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#navi(虚無のパズル)
炎を纏ったままのルイズは、ティトォとウェールズの元に駆け寄った。
穏やかに呼吸を繰り返すウェールズの姿を見て、ルイズはほっと胸を撫で下ろした。
「よかった……」
ルイズは思わず涙ぐむ。しかし、使い魔の前で泣くなんてみっともないと思って、ぐっと鼻の頭に力を入れ、ぐしぐしと目尻を拭った。
「『スリープ・クラウド』の魔法のせいで眠ってる。でも、じきに目を覚ますと思うよ」
そういうティトォの顔には、汗の玉が大量に浮かんでいる。
ウェールズの治療、ルイズの魔力強化、仙里算総眼図の計算をすべて平行して行ったのである。ティトォはすでに、疲労困憊していた。
「あが……」
倒れたワルドが上げたうめき声に、ルイズはびくっとなって振り返った。
見るとワルドは全身にひどい火傷を負って、とても痛々しい姿だ。
ワルドは震える手を、何やら足の方に伸ばす。
ティトォがくいっと右手を振ると、同じようにルイズの身体が動いた。
魔法の炎を通じ、ルイズの身体を操ったのだ。
「ルイズ、呪文を!」
ルイズが呪文を呟くと、ワルドの右足が爆発した。
「ぎゃっ!」
痛ましい悲鳴に、ルイズは思わず顔を背ける。ワルドの右足は、爆発で奇妙な方向にねじ曲がっていた。
「やめとけワルド。ブーツに仕込んだ杖を使おうとしたな」
ティトォは冷静に宣告した。
『仙里算総眼図』
『1から10を知る』能力。相手の言葉や表情・仕草などから、その人物像を分析し、状況・周りの環境などを考慮し計算することで、相手の行動を完璧に先読みする。
魔法ではなく、ティトォが100年かけて編み出した技能である。
ただし膨大な情報の取り入れと、そこから集中・計算する時間が必要であり、なおかつ行動の完全先読みは1分程度が限界だったりするのだが。
「お前の行動はすべて読める」
まァここは、ハッタリかましておこう。
「左のブーツにも杖を隠しているのはわかってるんだ。おかしな真似をしてみろ、左足も吹き飛ばすことになるぞ」
さて……、これからどうしよう。杖を取り上げて、『レコン・キスタ』の情報を吐かせる?いや……
外から、馬の蹄や竜の羽音が聞こえてくる。貴族派の攻城が始まったのだ。すぐにもここに、5万の軍勢が押し寄せてくるだろう。
『イーグル』号はすでに出航してしまっており、脱出のすべはないのである。
とすれば、逆にワルドの口から、こちらの情報が貴族派にもたらされる可能性もある。
(いっそのこと、ここで確実に始末……)
そんなティトォの考えが、炎を通じてルイズにも伝わった。
殺す。
ワルドを?
それを考えると、ルイズは急に怖くなった。
裏切り者のワルドは、間違いなく縛り首を言い渡されるだろう。でも、刑を自分が執行するのだと思うと、どうしようもなく足が震えた。
ルイズはためらい、思わず杖の先をワルドから外してしまった。
ワルドはそれを見逃さず、最後の力を振り絞り、左のブーツに仕込んだ杖に手を伸ばした。
『フライ』の呪文で宙に浮いたワルドは、天井に開いた穴から弾丸のように外へ飛び出した。
「しまった!」
「は!敵の心は読めても……、味方の心は読めなかったようだな!ここにはすぐに我ら『レコン・キスタ』の大軍が押し寄せる!……おやおや、我らの軍勢は、もはや城の目と鼻の先だぞ?」
穴の外から、ワルドの捨て台詞が響いてきた。
「愚かな主人ともども灰になるがいい!ミョズニトニルン!」
それっきり、ワルドの声は聞こえなくなった。まんまと逃げ仰せたようだった。
ルイズは呆然と天井の穴を見つめていたが、やがて俯いて、唇をぎゅっと噛んだ。
最後の最後で、まんまとワルドを取り逃がしてしまい、悔しかったのだ。
「……ごめん」
「ううん、言ってもしょうがないよ。それより、ここから逃げる手を見つけないと……」
ニューカッスルの秘密の港に停泊していた二隻のフネは、とっくに出航してしまっている。
5万の敵は、300の王軍をものともせずすぐにここまでやってくるだろう。
さて、どうする……?
