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「化け猫の使い魔-1」(2007/08/08 (水) 20:01:49) の最新版変更点
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トリステイン魔法学院。
メイジ達に、魔法や教養を教え貴族として育成するこの学院は、非常に騒がしい状態にあった。
というのも、新二年生達による使い魔召還の儀式が行われているためだ。
所属する学生達は、この使い魔召還の儀式で呼び出されたものによって、属性の固定とそれに伴う専門科目の専攻が行われるため、その結果に一喜一憂する。
この学院に所属する、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、これこそ名誉挽回のチャンスと、非常にはやり立っていた。
ゼロのルイズ。それが彼女に与えられた二つ名である。これは彼女の魔法成功率が0であるということを表す、極めて不名誉な二つ名であった。
もし、これで凄い使い魔を呼び出せば、今まで自分をゼロと呼んだ奴らを見返せる! そう思い、彼女は今、この使い魔召還の儀式に向かっていた。
(でも、今まで一度も、魔法が成功したことのない私に、できるの?)
しかし他の生徒の召還が進むにつれ、ルイズの頭の中に弱い考えが沸々と浮かんでいく。
「まだ、召還してない者は…… ミス・ヴァリエール!! 」
「はい」
黒いローブをまとった男、コルベールに名を呼ばれ、ルイズは大きく前へとでる。
それに合わせるように、既に召還を終わらせた生徒の一団は、大きく後ろへと下がった。
「ゼロのルイズ! また校舎に傷をつける気か?」
「ちゃんとサモン・サーヴァント出来るのか? 」
「コモンマジックも出来ないドット以下が、何をやっても無駄だっつーの!」
生徒達からヤジが飛ぶ。
その内容はルイズを誹謗するモノであったが、事実であった。
公爵家の三女として生まれたルイズにとって、魔法が使えないということは、耐え難い屈辱である。
ただですらプライドの高いルイズは、そのヤジを飛ばした生徒の方をキッと睨みつける。
「みてなさいッ! ……あんた達なんかより、ずっと強力な使い魔を召還してみせるわッ!」
言うと同時に、またやってしまったのかとルイズは後悔した。
言うだけは言うが、実技は伴わない。
また、他の生徒にバカにされる口実ができてしまったではないか。
ルイズはうつむいて、杖を強く握りしめた。
「ミス・ヴァリエール。早くなさい。次の授業が始まってしまうじゃないか」
しかし、そんなことは関係なく、教師であるコルベールから、早くせよと催促の言葉が飛ぶ。
ルイズは悔しさを視線にこめ、顔を上げて、天高く杖を構えた。
「……宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ!」
よく息を吸い込んで、空全体に響き渡るような声を挙げ、ルイズは独自的な召喚の言葉を紡いでいく。
その言葉に合わせ、天高くあげられた杖の先に、光が集まっていく。
「神聖で、美しく、そして強力な使い魔よ!」
ルイズは紡いでいく言葉の一言一言に、自分の今の心の震えを載せる。
その言葉がよりルイズの感情を大きく揺さぶって、声はさらに大きなものとなっていく。
「私が心より求め、訴えるは、我が導きに答えなさい!」
最後の一節に合わせ、ルイズは高く構えた杖を振り下ろす。
ルイズの口から、精一杯、全力を以て唱えられた言葉は、その杖の先に集まった光を爆発へと変えた。
「またかよ!」
「サモン・サーヴァントでも爆発させるのかよ!?」
「召喚されてても、使い魔死んでるんじゃないか?」
ルイズが魔法を使うたびに、毎回起こる現象、爆発。
その中でも一際の威力を誇った今回の爆発は、既に慣れていて、対処をしていた生徒達を幾人か巻き込む。
「うわっ! 僕のミッキーロークが!」
「俺のヒロスエも暴れ出したぞ!」
その大きな爆発は、召喚されたばかりの使い魔達を興奮させ、暴れさせるには十分であった。
特に空を飛ぶ使い魔達は、強い衝撃によって、よりひどい混乱状態となる。
パニックとなった使い魔達は、主人であるメイジ達の命令を全く聞かずに、辺りを阿鼻叫喚の状態へと陥れた。
今にもメイジを襲ってきそうな使い魔までいる始末だ。
そんな惨状を後目に、ルイズは爆発の中心部に目を向ける。
未だ煙に包まれ、はっきりとした姿は見えないが、そこには3、40サントほどのサイズの影が見えた。
それほど大きくはない。むしろ使い魔としてはやや小さめのサイズだ。
あれが私の使い魔なのだろうと、ルイズは理解した。
「ああ! 僕のトキマツ!」
