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#navi(zeropon!)
第四話
『ゼロ』の使い魔
きゅるるるるるるるるる
軽快な空腹音が響く。
「・・・あなたご飯食べなかったの?」
キュルケが聞いてくる。
「うるさいわねえ・・・食べそびれちゃったのよ。」
「そう・・・あなた,使い魔は?」
「ふえ?・・・あれ?メデン?」
いつもはほっといてもついてくるメデンがいなかった。今日の授業は使い魔のお披露目も兼ねている。
「もう!こんなときに使い魔がいないだなんて、いったい・・・」
「ルイズ様」
にゅうっとルイズの横にいつの間にか現れたメデンがいた。
「・・・あんた、急に出てくるのやめなさい。心臓に悪いから。で、それはなに?」
突然現れたメデンは包みを抱えていた。その包みからはえもいわれぬいい匂いがしている。
「シエスタ様がルイズ様に、と」
「私に?なにかしら?」
ルイズが包みを開けてみると二つの白米の塊があった。
「なにこれ?」
「シエスタ様の故郷の携帯食で、『オーニギャリ』というものらしいです。朝食の代わりに是非と」
「へえ、おいしそうね。ルイズ、一個もらうわよ」
ひょいっと横から二個あったうちの一個を取るキュルケ
「あ!ちょっとキュルケ!私がもらったのに!あんた朝ごはん食べたんでしょ?」
「いいじゃない、一個ぐらい。あらおいしい」
「・・・あんたダイエット中じゃなかった?」
「ぐうっ」
乙女の脅威のひとつを指摘されたキュルケはオーニギャリの手を止める。
「あんた最近太ってきてない?」
「ぐぐうう・・・」
完全に朝の仕返しを成し遂げたルイズはオーニギャリをほおばる。
「うーん、いいわね。これ。塩味が適度にきいてて美味しい。あとでシエスタにお礼言わなきゃね」
キレイに平らげたルイズ。横を見ればキュルケが涙を流しながら最後の一欠けらを食べていた。
「・・・なんでダイエット中のご飯っておいしいのかしら?」
「・・・お腹が減ってるからよ」
世の無情とシエスタの愛情をを二人で噛み締めていると、始業のベルが鳴った。
惨憺たる有様だった。授業の教師であるシュヴルーズは黒こげになっていた。その他にも爆心地である教卓から半径五メイルが吹き飛んでいた。
「ルイズがまた失敗したぞ!」
「だから止めたのに!」
「俺の使い魔はどこだ?!」
「目が!目がああああ!!」
本日の授業の内容は『錬金』である。教師であるシュヴルーズがまず、小石を真鍮に変えて見せたのだが、それを次に生徒にさせた。
ルイズに、である。キュルケの抗議と警告、他の生徒の反対を押し切り、ルイズが『錬金』の実演を行った結果がこれである。グラウンドゼロに黒こげで憮然とたたずんでいたルイズはぽつりと言った。
「ふう、ちょっと失敗したわね」
「ふざけるなあああ!」
「いつもいつも失敗しやがって!」
「『ゼロ』のルイズめ!!」
非難していた無傷のキュルケは教室の後ろからそんなルイズを見ていて気づいた。
彼女の手が微かに震えているのに・・・。
「わかったでしょ、なんで『ゼロ』って呼ばれているか」
部屋の片付けの為に他のパタポンたちを呼んできたメデンにルイズは背を向けそう言った。
「メイジなのに魔法の成功率『ゼロ』パーセント、魔法の才能『ゼロ』・・・だからみんな『ゼロ』って呼ぶのよ」
背を向けたままメデンに話すルイズ。その拳はくやしさで強く握り締められて入れた。
「こんな・・・主人で軽蔑したでしょ?」
そういって振り向いたら・・・普通にメデンたちは教室を掃除していた。
「・・・なにしてんのよ」
「はい?ルイズ様が吹き飛ばしたので激怒された先生から魔法を使わず部屋をキレイにするように、
ルイズ様が命ぜられてたのでルイズ様と一緒に部屋をかたづけているのですが?」
「説明ありがとう。じゃなくて!私が」
「『ゼロ』と呼ばれる理由ですか?」
「っつ、そうよ!私が『ゼロ』なんて呼ばれて、みんなからさげすまれて!」
