「ゼロの騎士団-10」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「ゼロの騎士団-10」(2009/02/27 (金) 22:53:29) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
#navi(ゼロの騎士団)
ゼロの騎士団 PART1 始まりの地 トリステイン10
ニューの口から出てきた名前に、ルイズは昨日聞いた名前を思い出した。
「ナイトガンダムって・・・あなたの仲間の・・・」
そう言いながら、ルイズは凝視する。
「ナイトガンダム殿!ご無事だったのですか!」
ゼータが感極まったように叫ぶ。
「ないとがんだむ?何を言っているんだ?」
だが、目の前の人物はその名に聞き覚えがなかった。
「え!」
それは、三人から同時に発せられた言葉だった。
「俺はないとがんだむでは無い、俺の名は真駆参、天宮の武者、頑駄無真駆参だ!
よく解らんが、お前達はどうやら異国の武者の様だな、影舞乱夢か?
それとも赤流火穏か?」
ニュー達の知らない地名の同族は同じく知らない地名を聞いてくる。
良く見ると、その武者はナイトガンダムと顔はそっくりであったが見た目が違っていた。
「マークスリー・・じゃぁ、何故ナイトガンダム殿の剣と楯を持っているのだ!?」
銀色の盾と剣はニュー達がラクロアにある、ナイトガンダムの肖像画に書いてあった物とそっくりであった。
「これは昔から俺が持っていた物だ・・・だが、お前達にとってもこの盾には何かしら意味があるようだな。」
自身の持つ盾が、何か思い当たる節があるのか真駆参は考え込む。
「今度はこちらから聞きたい、お前達は何処から来た?俺達と同じ武者、
それも頑駄無の様だな」
真駆参がやはり、自分と同類が居るのが珍しいのか聞いてくる。
「私達はスダ・ドアカワールド、アルガス王国のアルガス騎士団だ!
異国のナイト殿、何故フーケに力を貸す、
我々ガンダム族は自らの意思で悪党に手を貸さないはずだ!」
自身の種族の理念に基づき、ニューが真駆参に問う。
「理由は言えん。確かに、盗賊などの手助けをする気はない・・・
だが、俺にはその女が必要なのだ!マチルダ、今助けるぞ!」
そう言って、真駆参が背中から何かを取り出す。
「マークスリー・・・・」
フーケはそれ以上の言葉がなかった。
「どけっ!目牙光銃(メガビームガン)!」
ニューのムビルフィラの様な光弾がフーケとルイズ達の間に着弾する。
ルイズ達はいったん距離を置くが、威嚇という事もありルイズ達に怪我はなかった。
「逃げろ、マチルダ!俺が時間を稼ぐ!」
威嚇射撃を続けながら、真駆参が指示を出す。
「・・・わかった!無茶すんじゃないよ!」
そう言いながら立ち上がり、フーケが森の中へ駆け出す。
「待て、フーケ」
ゼータが逃げたフーケを追おうとする。
「行かせるか!」
その足元に光弾を放つ。
「ファンネル」
ニューが動きを止めるべく、雷撃を真駆参にめがけて放つ。
だが、真駆参は後方に飛びのきながら、盾で雷撃を防ぐ。
「ならば!」
その隙を狙い、ゼータが仕掛ける。
真駆参はそれを冷静に盾で受け止め、槍でデルフを弾き飛ばす。
「爆走四脚体型形態(ブラスターケンタウルスモード)」
目牙光銃を背中に付け、ケンタウロスの様な姿に変わる。
そして、向かってきたダブルゼータの斧を横に避けながら、
脇腹に一撃を当て駆け抜ける。
「うそ、三人相手にしても互角なんて・・・」
ルイズが自分達の使い魔の実力を知っているだけに、その武者は圧倒的であった。
そのまま、距離を置いた所で真駆参が振り返る。
「マチルダは無事逃げたか・・・すまない、俺はお前達と戦うつもりはない。
さらばだ、異国の武者達よ!」
そう言いながら、フーケの逃げた森の方に向けて真駆参は走っていた。
後には、呆然としているルイズ達が残された。
「なんのよ、あいつ勝手なこと言って・・・・訳分かんないわ!」
凱旋気分を一気に敗戦の体を成した武者の背中を見ながら、ルイズは心の底から叫んだ。
フーケは背後を見ずに森の中を走っていた。
「マチルダ、乗れ」
後ろから追いついた、真駆参がフーケを自分の背中に乗せる。
「マークスリー!なんだってアンタが来たんだい、アンタにはあの「テファに頼まれたのさ」え!」
(あの娘が・・・)
以外な名前が出て、フーケは動揺する。
「テファはお前が何をやっているか薄々勘付いている。
だけど、あいつはお前の仕事を助けて欲しいとしか言わなかった。」
真駆参が彼女を助けた理由を明かす。
「俺は、盗賊なんか助けたくはないが、テファやガキ共にはお前が必要だ。
だから助けに来た・・・」
「そうかい・・・・」
(あの娘は気付いていたのかい・・・)
理由を知った嬉しさと、テファが自分の仕事を知っている事への驚きがそれ以上の言葉を紡げなかった。
しばらくして、森を抜ける、時間は正午で日差しは暖かかった。
「一旦家に帰るぞ、これからの事を話すのはそれからだ・・・」
「そうだね・・・・マークスリー」
「ん、なんだ?」
真駆参が背中で聞いてくる。
「助けに来てくれてありがと・・・」
「俺は町では目立つ、町に着いたらお前にやってもらう事は有る・・・今は寝ていろ」
「・・・うん・・・」
真駆参はその言葉と共にマチルダの熱を背中で感じた。
