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「ウボァーな使い魔-01」(2009/04/29 (水) 15:42:31) の最新版変更点
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#navi(ウボァーな使い魔)
「…貴様は誰だ?」
澄み渡る青空の下に広がる新緑の草原。そこに集まっている十代半ばの少年少女たち。
その集団から少しばかり離れたところでは、茶色の地面が肌を覗かせ、その周囲には土煙が舞っている。
やがて舞い上がる土煙が落ち着き、その中心部に立っていた「彼」が最初に発した言葉は、
目の前に立っている桃色の髪の少女に向けたものだった。
男の背丈は1.8メイル程度。
細身ではあるが、身につけた派手な装飾品のせいだろうか。かなりの威圧感がある。
大きく左右に突き出した肩当てと金の胸当てがついたローブをまとい、
1メイルちょっとの杖を持つところをみるとメイジなのは間違いない。
髪は金髪で角のような大きな髪飾りをつけていた。その顔は端正で、一見すると女性に見えないこともない。
だが、その整った顔からはぞっとするほどの冷酷さが感じられた。
現に、目前の少女に向けられた彼の視線は人間を虫けらと見下すような尊大なものであった。
ここは、ハルケギニアのトリステイン魔法学校。
魔法を使う「メイジ」を養成するための学校である。
トリステインの貴族の子弟だけでなく、他国の貴族の子弟も集う歴史ある魔法学校だ。
そして、今は春の召喚の儀の真っ最中であった。
一人前のメイジを目指す生徒達は、この儀式で各自にふさわしい使い魔を召喚し、契約を結ぶ。
これはトリステイン魔法学校の進級試験も兼ねている。
とはいえ、大半の生徒はすでに各々の使い魔を召喚し、契約を済ませてしまっていた。
トカゲの使い魔もいれば、鳥の使い魔の姿も見える。皆、契約を交わした主人の傍につき従っている。
残す生徒は桃色の髪をした少女「ルイズ」ただ一人のみである。
しかし、彼女の数十回に及ぶ召喚への挑戦は全て爆発を引き起こすという結果に終わっていた。
このルイズは貴族=メイジが常識であるこの世界で、貴族にも関わらず魔法が使えないのである。
そんなルイズの召喚=爆発に巻き込まれぬように、彼女の挑戦を遠巻きに眺める生徒たち。
初めのうちこそ「やっぱりゼロのルイズだな」と軽口を叩くものも多かったが、
その挑戦回数も20を数えようとしており、流石に皆も飽き始めていた。
なにしろ皆、自分の使い魔を得たばかり。さっさと部屋に戻り使い魔と戯れたいのが本音だろう。
「どうせ、成功しないのに」多くの者がそう思っていた。
「そろそろあきらめたら…」そう考える者もいた。
爆発音…再び巻き上がる土煙。
「あ…あれは!」
退屈を絵に描いたようなギャラリーの反応は、教師コルベールが発した驚きの声によって破られた。
そう、ルイズの前に広がる茶色のクレーター…爆発により大地がむき出しとなった空間、その中心に人影が現れたのである。
「ま、まさか…」
「でも、あれは人間?」
「しかも、貴族じゃないか?杖を持ってる…」
「おいおい、人間を使い魔にするのか?」
ギャラリーたる生徒たちは囁き合った。
「彼」を召喚してしまった当のルイズも、混乱していた。
ようやく『サモン・サーヴァント』に成功したと思ったら、現れたのは人間でしかも恐らくは貴族。
その貴族が明らかに自分を見下した態度で名前を尋ねてきたのだから。
「聞こえなかったか?…貴様は誰だと聞いている。」
当惑していたルイズに再び男が問いかける。それにしても初対面の相手に貴様とは失礼も甚だしい。
普段の彼女ならば、即座に文句の一つも返すところ。
だが、男の放つ威圧感…オーラとでも表現すればいいだろうか。
とにかく、ルイズはその男の雰囲気に圧倒されていた。軽く恐怖を感じていたと言ってもいい。
しかし、貴族としての矜持を持つルイズは使い魔に舐められることなどあってはならないと意を決して口を開く。
「ひ、人に名前を尋ねる前に自分が名乗ったら?」
男の片眉がピクンと跳ねた。
一方で他の生徒たちに近い位置…すなわちルイズから距離をとって眺めていた教師=コルベールも、
どうやらとんでもなく面倒な事態が起こったらしいことに気がついた。
格好からすると、召喚された男は貴族…それもかなり地位の高い男のようだ。
場合によっては外交問題、最悪戦争の危険もある。なにより、男の放つただならぬ雰囲気も気になる。
いくら召喚した本人だからと言っても、彼女一人に任せておくわけにはいかない。
まずはあの貴族に事情を説明せねば…とコルベールは男に近づいた。
他の生徒たちにはその場で待機するように指示を出し、男まで1メイル程度の距離まで歩みを進める。
だが、コルベールを余所に2人の会話は進む。
まずは自分から名乗れという少女の言葉を受けて、男は不機嫌さを隠さずに問いかけた。
「私を知らぬのか?」
「し、知らないわよ!」
知っていて当然と言わんばかりの言葉に、ルイズは即答する。
その返答は、さらに男を不機嫌にしたようだ。眉を顰め、その視線はさらに厳しくなる。
「無礼な…私は皇帝だ。」
男から予想を上回る言葉が飛び出し、ルイズをさらに混乱させた。
(こ、ここ皇帝!? 私、皇帝を召喚しちゃったの!?)