ティトォが考えはじめたとき、ふいに足がふらりとなった。
(あ、まずい……)
そのままティトォは、どさりと地面に倒れ込んだ。同時に、ルイズの身に纏われていた魔法の炎がかき消えた。
「ふあ?」
ルイズの体から急に力が抜け、よろけたルイズは礼拝堂の壁に寄りかかった。
足ががくがくと震え、立っているのもやっとである。
身体強化の反動であった。
「ティトォ、どうしたの?」
見ると、ティトォは倒れ伏している。魔法の使いすぎにより疲労が限界を超え、意識を失ったのだ。
ティトォは気絶し、ルイズは立つのもやっと。おまけに外には今にも城に突撃せんとする5万の大軍。
「そんな、どどどーしろってのよこれからぁ!」
ルイズは思わず悲鳴を上げた。
すると、その声に答えるように、ウェールズの瞼がぴくりと動いた。
ウェールズはむくりと起き上がると、怪訝な顔で自分の胸をぺたぺたと触った。
ワルドによって貫かれた胸の傷は、ティトォの魔法で跡形もなく消えていた。
「わたしは……、そうか、きみたちが助けてくれたのか」
「殿下!」
ルイズはなんとか身体を動かし、跪いた。
ウェールズはすぐにしゃがみ込み、ルイズと視線の高さを同じにした。
「ラ・ヴァリエール嬢、そんな行儀はよしてくれ。跪かねばならぬのは、わたしの方だ。うっすらとだが覚えているよ、わたしの身体を包んだ、癒しの炎のあたたかさを」
ウェールズは、床に倒れるティトォに、心配そうに視線をやった。
「彼は、無事なのかい?」
「魔力を使いすぎただけです、命の心配はありません。……申し訳ありません。憎むべき裏切り者を取り逃がしてしまいました。すべてわたしの責任でございます……」
「ワルドはスクウェアメイジ、退けただけでも大したものだよ。それに、アンリエッタの手紙を守り通してくれたのだ」
ウェールズの言葉に、ルイズはポケットの手紙に手を伸ばす。ポケットからアンリエッタの手紙が覗いていた。
「恥じることなどない、誇りに思いなさい」
ウェールズはルイズの肩を優しく叩いた。ルイズはかしこまって、深く頭を垂れた。
「それに、どうやら間に合ったようだ。きみたちにはいくら感謝しても足りないな」
「そんな、もったいないお言葉で……、……『間に合った』?」
ルイズは顔を上げ、怪訝な顔でウェールズを見た。ウェールズは、喜びを隠そうともせず、ニコニコと笑っている。
外から大砲の音と、突撃ラッパの音、そして兵士たちの怒号が聞こえてくる。
「そうとも、あの音を聞きたまえ、どうやら貴族派の一斉攻撃が始まったようだ。間一髪とはまさにこのこと!裏切り者の手にかかり、危うく戦の前に臣下のものたちを残して先に逝くなどという恥を晒すところだった」
「え。え。え」
「きみたちはわたしに、王家の勇気と名誉を発揮するための機会を与えてくれた。本当に感謝の言葉もない」
ウェールズは深々と頭を下げた。
ルイズにはウェールズが何を言っているのか、まったく理解できなかった。しばらく口をぱくぱくさせていたが、やっとのことで喉から音をひねり出した。
「……その、殿下?」
「なんだね」
「で、殿下は、これから貴族派を迎え撃つおつもりなのですか?」
「無論だ。これは王家に生まれたものの義務。内憂を払えなかった王家に、最後に課せられた義務であるからね」
「で、でも……、でも……」
ルイズは愕然とした。
考えてみれば、そうなのだ。
たとえワルドの裏切りがなかったとしても、ウェールズ皇太子は『レコン・キスタ』の軍勢と戦うことを決めていた。
『レコン・キスタ』の軍勢は五万。王軍に勝ち目はない。ウェールズはこの戦いで命を落とすだろう。
だったら、なんのためにわたしとティトォは戦ったの?