よくその姿を確認しようとその影に近づいていこうとしたルイズは、後ろの喧噪よりもやや近くで聞こえたその声に、思わず振り向く。
そこには先程召喚を終わらせた生徒と、その使い魔である、1メイルはあろうかという規格外の鴉がいた。
この惨状で、使い魔が制御できなくなったのだろう。
その暴走している使い魔は、何を思ったか、その影へと襲いかかる。
ルイズは慌て、その使い魔へと杖を向けて、その行動を阻止せんと詠唱を始める。
が、それよりも早く、影の方からビュンと、風を切り裂いて何かを振り抜く様な音が聞こえ、その音と共に流れたカッターのような風が、ルイズの頬に傷を付けた。
ルイズは驚き詠唱を止め、自分の頬へと手を当てる。
温かい血が、たらりと当てた手を伝った。
一瞬のフリーズの後、ルイズは先程、影へと向かっていたバカでかい鴉へと視線を戻す。
鴉はその動きを停止していた。
ルイズはもう何がなんだか解らないと言った様子で、暫くその動きを止めたバカでかい鴉を眺める。
しかしルイズの耳は新たな変化をとらえた。
先程まであれほど騒がしかった生徒の一団の方から、使い魔の鳴き声が殆どしなくなったのだ。
代わりにひゅんひゅんと耳障りな、何かが風を切る音が響く。
その風切り音が五度なる頃には、完全に声が聞こえなくなっていた。
(いいい、一体、何が……)
ルイズはおそるおそる、後ろの一団を見る。
すると、呼び出した中でも、空を飛べる使い魔達だけがボトボトと、真っ二つの死骸となって地面に落ちていく様が見えた。こちらに向かっていたバカでかい鴉も、ものの見事に真っ二つだ。
その凄惨な光景に、地上で暴れていた使い魔も、騒いでいた生徒も、それを制しようとしたコルベールもが動きを止める。
色々起こりすぎて、何がなんだか解らないルイズは、もう一度、自分の呼び出した使い魔の方へと視線を向けた。
他の生徒達や、コルベール、果ては使い魔達さえも、ひゅんひゅんと最初に音が鳴り始めた場所にいて、おそらくはこの現象の犯人であろう、ルイズの呼び出した使い魔へと視線を向けた。
もわもわと、爆発によって巻き上げられた土煙が収まり、ついにその使い魔が、ルイズ達の前へと姿を表す。
「え!?」
「「「「「「「猫ゥ!?」」」」」」」
そこにいたのは、ボロボロのマントをまとい、右目に大きな眼帯をつけ、右腕、いや右前足に巨大なブーメランを持った、トラ縞の猫であった。
そこにいる全員の視線を恣にする中、その猫はふらふらと左右に揺れると、そのままボテッと地面に倒れ伏したのだった。
トリステイン魔法学院。
メイジ達に、魔法や教養を教え貴族として育成するこの学院は、非常に騒がしい状態にあった。
というのも、新二年生達による使い魔召喚の儀式が行われているためだ。
所属する学生達は、この使い魔召喚の儀式で呼び出されたものによって、属性の固定とそれに伴う専門科目の専攻が行われるため、その結果に一喜一憂する。
この学院に所属する、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、これこそ名誉挽回のチャンスと、非常にはやり立っていた。
ゼロのルイズ。それが彼女に与えられた二つ名である。これは彼女の魔法成功率が0であるということを表す、極めて不名誉な二つ名であった。
もし、これで凄い使い魔を呼び出せば、今まで自分をゼロと呼んだ奴らを見返せる! そう思い、彼女は今、この使い魔召喚の儀式に向かっていた。
(でも、今まで一度も、魔法が成功したことのない私に、できるの?)
しかし他の生徒の召喚が進むにつれ、ルイズの頭の中に弱い考えが沸々と浮かんでいく。
「まだ、召喚してない者は…… ミス・ヴァリエール!! 」
「はい」
黒いローブをまとった男、コルベールに名を呼ばれ、ルイズは大きく前へとでる。
それに合わせるように、既に召喚を終わらせた生徒の一団は、大きく後ろへと下がった。
「ゼロのルイズ! また校舎に傷をつける気か?」
「ちゃんとサモン・サーヴァント出来るのか? 」
「コモンマジックも出来ないドット以下が、何をやっても無駄だっつーの!」
生徒達からヤジが飛ぶ。
その内容はルイズを誹謗するモノであったが、事実であった。
公爵家の三女として生まれたルイズにとって、魔法が使えないということは、耐え難い屈辱である。
ただですらプライドの高いルイズは、そのヤジを飛ばした生徒の方をキッと睨みつける。
「みてなさいッ! ……あんた達なんかより、ずっと強力な使い魔を召喚してみせるわッ!」
言うと同時に、またやってしまったのかとルイズは後悔した。
言うだけは言うが、実技は伴わない。
また、他の生徒にバカにされる口実ができてしまったではないか。
ルイズはうつむいて、杖を強く握りしめた。
「ミス・ヴァリエール。早くなさい。次の授業が始まってしまうじゃないか」