ちょうど二人の隣で話を聞いていたコルベールの驚きもまた相当なものだった。
地位の高そうな貴族だとは思っていたが、なんと皇帝だという。
付近で皇帝と言えば、まずはゲルマニアのアルブレヒト3世が頭に浮かぶ。
どこの皇帝にせよ、非常にまずい。このストレスは間違いなく頭髪に悪影響を与えるだろう。
幸いなことに少し距離があるので、他の生徒達には彼が皇帝であるという話は聞こえてはいないようだ。
こんな話が伝われば場はますます混乱するに決まっている。
まずは状況を説明することが肝要だ。そう考えたコルベールは、皇帝を名乗る人物に話しかける。
「横から申し訳ありません。私はジャン・コルベールと申します。」
男はゆっくりとコルベールに視線を向けた。
あいかわらず路傍の石でも見るような目だが、まだ少女よりも話になると思ったのだろう。
「では、コルベールとやら。そなたに聞こう。ここはどこだ?」
コルベールは男の機嫌を損ねないように、恭しく答える。
「ここはトリステイン魔法学院です」
「トリステイン?」
一方、召喚された男もいまだ事態を把握できていなかった。
自分はレジスタンスとの死闘の末に敗北し、今度こそ死が訪れたと思っていた。
しばらく眠っていたようにも、一瞬だったようにも思う。
はたまた、どこか異世界で戦っていた夢を見ていたようにも思う。
そんな中、ふと何かに呼ばれたように思い眼を開くと、青い空と緑の草原と自身を包む土煙―。
そして桃色の髪をした少女。さらには、初めて聞く「トリステイン」という言葉。
「トリステインとは地名か?」
男はコルベールに対して問いかける。
まずはここがどこかを知らなければならない。
一方のコルベールは、男の問いを受けてごく僅かだが安堵した。
トリステインを知らないとなると、皇帝と言ってもかなり遠方の国の皇帝だろう。
戦争にまで発展する可能性は激減する。外交問題以前に国交もないのだろう。
だからと言って、相手が君主である以上は機嫌を損ねるのは問題だ。
コルベールは、できるだけ丁寧に対応することに越したことはあるまいと考え説明する。
「えー、トリステインと言いますのは…」
だが、その男にとってコルベールの説明に出てくる地名はどれもこれも聞き覚えのないものばかりだった。
召喚された男、彼は皇帝…しかも世界支配に乗り出した皇帝だった。
世界のほとんどの地域を制圧し、世界支配の目前までいった。そんな彼が名すらも知らぬ国・地方が世界にあるものだろうか。
彼は異界よりの数多の魔物を呼び寄せ使役していたこともある。文字通りの地獄にも行った身だ。
ゆえに理解できた。ここは自分のいた世界ではないと。
確認のためにコルベールに問いかける。
「コルベールとやら。パラメキアを知っているか?」
「パ、パラメキア? それは地名でしょうか?」
コルベールの答えで、彼の予感はほぼ確信となった。
(やはり、ここは異世界で間違いないようだ。
我が世界の者なら、どんな辺境の者であろうと帝国の名を知らぬはずはない。
問題はなぜ余が異世界にいるのかだが…)
コルベールらが、自分がこの異世界に出現した理由について無関係とは思えない。
「コルベールよ。私は何故、このようなところにいるのだ?」
「そ、それは…」
「私の使い魔になるためよ」
言いよどむコルベールに代わり、言葉を発したのは桃色の髪の少女であった。
#navi(ウボァーな使い魔)
「…貴様は誰だ?」
澄み渡る青空の下に広がる新緑の草原。そこに集まっている十代半ばの少年少女たち。
その集団から少しばかり離れたところでは、茶色の地面が肌を覗かせ、その周囲には土煙が舞っている。
やがて舞い上がる土煙が落ち着き、その中心部に立っていた「彼」が最初に発した言葉は、
目の前に立っている桃色の髪の少女に向けたものだった。
男の背丈は1.8メイル程度。
細身ではあるが、身につけた派手な装飾品のせいだろうか。かなりの威圧感がある。
大きく左右に突き出した肩当てと金の胸当てがついたローブをまとい、
1メイルちょっとの杖を持つところをみるとメイジなのは間違いない。
髪は金髪で角のような大きな髪飾りをつけていた。その顔は端正で、一見すると女性に見えないこともない。
