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#navi(ルイズとヤンの人情紙吹雪)
ドゴォーーン
チュドーーン
バゴォーーン
本日、何回目だかわからない爆発が響く。
「へへへ。 どうせまた失敗だろぉがよ。」
「無理に決まってらぁ~。 『ゼロ』だからなぁ!」
「うーん これは成功だろ。 どうだ?」
「残念。 失敗です。」
周りの生徒達がはやし立てる中、桃色の髪の少女は言う。
「ミ、ミスタ・コルベール! もう一度だけ! もう一度だけチャンスを下さい!」
爆発を起こしまくっていた張本人ことルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、つるっ禿げの中年に嘆願した。
「…わかりました。 ではこれで最後にしましょう。 なに 駄目だったらまた明日挑戦すればいいのです。 リラックスですよ ミス・ヴァリエール。」
禿げた教員、ジャン・コルベールは優しく微笑んだ。
「……はい!」
ルイズは一瞬だけ笑顔になったが、すぐに顔をキリッとさせ集中する。
「(大丈夫よ…ルイズ…集中よ…集中するの! 次は絶対に成功するわ! ドラゴンとかグリフォンとか贅沢は言わないから! 何でもいいからお願い!)」
ルイズは渾身の力をこめて杖を振るう。 全然リラックスしていなかった。
「我が名は『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』! 五つの力を司るペンタゴン! 我の運命(さだめ)に従いし、使い魔を召還せよ!!!」
ズゴォァオォーーーーーン!
「うおぉ! 一段とすげー爆発だ!」
「ぬわあぁぁぁぁぁ!」
あたりを煙がもうもうと包む。
風が煙を散らしていくと、爆発の中心には何やら陰が見えるような気がする。
「こんどこそ成功だ。 どうだ。 当たりだろ?」
「おほ 正解です。 さすが。」
「(成功した!? や、やったぁぁーーー! 成功したわ♪ 何かいるもの! 進級できる! もうゼロじゃないわ!)」
煙が完全に霧散した。
そこには一人の男が片膝をついていた。
杖はもっていない。マントもしていない。
眼が描かれたツバのない帽子をずっぽりとかぶり見慣れぬ黒い服で全身を覆っているが、常識で考えれば間違いなく平民であった。
「あ、あぁ!? なんてこったーーー!」
「げぇ! 平民だ! 男の平民だー! ゼロのルイズが平民を召還したぜーー!」
げらげらげら。観衆達があざけり笑う。
呼び出された男は戸惑っていた。状況がまったくわからなかった。
「(………? どこだここ? ボイン婦警もジジイも淫売ビッチもいねー。 …………『あの人』達が助けてくれたってのか? ………ありえねーありえねーー……あーーと…俺たしかーあー
燃えたよな? ありゃ? 右腕も直ってやがる。 なんでだ? 状況が見えねー。)」
男はあたりをキョロキョロと見回す。
「(………ガキ? なんでガキどもに囲まれて笑われてんの俺? しかもなんなんだーこの格好。 杖とマントだぁ~~?)」
げらげら笑う子ども達を尻目に彼は思考にふける。
自分は『奴ら』に情報ゲロしそうになって、で 『連中』に燃えカスにされた。
ボハッてカスになっておっ死んだ。
確実に100%。
死んだのに生きている。自分の記憶は死んだときのことを知っているのに?