なんのために、命がけで皇太子の命を助けたの?
「……そんな顔をしないでくれ。案じてくれているのかい?わたしたちを。きみは優しい女の子だな」
ウェールズは微笑んだ。
「本来ならば勲章でも受け取ってほしいところだが……、さて困ったな、倒れゆく王家には授けられるようなものは何もないんだ。……そうだ、これを」
ウェールズは自分の指から『風のルビー』の指輪を外し、ルイズに握らせた。
「王家のルビーだ。どうか受け取ってくれ。そして、これはお願いなのだが……、アンリエッタに伝えてくれないか」
ウェールズは目をつむって言った。
「ウェールズは勇敢に戦い、勇敢に死んでいったと」
呆然とするルイズに、ウェールズはもうひとつ、小さな石版のようなマジックアイテムを手渡した。
「これを。ニューカッスルの秘密の港へ行きたまえ。桟橋の向かいの鍾乳洞の奥でその石をかざせば、隠し部屋の扉が開く。中には水と保存食がたっぷりひと月分はあるはずだ。
きみたちはそこに隠れ、戦いをやり過ごしなさい。扉に偽装の魔法がかけられているから、めったなことでは見つかるまい。ほとぼりが冷めた頃合いを見計らって、脱出しなさい」
そう言うと、ウェールズは立ち上がり、礼拝堂の扉に向かっていった。途中、ワルドに切られた水晶の杖を拾ったが、小さく肩をすくめると放り投げてしまった。
ウェールズが礼拝堂を出てしばらくの間、ルイズは呆然としていた。
遠くから聞こえる大砲の音や、火の魔法が爆発する音で、ルイズは我に帰った。
戦闘が始まったのだ。轟音に入り交じり、兵士たちの怒号や断末魔の叫びが聞こえてくる。
ルイズは言うことを聞かない足にぐっと力を込め、立ち上がった。
「……わたしは、死なないわ」
ぽつりと言うと、ルイズはティトォの足を抱えて引きずりながら、ニューカッスルの秘密の港へ向かった。
ティトォはやせている方だが、小柄なルイズにはその身体は重たかった。
それでもルイズは下腹にぐっと力を込め、港への階段を下りはじめた。
死なない。
こんなところで、こんな遠く離れた国で、死んでたまるもんですか!