「ルイズ様」
「最低限のコモンマジックすらつかえない・・・」
「ルイズ様!」
メデンの声によって遮られるルイズの独白、メデンの一つしかない瞳はルイズをしっかりと見据えていた。
「・・・なによ」
「あなた様が望むのなら、私たちは全てのことを致します。敵を討てといえば敵を討ち、あなたを守れと言われたなら守り、魔法を使えといわれれば魔法も使いましょう。
あなた様が望むのならあなた様を『ゼロ』と蔑む全てのものを排除します。あなたはそれを望んでおられるのですか?」
「それは・・・」
「そう、あなたはきっとそんなことは求めないでしょう。そんなことをしても自分が『ゼロ』だという本質が変わるわけではないと分かっておられるから。ならば貴方がされることは唯一つ。
『ゼロ』ではないことの証明です。それはここで愚痴を言われ、使い魔に同情されれば為せるのですか!」
メデンの叱責にルイズは言葉もなく俯く。
「メデン様、片付け終わりました」
ルイズたちのやり取りの間に他のパタポンたちによってすっかり教室はキレイになっていた。
「ごくろう、貴方たちは先に食堂へ行ってなさい」
「ハッ」
ぞろぞろと教室を出て行くパタポンたち、残ったのはルイズとメデンのみ。メデンは俯き何も言わないルイズにすっ、と近づく。そしてルイズの前に立ったメデンは右手をルイズにそっとさし出した。
「さあ、ルイズ様、昼食を食べに行きましょう。魔法の練習をするのもお腹が減ってはできませんよ?」
「・・・うん。」
ゆっくりとその手を握り返すルイズ。メデンはルイズの手を引いて食堂へ向かう。
教室を出るときには俯いたままではあったルイズだったが、食堂に着くまでには少し赤くはれた目をしてても、しっかりと前を見ていた。そんなルイズを見ながらメデンは思った。
(・・・扱いやすい御方です)
メデンは意外と黒かった。
食堂の席に着くと、メデンは昼食を受け取りに厨房に向かっていった。
(一緒に食べさせようかしら・・・)
一人の食事はなかなかに寂しいものだった。もぐもぐと一人で食べていると横にキュルケがやってきた。
「ハァイ、ルイズ。一人の食事なんて侘しいわね」
「ほっといてよ、あんたに同情されるなんてそれこそ侘しいわよ」
「あらひどいわね、そんな言い方しなくてもいいじゃない、お・と・も・だ・ちに」
「お・こ・と・わ・り・よ、ツェルプストー。・・・あと、あんたにもう一回聞くわね?」
「聞かないで・・・」
キュルケの食事、それは傍目に見ても脂肪分、炭水化物、に特化した食事だった。
「・・・涙流しながら横で食べないでよ」
「・・・おいしいわあ」
そんなキュルケを見てると横からルイズにデザートが差し出された。給仕が持ってきてくれたのかと思い見ると、
「ルイズさまー、キュルケさまー、デザートですー」
メイド服を着た目玉がいた。
「・・・なにしてんの?えーと?」
「ザッツ・ヨーです!シエスタさんのお手伝いです!」
元気に答える目玉ことパタポンことザッツ・ヨー。周りを見れば同じようにメイド服をきたパタポンたちがぞろぞろとデザートを運んでいる。
「というか、あんたらそのメイド服はどうしたの?」
「さあ?シエスタさんに『お礼にお手伝いを』って言いましたら奥からたくさん出されました!」
「なんでこんなのを常備してんのここ?」
メイド服パタポンに驚いた生徒は最初はざわざわしていたが、普通に給仕をこなすパタポンたちに慣れたようですぐに騒ぎも収まる。
「・・・おいしいわあ・・・おいしいわあ」
代わりにもぐもぐもぐもぐと、涙を流しながら親の敵のようにデザートに挑むキュルケが周りの注目を集めていた。そしてもう一箇所、
「どうしてくれるんだ!」
「ひっ、も、申し訳ありません!」
シエスタと、それを叱責する金髪の少年に注目が集まっていた。金髪の少年の名はギーシュと言った。
「君が香水瓶を拾ったりしなければ、二人のレディを傷つけることはなかったんだ!」
「すいません!すいません!」