ルイズ達の帰りの馬車は戦に負けた兵士たちの様であった。
「まぁ、いいじゃねぇか、大事な物は取り返せたんだし」
陽気を装いダブルゼータが声を上げるがその声で場を盛り上げるには無理があった。
「・・それもそうね、けど、あれはいったい何だったのかしら?」
場を白けさせる訳にはいかず、キュルケが続ける。
「俺も長生きしてるけど、お前さん以外のあんな物を見るのは初めてだぜ」
長く生きているらしいデルフも、真駆参が珍しかった。
「分からない、少なくともあの様な騎士知らない。それに、あの様な武器見た事無い。」
自身の足を止めた武器を思い出しながら、ゼータが話に加わる。
「あれは銃」
タバサがゼータの疑問に答える。
「銃?銃って、あの?」
自分達を威嚇した銃は、ルイズが思い浮かべる銃とは全く違う物に見えた。
「可能性があるのはそれ、けど私達の物より性能は何倍も上」
タバサが考えられる推測を提示する。
「秘宝を取り返せたのは幸いだったな・・・
とにかく、あのマークスリーとやらが敵に回らないと言う言葉を信じたいな」
ニューが結果の成功と真駆参の事を頭に浮かべながら話を纏める。
「そうね・・・」
ルイズが力なく答える。
(秘宝を取り戻す事は出来た、けど、アイツには全く歯が立たなかった・・・)
おそらく、皆の胸中にある考えをルイズもまた抱いていた。
夕日が綺麗に映る頃、トリステインの門が見えてきた。
足取りは重いが、6人はオールド・オスマンに報告するために学院長室に向かった。
「そうか、ミス・ロングビルが土くれのフーケとは・・・
しかし、ロングビルを助けたのもお前さん達と同じ姿とはのぉ・・・」
秘宝が戻った事よりも、ロングビルを助けに現れたニュー達と同じ存在がオスマンには気になった。
「じいさんよぉ、それよりなんで此処に獅子の斧と「キャラカーン」なんてあるんだよ?」
自身の獲物が何故ここにあるのか、ダブルゼータがオスマンに尋ねる。
「きゃらかーん?それは神の雫の事か?」
「御大層な名前だな、こいつはキャラカーンといって子供の飲むオマケ付きのジュースだよ」
そういって、缶を雑に置く。
「なんと、子供の飲むジュースじゃと?」
「アルガスのどこの街でも買えます。それより、これはどうやって手に入れたんですか?」
自身の世界の物が見つかった事に、ニューも興味がわく。
「それは、数年前ある貴族が召喚した物なんじゃ・・」
「私たち以外にもいたのね、そんな人が」
キュルケが遠くを見るように呟く。
「その貴族はそれを4個召喚したそうじゃ、調べてみると中から液体が出て、
それをその貴族が飲んでみると、とても美味だったそうじゃ、
そして、貴族はそれを亡き国王に献上したらしい、
国王もその味を大層気に入りアンリエッタ王女の嫁入り道具に持たせる事に決め、
固定化をかけてその管理をここの宝物庫に預けた訳じゃ」
オスマンが神の雫の経緯を語り終える。
「そんなに美味しいの?」
ルイズがニューに聞く
「リンゴのジュースを思い浮かべればいい、いたって普通の味だよ」
自身の経験から、味を思い浮かべながら語る。
「じゃあ次に、獅子の斧はどうやって手に入れたんですか?
これはノア地方の秘宝であり、ダブルゼータが最後まで持っていたものです。」
ゼータがより重要なアイテムの出所を聞く。
「獅子の斧というのか・・・・・それは・・・」
オスマンが急に神妙な顔になる。
「それは?」
皆の顔にも緊張が走る。
「それは・・・数年前に、そこの森で拾ったんじゃよ」
オスマンが、窓から近くにある森を指差す。
「なんだよ!思わせ振りな事言いやがって!」
ダブルゼータが真っ先に突っ込む。
「拾った時の事を覚えていますか?」
ニューが気を取り直して、当時の状況を聞く
「あれは、数年前、森の散歩中に落ちているのを見つけたんじゃ、最初は普通の斧かと思ってたが、気になってディテクトマジックをかけてみたら、
急に獅子が目の前に飛び込んでくるような錯覚を見たんじゃ。
これは何かしらのマジックアイテムかと思って研究したが、
分からないので宝物庫にしまったのじゃ、まさか、お前さんの持ち物だったとはのぉ」
オスマンは長年疑問に思っていた物が、ダブルゼータの所有物だと分り安心する。
「他には、龍の形をした盾とか梟の形をした杖とかはありませんでしたか?」
ニューが自身の杖のありかに期待を込めて、オスマンに聞く。
「いや、あるのは獅子の斧だけじゃよ・・・
しかし、モット伯は何故それを欲しがったのかのぉ、価値の分かる筈はないんじゃが・・・・」
モット伯がなぜ、それほどまでに欲しがったのかをオスマンには理解できなかった。
(おそらく、ドライセンだろうな)
ルイズ達は、屋敷で戦ったドライセンの事が頭に浮かんだ。
ドライセンは自分達の事が狙いだと言った。
しかも、それは誰かの命令であると・・・見えない敵の存在に、改めて不安を覚える。
「なぁ、じいさんキャラカーン開ける時に丸いカードが無かったか?」
何かを思い出したようにダブルゼータがオスマンに聞く。
「カード?知らんのぉ、それがどうしたんじゃ?」
「キャラカーンにはカードがあって、それを集めるのが子供達の流行りなんだよ」
ダブルゼータがそう言いながら、缶の上を開ける。
「アンタ何やってるの!それはアンリエッタ様の嫁入りの際に使うのよ!」