しかし、そんなことは関係なく、教師であるコルベールから、早くせよと催促の言葉が飛ぶ。
ルイズは悔しさを視線にこめ、顔を上げて、天高く杖を構えた。
「……宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ!」
よく息を吸い込んで、空全体に響き渡るような声を挙げ、ルイズは独自的な召喚の言葉を紡いでいく。
その言葉に合わせ、天高くあげられた杖の先に、光が集まっていく。
「神聖で、美しく、そして強力な使い魔よ!」
ルイズは紡いでいく言葉の一言一言に、自分の今の心の震えを載せる。
その言葉がよりルイズの感情を大きく揺さぶって、声はさらに大きなものとなっていく。
「私が心より求め、訴えるは、我が導きに答えなさい!」
最後の一節に合わせ、ルイズは高く構えた杖を振り下ろす。
ルイズの口から、精一杯、全力を以て唱えられた言葉は、その杖の先に集まった光を爆発へと変えた。
「またかよ!」
「サモン・サーヴァントでも爆発させるのかよ!?」
「召喚されてても、使い魔死んでるんじゃないか?」
ルイズが魔法を使うたびに、毎回起こる現象、爆発。
その中でも一際の威力を誇った今回の爆発は、既に慣れていて、対処をしていた生徒達を幾人か巻き込む。
「うわっ! 僕のミッキーロークが!」
「俺のヒロスエも暴れ出したぞ!」
その大きな爆発は、召喚されたばかりの使い魔達を興奮させ、暴れさせるには十分であった。
特に空を飛ぶ使い魔達は、強い衝撃によって、よりひどい混乱状態となる。
パニックとなった使い魔達は、主人であるメイジ達の命令を全く聞かずに、辺りを阿鼻叫喚の状態へと陥れた。
今にもメイジを襲ってきそうな使い魔までいる始末だ。
そんな惨状を後目に、ルイズは爆発の中心部に目を向ける。
未だ煙に包まれ、はっきりとした姿は見えないが、そこには3、40サントほどのサイズの影が見えた。
それほど大きくはない。むしろ使い魔としてはやや小さめのサイズだ。
あれが私の使い魔なのだろうと、ルイズは理解した。
「ああ! 僕のトキマツ!」
よくその姿を確認しようとその影に近づいていこうとしたルイズは、後ろの喧噪よりもやや近くで聞こえたその声に、思わず振り向く。
そこには先程召喚を終わらせた生徒と、その使い魔である、1メイルはあろうかという規格外の鴉がいた。
この惨状で、使い魔が制御できなくなったのだろう。
その暴走している使い魔は、何を思ったか、その影へと襲いかかる。
ルイズは慌て、その使い魔へと杖を向けて、その行動を阻止せんと詠唱を始める。
が、それよりも早く、影の方からビュンと、風を切り裂いて何かを振り抜く様な音が聞こえ、その音と共に流れたカッターのような風が、ルイズの頬に傷を付けた。
ルイズは驚き詠唱を止め、自分の頬へと手を当てる。
温かい血が、たらりと当てた手を伝った。
一瞬のフリーズの後、ルイズは先程、影へと向かっていたバカでかい鴉へと視線を戻す。
鴉はその動きを停止していた。
ルイズはもう何がなんだか解らないと言った様子で、暫くその動きを止めたバカでかい鴉を眺める。
しかしルイズの耳は新たな変化をとらえた。
先程まであれほど騒がしかった生徒の一団の方から、使い魔の鳴き声が殆どしなくなったのだ。
代わりにひゅんひゅんと耳障りな、何かが風を切る音が響く。
その風切り音が五度なる頃には、完全に声が聞こえなくなっていた。
(いいい、一体、何が……)
ルイズはおそるおそる、後ろの一団を見る。
すると、呼び出した中でも、空を飛べる使い魔達だけがボトボトと、真っ二つの死骸となって地面に落ちていく様が見えた。こちらに向かっていたバカでかい鴉も、ものの見事に真っ二つだ。
その凄惨な光景に、地上で暴れていた使い魔も、騒いでいた生徒も、それを制しようとしたコルベールもが動きを止める。
色々起こりすぎて、何がなんだか解らないルイズは、もう一度、自分の呼び出した使い魔の方へと視線を向けた。
他の生徒達や、コルベール、果ては使い魔達さえも、ひゅんひゅんと最初に音が鳴り始めた場所にいて、おそらくはこの現象の犯人であろう、ルイズの呼び出した使い魔へと視線を向けた。
もわもわと、爆発によって巻き上げられた土煙が収まり、ついにその使い魔が、ルイズ達の前へと姿を表す。
「え!?」
「「「「「「「猫ゥ!?」」」」」」」
そこにいたのは、ボロボロのマントをまとい、右目に大きな眼帯をつけ、右腕、いや右前足に巨大なブーメランを持った、トラ縞の猫であった。
そこにいる全員の視線を恣にする中、その猫はふらふらと左右に揺れると、そのままボテッと地面に倒れ伏したのだった。
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