男の頭の中を思考がぐるぐるとまわっていたが何も答えはでなかった。
彼は頭は悪いわけではなかったが、考えるのは好きじゃなかった。
なにも考えず『欲望の赴くまま』というのが好きだったし楽しかった。
「(考えるのは兄(あん)ちゃんの仕事だったからなぁ~。 ひょっとしてここって天国?…いや俺だったら地獄か でもなーあーもーメンドくせー全然わかんねー。)」
男が思考を放棄し、ムカつくガキどもは皆殺しにでもすりャイイんじゃね?と思いかけた時、一人の少女が近づいてきた。
「(お 結構イイ女ぁー 胸はねーけど顔はイイしィー穴ありゃじゅーぶんだぜ 犯りてぇ つか犯るか。)」
イイ女は犯ったあと喰う。男は喰う。召喚された男は短絡的でシンプルかつ物騒な化物(フリーク)の端くれだった。
「………で…。」
少女はうつむきながら何事かを呟いた。
「ん?」
なになに?愛の告白?初対面でいきなり言われても僕様こまっちング。 とりあえずおちかづきに一発……。
男は埒も無いことを考えていた。
そんな男をよそに少女は声を絞り出した。
「…………ッ! なんで…なんでよ…………なんでなのよッ! ようやく召喚できたと思ったのに! なんであんたみたいなタダの平民がでてくるのよ!」
「…は?」
残念。告白ではなかった。
「たしかに何でもいいって思ったけど…! でもッ! 平民なんて…納得いかないわ! ミスタ・コルベールッ!サモン・サーヴァントのやり直しを要求します! 」
少女は肩を震わせ声を荒げてコルベールに怒鳴る。
コルベールは一瞬、言葉につまり沈黙した。
コルベールの返事はルイズにとって悲しいものであった。
「……ミス・ヴァリエール。 サモン・サーヴァントは神聖なもの…。 呼び出された者が例え平民であっても……例外は認められませんし、認めてもいけないのです…。 さぁ契約を。」
「そんな………。」
ルイズはガックリとうなだれてしまう。眼にうっすらと涙を浮かべていた。
「わ、私のファーストキスが……。」
しばらくブツブツ言っていたが、すくっと立ち上がると彼女は黒ずくめの男に向かって指をビシぃッと突き立てた。
「感謝しなさい! き、貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだからね!」
なにを言っとるんだコイツら。契約ってなンだよ。告白じゃねーのかよ。
さらに近づいてくる少女。
「我が名は『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ。」
男は少し警戒した。わけのわからないことを言って近づいてくる少女は不気味だ。美人といっても。
「(まぁボインの婦警の例もあるからな。 ヴァンパイアってこたぁねーだろーが見た目どーりかどーか少し警戒しとくか。)」
それにしても目の前の少女からは敵意や殺意が感じられなかったのでアンパイだと判断する。
男がさっきから攻撃的な性格をあからさまにしないのは、一人の中年の視線が気になっていたからだった。
チラッと禿げた男に眼をやる。
この男からは、自分の右腕をちぎってくれた老いぼれと同じ臭いがする。
こびり付いた血の臭い…。
こいつは少しヤバそーな奴だ。見た目はトボけてるが油断できねー。
だがそれでも脅威ではない。この距離ならこの禿げた男にも対応できる。
この禿げだけに注意を払ってりゃ問題ネぇ。そう判断した。
それらを思考してるうちに、少女の顔が視界いっぱいに広がってきた。
「!」
男は驚いた。当然だ。これはキスだ。自分はキスされかけている!
攻撃的なものだったらもちろん避ける。これは当然避けなかった。
「(おほ ビックラこいたがこいつはラッキーだ。 マジでこんなコトあんだナぁ。 こんなカワイ子ちゃんが俺に一目惚れなんてよー。 アローアロー もしもし(多分死んでるので)天国の兄ちゃん 聞こえてるーーー?
アーアーこちら元ヘルシングぶっ殺し大軍団長ヤンでーーーす オーイエーー 僕チンやりました これからは俺様の時代です。)」
男は驚いていたが、はっぴーだった。 禿げに警戒をしつつ、そしてコーラを飲んだらゲップがでるぐらい当然ってぐらいに舌をつっこんだ。
「(とーぜんだろー こんぐらいしてやんネーとムシロしつれーだろ。 美少女とのベーゼですよ? やらいでか!)」
「!!!!」
ルイズは驚愕した。
突然何かが(ベロしかありえないのだが)口を割って歯の裏をなぞり、自分の舌に絡まってきたのだ。