だが、その整った顔からはぞっとするほどの冷酷さが感じられた。
現に、目前の少女に向けられた彼の視線は人間を虫けらと見下すような尊大なものであった。
ここは、ハルケギニアのトリステイン魔法学校。
魔法を使う「メイジ」を養成するための学校である。
トリステインの貴族の子弟だけでなく、他国の貴族の子弟も集う歴史ある魔法学校だ。
そして、今は春の召喚の儀の真っ最中であった。
一人前のメイジを目指す生徒達は、この儀式で各自にふさわしい使い魔を召喚し、契約を結ぶ。
これはトリステイン魔法学校の進級試験も兼ねている。
とはいえ、大半の生徒はすでに各々の使い魔を召喚し、契約を済ませてしまっていた。
トカゲの使い魔もいれば、鳥の使い魔の姿も見える。皆、契約を交わした主人の傍につき従っている。
残す生徒は桃色の髪をした少女「ルイズ」ただ一人のみである。
しかし、彼女の数十回に及ぶ召喚への挑戦は全て爆発を引き起こすという結果に終わっていた。
このルイズは貴族=メイジが常識であるこの世界で、貴族にも関わらず魔法が使えないのである。
そんなルイズの召喚=爆発に巻き込まれぬように、彼女の挑戦を遠巻きに眺める生徒たち。
初めのうちこそ「やっぱりゼロのルイズだな」と軽口を叩くものも多かったが、
その挑戦回数も20を数えようとしており、流石に皆も飽き始めていた。
なにしろ皆、自分の使い魔を得たばかり。さっさと部屋に戻り使い魔と戯れたいのが本音だろう。
「どうせ、成功しないのに」多くの者がそう思っていた。
「そろそろあきらめたら…」そう考える者もいた。
爆発音…再び巻き上がる土煙。
「あ…あれは!」
退屈を絵に描いたようなギャラリーの反応は、教師コルベールが発した驚きの声によって破られた。
そう、ルイズの前に広がる茶色のクレーター…爆発により大地がむき出しとなった空間、その中心に人影が現れたのである。
「ま、まさか…」
「でも、あれは人間?」
「しかも、貴族じゃないか?杖を持ってる…」
「おいおい、人間を使い魔にするのか?」
ギャラリーたる生徒たちは囁き合った。
「彼」を召喚してしまった当のルイズも、混乱していた。
ようやく『サモン・サーヴァント』に成功したと思ったら、現れたのは人間でしかも恐らくは貴族。
その貴族が明らかに自分を見下した態度で名前を尋ねてきたのだから。
「聞こえなかったか?…貴様は誰だと聞いている。」
当惑していたルイズに再び男が問いかける。それにしても初対面の相手に貴様とは失礼も甚だしい。
普段の彼女ならば、即座に文句の一つも返すところ。
だが、男の放つ威圧感…オーラとでも表現すればいいだろうか。
とにかく、ルイズはその男の雰囲気に圧倒されていた。軽く恐怖を感じていたと言ってもいい。
しかし、貴族としての矜持を持つルイズは使い魔に舐められることなどあってはならないと意を決して口を開く。
「ひ、人に名前を尋ねる前に自分が名乗ったら?」
男の片眉がピクンと跳ねた。
一方で他の生徒たちに近い位置…すなわちルイズから距離をとって眺めていた教師=コルベールも、
どうやらとんでもなく面倒な事態が起こったらしいことに気がついた。
格好からすると、召喚された男は貴族…それもかなり地位の高い男のようだ。
場合によっては外交問題、最悪戦争の危険もある。なにより、男の放つただならぬ雰囲気も気になる。
いくら召喚した本人だからと言っても、彼女一人に任せておくわけにはいかない。
まずはあの貴族に事情を説明せねば…とコルベールは男に近づいた。
他の生徒たちにはその場で待機するように指示を出し、男まで1メイル程度の距離まで歩みを進める。
だが、コルベールを余所に2人の会話は進む。
まずは自分から名乗れという少女の言葉を受けて、男は不機嫌さを隠さずに問いかけた。
「私を知らぬのか?」
「し、知らないわよ!」
知っていて当然と言わんばかりの言葉に、ルイズは即答する。
その返答は、さらに男を不機嫌にしたようだ。眉を顰め、その視線はさらに厳しくなる。
「無礼な…私は皇帝だ。」
男から予想を上回る言葉が飛び出し、ルイズをさらに混乱させた。
(こ、ここ皇帝!? 私、皇帝を召喚しちゃったの!?)
