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「”舵輪(ヘルム)”の使い魔-04」(2009/02/28 (土) 23:57:26) の最新版変更点
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#navi(”舵輪(ヘルム)”の使い魔)
#setpagename( 第4話 『美少女と幻獣と…』)
ルイズとミュズが部屋を出ると、そこには木のドアが幾つか並んでいた。その中の一つが開いて、燃える様に赤い髪の女の子が現れる。
ルイズより背が高く、彫りが深い顔に、大きく豊かな胸で、上の二つのボタンを外し、開いたブラウスから褐色の肌をした谷間を覗かせている。
身長、肌の色、雰囲気、胸の大きさ、全部がルイズと対照的だった。
彼女はルイズを見ると、にゃっと笑った。
「おはよう。ルイズ」
ルイズは顔をしかめ、嫌そうに挨拶を返した。
「おはよう。キュルケ」
「あなたの使い魔って、それ?」
ミュズを指差して、バカにした口調で言った。
「そうよ」
「『サモン・サーヴァント』で人間喚んじゃうなんて、あなたらしわ。」
ミュズはキュルケをまじまじと見つめて言った。
「ぼくはヒトじゃないんです」
「あっはっは!ほんとに?人間じゃない?すごいわね!流石、ゼロのルイズ」
キュルケは信じる様子を微塵も見せずに、ミュズの言葉を笑い飛ばす。
ルイズの白い頬に、さっと朱が射した。
「五月蝿いわね。あんたも黙ってなさい」
ルイズはしかめた顔をミュズに向けて睨む。
「あたしも昨日、使い魔を召喚したのよ。誰かさんと違って、一発で呪文成功よ」
「あっそ」
「どうせ使い魔にするなら、こう言うのがいいわよねぇ~。フレイムー」
キュルケは、勝ち誇った声で使い魔を呼んだ。
キュルケの部屋からのっそりと、真っ赤で巨大なトカゲが現れた。
「わぁ!真っ赤な何か!」
ミュズは慌てて後退り、ルイズの陰に避難する。
その姿にキュルケが高笑いする。
「おっほっほ!あなた、この火トカゲを見るのは初めて?」
「昨日、『戦える』って言ったのはどうしたのよ。あっ、そんなに強く引っ張んないで、マントが伸びるじゃない」
「だめです!これは恐いです!あんなの見たことないんです~」
ルイズの後ろでマントをぎゅっと握り締め、顔をくしゃくしゃにして目に涙を貯めたミュズが悲鳴に近い声で叫ぶ。
「平気よー。あたしが命令しない限り、襲ったりしないから。臆病ちゃんね」
キュルケは手を顎に添え、色っぽく首を傾げた。
鼻のから燃え盛る炎の尻尾まで小さなミュズの1.5倍位の長さで、頭がミュズの胸の位置にあり、とても大きい。
「これって、サラマンダー?」
ルイズが悔しそうに尋ねた。
「そうよー。見て?この尻尾。ここまで鮮やかで大きい炎の尻尾は、間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ?ブランド物よー。好事家に見せたら値段なんかつかないわよ?」
「そりゃよかったわね」
苦々しい声でルイズが言った。
「素敵でしょ。あたしの属性ぴったり」
「あんた『火』属性だもんね」
「ええ。微熱のキュルケですもの。ささやかに燃える情熱は微熱。でも、男はそれでイチコロなのですわ。あなたと違ってね?」
キュルケは得意げに胸を張った。ルイズも負けじと胸を張り返し、ぐっとキュルケを睨みつける。
「あんたみたいにいちいち色気振りまくほど、暇じゃないだけよ」
キュルケはニッコリと笑う。余裕の態度だった。
それから、キュルケはミュズを見つめる。
「あなた、お名前は?」
「ミュズです」
「ミュズちゃんね」
キュルケはちゃん付けで名前を復唱すると、目をキラリと光らせる。
「じゃあ、お先に失礼」
そう言うと、炎の様な赤髪を掻き上げ、颯爽とキュルケは去っていく。
ちょこちょこと、大柄な体に似合わない可愛い動きで、フレイムがその後を追う。
ルイズ達に見えない所で、キュルケは新しい玩具を見つけた子供の様に嬉しそうな顔をした。
ツェルプストーの血筋なのか。他人の物、特にヴァリエール家の物を見ると、悪戯心が点る。
キュルケがいなくなると、ルイズは拳を握り締めた。
「くやしー!何なのあの女!自分が火竜山脈のサラマンダーを召喚したからって!ああもう!」
「そう言う物なんですか?」