舌はどんどん奥に侵入してくる。
初心な少女は一瞬で男の侵入を許してしまった。
「!……っ!……んーー!…んっ!!~~ッ!……っ!ッ!ンん~ッ!」
当然ディープキスも初めてだった。
ルイズは必死に入り込んできた舌を自分の舌で押し返そうとしたが、かえって絡み合いを助長する結果となった。
抵抗を積極性と、盛大に勘違いした男は俄然ヤル気をだしてきた。
ゆっくりネトツクように、そして時に激しく貪るように。
男の舌は縦横無尽に少女の口内を舐め回した。
男の唾液が口内に送られてくる。
そして少女の唾液が男に舌ごと吸い取られた。
男の口に導かれたベロは男の歯にやわやわと甘噛みされ擦られ、そしてまた吸われる。
クチュッ クチュッ とネトツク粘液の音が静まり返った空間に響いた。
ルイズは音によって耳からも理性を剥がされていった。
この男の匂いが、唾液とともに自分の中に染み渡ってイくような気がした。
強く閉じられていたルイズの眼は今は半開きで目尻にうっすら涙を溜めて蕩けてきていた。
頬は真っ赤に上気し、全身もうっすら桃色に高揚し、不思議な痺れが背筋を貫いていた。
抵抗も少しずつ弱まっていきルイズの口は男に蹂躙されるがままとなっている。
「ん……っ…はぁッ……んぅ………ん、ん~…ッン!…ふぅ……はっ、ンッ…」
息苦しきなったルイズは自分の口内に溜まっていた、男と自分の唾液が交じった体液をこくこくと飲み干していた。
自分の中の女が、ずぐッと疼くのを感じながらルイズの思考からは完全に理性が失われていた。
そのあまりに激しいキスシーンに観衆達は唖然としていた。
まだまだ子どもで健全な少年少女達には余りにも、生々しくキワドかった。むしろアウトだった。
みんな唾をゴクッと飲み込みながら食い入るように、顔を真っ赤にしながら見つめていた。
大人びてみせるナイスバデーの赤毛の少女や、冷静沈着鉄面皮な青毛の少女も顔を上気させ視線を泳がせていた。
独り身の長い禿げ教師、コルベールも愕然とし対応に困っていた。
「(な、なんと羨まげふんげふん! 違う! 断じて違う! 私は違うはずだ!くっ 中断すべきなのか! しかしそれで契約失敗などということになってはミス・ヴァリエールがッ!)」
コルベールは結局動けなかった。
銀の糸がひかれ、ツゥッと伸びて唇と唇は離れていった。
気のせいかルイズは少し惜しいような所作だった。
長い長いディープキスから開放されると、ルイズはその場にペタンッと尻餅をついた。
いまだに息は荒く頬を染めている。目は虚ろで男に釘付けになっていた。
「はぁッ…はぁ……はぁ……ハァ……」
開放した男はニィッと口の端を吊り上げ笑う。
「よー どうだった? 俺のキスは満足してくれたkいだだだだだだだだだだだだ! いッいたッ痛 痛 痛 痛ーーーッ!」
男が突然左手を庇うように掴んで転げまわる。
その様にルイズも観衆もハッと我に返った。
「なん…なんだ コラァッ!!! オイ コラ テメェーーーーッ 女ァ~~~~ッ!! 俺に何しやがったぁ!!」
さっきまで自分もノリノリでキスしていた癖に、それを棚に上げて敵を見るような鋭い目でルイズを睨んできた。
慌ててルイズは男に説明した。
「だ、大丈夫よ! それはルーンが刻まれてるの! す、すぐに痛みは消えるわよ!」
「テメェーー適当言いやがってェェェェー! メチャクチャいてーぞ!!! まだ痛みきえ………………あ 消えた。」
男が騒ぎ出したことで逆に冷静さを取り戻した観衆は
「いやーイイもんみさせてもらいましたな。」
「うむ。 勉強になったな。」
「フン ゼロのルイズに一つだけ先を越されたわ ポッ。」
などと盛り上がっていた。
その中で赤毛の少女は一人、新たな決意を固めていた。
「あの使い魔のキス……いただくわ!」
赤毛はすっかり黒い男に魅せられていた。
隣で青毛の少女は、ハァっ呆れたような溜め息をついていた。
男は不思議そうに左手をぷらぷらさせたいた。
「ほぉ それが君のルーンかい?」
「おわ! なんだイキナリ! テメェーむさっ苦しいぞッ コラッ!」
痛みの余り警戒が散漫になったとはいえイキナリ距離を詰めてきた禿げにビックリした。
やっぱコイツただもんじゃねーな。
「ちょっと失礼。 ふむふむ ほぉ ほほ~ これはめずらしいな。 ちょっとスケッチさせてもらっていいかな。」
そう言うと、許可も待たずさっさと左手の模様を写し取ってしまった。
