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「ご立派な使い魔-15」(2013/05/21 (火) 21:59:53) の最新版変更点
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「で、ツェルプストーは何をしに」
「殿方! やはり一手お手合わせ願えませんこと?」
問いかけたルイズを華麗に無視して、キュルケはマーラに寄りかかる。
タバサは、友人のその姿に眉をしかめているものの、口出しはしていない。
「お主では到底入りきらぬとわかっていように、どうしたのじゃ」
「ええ。考えたのですけれど、殿方のその無数の触手ならと……」
「……一応、そっちは入る」
わざわざ色目を使いにきたというらしい。このキュルケは。
しかも、タバサを叩き起こしてまで……
ルイズはギーシュ以外にも頭痛の種が増えたと、どす黒いため息を吐き出した。
「グワッハッハ。確かにのう。よう考えたものだわな」
「でしょう? でしたら……」
「しかしな、赤毛の小娘。お主はまだまだ未熟ゆえに、ワシの一部であろうとも受け入れはできまいぞ」
「あ……あたしが未熟?」
はっ、と口を開けて驚くキュルケだ。
盲点を突かれた、とでも言うような。
「ただ受け入れられればよいというものではない。
お主が今まで積んできたあらゆる修練の……その全てが試されるのじゃ。
果たしてお主の歩んできた、全ての道は……ワシを受け入れる自信を生み出せるかな」
「そ……それは……」
キュルケの脳裏に浮かぶのは、これまで微熱とともに誘ってきた数多くの男達。
量も質も、決して悪いものではないと思える。
しかし……その全てが全身全霊を焼き尽くす業火だったのだろうか。
それは、決して肯定しきれないことである。
「あたしは……あたしは、殿方を受け入れるにはまだ自信がありませんわ」
「で、あろうさ。何、人の生は短いが、その密度は悪魔とは比べ物にならぬほどに濃いもの。
お主であれば幾たびかの試練を経て、ワシともやりあえるようになろうぞ」
「はい……!」
キュルケの目に、再び炎が宿った。
しかしこれは、微熱の炎ではない。百年を経ても燃え続ける執念の炎である。
「じゃあ帰るわ。お邪魔したわねルイズ」
「え」
「それじゃいきましょ、タバサ。殿方、必ずや数年後には……!」
「グワッハッハ。楽しみにしておるぞ」
言い残すが早いか、キュルケはまたシルフィードに乗り、その場を去ろうとする。
慌てて、ルイズはそのキュルケに掴みかかった。
「あ、あんた、本当にそのためだけにここに来たの!?」
「もちろん。朝方、ついに殿方を受け入れられる手段を思いついた! ってね。
そうしたら貴方達が出かけようとしていたから……」
「本気で……そのためだけに?」
タバサが、疲れた様子で顔を上げる。
「純粋にそれだけ」
「……わたしの周囲にまともな人間はいなくなっちゃったの?」
控えめにタバサが自分を指差しているが、ルイズは気づかなかった。
もうあまりのショックに、開いた口もふさがらない。
「は……はははは。なかなか情熱的なお嬢さんだね」
「あら、貴方は?」
見るに見かねて、ワルドがフォローに入ってくる。
枯れ木のようになっているルイズを、ワルドは庇うようにして立った。
「なかなか素敵な人ね。ねえ、情熱をご存知?」
「いや知ってはいるがね。しかしその、ご立派へ向けての腰掛けという扱いはご遠慮願いたいな」
「ふふ。そう、残念ね」