アンリエッタの手紙を無事持ち帰るという任を果たすためにもルイズは生き延びなければならないのだが、なぜかあまりそのことは思い浮かばず、ただ『死んでたまるか』という衝動がルイズを動かしていた。
それは、死ぬための戦いに向かう、ウェールズや王軍の人間たちへの反発心であるかもしれなかった。
そんなふうにルイズは必死だったので、引きずっている気絶したティトォのことまで頭が回らなかった。
ルイズは今、ティトォの両足を脇に抱えるようにしているので、ティトォの上半身が地面に引きずられる形になっている。
そんな状態で階段を下りると、一段ごとにティトォは石造りの階段に頭をぶつけることになった。
ごつんごつんと鈍い音が響き渡り、ティトォの頭は壊れた腹話術の人形のようにがっくんがっくんと踊った。
ルイズはもう、ティトォを引きずるのに必死なので、そんなティトォの面白い有様には気が付かなかった。
ワルドとの戦いで付いた傷が開いたのか、ティトォの頭から血が流れ、ぶつかるごとに階段を赤く染めた。
「こんなところで……、死なない!」
生きる決意を口にするルイズの後ろで、ティトォは今にも死にそうになっていた。
鍾乳洞の中に作られた港にたどり着くと、ルイズはきょろきょろと辺りを見回した。
見ると、桟橋の近くに小さな横穴がある。あれがウェールズの言っていた、秘密の部屋への入り口だろう。
遠くでずーん、と爆発の音がして、鍾乳洞の全体がびりびりと震えた。地上での戦闘が激しくなっているのだ。
ぐずぐずしてはいられない。
ルイズはティトォの足を抱えなおす。すると突然、ぼこっとルイズの足下の地面が盛り上がった。
「なに?」
ルイズは驚いて、後じさった。
「敵?下から来たの?」
ルイズは地面を見つめ、杖を構えた。
ティトォの魔法による強化は解けてしまっているが、なんとかするしかない。
ルイズがごくりと唾を飲むと、盛り上がった土の中から茶色い生き物が現れた。
「あんたは!」
ルイズは驚いて叫んだ。茶色い生き物はもぐもぐと鼻をひくつかせ、つぶらな瞳でルイズを見つめている。
「ギーシュのジャイアントモールじゃない!なんでこんなことろに……、きゃあ!」
突然巨大モグラがのしかかってきて、ルイズは悲鳴を上げた。
巨大モグラは鼻をふんふんと動かして、ルイズの身体をまさぐった。
「ちょっと!そこダメ!そんなとこ触んないで!いや!いやあ!」
ルイズがモグラと取っ組み合いをしていると、モグラの出てきた穴から、ひょこっとギーシュが顔を出した。
「こら、ヴェルダンデ!どこまでお前は穴を掘る気なんだね!いいけど!って……」
土にまみれたギーシュは、モグラと絡み合うルイズと、横たわるティトォの姿を見て、とぼけた声で言った。
「おや、きみたち!ここにいたのかね!」
「ななな、なんであんたがここにいるのよ!ていうかこのモグラなんとかしてよ!」
「こらヴェルダンデ、いけないよ」
ギーシュは優しくヴェルダンデを引き剥がした。ヴェルダンデは名残惜しそうに、ルイズの『水のルビー』と『風のルビー』の匂いを嗅いでいる。
「なるほど、いきなり穴を掘りはじめたと思ったら、そういうことだったんだね。水のルビーの匂いを追いかけてきたんだね。ぼくの可愛いヴェルダンデはなにせ、宝石がとびきり大好きだからね。ラ・ロシェールまで穴を掘ってきたんだよ、彼は」
「ここは雲の上なのよ!どうやって!」
そのとき、ギーシュの傍らに、キュルケが顔を出した。
「タバサのシルフィードよ」
「キュルケ!」
「お久しぶり、ヴァリエール。ねえ、こっちも大変だったのよ?宿を襲ってきた連中の中に、あのフーケがいたんですもの。連中、犯罪者の手を借りるくらいあんたたちにご執心だったみたいね。
だもんで心配で、ここまで追いかけてきたってわけ。言っとくけど、あんたを心配したんじゃないわよ?わたしが心配したのはダーリンのことよ」
そう言ってティトォを見ると、キュルケは悲鳴を上げた。
「きゃあ!ダーリン!」
そこではじめてルイズはティトォの状態に気付き、色を失った。
ティトォの頭は血まみれで、ルイズが運んだ後に血の跡が引きずられていた。軽くスプラッターであった。
そういえば階段を下りる時、ティトォをさんざんぶつけたような……
「うむむ、これはひどい!いったいだれがこんなことを!」
ギーシュも顔をしかめて、唸った。
「は……、はは、話は後よ!すぐにここから逃げるの!敵がそこまで来てるのよ!」
ルイズは震える声で言った。
「逃げるって、任務は?ワルド子爵は?」
「手紙は手に入れたわ!ワルドは裏切り者だったの!あとは帰るだけ!」
「なんだ、よくわからないが、もう終わってしまったのか」
ギーシュがなんだか残念そうな声で言った。
「とにかく、行きましょ。ダーリンの手当てをしなきゃ」
キュルケとギーシュが、ティトォを抱えて穴に潜り込んだ。そのまま穴の中を進むと、アルビオン大陸の真下に通じていた。
二人がティトォの身体を空中に放ると、風竜の背中に乗ったタバサが、それを器用に受け止めた。
続いてヴェルダンデが身を踊らせると、風竜シルフィードがその身体を口にくわえた。
ヴェルダンデは不満そうな鳴き声を上げたが、仕方がない。ヴェルダンデの身体は大きいので、背中に乗せると他の人間が乗れなくなってしまうのだ。
「我慢しておくれ、可愛いヴェルダンデ」
続いてキュルケとギーシュが飛び降りようとして、ふと気付いた。
「……あら?ルイズは?」
穴の中に、ルイズの姿はなかった。まだ鍾乳洞の中にいるのだろうか?