「さて 皆さん。 これにて儀式は無事終了ですね。 では解散。」
そう宣言するとコルベールはそわそわしている感じでさっさと飛んで帰ってしまった。
何か気に掛かることがあるようだ。飛ぶように帰ったんじゃない。飛んで帰った。
そう飛んで。
まさしく物理的に飛んで。
「じゃーなーゼロのルイズ! 俺たち先帰ってるからな!」
「へへ おまえは歩いてこいよ! ゼロ!」
「キスはできても飛べもしないのよね! さすがゼロね!」
観衆達も口々にそんなことを言いながら飛んでいった。
飛んだ…。
…。
……。
「と、飛んだーーーーッ!? なんだ! どうなってやがる! こいつらみんなヴァンパイアか! いやいやいやいや『連中』だってアーカードだって飛ぶなんて聞いたことねーぞッ!!!」
男はかつてないほど驚いていた。
色々とエグイものも見てきたし、自分だって『あの人』と関わってからはフリークの仲間入りだ。
世間から見たら、自分は十分に非科学的だろうが。
それにしてもファンタジーだ。信じられなかった。
「なによ あんた魔法も見たことなかったの? どんな田舎から来たのよ! それよりも名乗りなさい! いつまでも平民が名乗らないのは無礼だわ! そそそそそれに、ああああんなことを私にするなんてっ!!」
「あー? キスのこと言ってんのか? あれはオメェーからしてきたんだろーが。」
「わわわわ私はああああああそこまでする気なんてなかったのよ! こ、この馬鹿犬! 平民とファーストキスで……しかもしししし舌までッ!! あんなことしなくても契約できたのよ!!!」
飛んだことといい契約とかいい、わけのわからないコトだらけだ。
「なーなーさっきから言ってる契約ってなーんだよー? 左手関係してるわけ? テメェーが俺の左手にナンカしたのか?」
少女は無い胸を張りながら得意そうに答える。
「そうよ それは使い魔のルーンよ! あなたは私の使い魔になれたのよ! 感謝しなさい!」
まさしくエッヘンという感じだが。
男はやっぱりさっぱりだった。あーーー兄ちゃ~~ん たーすーけーてー。すでに死んでいるであろう兄に助けを求めてみた。
ワンちゃんに喰われました。ワンちゃんに。素敵ですね。素敵ですよね。素敵です。
兄のヘンなつぶやきが聞こえた気がした。あの兄貴なら食われそうだなー。所詮俺ら兄弟は雑魚だしな。
「そんなことよりあんた名前は!? いい加減名乗りなさいよ!!」
「うるせーなー まずはテメーが名乗れよ おちびちゃん。」
男は心底気だるそうに言う。
「な、なんですって! ……もぅなんなの、あんた! 私は貴族なのよ!? 無礼だし、ああああああんなことまでするし最低よ!!」
少女は顔を真っ赤にして怒っている。
よほどディープキスが響いているようだ。
「あーーーうるせーうるせー じゃーもー俺もいいわ 別に よくわかんネェけどテキトーにやってみっからさーーーーじゃーーねー。」
男はクルッと振り向くと右手をヒラヒラさせてスタスタと歩き去ろうとする。
慌てたのはルイズだった。
サモン・サーヴァントもコントラクト・サーヴァントも成功させたのに!
人生で初めて成功させた魔法なのに!
ここで逃げられてしまえば自分はまたゼロに戻ってしまう。
それだけは何としても避けたかった。
「ちょ、ちょっとどこ行く気よ!? わ、わかったわよ しょうがないわね! 私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ! 覚えておきなさい! これから一生使えるご主人様なんだからね!
さあ今度こそあんたの番よ! 名乗りなさい馬鹿犬!!」
男はこちらを振り返ると特徴的な帽子の上からガリガリ頭を掻いた。
「しょーがねーなーーー耳のクソ穴かっぽじってくださいねーーよーーく聞けよルイズちゃん 僕様チャンの名前はヤン・バレンタインーーーーッ 性がバレンタインで名前がヤンでーーす 初めましてー
よーろーしーくーねー まぁ深ーいキスで愛を確かめ合った中だし? これからも仲良くしよーぜ。 詳しく話ししてーしオメーの部屋行くぞ。」
ルイズは、誰も確かめてないわよ!などと顔を真っ赤にしてキレテいたがヤンはどこ吹く風だった。
これが後世に伝わる伝説の主従の出会いだった。
つづく
かも
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