あまり残念でもなさそうにキュルケは笑う。
ワルドはその様子に一粒の冷や汗を流しながら、そっとルイズに囁いた。
「……なんというか、苦労していたんだね、僕のルイズ」
「……ええ……」
まあ、でも面白いからという理由で、キュルケとタバサも同行することになった。
お忍びの旅とかはどうでもいいのだろうか。
「もう、ここまで来たら諦めるしかないわ。そうよ、あいつさえ倒せばきっと……」
「期待できねー気もするけどな、娘ッ子」
とまあ、どうでもいいらしい。
宿に到着してもその様子は変わりなかったが、どうせ船が出るのは最速でも明後日という話なので、今日は休むことになる。
急ぎたいところではある。しかしこればかりは、どうにかしろと言ってどうにかなる問題でも……一応、ない。
ワルドは、そのあたりの事情を解説しながら鍵束を持ってきた。
「では部屋割りだが」
「わたし、ワルドと一緒の部屋がいいわ!」
「あら」
「へえ」
真っ先に手をあげたルイズに、キュルケとギーシュが目を丸くする。
同室を自分から申し出るとはなんとも大胆である。
「ルイズってば……とうとう春の訪れかしら」
「積極的な女性というのも悪くはないね」
冷やかしを受けても、ルイズは焦ったりはしなかった。
ただ言い返すのみである。
「ワルドはそんな人じゃないもの。色ボケのあんた達とは違うんだから!」
「は……ははは。そこまで信頼してもらえるのも、まあ、それはそれで複雑だな」
自分から言い出すつもりだったんだけどなあ、とワルドは首を捻った。
まあ手間が省けたと考えれば、それでいいのかもしれない。
「そうなると僕とルイズ。それから、キュルケとタバサ。……ええとだね、ギーシュと……」
「ふむ。いつも通り、ワシは小娘と同じ部屋で……」
「だ、だだだだダメよ! ダメなんだから!
ほ、ほほほ、ほら! 婚約者と一緒なのよ!? いいいいくら使い魔ったって、そそそ、そういうのは、ダメ!」
必死になるルイズである。
旅先にまで来てこれと一緒に眠るなどとは、あまり考えたくもない。
そんなルイズに、意外なところから助け舟が出た。
「では、先生は僕と同室ということでは如何でしょうか。
先生のお話を一晩中お聞きするというのは、一度受けてみたかったのです」
なんとギーシュである。空気を読んだ発言だ。
しかも更に意外なことには、
「うむ、そうじゃな。いつも小娘の面倒ばかり見るというのも味気ないわな。
ギーシュよ、とくと語り聞かせてくれようぞ」
マーラまでそう言った。ルイズも、それには驚く。
「あ、あんた達……?」
「ふっ……流石に初夜を邪魔するほどには、ね……」
「最初の一回、未経験ゆえに不手際となる。これもまたよき経験なるかな」
またしても理不尽な誤解。
でも誤解でもなんでも、それで引き下がってくれるんならそれでいい。
そうも思った。
「……そうじゃないけどそれでいいわ」
「うーん……まあ、物分りのいいご友人と使い魔ということになるのかな」
ワルドもヒゲを掻きつつ、困ったように呟いた。
部屋に入って、二人きりになった途端、ルイズはベッドに倒れこんだ。そして手足を伸ばし、吐息をこぼす。
一方のワルドは椅子に腰掛けて、そんなルイズを観察している。
「ああ……開放感。どれくらい久しぶりなのかしら、こんなに素敵な気分……」
「どうしたんだい、ルイズ。随分嬉しそうな声を出して」
「だってワルド……」
ルイズは身体を起こすと、うっとりとした目をワルドに向ける。
「アレがいないの! すぐ傍に、あいつがいないのよ!
こんな気分……ここまで爽快だなんて!