「中は飲まねぇよ、カードが見たいだけだ・・・おっ!入ってる。」
ふたを開けて、カードを確認する。
「ん?闘士メガガンダム?どこかで聞いたような・・・・」
カードを見ながら、ダブルゼータが記憶を辿る。
「ねぇ、これアンタに似ていない?」
横から覗き込んだルイズが指摘する。
「確かに・・・あっ!そうだこいつは遠い親戚のメガガンダムだ!」
思い出したように、ダブルゼータが声を上げる。
「ん?・・・だが、確かメガガンダムはまだ子供だったぞ?」
書かれている、メガガンダムの絵を見てダブルゼータが疑問に浮かぶ。
ダブルゼータが最後に会ったのは3年前の11才であり、時間的にはおそらく14才くらいの筈であった。
「なんで、メガガンダムがあるんだ?俺だってまだモデルになって無いのに?」
「どういう事?」
キュルケがダブルゼータの疑問を理解できない。
「キャラカーンは、ある程度有名にならないとモデルにならないんだよ、現に俺やゼータ達だってまだモデルになった事は無いからな」
ダブルゼータが自慢げに解説する。
「なんでそんな事知っているの?」
「コイツは自分がモデルになっているかを確認するために、新しいのが出るたびに大量に買っていたからだ」
部屋にあった大量の缶を思い出し、ニューがその理由を言う。
「アンタって、ホント子供ね・・・」
彼が何故、キャラカーンに詳しいのかを知りルイズが呆れる。
「うっ、うるさい、とにかく日付を確認しよう・・・新生ブリティス7年?いつの時代だ?ニュー、分かるか?」
缶に書かれた日付を読み上げて、ダブルゼータがニューに聞く。
「時代は解らんが、ブリティスとは確か遠くの異国だった事を記憶している。」
記憶の中から、その地名が遠くの異国である事を何とか思い出す。
「じゃあ、メガガンダムはそのブリティスで有名になった訳か・・・」
自分にとって、弟分のような存在が騎士として名を残した事に、
ダブルゼータも感慨の気持ちを抱く。
「ん?ちょっと待て」
そこで、ゼータが疑問を抱く。
「どうしたの?」
「ダブルゼータの話ではメガガンダムはまだ14歳だろう、それが騎士として有名になったて事は数年間が過ぎているのではないか?」
ゼータが今までの事から、考えられる可能性を示す。
「いや、オスマン殿は数年前に獅子の斧を拾ったと言う、我々が来たのはつい最近だ」
ニューがオスマンの話していた事実を思い出し、その可能性を否定する。
「どうなっているんだ・・・」
元に帰る方法の手掛りよりも、新たな謎が生まれる。
それを見ていたオスマンは一つ咳をして場の流れを変える。
「まぁ、その事は後で考えるとして、今日はフリッグの舞踏会じゃ、ミス・ヴァリエール達の支度にも時間が掛る、今日はお前さん達が主役じゃ楽しみなさい。」
暗にオスマンがこの部屋からの退室を促す。
「・・・考えても分からないし、そうしましょう。」
ニュー達も結論をせずに、その案に従う。
(・・・・それって、もしニュー達がスダ・ドアカワールド帰っても、ニュー達の時代じゃ無いかもしれないって事?・・・)
ニュー達の会話から、ルイズはその可能性を考えたがとても口には出せなかった。
陽が暮れて、華やかにフリッグの舞踏会は開催された。
「しかし、なぜスダ・ドアカワールドの物がこの世界にあるのだ」
ワインを飲みながら、ゼータは考え込んでいた。
「そんな事もあるんじゃねぇか、俺達が召喚されるくらいなんだし」
ロースト・ビーフを独占しながら、ダブルゼータが答える。
「たしかに、それにあの騎士やドライセン考えるときりが無い」
カットされたフルーツを皿に持ちながらも、その皿は進んでいない。
「俺は相棒が握ってくれるなら、何も問題ないけどな」
デルフも、会話に交ざりたいのか口を挟む。
「そう言う訳にもいかんだろう。ん、あれはキュルケとタバサじゃないか」
新たに開かれた扉から、見知った二人が現れる。
「あら、三人ともつまらない顔ね、もっと楽しみなさいよ」
胸元の空いたドレスを纏ったキュルケがウィンクを送る。
「答えに近づいたと思ったら、そうでは無かったからな落ち込みもするさ」
ニューが首を竦める。
「タバサ、そのドレスすごく似合っているよ」
上質な黒いドレスに身を包んだタバサを見てゼータがそれを褒める。
「ありがと・・」
表情を変える訳でも無く、そのままテーブルに近づきご馳走を侵略し始める。
「タバサ、その魚は俺のだ!」
狙っていた魚を取られダブルゼータが抗議する。
「早い者勝ち」
そういいながら、タバサは次のサラダに取り掛かる。
「おもしれぇ、その勝負受けて立つぜ!」
タバサの宣戦布告に応じて、ただでさえ速いペースをさらに上げる。
「ある意味いつもどおりね・・・ゼータ、あなたダンスは出来る?」
微笑ましい目で見つめながら、キュルケがゼータに話しかける。
「出来なくはないが、どうしてだ?」
「決まってるじゃない、ダンスのパートナーよ。ダブルゼータに相手が務まる訳ないじゃない」
必死な目で、魚の皿を取りあう二人に目を向ける。
「いいのか?君と踊りたい奴の視線を感じるが」
周りからの悪意ある視線をゼータも感じる。
「彼らとは後で踊ってあげるわ。で、お相手して下さいますミスタ?」
キュルケが妖艶な仕草で手を差し伸べる。
「私でよければ、ミス・ツェルプストー」
その手を取り、ゼータとキュルケがホールの真ん中に消えていく。