「・・・ザッツ・ヨー」
「はい?」
「あれは何なの?」
「しばらくお待ちを」
ザッツ・ヨーは周りのパタポンに事情を聞いてくる。
「どうもシエスタ様が拾った香水のビンから、あのギーシュ様の二股がばれたのをシエスタ様のせいにしてるようです」
「なにそれ?最低じゃない」
どう考えてもギーシュが悪い。どうせ振られた憂さ晴らしにシエスタをいじめているのだろう。
「・・・シエスタには朝食の分もあるしね」
そういってルイズは席を立つとギーシュ達のところに行った。
「ちょっとギーシュ!なにシエスタいじめてんのよ!」
ルイズの声によって、遮られた理不尽な糾弾。
「なんだね、ヴァリエール、ほっといてくれ。このメイドのせいで僕の名誉は傷つけられたのだよ!」
「は?ばっかじゃない?二股なんかしてるあんたが悪いんじゃない」
「そうだ!そうだ!今回ばかりはお前が悪い!」
「認めろよギーシュ!」
周りの野次にどんどんギーシュは顔を紅潮させる。ギーシュはシエスタに向けていたそれは今度はルイズに向けられた。
「黙りたまえ!はっ、平民をかばうなんてそれでも貴族かね?魔法が使えない同士仲良くってことかい?」
「なん・・・!」
「そんなことだから君は『ゼロ』なのだよ!君のような人間が貴族かと・・・」
そこまで言ってギーシュは気づいた。先ほどまで周りで囃し立てていた悪友達が黙ってる。そして・・・周りに充満する異様な空気。
「なんだね?みんな?どうか・・・」
そこまで言ってギーシュは気づく。それを発しているのは周りで給仕をしていたパタポンたちであった。いままで給仕をしていた全てのパタポンがギーシュを見ていた。
ぎょろりぎょろりと、まばたき一つせず見つめる幾つもの目玉。その異様な空気に食堂の空気が凍り付いていた。
「ひい?!」
そのあまりにも異様な光景と空気にギーシュは息を呑んだ。そして彼は気づくべきだった。その異様な空気。それはあまりにも冷たい殺気という名の空気だということを。
#navi(zeropon!)
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第四話
『ゼロ』の使い魔
きゅるるるるるるるるる
軽快な空腹音が響く。
「…あなたご飯食べなかったの?」
キュルケが聞いてくる。
「うるさいわねえ…食べそびれちゃったのよ。」
「そう…あなた、使い魔は?」
「ふえ?…あれ?メデン?」
いつもはほっといてもついてくるメデンがいなかった。今日の授業は使い魔のお披露目も兼ねている。
「もう!こんなときに使い魔がいないだなんて、いったい…」
「ルイズ様」
にゅうっとルイズの横にいつの間にか現れたメデンがいた。
「…あんた、急に出てくるのやめなさい。心臓に悪いから。で、それはなに?」
突然現れたメデンは包みを抱えていた。その包みからはえもいわれぬいい匂いがしている。
「シエスタ様がルイズ様に、と」
「私に?なにかしら?」
ルイズが包みを開けてみると二つの白米の塊があった。
「なにこれ?」
「シエスタ様の故郷の携帯食で、『オーニギャリ』というものらしいです。朝食の代わりに是非と」
「へえ、おいしそうね。ルイズ、一個もらうわよ」
ひょいっと横から二個あったうちの一個を取るキュルケ
「あ!ちょっとキュルケ!私がもらったのに!あんた朝ごはん食べたんでしょ?」
「いいじゃない、一個ぐらい。あらおいしい」
「…あんたダイエット中じゃなかった?」
「ぐうっ」
乙女の脅威のひとつを指摘されたキュルケはオーニギャリの手を止める。
「あんた最近太ってきてない?」
「ぐぐうう…」
完全に朝の仕返しを成し遂げたルイズはオーニギャリをほおばる。
「うーん、いいわね。これ。塩味が適度にきいてて美味しい。あとでシエスタにお礼言わなきゃね」
キレイに平らげたルイズ。横を見ればキュルケが涙を流しながら最後の一欠けらを食べていた。
「…なんでダイエット中のご飯っておいしいのかしら?」