部屋がピンク色に染まっていないのって、こんなに素晴らしいことだったのね!」
「そ、そうなのかい。よ、良かったじゃないか」
「ええ、本当に……!」
すっかり顔が緩んでいるルイズだが、逆にワルドは顔を引き締めた。
そして一言一言を誤らぬように、ゆっくりと口を開く。
「ところでルイズ。君に、言いたいことがあるんだ」
「……?」
まだうっとりしていたルイズは、この口調に真剣さが含まれていることに気づき、改めてワルドを見た。
表情もきりりと引き締まっている。受け流していいようには見えない。
「どうしたの、ワルド?」
「この任務が終わったら、僕と結婚しよう」
結。
婚。
「え……」
「ずっとほったらかしにしていたことは謝るよ。でも、今の僕には君が必要なんだ。
君の力は、君が思っているほど小さなものじゃない」
「そんな、でも……」
ワルドの言葉は真剣そのもので、ルイズは夢を見ているのかと錯覚するほどだった。
それに結婚してしまえば、こんな生き地獄からも逃れられるのでは……
そんな夢想が一瞬にして広がる。しかしそれは、当のワルドの言葉で打ち砕かれた。
「実際、君の使い魔はあんなにも強大で、恐るべき力を持っているじゃないか。
使い魔を見ればメイジがわかるとは良く言うけれど、ルイズ。
君はまさにその……」
よりによって。
ここでマーラを持ち出してくるか。この男。
「……ダメよ」
「まさに君の実力を証明する、伝説……え? なんだい?」
「ダメ。今のわたしは貴方と結婚することなんて出来ないわ」
「……どうしてなんだい、ルイズ」
ワルドの表情が曇り、一瞬剣呑な輝きを帯びる。
が、ルイズはその表情に気づくこともなく、告げた。
「わたしの使い魔がいるんだもの。……アレがついてくる結婚生活なんて考えられない」
「……使い魔は常に一緒じゃないか。それは仕方ない……」
「仕方ないなんて割り切れないのよ!」
ルイズは。
気づかぬうちに手を振り、首を振って、全身でプロポーズを拒絶している。
「だからワルド! せっかくのお誘いだけど、わたし、受けることなんて出来ない!」
「ルイズ……じゃあ、どうすればいいんだ?」
「どう……すれば?」
ここだ。ここしかない。
「マーラを倒して。それが出来たらわたし、貴方と結婚する」
「き……君の使い魔を? あのご立派を?」
「そう……そしたら結婚でもなんでもするわ、わたし」
「なんでも、か。それはなんとも、楽しみなことだよ」
凍った表情で、ワルドは小さく呟いた。
そして同時に、
「アレに……勝つ。勝てるのか、僕が……」
全ての虚飾を取り払った『男そのもの』、その矜持が放った言葉だった。
#navi(ご立派な使い魔)
「で、ツェルプストーは何をしに」
「殿方! やはり一手お手合わせ願えませんこと?」
問いかけたルイズを華麗に無視して、キュルケはマーラに寄りかかる。
タバサは、友人のその姿に眉をしかめているものの、口出しはしていない。
「お主では到底入りきらぬとわかっていように、どうしたのじゃ」
「ええ。考えたのですけれど、殿方のその無数の触手ならと……」
「……一応、そっちは入る」
わざわざ色目を使いにきたというらしい。このキュルケは。
しかも、タバサを叩き起こしてまで……
ルイズはギーシュ以外にも頭痛の種が増えたと、どす黒いため息を吐き出した。
「グワッハッハ。確かにのう。よう考えたものだわな」
「でしょう? でしたら……」
「しかしな、赤毛の小娘。お主はまだまだ未熟ゆえに、ワシの一部であろうとも受け入れはできまいぞ」
「あ……あたしが未熟?」
はっ、と口を開けて驚くキュルケだ。
盲点を突かれた、とでも言うような。
「ただ受け入れられればよいというものではない。
お主が今まで積んできたあらゆる修練の……その全てが試されるのじゃ。