「しかし、使い魔と踊る奴なんか初めて見たぜ」
デルフも、それを見てからかいの声を上げる。
「まぁ、いいじゃないか・・・・」
酒も入っているのか、ニューがそれを見ながら場の雰囲気に少し酔いしれる。
「あの・・・一曲お相手して下さいますか?」
ニューが振り返ると、そこには桃色の髪の少女が声をかけて来た。
「すまないが、私はゼータの様には踊れんよ、申し訳ないお嬢さん」
ニューが丁重にそれを断る。
「ぷっ!何がお嬢さんよ、自分の主が分からないの?」
そう言いながら、少女は笑い出した。
「え!もしかして、ルイズ!?」
目の前の少女が、自分の知っているルイズとかけ離れている事にニューも驚く。
「そうよ、主の顔も分からない位酔ったの?」
起こった様子もなく、ルイズはワインを頂く。
「そのようだ、似合っているぞ」
ニューが素直に主の姿を褒める。
「あたりまえよ。それで、貴方はお相手して下さらないの?ミスタ・ニュー?」
初めて会った時の芝居がかった仕草でルイズが相手に誘う。
「私は、こう言った事は下手だぞ?」
「下手でもいいわ、取りあえずこれはご褒美と思ってくれていいわ」
「褒美よりも自由が欲しいがね、分りました、お相手させて戴きます。ミス・ヴァリエール」
そう言って、ニューはルイズの細い手を取った。
自分の使い魔と踊る奇妙な舞踏会はこうして過ぎて行った。
アンリエッタは夢を見ていた。
「アンリエッタよ、異世界の王女よ・・・・」
夢の感覚である事を確認しながら、その声を聞いた。
「あなたは?ここは?」
その声は敵意は無く、恐怖は無かった。
「我は黄金龍より託されし者・・・アンリエッタよこの世界に邪悪なる物が現れようとしている」
厳かに、何かがアンリエッタに警告する。
「邪悪なる物?それはレコンキスタですか?」
アンリエッタは自身にとって敵を思い浮かべる。
「それは一部に過ぎない、そこからさらに邪悪なる物が現れ、この世界を破滅に導くであろう」
「それはいったい何なのですか!?私に如何しろと言うんです、私には闘う力などありません。」
自分が無力である事は知っている。この者は、自分の存在がどれほどのものか知らないのであろうか?
「アンリエッタよ戦うのは一人では無い。ルイズに、虚無の力を持つあの娘に『始祖の祈祷書』を授けよ、それが汝の力となるであろう。」
そう言い残し、声が遠くなる。
「待って下さい、ルイズが虚無とはどう言う事なのですか?あなたは何者なのですか?」
一方的に告げられて、アンリエッタが必死に情報を得ようとする。
「我は・・・光の化身なり・・・・」
そこで、アンリエッタは現実に帰った。
「光の化身・・・・」
最後に、その言葉だけは何とか聞き取れた。
「ルイズ・・・あなたが何故?」
自身だけでは無く、親友まで過酷な運命が待っている事に、
アンリエッタはただ泣きたくなった。
ガリア王国 プチ・トロワ
ソファーに一人の少女が小鳥と戯れていた。
「じゃぁ、たのんだよ」
何かをくくりつけて、小鳥を空に放つ。
その様子を、嬉しそうに見つめる。
「これで、あのガーゴイルも・・アイツのビビった顔が目に浮かぶわ」
歪んだ事を空に吐きながら、少女が嬉しそうに声を上げる。
「無表情のアイツでも、この任務を見たらどんな顔をするかねぇ」
その時の表情を思い浮かべながら、彼女は愉悦に浸る。
「何かいい事でもあったのかい、イザベラ」
不意に、後ろから声が掛る。
「アンタかい、もしかしてもう終わったのかい?」
「ああ、終わったから、報告に来たんだよ」
どうやら、彼女に報告に来たらしい
「あの山賊団はうちの騎士達でも手を焼いていたんだよ、
それを如何にかしちまうとは、さすが、私の使い魔だね」
少女が手柄を自分の物の様に喜ぶ。
「アンタは最強の使い魔だよ、アレックス」
自身が手に入れた力に、ただ少女は酔いしれていた。
「21あいつにはお前が必要なんだ」
頑駄無真駆参
ナイトガンダムに似ている。
HP 2800
「アンタは最強だよアレックス」
始まりの地トリステイン完結
その名前の意味は
To Be Continued・・・
ゼロの騎士団 PART1 始まりの地 トリステイン
「おねがい、姉さんを助けてあげて」
少女はそれしか言えなかった。
「姉さんは隠しているけど、危険な事をしている。」
(私には助ける事は出来ない、けど・・・)
自身の願いで、彼が傷つく事を同時に恐れた。
「・・・マチルダを助ければいいんだな」
そう言いながら、ドアに向かい歩く。
「・・・ごめんなさい」
「俺はお前の使い魔だ、気にするな」
その声と共に、ドアを開ける音がする。
「必ず、帰って来てねマークスリー・・・」
#navi(ゼロの騎士団)
#navi(ゼロの騎士団)
ゼロの騎士団 PART1 始まりの地 トリステイン10
ニューの口から出てきた名前に、ルイズは昨日聞いた名前を思い出した。
「ナイトガンダムって……あなたの仲間の……」
そう言いながら、ルイズは凝視する。
「ナイトガンダム殿!ご無事だったのですか!」
ゼータが感極まったように叫ぶ。
「ないとがんだむ?何を言っているんだ?」
だが、目の前の人物はその名に聞き覚えがなかった。
「え!」
それは、三人から同時に発せられた言葉だった。
「俺はないとがんだむでは無い、俺の名は真駆参、天宮の武者、頑駄無真駆参だ!