「…お腹が減ってるからよ」
世の無情とシエスタの愛情をを二人で噛み締めていると、始業のベルが鳴った。
惨憺たる有様だった。授業の教師であるシュヴルーズは黒こげになっていた。その他にも爆心地である教卓から半径五メイルが吹き飛んでいた。
「ルイズがまた失敗したぞ!」
「だから止めたのに!」
「俺の使い魔はどこだ?!」
「目が!目がああああ!!」
本日の授業の内容は『錬金』である。教師であるシュヴルーズがまず、小石を真鍮に変えて見せたのだが、それを次に生徒にさせた。
ルイズに、である。キュルケの抗議と警告、他の生徒の反対を押し切り、ルイズが『錬金』の実演を行った結果がこれである。グラウンドゼロに黒こげで憮然とたたずんでいたルイズはぽつりと言った。
「ふう、ちょっと失敗したわね」
「ふざけるなあああ!」
「いつもいつも失敗しやがって!」
「『ゼロ』のルイズめ!!」
非難していた無傷のキュルケは教室の後ろからそんなルイズを見ていて気づいた。
彼女の手が微かに震えているのに…。
「わかったでしょ、なんで『ゼロ』って呼ばれているか」
部屋の片付けの為に他のパタポンたちを呼んできたメデンにルイズは背を向けそう言った。
「メイジなのに魔法の成功率『ゼロ』パーセント、魔法の才能『ゼロ』…だからみんな『ゼロ』って呼ぶのよ」
背を向けたままメデンに話すルイズ。その拳はくやしさで強く握り締められて入れた。
「こんな…主人で軽蔑したでしょ?」
そういって振り向いたら…普通にメデンたちは教室を掃除していた。
「…なにしてんのよ」
「はい?ルイズ様が吹き飛ばしたので激怒された先生から魔法を使わず部屋をキレイにするように、
ルイズ様が命ぜられてたのでルイズ様と一緒に部屋をかたづけているのですが?」
「説明ありがとう。じゃなくて!私が」
「『ゼロ』と呼ばれる理由ですか?」
「っつ、そうよ!私が『ゼロ』なんて呼ばれて、みんなからさげすまれて!」
「ルイズ様」
「最低限のコモンマジックすらつかえない…」
「ルイズ様!」
メデンの声によって遮られるルイズの独白、メデンの一つしかない瞳はルイズをしっかりと見据えていた。
「…なによ」
「あなた様が望むのなら、私たちは全てのことを致します。敵を討てといえば敵を討ち、あなたを守れと言われたなら守り、魔法を使えといわれれば魔法も使いましょう。
あなた様が望むのならあなた様を『ゼロ』と蔑む全てのものを排除します。あなたはそれを望んでおられるのですか?」
「それは…」
「そう、あなたはきっとそんなことは求めないでしょう。そんなことをしても自分が『ゼロ』だという本質が変わるわけではないと分かっておられるから。ならば貴方がされることは唯一つ。
『ゼロ』ではないことの証明です。それはここで愚痴を言われ、使い魔に同情されれば為せるのですか!」
メデンの叱責にルイズは言葉もなく俯く。
「メデン様、片付け終わりました」
ルイズたちのやり取りの間に他のパタポンたちによってすっかり教室はキレイになっていた。
「ごくろう、貴方たちは先に食堂へ行ってなさい」
「ハッ」
ぞろぞろと教室を出て行くパタポンたち、残ったのはルイズとメデンのみ。メデンは俯き何も言わないルイズにすっ、と近づく。そしてルイズの前に立ったメデンは右手をルイズにそっとさし出した。
「さあ、ルイズ様、昼食を食べに行きましょう。魔法の練習をするのもお腹が減ってはできませんよ?」
「…うん。」
ゆっくりとその手を握り返すルイズ。メデンはルイズの手を引いて食堂へ向かう。
教室を出るときには俯いたままではあったルイズだったが、食堂に着くまでには少し赤くはれた目をしてても、しっかりと前を見ていた。そんなルイズを見ながらメデンは思った。
(…扱いやすい御方です)
メデンは意外と黒かった。
食堂の席に着くと、メデンは昼食を受け取りに厨房に向かっていった。
(一緒に食べさせようかしら…)
一人の食事はなかなかに寂しいものだった。もぐもぐと一人で食べていると横にキュルケがやってきた。