果たしてお主の歩んできた、全ての道は……ワシを受け入れる自信を生み出せるかな」
「そ……それは……」
キュルケの脳裏に浮かぶのは、これまで微熱とともに誘ってきた数多くの男達。
量も質も、決して悪いものではないと思える。
しかし……その全てが全身全霊を焼き尽くす業火だったのだろうか。
それは、決して肯定しきれないことである。
「あたしは……あたしは、殿方を受け入れるにはまだ自信がありませんわ」
「で、あろうさ。何、人の生は短いが、その密度は悪魔とは比べ物にならぬほどに濃いもの。
お主であれば幾たびかの試練を経て、ワシともやりあえるようになろうぞ」
「はい……!」
キュルケの目に、再び炎が宿った。
しかしこれは、微熱の炎ではない。百年を経ても燃え続ける執念の炎である。
「じゃあ帰るわ。お邪魔したわねルイズ」
「え」
「それじゃいきましょ、タバサ。殿方、必ずや数年後には……!」
「グワッハッハ。楽しみにしておるぞ」
言い残すが早いか、キュルケはまたシルフィードに乗り、その場を去ろうとする。
慌てて、ルイズはそのキュルケに掴みかかった。
「あ、あんた、本当にそのためだけにここに来たの!?」
「もちろん。朝方、ついに殿方を受け入れられる手段を思いついた! ってね。
そうしたら貴方達が出かけようとしていたから……」
「本気で……そのためだけに?」
タバサが、疲れた様子で顔を上げる。
「純粋にそれだけ」
「……わたしの周囲にまともな人間はいなくなっちゃったの?」
控えめにタバサが自分を指差しているが、ルイズは気づかなかった。
もうあまりのショックに、開いた口もふさがらない。
「は……はははは。なかなか情熱的なお嬢さんだね」
「あら、貴方は?」
見るに見かねて、ワルドがフォローに入ってくる。
枯れ木のようになっているルイズを、ワルドは庇うようにして立った。
「なかなか素敵な人ね。ねえ、情熱をご存知?」
「いや知ってはいるがね。しかしその、ご立派へ向けての腰掛けという扱いはご遠慮願いたいな」
「ふふ。そう、残念ね」
あまり残念でもなさそうにキュルケは笑う。
ワルドはその様子に一粒の冷や汗を流しながら、そっとルイズに囁いた。
「……なんというか、苦労していたんだね、僕のルイズ」
「……ええ……」
まあ、でも面白いからという理由で、キュルケとタバサも同行することになった。
お忍びの旅とかはどうでもいいのだろうか。
「もう、ここまで来たら諦めるしかないわ。そうよ、あいつさえ倒せばきっと……」
「期待できねー気もするけどな、娘ッ子」
とまあ、どうでもいいらしい。
宿に到着してもその様子は変わりなかったが、どうせ船が出るのは最速でも明後日という話なので、今日は休むことになる。
急ぎたいところではある。しかしこればかりは、どうにかしろと言ってどうにかなる問題でも……一応、ない。
ワルドは、そのあたりの事情を解説しながら鍵束を持ってきた。
「では部屋割りだが」
「わたし、ワルドと一緒の部屋がいいわ!」
「あら」
「へえ」
真っ先に手をあげたルイズに、キュルケとギーシュが目を丸くする。
同室を自分から申し出るとはなんとも大胆である。
「ルイズってば……とうとう春の訪れかしら」
「積極的な女性というのも悪くはないね」
冷やかしを受けても、ルイズは焦ったりはしなかった。
ただ言い返すのみである。
「ワルドはそんな人じゃないもの。色ボケのあんた達とは違うんだから!」
「は……ははは。そこまで信頼してもらえるのも、まあ、それはそれで複雑だな」
自分から言い出すつもりだったんだけどなあ、とワルドは首を捻った。
まあ手間が省けたと考えれば、それでいいのかもしれない。
「そうなると僕とルイズ。それから、キュルケとタバサ。……ええとだね、ギーシュと……」
「ふむ。いつも通り、ワシは小娘と同じ部屋で……」
「だ、だだだだダメよ! ダメなんだから!
