬式でもしてたのかしら。最悪ね。)
折角呼び出したというのに、死体では何も出来まい。
結局の所、自分はやっぱり『ゼロ』のままなのだ。
自然と自嘲気味の笑みが零れる。
不意に、掌に痛みを感じた。
どうやら、随分と強い力で握り締めていたようだ。血が滴っている。
「今日はここまで。皆さん、自分の部屋に戻ってください。」
ルーンを写し終わったコルベールの声が解散の合図になった。
「じゃあなゼロ!せいぜい頑張って歩いて来いよ!」
「しかし、死体だけならともかく、あの馬鹿でかい棺は流石にきついんじゃないか?レビテーションも使えないゼロのルイズには!」
「そりゃそうだ!ハハハハハハハハ!!」
一人、また一人と空を飛んで帰っていく生徒達。
そのうちの幾人かが残した捨て台詞に、ルイズは強い視線を向けながらも、言い返すことは出来なかった。
広場で一人立ち尽くしていたルイズは、やがて大きな溜息を一つ吐くと、死体の傍にあった棺に腰を掛けた。
(……どうやって運ぼうかしら、コレ。)
悔しいことだが、確かにレビテーションを使えない自分には、この棺を自分の部屋まで運ぶのは辛い。
(それに死体だって―――っ!?)
先程まで死体があった場所に目をやったルイズは、信じ難い、余りにも信じ難い光景を目にした。
『それ』は動いていた。
『それ』は這い蹲っていた。
『それ』は長い舌を出して。
『それ』は広場に滴り落ちていたルイズの血を舐めていた。
唐突過ぎる展開に、ルイズの思考はついていけなかった。
身動き一つ取ることが出来ずに固まってしまったルイズが、辛うじて感じることが出来たのは、圧倒的な、馬鹿馬鹿しいまでのサイズの『恐怖』だけだった。
やがて血をあらかた舐め終わった『それ』は、体を起こし、ゆっくりとルイズに向かって歩いてきた。
干からびていた筈の体は、今や普通の人と変わりなく―――否、普通の人には持ち得ない気品と妖しさを纏っている。
息をすることすら忘れていたルイズの前に辿り着いた『それ』は、躊躇う事無く跪き、頭を垂れた。
「御怪我は御座いませんか」
地獄の底から響いてくるような低く重い声。
『それ』は頭を上げて言葉を続ける
「御命令を。我が主人」
そう言った『それ』の顔には、笑顔が。
気品と、妖しさと、限りなく深い闇がこびりついているような笑顔を浮かんでいた。
――――ルイズは既に気を失っていた。もう何か色々出しながら。
「…ふむ、珍しいルーンですね。」
先程までどことなく物憂げだったコルベールの表情が、死体に刻まれたルーンを見た途端、研究者のそれになった。
ノートを取り出してスケッチを始める。
儀式を行う前は……それでも、少しは期待していた。
自分を馬鹿にし続けてきた連中を見返せるような、神聖で美しく、強力な使い魔を召喚する。
そんな都合のいい期待をしていた。
確かに召喚は成功した。
生まれて初めて魔法が成功したのだ。嬉しくない筈がない。
だが、その結果がよりにもよって死体である。
御丁寧なことに棺付だ。
(フッ、葬式でもしてたのかしら。最悪ね。)
折角呼び出したというのに、死体では何も出来まい。
結局の所、自分はやっぱり『ゼロ』のままなのだ。
自然と自嘲気味の笑みが零れる。
不意に、掌に痛みを感じた。
どうやら、随分と強い力で握り締めていたようだ。血が滴っている。
「今日はここまで。皆さん、自分の部屋に戻ってください。」
ルーンを写し終わったコルベールの声が解散の合図になった。
「じゃあなゼロ!せいぜい頑張って歩いて来いよ!」
「しかし、死体だけならともかく、あの馬鹿でかい棺は流石にきついんじゃないか?レビテーションも使えないゼロのルイズには!」
「そりゃそうだ!ハハハハハハハハ!!」
一人、また一人と空を飛んで帰っていく生徒達。
そのうちの幾人かが残した捨て台詞に、ルイズは強い視線を向けながらも、言い返すことは出来なかった。
広場で一人立ち尽くしていたルイズは、やがて大きな溜息を一つ吐くと、死体の傍にあった棺に腰を掛けた。
(……どうやって運ぼうかしら、コレ。)
悔しいことだが、確かにレビテーションを使えない自分には、この棺を自分の部屋まで運ぶのは辛い。
(それに死体だって―――っ!?)
先程まで死体があった場所に目をやったルイズは、信じ難い、余りにも信じ難い光景を目にした。
『それ』は動いていた。
『それ』は這い蹲っていた。
『それ』は長い舌を出して。
『それ』は広場に滴り落ちていたルイズの血を舐めていた。
唐突過ぎる展開に、ルイズの思考はついていけなかった。
身動き一つ取ることが出来ずに固まってしまったルイズが、辛うじて感じることが出来たのは、圧倒的な、馬鹿馬鹿しいまでのサイズの『恐怖』だけだった。
やがて血をあらかた舐め終わった『それ』は、体を起こし、ゆっくりとルイズに向かって歩いてきた。
干からびていた筈の体は、今や普通の人と変わりなく―――否、普通の人には持ち得ない気品と妖しさを纏っている。
息をすることすら忘れていたルイズの前に辿り着いた『それ』は、躊躇う事無く跪き、頭を垂れた。
「御怪我は御座いませんか」
地獄の底から響いてくるような低く重い声。
『それ』は頭を上げて言葉を続ける
「御命令を。我が主人」
そう言った『それ』の顔には、笑顔が。
気品と、妖しさと、限りなく深い闇がこびりついているような笑顔を浮かんでいた。
――――ルイズは既に気を失っていた。もう何か色々出しながら。
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