「そうよ。メイジの実力をはかるには使い魔を見ろって言われる位なんだから」
ミュズの質問にルイズは得意げに説明をする。
「ところで、あの人がゼロのルイズって言ってましたけど、『ゼロ』ってなに?わからない言葉は覚えておかないと」
「ただの仇名。知らなくていいことよ」
ルイズは二つ目のミュズの質問にバツが悪そうに言った。
トリステイン魔法学院の食堂は、学園の敷地内で一番高い、真ん中の本塔の中にあった。
食堂の中にはやたらと長い、百人は優に座れそうなテーブルが三つ並んでいる。
それぞれに同じ色のマントをつけた生徒達が座っている。
朝食、昼食、夕食と、学院にいる全てのメイジ、生徒も先生も引っくるめて、ここで食事を摂るらしい。
一階と二階の間に中階があり、教師達がそこで歓談に興じている。
全てのテーブルに豪華な飾り付けがなされていた。
幾つもの蝋燭が立ち、花々が飾られ、果物が盛り付けた籠が乗っている。
ミュズが豪華絢爛さに驚いて、口をぽかんと開けているのにルイズが気付くと、得意げに指を立て、鳶色の瞳を悪戯っぽく輝かせて言った。
「トリステイン魔法学院で教えるのは、魔法だけじゃないのよ」
「はあ」
「メイジはほぼ全員が貴族なの。『貴族は魔法を以ってしてその精神と為す』のモットーのもと、貴族たるべき教育を存分に受けるのよ。だから食堂も、貴族の食卓に相応しい物でなければならないのよ」
「はあ」
「分かった?本当ならあんたみたいな平民はこの『アルヴィーズの食堂』には一生入れないのよ。感謝してよね」
「はあ。アルヴィーズってなんですか?」
「小人の名前よ。周りに像が沢山並んでいるでしょう」
言葉通り、壁際には精巧な小人の彫像が並んでいる。
「夜中になると、踊りだすのよ」
「凄いです。まるでぼくみたいです」
興奮気味にミュズが驚く。
「いいから、椅子をひいてちょうだい」
中央にあるテーブルに入っている椅子を見つめ、腕を組んでルイズが言った。
ミュズはその椅子を引き出し、ルイズはそれに腰掛ける。
「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。今朝もささやかな糧を我に与えたもうたことを感謝いたします」
祈りの声が唱和される。
ルイズも目をつむってそれに加わっていた。
そして唱和が終わると、ルイズはおいしいそうに豪華な料理をほお張り始める。
ミュズはその横でルイズが食事をする様子を突っ立って眺めていた。
「そう言えば、あんたの準備をしてなかったわね」
昨日はミュズの存在に悩んでいたので、使い魔の食事の種類や量を使用人に伝えておくのをすっかり忘れてしまっていた。
主従の差を見せつける為に、質素な料理を床に準備するのも手だったが、ミュズは主人の言う事を素直に聞くのでその必要もなさそうだった。
そこに、見覚えのある黒髪のメイドが近づい来る。
ペコリと頭を下げると、シエスタはこっそりと囁く。
「ミス・ヴァリエール。ミュズさんのお食事でしたら、こちらでご用意いたしましたが宜しいでしょうか?」
「えっ、ええ。お願い出来るかしら?」
困っていたルイズにとってはちょうど良い助け船だったので、戸惑いつつも直ぐに首肯する。
「ミュズさん、こちらにいらして下さい」
シエスタが歩き出すと、ミュズはその後ろをてとてとと付いて行った。
ミュズが連れていかれたのは、食堂の裏にある大きな鍋やオーブンが幾つも並んだ厨房だった。
「ちょっと待っててくださいね」
ミュズを厨房の片隅に置かれた椅子に座らせると、シエスタは小走りで厨房の奥に消えた。
そして、お皿を抱えて戻ってきた。お皿の中には、温かいシチューが入っていた。
「賄い食ですけど、どうぞ」
「これはなんですか?」
「貴族の方々にお出しする料理の余り物で作ったシチューですよ。」
ミュズは皿に入ったシチューをしげしげと見つめ、横に置かれた木のスプーンを掴み、先程まで見ていたルイズの真似をしてシチューを口に運ぶ。
上手く啜れなかったらしく、口の端からポタポタとシチューを零してしまう。
それを見たシエスタはポケットからハンカチを取り出し、ミュズの口の周りを拭き、田舎の小さい妹を思い出してくすりと微笑んだ。
「口とお腹が素敵な感じです」
一口、二口、食べるとミュズはおかしな表現でシチューの感想を言う。
「それを『美味しい』って言うんですよ」
「美味しいです!」
その言葉を聞き付け、コック長のマルトーが「そうだろう、そうだろう」と喜び、ミュズの頭をわしわしと撫でた。