よく解らんが、お前達はどうやら異国の武者の様だな、影舞乱夢か?それとも赤流火穏か?」
ニュー達の知らない地名の同族は同じく知らない地名を聞いてくる。
良く見ると、その武者はナイトガンダムと顔はそっくりであったが見た目が違っていた。
「マークスリー……じゃぁ、何故ナイトガンダム殿の剣と楯を持っているのだ!?」
銀色の盾と剣はニュー達がラクロアにある、ナイトガンダムの肖像画に書いてあった物とそっくりであった。
「これは昔から俺が持っていた物だ。だが、お前達にとってもこの盾には何かしら意味があるようだな。」
自身の持つ盾が、何か思い当たる節があるのか真駆参は考え込む。
「今度はこちらから聞きたい、お前達は何処から来た?俺達と同じ武者、それも頑駄無の様だな」
真駆参がやはり、自分と同類が居るのが珍しいのか聞いてくる。
「私達はスダ・ドアカワールド、アルガス王国のアルガス騎士団だ!
異国のナイトよ、何故フーケに力を貸す、我々ガンダム族は自らの意思で悪党に手を貸さないはずだ!」
自身の種族の理念に基づき、ニューが真駆参に問う。
「理由は言えん。確かに、盗賊などの手助けをする気はない……だが、俺にはその女が必要なのだ!マチルダ、今助けるぞ!」
そう言って、真駆参が背中から何かを取り出す。
「マークスリー……」
フーケはそれ以上の言葉がなかった。
「どけっ!目牙光銃(メガビームガン)!」
ニューのムビルフィラの様な光弾がフーケとルイズ達の間に着弾する。
ルイズ達はいったん距離を置くが、威嚇という事もありルイズ達に怪我はなかった。
「逃げろ、マチルダ!俺が時間を稼ぐ!」
威嚇射撃を続けながら、真駆参が指示を出す。
「……わかった!無茶すんじゃないよ!」
そう言いながら立ち上がり、フーケが森の中へ駆け出す。
「待て、フーケ」
ゼータが逃げたフーケを追おうとする。
「行かせるか!」
その足元に光弾を放つ。
「バズ」
ニューが動きを止めるべく、爆発を真駆参にめがけて放つ。
だが、真駆参は後方に飛びのきながら、盾で爆風を防ぐ。
「ならば!」
その隙を狙い、ゼータが仕掛ける。
真駆参はそれを冷静に盾で受け止め、槍でデルフを弾き飛ばす。
「爆走四脚体型形態(ブラスターケンタウルスモード)」
目牙光銃を背中に付け、ケンタウロスの様な姿に変わる。
そして、向かってきたダブルゼータの斧を横に避けながら、脇腹に一撃を当て駆け抜ける。
「うそ、三人相手にしても互角なんて……」
ルイズが自分達の使い魔の実力を知っているだけに、その武者は圧倒的であった。
そのまま、距離を置いた所で真駆参が振り返る。
「マチルダは無事逃げたか……すまない、俺はお前達と戦うつもりはない。
さらばだ、異国の武者達よ!」
そう言いながら、フーケの逃げた森の方に向けて真駆参は走っていた。
後には、呆然としているルイズ達が残された。
「なんのよ、あいつ勝手なこと言って……訳分かんないわ!」
凱旋気分を一気に敗戦の体を成した武者の背中を見ながら、ルイズは心の底から叫んだ。
フーケは背後を見ずに森の中を走っていた。
「マチルダ、乗れ」
後ろから追いついた、真駆参がフーケを自分の背中に乗せる。
「マークスリー!なんだってアンタが来たんだい、アンタにはあの「テファに頼まれたのさ」え!」
(あの娘が……)
以外な名前が出て、フーケは動揺する。
「テファはお前が何をやっているか薄々勘付いている。だけど、あいつはお前の仕事を助けて欲しいとしか言わなかった。」
真駆参が彼女を助けた理由を明かす。
「俺は、盗賊なんか助けたくはないが、テファやガキ共にはお前が必要だ。だから助けに来た……」
「そうかい……」
(あの娘は気付いていたのかい……)
理由を知った嬉しさと、テファが自分の仕事を知っている事への驚きがそれ以上の言葉を紡げなかった。
しばらくして、森を抜ける、時間は正午で日差しは暖かかった。
「一旦家に帰るぞ、これからの事を話すのはそれからだ……」
「そうだね……マークスリー」
「ん、なんだ?」
真駆参が背中で聞いてくる。
「助けに来てくれてありがと……」
「俺は町では目立つ、町に着いたらお前にやってもらう事は有る……今は寝ていろ」
「……うん……」
真駆参はその言葉と共にマチルダの熱を背中で感じた。
ルイズ達の帰りの馬車は戦に負けた兵士たちの様であった。
「まぁ、いいじゃねぇか、大事な物は取り返せたんだし」
陽気を装いダブルゼータが声を上げるがその声で場を盛り上げるには無理があった。
「……それもそうね、けど、あれはいったい何だったのかしら?」
場を白けさせる訳にはいかず、キュルケが続ける。
「俺も長生きしてるけど、お前さん以外のあんな物を見るのは初めてだぜ」
長く生きているらしいデルフも、真駆参が珍しかった。
「分からない、少なくともあの様な騎士知らない。それに、あの様な武器見た事無い。」