「おーい、何をしてるんだね!早くしたまえ!」
声をかけても返事がないので、二人は引き返し、鍾乳洞の地面から顔を出した。
見ると、ルイズが地面に倒れていた。
キュルケたちの姿を見て、気が抜けてしまったのだろうか。ルイズは気を失っていた。
ルイズは、夢とうつつの境をさまよっていた。
うつつのルイズは、キュルケたちが自分の身体を抱え、シルフィードに乗せてくれたのだということがぼんやりとわかった。
頬に風を感じる。アルビオンが、遠く離れていく。
夢の中のルイズは、巨大な樹の枝の上に立っていた。上にも下にも、あらゆる方向に枝を伸ばす巨大な樹。『夢の樹』であった。
ルイズはきょろきょろと周りを見渡した。きっとここには、アクアがいて、ティトォもいる。
頭を階段にぶつけたこと、ティトォに謝らないとな……、と思ったが、ルイズはなんだかティトォに会いたくなくて、枝をつたってその場を離れた。
歩きながら、ルイズはぽろぽろと涙をこぼした。
自分たちは助かったけど、たぶん、王軍は負けたのだろう。
ウェールズも……、姫さまの大切な人も、死んでしまったのだろう。
ルイズには、どうしてウェールズが残らなければならなかったのか、最後まで納得できなかった。
きっとティトォなら、そうしなければならなかった理由を的確に教えてくれるんだろう。
でもルイズはその言葉を聞きたくなくて、ティトォから離れようとしていた。
ふと顔を上げると、枝の先に、背の高い女性の姿があった。
涙で視界がにじんで顔がよく見えなかったが、その長くて綺麗な髪は、ルイズと同じ桃色がかったブロンドの色をしていた。
「や」
女は、軽く手を挙げて挨拶した。
その女は初めて見る姿であったが、ルイズはなんだか、ずっと一緒にいたような気がしていた。
そうだ、この人はきっと。ティトォやアクアと同じ、不死の三人の最後の一人……
女はルイズに近付くと、袖でルイズの涙を拭ってやった。その手つきが優しくて、ルイズは故郷の下の姉の姿を思い出していた。
「……男ってさ、バカだよね」
女は寂しそうな笑顔を浮かべて、ぽつりと言った。
その言葉を聞くと、ルイズは俯いてぎゅっと唇を噛んだ。
裏切り者のワルドのこと……。
死んでしまった皇太子のこと……。
いろんな感情が暴れだして、耐えられなくなって、ルイズは女の胸に飛び込んだ。
女に抱きついて、ルイズはわんわん泣いた。こんなに泣くなんて、本当に久しぶりのことだった。
女は黙って、ルイズの頭を撫でてやった。
その手はとても優しくて、悲しみに沈むルイズの心を、ほんの少しだけ温めてくれたのだった。
第二話:おわり
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