ほ、ほほほ、ほら! 婚約者と一緒なのよ!? いいいいくら使い魔ったって、そそそ、そういうのは、ダメ!」
必死になるルイズである。
旅先にまで来てこれと一緒に眠るなどとは、あまり考えたくもない。
そんなルイズに、意外なところから助け舟が出た。
「では、先生は僕と同室ということでは如何でしょうか。
先生のお話を一晩中お聞きするというのは、一度受けてみたかったのです」
なんとギーシュである。空気を読んだ発言だ。
しかも更に意外なことには、
「うむ、そうじゃな。いつも小娘の面倒ばかり見るというのも味気ないわな。
ギーシュよ、とくと語り聞かせてくれようぞ」
マーラまでそう言った。ルイズも、それには驚く。
「あ、あんた達……?」
「ふっ……流石に初夜を邪魔するほどには、ね……」
「最初の一回、未経験ゆえに不手際となる。これもまたよき経験なるかな」
またしても理不尽な誤解。
でも誤解でもなんでも、それで引き下がってくれるんならそれでいい。
そうも思った。
「……そうじゃないけどそれでいいわ」
「うーん……まあ、物分りのいいご友人と使い魔ということになるのかな」
ワルドもヒゲを掻きつつ、困ったように呟いた。
部屋に入って、二人きりになった途端、ルイズはベッドに倒れこんだ。そして手足を伸ばし、吐息をこぼす。
一方のワルドは椅子に腰掛けて、そんなルイズを観察している。
「ああ……開放感。どれくらい久しぶりなのかしら、こんなに素敵な気分……」
「どうしたんだい、ルイズ。随分嬉しそうな声を出して」
「だってワルド……」
ルイズは身体を起こすと、うっとりとした目をワルドに向ける。
「アレがいないの! すぐ傍に、あいつがいないのよ!
こんな気分……ここまで爽快だなんて!
部屋がピンク色に染まっていないのって、こんなに素晴らしいことだったのね!」
「そ、そうなのかい。よ、良かったじゃないか」
「ええ、本当に……!」
すっかり顔が緩んでいるルイズだが、逆にワルドは顔を引き締めた。
そして一言一言を誤らぬように、ゆっくりと口を開く。
「ところでルイズ。君に、言いたいことがあるんだ」
「……?」
まだうっとりしていたルイズは、この口調に真剣さが含まれていることに気づき、改めてワルドを見た。
表情もきりりと引き締まっている。受け流していいようには見えない。
「どうしたの、ワルド?」
「この任務が終わったら、僕と結婚しよう」
結。
婚。
「え……」
「ずっとほったらかしにしていたことは謝るよ。でも、今の僕には君が必要なんだ。
君の力は、君が思っているほど小さなものじゃない」
「そんな、でも……」
ワルドの言葉は真剣そのもので、ルイズは夢を見ているのかと錯覚するほどだった。
それに結婚してしまえば、こんな生き地獄からも逃れられるのでは……
そんな夢想が一瞬にして広がる。しかしそれは、当のワルドの言葉で打ち砕かれた。
「実際、君の使い魔はあんなにも強大で、恐るべき力を持っているじゃないか。
使い魔を見ればメイジがわかるとは良く言うけれど、ルイズ。
君はまさにその……」
よりによって。
ここでマーラを持ち出してくるか。この男。
「……ダメよ」
「まさに君の実力を証明する、伝説……え? なんだい?」
「ダメ。今のわたしは貴方と結婚することなんて出来ないわ」
「……どうしてなんだい、ルイズ」
ワルドの表情が曇り、一瞬剣呑な輝きを帯びる。
が、ルイズはその表情に気づくこともなく、告げた。
「わたしの使い魔がいるんだもの。……アレがついてくる結婚生活なんて考えられない」
「……使い魔は常に一緒じゃないか。それは仕方ない……」
「仕方ないなんて割り切れないのよ!」
ルイズは。
気づかぬうちに手を振り、首を振って、全身でプロポーズを拒絶している。
「だからワルド! せっかくのお誘いだけど、わたし、受けることなんて出来ない!」
「ルイズ……じゃあ、どうすればいいんだ?」
「どう……すれば?」
ここだ。ここしかない。
「マーラを倒して。それが出来たらわたし、貴方と結婚する」
「き……君の使い魔を? あのご立派を?」
「そう……そしたら結婚でもなんでもするわ、わたし」
「なんでも、か。それはなんとも、楽しみなことだよ」
凍った表情で、ワルドは小さく呟いた。
そして同時に、
「アレに……勝つ。勝てるのか、僕が……」
全ての虚飾を取り払った『男そのもの』、その矜持が放った言葉だった。
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