自身の足を止めた武器を思い出しながら、ゼータが話に加わる。
「あれは銃」
タバサがゼータの疑問に答える。
「銃?銃って平民が使う、あの?」
自分達を威嚇した銃は、ルイズが思い浮かべる銃とは全く違う物に見えた。
「可能性があるのはそれ、けど私達の物より性能は何倍も上」
タバサが考えられる推測を提示する。
「秘宝を取り返せたのは幸いだったな……
とにかく、あのマークスリーとやらが敵に回らないと言う言葉を信じたいな」
ニューが結果の成功と真駆参の事を頭に浮かべながら話を纏める。
「そうね……」
ルイズが力なく答える。
(秘宝を取り戻す事は出来た、けど、アイツには全く歯が立たなかった……)
おそらく、皆の胸中にある考えをルイズもまた抱いていた。
夕日が綺麗に映る頃、トリステインの門が見えてきた。
足取りは重いが、6人はオールド…オスマンに報告するために学院長室に向かった。
「そうか、ミス…ロングビルが土くれのフーケとは……しかし、ロングビルを助けたのもお前さん達と同じとはのぉ……」
秘宝が戻った事よりも、ロングビルを助けに現れたニュー達と同じ存在がオスマンには気になった。
「じいさんよぉ、それよりなんで此処に獅子の斧と「キャラカーン」なんてあるんだよ?」
自身の獲物が何故ここにあるのか、ダブルゼータがオスマンに尋ねる。
「きゃらかーん?それは神の雫の事か?」
「御大層な名前だな、こいつはキャラカーンといって子供の飲むオマケ付きのジュースだよ」
そういって、缶を雑に置く。
「なんと、子供の飲むジュースじゃと?」
「アルガスのどこの街でも買えます、それより、これはどうやって手に入れたんですか?」
自身の世界の物が見つかった事に、ニューも興味がわく。
「それは、数年前ある貴族が召喚した物なんじゃ……」
「私たち以外にもいたのね、そんな人が」
キュルケが遠くを見るように呟く。
「その貴族はそれを4個召喚したそうじゃ、調べてみると中から液体が出て、それをその貴族が飲んでみると、とても美味だったそうじゃ、そして、貴族はそれを亡き国王に献上したらしい、国王もその味を大層気に入りアンリエッタ王女の嫁入り道具に持たせる事に決め、固定化をかけてその管理をここの宝物庫に預けた訳じゃ」
オスマンが神の雫の経緯を語り終える。
「そんなに美味しいの?」
ルイズがニューに聞く
「リンゴのジュースを思い浮かべればいい、いたって普通の味だよ」
自身の経験から、味を思い浮かべながら語る。
「じゃあ次に、獅子の斧はどうやって手に入れたんですか?これはノア地方の秘宝であり、ダブルゼータが最後まで持っていたものです。」
ゼータがより重要なアイテムの出所を聞く。
「獅子の斧というのか……それは……」
オスマンが急に神妙な顔になる。
「それは?」
皆の顔にも緊張が走る。
「それは……数年前に、そこの森で拾ったんじゃよ」
オスマンが、窓から近くにある森を指差す。
「なんだよ!思わせ振りな事言いやがって!」
ダブルゼータが真っ先に突っ込む。
「拾った時の事を覚えていますか?」
ニューが気を取り直して、当時の状況を聞く
「あれは、数年前、森の散歩中に落ちているのを見つけたんじゃ、最初は唯の斧かと思ってディテクトマジックをかけてみたら、急に獅子が目の前に飛び込んでくるような錯覚を見たんじゃ。これは何かしらのマジックアイテムかと思って研究したが、分からないので宝物庫にしまったのじゃ、まさか、お前さんの持ち物だったとはのぉ」
オスマンは長年疑問に思っていた物が、ダブルゼータの所有物だと分り安心する。
「他には、龍の形をした盾とか梟の形をした杖とかはありませんでしたか?」
ニューが自身の杖のありかに期待を込めて、オスマンに聞く。
「いや、あるのは獅子の斧だけじゃよ……しかし、モット伯は何故それを欲しがったのかのぉ、価値の分かる筈はないんじゃが……」
モット伯がなぜ、それほどまでに欲しがったのかをオスマンには理解できなかった。
(おそらく、ドライセンだろうな)
ルイズ達は、屋敷で戦ったドライセンの事が頭に浮かんだ。
ドライセンは自分達の事が狙いだと言った。
しかも、それは誰かの命令であると……見えない敵の存在に、改めて不安を覚える。
「なぁ、じいさんキャラカーン開ける時に丸いカードが無かったか?」
何かを思い出したようにダブルゼータがオスマンに聞く。
「カード?知らんのぉ、それがどうしたんじゃ?」
「キャラカーンにはカードがあって、それを集めるのが子供達の流行りなんだよ」
ダブルゼータがそう言いながら、缶の上を開ける。
「アンタ何やってるの!それはアンリエッタ様の嫁入りの際に使うのよ!」
「中は飲まねぇよ、カードが見たいだけだ……おっ!入ってる。」
ふたを開けて、カードを確認する。
「ん?闘士メガガンダム?どこかで聞いたような…………」
カードを見ながら、ダブルゼータが記憶を辿る。
「ねぇ、これアンタに似ていない?」