ちょうど二人の隣で話を聞いていたコルベールの驚きもまた相当なものだった。
地位の高そうな貴族だとは思っていたが、なんと皇帝だという。
付近で皇帝と言えば、まずはゲルマニアのアルブレヒト3世が頭に浮かぶ。
どこの皇帝にせよ、非常にまずい。このストレスは間違いなく頭髪に悪影響を与えるだろう。
幸いなことに少し距離があるので、他の生徒達には彼が皇帝であるという話は聞こえてはいないようだ。
こんな話が伝われば場はますます混乱するに決まっている。
まずは状況を説明することが肝要だ。そう考えたコルベールは、皇帝を名乗る人物に話しかける。
「横から申し訳ありません。私はジャン・コルベールと申します。」
男はゆっくりとコルベールに視線を向けた。
あいかわらず路傍の石でも見るような目だが、まだ少女よりも話になると思ったのだろう。
「では、コルベールとやら。そなたに聞こう。ここはどこだ?」
コルベールは男の機嫌を損ねないように、恭しく答える。
「ここはトリステイン魔法学院です」
「トリステイン?」
一方、召喚された男もいまだ事態を把握できていなかった。
自分はレジスタンスとの死闘の末に敗北し、今度こそ死が訪れたと思っていた。
しばらく眠っていたようにも、一瞬だったようにも思う。
はたまた、どこか異世界で戦っていた夢を見ていたようにも思う。
そんな中、ふと何かに呼ばれたように思い眼を開くと、青い空と緑の草原と自身を包む土煙―。
そして桃色の髪をした少女。さらには、初めて聞く「トリステイン」という言葉。
「トリステインとは地名か?」
男はコルベールに対して問いかける。
まずはここがどこかを知らなければならない。
一方のコルベールは、男の問いを受けてごく僅かだが安堵した。
トリステインを知らないとなると、皇帝と言ってもかなり遠方の国の皇帝だろう。
戦争にまで発展する可能性は激減する。外交問題以前に国交もないのだろう。
だからと言って、相手が君主である以上は機嫌を損ねるのは問題だ。
コルベールは、できるだけ丁寧に対応することに越したことはあるまいと考え説明する。
「えー、トリステインと言いますのは…」
だが、その男にとってコルベールの説明に出てくる地名はどれもこれも聞き覚えのないものばかりだった。
召喚された男、彼は皇帝…しかも世界支配に乗り出した皇帝だった。
世界のほとんどの地域を制圧し、世界支配の目前までいった。そんな彼が名すらも知らぬ国・地方が世界にあるものだろうか。
彼は異界よりの数多の魔物を呼び寄せ使役していたこともある。文字通りの地獄にも行った身だ。
ゆえに理解できた。ここは自分のいた世界ではないと。
確認のためにコルベールに問いかける。
「コルベールとやら。パラメキアを知っているか?」
「パ、パラメキア? それは地名でしょうか?」
コルベールの答えで、彼の予感はほぼ確信となった。
(やはり、ここは異世界で間違いないようだ。
我が世界の者なら、どんな辺境の者であろうと帝国の名を知らぬはずはない。
問題はなぜ余が異世界にいるのかだが…)
コルベールらが、自分がこの異世界に出現した理由について無関係とは思えない。
「コルベールよ。私は何故、このようなところにいるのだ?」
「そ、それは…」
「私の使い魔になるためよ」
言いよどむコルベールに代わり、言葉を発したのは桃色の髪の少女であった。
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