#navi(”舵輪(ヘルム)”の使い魔)
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#setpagename( 第4話 『美少女と幻獣と…』)
ルイズとミュズが部屋を出ると、そこには木のドアが幾つか並んでいた。その中の一つが開いて、燃える様に赤い髪の女の子が現れる。
ルイズより背が高く、彫りが深い顔に、大きく豊かな胸で、上の二つのボタンを外し、開いたブラウスから褐色の肌をした谷間を覗かせている。
身長、肌の色、雰囲気、胸の大きさ、全部がルイズと対照的だった。
彼女はルイズを見ると、にゃっと笑った。
「おはよう。ルイズ」
ルイズは顔をしかめ、嫌そうに挨拶を返した。
「おはよう。キュルケ」
「あなたの使い魔って、それ?」
ミュズを指差して、バカにした口調で言った。
「そうよ」
「『サモン・サーヴァント』で人間喚んじゃうなんて、あなたらしわ。」
ミュズはキュルケをまじまじと見つめて言った。
「ぼくはヒトじゃないんです」
「あっはっは!ほんとに?人間じゃない?すごいわね!流石、ゼロのルイズ」
キュルケは信じる様子を微塵も見せずに、ミュズの言葉を笑い飛ばす。
ルイズの白い頬に、さっと朱が射した。
「五月蝿いわね。あんたも黙ってなさい」
ルイズはしかめた顔をミュズに向けて睨む。
「あたしも昨日、使い魔を召喚したのよ。誰かさんと違って、一発で呪文成功よ」
「あっそ」
「どうせ使い魔にするなら、こう言うのがいいわよねぇ~。フレイムー」
キュルケは、勝ち誇った声で使い魔を呼んだ。
キュルケの部屋からのっそりと、真っ赤で巨大なトカゲが現れた。
「わぁ!真っ赤な何か!」
ミュズは慌てて後退り、ルイズの陰に避難する。
その姿にキュルケが高笑いする。
「おっほっほ!あなた、この火トカゲを見るのは初めて?」
「昨日、『戦える』って言ったのはどうしたのよ。あっ、そんなに強く引っ張んないで、マントが伸びるじゃない」
「だめです!これは恐いです!あんなの見たことないんです~」
ルイズの後ろでマントをぎゅっと握り締め、顔をくしゃくしゃにして目に涙を貯めたミュズが悲鳴に近い声で叫ぶ。
「平気よー。あたしが命令しない限り、襲ったりしないから。臆病ちゃんね」
キュルケは手を顎に添え、色っぽく首を傾げた。
鼻のから燃え盛る炎の尻尾まで小さなミュズの1.5倍位の長さで、頭がミュズの胸の位置にあり、とても大きい。
「これって、サラマンダー?」
ルイズが悔しそうに尋ねた。
「そうよー。見て?この尻尾。ここまで鮮やかで大きい炎の尻尾は、間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ?ブランド物よー。好事家に見せたら値段なんかつかないわよ?」
「そりゃよかったわね」
苦々しい声でルイズが言った。
「素敵でしょ。あたしの属性ぴったり」
「あんた『火』属性だもんね」
「ええ。微熱のキュルケですもの。ささやかに燃える情熱は微熱。でも、男はそれでイチコロなのですわ。あなたと違ってね?」
キュルケは得意げに胸を張った。ルイズも負けじと胸を張り返し、ぐっとキュルケを睨みつける。
「あんたみたいにいちいち色気振りまくほど、暇じゃないだけよ」
キュルケはニッコリと笑う。余裕の態度だった。
それから、キュルケはミュズを見つめる。
「あなた、お名前は?」
「ミュズです」
「ミュズちゃんね」
キュルケはちゃん付けで名前を復唱すると、目をキラリと光らせる。
「じゃあ、お先に失礼」
そう言うと、炎の様な赤髪を掻き上げ、颯爽とキュルケは去っていく。
ちょこちょこと、大柄な体に似合わない可愛い動きで、フレイムがその後を追う。
ルイズ達に見えない所で、キュルケは新しい玩具を見つけた子供の様に嬉しそうな顔をした。
ツェルプストーの血筋なのか。他人の物、特にヴァリエール家の物を見ると、悪戯心が点る。
キュルケがいなくなると、ルイズは拳を握り締めた。
「くやしー!何なのあの女!自分が火竜山脈のサラマンダーを召喚したからって!ああもう!」
「そう言う物なんですか?」
「そうよ。メイジの実力をはかるには使い魔を見ろって言われる位なんだから」
ミュズの質問にルイズは得意げに説明をする。
「ところで、あの人がゼロのルイズって言ってましたけど、『ゼロ』ってなに?わからない言葉は覚えておかないと」