横から覗き込んだルイズが指摘する。
「確かに……あっ!そうだこいつは遠い親戚のメガガンダムだ!」
思い出したように、ダブルゼータが声を上げる。
「ん?……だが、確かメガガンダムはまだ子供だったぞ?」
書かれている、メガガンダムの絵を見てダブルゼータが疑問に浮かぶ。
ダブルゼータが最後に会ったのは3年前の11才であり、時間的にはおそらく14才くらいの筈であった。
「なんで、メガガンダムがあるんだ?俺だってまだモデルになって無いのに?」
「どういう事?」
キュルケがダブルゼータの疑問を理解できない。
「キャラカーンは、ある程度有名にならないとモデルにならないんだよ、現に俺やゼータ達だってまだモデルになった事は無いからな」
ダブルゼータが自慢げに解説する。
「なんでそんな事知っているの?」
「コイツは自分がモデルになっているかを確認するために、新しいのが出るたびに大量に買っていたからだ」
部屋にあった大量の缶を思い出し、ニューがその理由を言う。
「アンタって、ホント子供ね……」
彼が何故、キャラカーンに詳しいのかを知りルイズが呆れる。
「うっ、うるさい、とにかく日付を確認しよう……新生ブリティス7年?いつの時代だ?ニュー、分かるか?」
缶に書かれた日付を読み上げて、ダブルゼータがニューに聞く。
「時代は解らんが、ブリティスとは確か遠くの異国だった事を記憶している。」
記憶の中から、その地名が遠くの異国である事を何とか思い出す。
「じゃあ、メガガンダムはそのブリティスで有名になった訳か……」
自分にとって、弟分のような存在が騎士として名を残した事に、
ダブルゼータも感慨の気持ちを抱く。
「ん?ちょっと待て」
そこで、ゼータが疑問を抱く。
「どうしたの?」
「ダブルゼータの話ではメガガンダムはまだ14歳だろう、それが騎士として有名になったて事は数年間が過ぎているのではないか?」
ゼータが今までの事から、考えられる可能性を示す。
「いや、オスマン殿は数年前に獅子の斧を拾ったと言う、我々が来たのはつい最近だ」
ニューがオスマンの話していた事実を思い出し、その可能性を否定する。
「どうなっているんだ……」
元に帰る方法の手掛りよりも、新たな謎が生まれる。
それを見ていたオスマンは一つ咳をして場の流れを変える。
「まぁ、その事は後で考えるとして、今日はフリッグの舞踏会じゃ、ミス・ヴァリエール達の支度にも時間が掛る、今日はお前さん達が主役じゃ楽しみなさい。」
暗にオスマンがこの部屋からの退室を促す。
「……考えても分からないし、そうしましょう。」
ニュー達も結論をせずに、その案に従う。
(……それって、もしニュー達がスダ・ドアカワールド帰っても、ニュー達の時代じゃ無いかもしれないって事?……)
ニュー達の会話から、ルイズはその可能性を考えたがとても口には出せなかった。
陽が暮れて、華やかにフリッグの舞踏会は開催された。
「しかし、なぜスダ・ドアカワールドの物がこの世界にあるのだ」
ワインを飲みながら、ゼータは考え込んでいた。
「そんな事もあるんじゃねぇか、俺達が召喚されるくらいなんだし」
ロースト…ビーフを独占しながら、ダブルゼータが答える。
「たしかに、それにあの騎士やドライセン考えるときりが無い」
カットされたフルーツを皿に持ちながらも、その皿は進んでいない。
「俺は相棒が握ってくれるなら、何も問題ないけどな」
デルフも、会話に交ざりたいのか口を挟む。
「そう言う訳にもいかんだろう。ん、あれはキュルケとタバサじゃないか」
新たに開かれた扉から、見知った二人が現れる。
「あら、三人ともつまらない顔ね、もっと楽しみなさいよ」
胸元の空いたドレスを纏ったキュルケがウィンクを送る。
「答えに近づいたと思ったら、そうでは無かったからな落ち込みもするさ」
ニューが首を竦める。
「タバサ、そのドレスすごく似合っているよ」
上質な黒いドレスに身を包んだタバサを見てゼータがそれを褒める。
「ありがと……」
表情を変える訳でも無く、そのままテーブルに近づきご馳走を侵略し始める。
「タバサ、その魚は俺のだ!」
狙っていた魚を取られダブルゼータが抗議する。
「早い者勝ち」
そういいながら、タバサは次のサラダに取り掛かる。
「おもしれぇ、その勝負受けて立つぜ!」
タバサの宣戦布告に応じて、ただでさえ速いペースをさらに上げる。
「ある意味いつもどおりね……ゼータ、あなたダンスは出来る?」
微笑ましい目で見つめながら、キュルケがゼータに話しかける。
「出来なくはないが、どうしてだ?」
「決まってるじゃない、ダンスのパートナーよ。ダブルゼータに相手が務まる訳ないじゃない」
必死な目で、魚の皿を取りあう二人に目を向ける。
「いいのか?君と踊りたい奴の視線を感じるが」
周りからの悪意ある視線をゼータも感じる。
「彼らとは後で踊ってあげるわ。で、お相手して下さいますミスタ?」