「ハァイ、ルイズ。一人の食事なんて侘しいわね」
「ほっといてよ、あんたに同情されるなんてそれこそ侘しいわよ」
「あらひどいわね、そんな言い方しなくてもいいじゃない、お・と・も・だ・ちに」
「お・こ・と・わ・り・よ、ツェルプストー。…あと、あんたにもう一回聞くわね?」
「聞かないで…」
キュルケの食事、それは傍目に見ても脂肪分、炭水化物、に特化した食事だった。
「…涙流しながら横で食べないでよ」
「…おいしいわあ」
そんなキュルケを見てると横からルイズにデザートが差し出された。給仕が持ってきてくれたのかと思い見ると、
「ルイズさまー、キュルケさまー、デザートですー」
メイド服を着た目玉がいた。
「…なにしてんの?えーと?」
「ザッツ・ヨーです!シエスタさんのお手伝いです!」
元気に答える目玉ことパタポンことザッツ・ヨー。周りを見れば同じようにメイド服をきたパタポンたちがぞろぞろとデザートを運んでいる。
「というか、あんたらそのメイド服はどうしたの?」
「さあ?シエスタさんに『お礼にお手伝いを』って言いましたら奥からたくさん出されました!」
「なんでこんなのを常備してんのここ?」
メイド服パタポンに驚いた生徒は最初はざわざわしていたが、普通に給仕をこなすパタポンたちに慣れたようですぐに騒ぎも収まる。
「…おいしいわあ…おいしいわあ」
代わりにもぐもぐもぐもぐと、涙を流しながら親の敵のようにデザートに挑むキュルケが周りの注目を集めていた。そしてもう一箇所、
「どうしてくれるんだ!」
「ひっ、も、申し訳ありません!」
シエスタと、それを叱責する金髪の少年に注目が集まっていた。金髪の少年の名はギーシュと言った。
「君が香水瓶を拾ったりしなければ、二人のレディを傷つけることはなかったんだ!」
「すいません!すいません!」
「…ザッツ・ヨー」
「はい?」
「あれは何なの?」
「しばらくお待ちを」
ザッツ・ヨーは周りのパタポンに事情を聞いてくる。
「どうもシエスタ様が拾った香水のビンから、あのギーシュ様の二股がばれたのをシエスタ様のせいにしてるようです」
「なにそれ?最低じゃない」
どう考えてもギーシュが悪い。どうせ振られた憂さ晴らしにシエスタをいじめているのだろう。
「…シエスタには朝食の分もあるしね」
そういってルイズは席を立つとギーシュ達のところに行った。
「ちょっとギーシュ!なにシエスタいじめてんのよ!」
ルイズの声によって、遮られた理不尽な糾弾。
「なんだね、ヴァリエール、ほっといてくれ。このメイドのせいで僕の名誉は傷つけられたのだよ!」
「は?ばっかじゃない?二股なんかしてるあんたが悪いんじゃない」
「そうだ!そうだ!今回ばかりはお前が悪い!」
「認めろよギーシュ!」
周りの野次にどんどんギーシュは顔を紅潮させる。ギーシュはシエスタに向けていたそれは今度はルイズに向けられた。
「黙りたまえ!はっ、平民をかばうなんてそれでも貴族かね?魔法が使えない同士仲良くってことかい?」
「なん…!」
「そんなことだから君は『ゼロ』なのだよ!君のような人間が貴族かと…」
そこまで言ってギーシュは気づいた。先ほどまで周りで囃し立てていた悪友達が黙ってる。そして…周りに充満する異様な空気。
「なんだね?みんな?どうか…」
そこまで言ってギーシュは気づく。それを発しているのは周りで給仕をしていたパタポンたちであった。いままで給仕をしていた全てのパタポンがギーシュを見ていた。
ぎょろりぎょろりと、まばたき一つせず見つめる幾つもの目玉。その異様な空気に食堂の空気が凍り付いていた。
「ひい?!」
そのあまりにも異様な光景と空気にギーシュは息を呑んだ。そして彼は気づくべきだった。その異様な空気。それはあまりにも冷たい殺気という名の空気だということを。
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