「ただの仇名。知らなくていいことよ」
ルイズは二つ目のミュズの質問にバツが悪そうに言った。
トリステイン魔法学院の食堂は、学園の敷地内で一番高い、真ん中の本塔の中にあった。
食堂の中にはやたらと長い、百人は優に座れそうなテーブルが三つ並んでいる。
それぞれに同じ色のマントをつけた生徒達が座っている。
朝食、昼食、夕食と、学院にいる全てのメイジ、生徒も先生も引っくるめて、ここで食事を摂るらしい。
一階と二階の間に中階があり、教師達がそこで歓談に興じている。
全てのテーブルに豪華な飾り付けがなされていた。
幾つもの蝋燭が立ち、花々が飾られ、果物が盛り付けた籠が乗っている。
ミュズが豪華絢爛さに驚いて、口をぽかんと開けているのにルイズが気付くと、得意げに指を立て、鳶色の瞳を悪戯っぽく輝かせて言った。
「トリステイン魔法学院で教えるのは、魔法だけじゃないのよ」
「はあ」
「メイジはほぼ全員が貴族なの。『貴族は魔法を以ってしてその精神と為す』のモットーのもと、貴族たるべき教育を存分に受けるのよ。だから食堂も、貴族の食卓に相応しい物でなければならないのよ」
「はあ」
「分かった?本当ならあんたみたいな平民はこの『アルヴィーズの食堂』には一生入れないのよ。感謝してよね」
「はあ。アルヴィーズってなんですか?」
「小人の名前よ。周りに像が沢山並んでいるでしょう」
言葉通り、壁際には精巧な小人の彫像が並んでいる。
「夜中になると、踊りだすのよ」
「凄いです。まるでぼくみたいです」
興奮気味にミュズが驚く。
「いいから、椅子をひいてちょうだい」
中央にあるテーブルに入っている椅子を見つめ、腕を組んでルイズが言った。
ミュズはその椅子を引き出し、ルイズはそれに腰掛ける。
「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。今朝もささやかな糧を我に与えたもうたことを感謝いたします」
祈りの声が唱和される。
ルイズも目をつむってそれに加わっていた。
そして唱和が終わると、ルイズはおいしいそうに豪華な料理をほお張り始める。
ミュズはその横でルイズが食事をする様子を突っ立って眺めていた。
「そう言えば、あんたの準備をしてなかったわね」
昨日はミュズの存在に悩んでいたので、使い魔の食事の種類や量を使用人に伝えておくのをすっかり忘れてしまっていた。
主従の差を見せつける為に、質素な料理を床に準備するのも手だったが、ミュズは主人の言う事を素直に聞くのでその必要もなさそうだった。
そこに、見覚えのある黒髪のメイドが近づい来る。
ペコリと頭を下げると、シエスタはこっそりと囁く。
「ミス・ヴァリエール。ミュズさんのお食事でしたら、こちらでご用意いたしましたが宜しいでしょうか?」
「えっ、ええ。お願い出来るかしら?」
困っていたルイズにとってはちょうど良い助け船だったので、戸惑いつつも直ぐに首肯する。
「ミュズさん、こちらにいらして下さい」
シエスタが歩き出すと、ミュズはその後ろをてとてとと付いて行った。
ミュズが連れていかれたのは、食堂の裏にある大きな鍋やオーブンが幾つも並んだ厨房だった。
「ちょっと待っててくださいね」
ミュズを厨房の片隅に置かれた椅子に座らせると、シエスタは小走りで厨房の奥に消えた。
そして、お皿を抱えて戻ってきた。お皿の中には、温かいシチューが入っていた。
「賄い食ですけど、どうぞ」
「これはなんですか?」
「貴族の方々にお出しする料理の余り物で作ったシチューですよ。」
ミュズは皿に入ったシチューをしげしげと見つめ、横に置かれた木のスプーンを掴み、先程まで見ていたルイズの真似をしてシチューを口に運ぶ。
上手く啜れなかったらしく、口の端からポタポタとシチューを零してしまう。
それを見たシエスタはポケットからハンカチを取り出し、ミュズの口の周りを拭き、田舎の小さい妹を思い出してくすりと微笑んだ。
「口とお腹が素敵な感じです」
一口、二口、食べるとミュズはおかしな表現でシチューの感想を言う。
「それを『美味しい』って言うんですよ」
「美味しいです!」
その言葉を聞き付け、コック長のマルトーが「そうだろう、そうだろう」と喜び、ミュズの頭をわしわしと撫でたのであった。
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