キュルケが妖艶な仕草で手を差し伸べる。
「私でよければ、ミス・ツェルプストー」
その手を取り、ゼータとキュルケがホールの真ん中に消えていく。
「しかし、使い魔と踊る奴なんか初めて見たぜ」
デルフも、それを見てからかいの声を上げる。
「まぁ、いいじゃないか……」
酒も入っているのか、ニューがそれを見ながら場の雰囲気に少し酔いしれる。
「あの……一曲お相手して下さいますか?」
ニューが振り返ると、そこには桃色の髪の少女が声をかけて来た。
「すまないが、私はゼータの様には踊れんよ、申し訳ないお嬢さん」
ニューが丁重にそれを断る。
「ぷっ!何がお嬢さんよ、自分の主が分からないの?」
そう言いながら、少女は笑い出した。
「え!もしかして、ルイズ!?」
目の前の少女が、自分の知っているルイズとかけ離れている事にニューも驚く。
「そうよ、主の顔も分からない位酔ったの?」
起こった様子もなく、ルイズはワインを頂く。
「そのようだ、似合っているぞ」
ニューが素直に主の姿を褒める。
「あたりまえよ。それで、貴方はお相手して下さらないの?ミスタ・ニュー?」
初めて会った時の芝居がかった仕草でルイズが相手に誘う。
「私は、こう言った事は下手だぞ?」
「下手でもいいわ、取りあえずこれはご褒美と思ってくれていいわ」
「褒美よりも自由が欲しいがね、分りました、お相手させて戴きます。ミス・ヴァリエール」
そう言って、ニューはルイズの細い手を取った。
自分の使い魔と踊る奇妙な舞踏会はこうして過ぎて行った。
アンリエッタは夢を見ていた。
「アンリエッタよ、異世界の王女よ……」
夢の感覚である事を確認しながら、その声を聞いた。
「あなたは?ここは?」
その声は敵意は無く、恐怖は無かった。
「我は黄金龍より託されし者……アンリエッタよこの世界に邪悪なる物が現れようとしている」
厳かに、何かがアンリエッタに警告する。
「邪悪なる物?それはレコン・キスタですか?」
アンリエッタは自身にとって敵を思い浮かべる。
「それは一部に過ぎない、そこからさらに邪悪なる物が現れ、この世界を破滅に導くであろう」
「それはいったい何なのですか!?私に如何しろと言うんです、私には闘う力などありません」
自分が無力である事は知っている。この者は、自分の存在がどれほどのものか知らないのであろうか?
「アンリエッタよ戦うのは一人では無い。ルイズに、虚無の力を持つあの娘に『始祖の祈祷書』を授けよ、それが汝の力となるであろう」
そう言い残し、声が遠くなる。
「待って下さい、ルイズが虚無とはどう言う事なのですか?あなたは何者なのですか?」
一方的に告げられて、アンリエッタが必死に情報を得ようとする。
「我は光の化身なり……」
そこで、アンリエッタは現実に帰った。
最後に、その言葉だけは何とか聞き取れた。
「ルイズ、あなたが何故?」
自身だけでは無く、親友まで過酷な運命が待っている事に、
アンリエッタはただ泣きたくなった。
ガリア王国 プチ…トロワ
ソファーに一人の少女が小鳥と戯れていた。
「じゃぁ、たのんだよ」
何かをくくりつけて、小鳥を空に放つ。
その様子を、嬉しそうに見つめる。
「これで、あのガーゴイルも……アイツのビビった顔が目に浮かぶわ」
歪んだ事を空に吐きながら、少女が嬉しそうに声を上げる。
「無表情のアイツでも、この任務を見たらどんな顔をするかねぇ」
その時の表情を思い浮かべながら、彼女は愉悦に浸る。
「何かいい事でもあったのかい、イザベラ」
不意に、後ろから声が掛る。
「アンタかい、もしかしてもう終わったのかい?」
「ああ、終わったから、報告に来たんだよ」
どうやら、彼女に報告に来たらしい
「あの山賊団はうちの騎士達でも手を焼いていたんだよ、
それを如何にかしちまうとは、さすが、私の使い魔だね」
少女が手柄を自分の物の様に喜ぶ。
「アンタは最強の使い魔だよ、アレックス」
自身が手に入れた力に、ただ少女は酔いしれていた。
「21あいつにはマチルダが必要なんだ」
頑駄無真駆参
ナイトガンダムに似ている。
HP 2800
「アンタは最強だよアレックス」
始まりの地トリステイン完結
その名前の意味は
To Be Continued……
ゼロの騎士団 PART1 始まりの地 トリステイン
「おねがい、姉さんを助けてあげて」
少女はそれしか言えなかった。
「姉さんは隠しているけど、危険な事をしている。」
(私には助ける事は出来ない、けど……)
自身の願いで、彼が傷つく事を同時に恐れた。
「……マチルダを助ければいいんだな」
そう言いながら、ドアに向かい歩く。
「……ごめんなさい」
「俺はお前の使い魔だ、気にするな」
その声と共に、ドアを開ける音がする。
「必ず、帰って来てねマークスリー……」
#navi(ゼロの騎士団)
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: