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#navi(ゼロの騎士団)
ゼロの騎士団 PART1 始まりの地 トリステイン9 前編
虚無の日 トリステイン魔法学院
学院内の広場にいつものメンツが集まっていた。
「いい天気ね、町までは遠いから、雨とか降らないと本当に助かるわ」
キュルケが、同意を求める訳でも無くつぶやいた。
「本当ですね」
私服姿のシエスタがキュルケに応える。
「アンタ達が居なければ、もっと良かったんだけどね、何でシエスタもいるのよ・・」
ルイズが、予定より増えた人数に不満を言う。
「いいじゃないかルイズ、シエスタも今日が休みだと言うのだし、皆で行っても構わないだろう。」
ニューが問題ないと言う風に、ルイズに応える。
「シエスタはいいけど・・これだけの人数の馬は、どうやって借りるのよ!」
「・・・有料なのか?」
ダブルゼータが金銭に関わるかを問う。
「アンタって、何かそればっかりね・・・さすがに7人となると無理よ」
大人数の行動の難しさに頭を抱える。
「・・大丈夫」
タバサが、可能性を提案する。
「どうするのだタバサ、二人で一つの馬にするのか?」
ゼータの答えに首を振る。
「・・・友達を呼ぶ、シルフィード」
タバサが名前を呼ぶと、遠くから風の音とともに巨大な竜が飛んできた。
「すごいじゃないタバサ、これ風龍よ!」
キュルケが興奮する。
「すごい・・・」
ルイズも近くで見る、見事な風龍に言葉を失う。
(私も、こんなのが使い魔なら良かったのに・・)
「ルイズ、私も、こんなのが使い魔なら良かったのに・・なんて考えてないか?」
「なっ、考えてる訳ないじゃない!」
(・・・図星だな)
ルイズの考えが的中し、ニューは少し肩を落とす。
「成程、全員でこれに乗る訳か」
ゼータが納得する。
「違う、あなた達は別、定員オーバー」
タバサがニュー達三人を見る。
「きゅいきゅい」
そうだと言わんばかり、ゴーレムは同意する。
「仕方ない、我々は馬で行くか・・・」
シルフィードに乗りたいのを少し我慢しながら三人は厩舎に向かった。
トリステインの首都、トリスタニアは学院から馬で普通に行って
約3時間で行ったところにある。
騎士の国アルガスでもある三人は、当然、馬の扱いにたけている。
おかげで、2時間で着いてしまった。
「2時間で着くとはねぇ・・・」
ルイズが3人の乗馬技術、特にゼータの腕を感心する。
「私だけなら、もう少し早く着く事が出来る。」
ゼータが当然と言わんばかりに応える。
「しかし、龍とは早いものだな」
自分達を追い越して、先に待っていた。
ニューはルイズ達を見て、更に乗りたい気持ちを強くした。
「ペガサスがあれば、俺達も空を飛べるのにな・・・」
ダブルゼータが事も無しに呟く。
「ペガサスって、ニューさん達の国にもいるんですか!?」
「実際に乗っていたよ、我々6人を乗せる事が出来るのが」
6人が乗っても、大丈夫だった事をふと思い出す。
「普通そんな巨大なのいないわよ!どこにいるのよ、そんな生物」
「たしか、アルガスの厩舎にいたような・・・」
ユィリィ姫が乗ってくる際には、そこに置いておく事をおぼろげに思い出す。
「なんて言うか、あなたの国ってすごいのね・・・」
ペガサスに対する扱いにキュルケも驚く。
「アンタ達の非常識は今に始まった事じゃないものね・・・武器屋に行くんでしょ?こっちよ」
ルイズが、自身が行く秘薬屋の近くの武器屋に向けて歩き出す。
少女達に付いていく、しゃべるゴーレム達を通行人達が物珍しそうに見ていたが、
ルイズ達は慣れてしまった為にそれに気づかなかった。
「ここが武器屋よ、私も初めてはいるけどね」
「いらっしゃいませ、これは貴族様、どういったご用件で?」
胡散臭い風貌の店主がルイズ達を見るなり、態度を変える。
「この者達に、武器を買いたいの」
ルイズが貴族らしく、三人を紹介する。
「これは珍しい方で、どうぞ店内をご自由にご覧ください。
御用の際には一声おかけ下さいね」
そうして、三人と少女達は店内を見回し始めた。
「店主よ、杖はないのか?」
ニューが店主に問う。
「お客さん、杖なんか、うちで販売したらお縄になってしまいますぜ」
「本当か?ルイズ」
「本当よ、杖は後で専門の店に行くわ、そこで注文するわ」
ルイズがそう答える。
「けど、杖は高いわよ、お金はどうするの?」
キュルケが、ルイズの支払い能力に疑問を示す。
「仕方ないから、家で払ってもらうわ、必要経費だし」
ルイズは、仕方ないと言った表情をする。
「あなたも結構大胆ね・・・ダブルゼータは、どんな奴にするの?」
キュルケが隣にいるダブルゼータに問う
「斧がいいな、出来れば片手の奴があればそれでいいのだが、
良さそうな物はないな」
店に置いてある斧を手に持って、不満を示す。
「片手で扱うにしては、軽すぎる、親父、もっと重いものはないのか。」
「ダブルゼータさん、それ片手で扱うのじゃありませんよ」
長さは片手用には少し大きいくらいだが、
明らかに両手で扱うはずの斧を軽々振り回す光景に、シエスタが指摘する。
「それを軽いと言われますと・・これなんかどうでしょうか」
「何これ・・・使えるの?」
ルイズがそれを見て感想を口にする。
片刃の斧であり先程のサイズは変わらないが、
柄の部分まで金属であり、刃の長さと厚さが2倍近くある。
重厚という形容がその斧の存在を表していた。
「この前偶然手に入れたのですが、ただでさえ人気のない斧なのに、
そんな物、扱える奴なんかそうはいないと思ったのですが・・
お客さんなら問題ないでしょう、500エキューでお売りいたしますよ」
店主が具体的な値段を掲示する。
「確かに、こんなの普通は使わないわよね、けど高くない300くらいで負けてくれない?」
キュルケが、妖艶な態度で店主に迫る。
「いっ、いやぁこちらも商売なので、450ですかねぇ」
店主を相手に、キュルケが交渉を始める。
「ゼータさんはどんなのにするんですか?」
シエスタがゼータの要望を聞く。
「盾はこれでいいかな、後は剣だな・・・正直、良い物があまりないな」
剣を見ながら、自分の期待に、応えられる剣がないかを探す。
手には以前、自分の愛用していた物と似た盾と同じ形状の物を手に持っていた。
「ちなみにタバサ、予算はいくらだい?」
「必要経費だから、大丈夫」
タバサにしてみれば、仕事の危険を考えれば剣の予算くらいはこだわらない。
「大した物がねぇとは、てめぇの目は節穴か!」
「誰だ、でけぇ口叩く奴は!」
売り言葉に相手も確認せず、ダブルゼータがそれに応じる。
「ここだよ、木偶の坊!」
声の方を見回すと、そこには古びた一本の大剣が置いてあった。
「デルフ、てめぇは散ったぁ黙ってろ!」
「うるせぇ、てめぇみたいなヘボにはそこのヘボ客がお似合いだよ!」
「ずいぶん口の悪い、インテリジェンスソードね・・・」
そのやり取りを聞いて、ルイズは呆れる。
「インテリジェンスソード?何だい、それは?」
「意志を持った剣、マジックアイテムの一種」
ニューの疑問に、タバサが答える。
「このナマクラ、ここでへし折ってやる。」
ダブルゼータがデルフと呼ばれた剣をつかみ取る。
「ん!なんだテメェは、ゴーレムでも人間でもねぇ「うるせぇ」痛っ、何しやがる。」
端と端を掴んで、ダブルゼータが本当に二つに折ろうとする。
「やめなさいよ、そんなの弁償したくはないわ」
ダブルゼータの蛮行に、キュルケが呆れて制止に入る。
「痛ぁ、テメェ、訳分からねぇ力はあるけど「使い手」じゃねぇな、
そもそも、武器なんてデリケートな物てめぇには似合わねぇよ!
てめぇみたいな馬鹿力は、その辺の木でも振り回してろ!その方がお似合いだ!」
デルフが、ダブルゼータに噛みつく。
「もう、振り回したけどね」「確かに、振り回していましたね」
ルイズとシエスタが、その姿を思い出して呻く。
「コイツの力で折れないなんて、なかなか丈夫そうだな」
ゼータが興味を持ち、デルフを握る。
「なんだ、おめぇもこいつと同じかよ、おめぇさん「使い手」じゃないが、
かなりの腕だな、しかも、アイツと同じでよく分からねぇ何かを感じる。」
デルフリンガーがダブルゼータの時とは違い高評価を下す。
「「使い手」とは何だ?」ゼータがデルフに聞く。
「俺もイマイチ思い出せねぇんだ・・・けど、おめぇさんなら問題ねぇ俺を買え!」
デルフがゼータに購入を薦める。
「そんな物買うの、もっと良いのがあるんじゃない?」
口の悪さと見た目から、キュルケが否定的な意見を口にする。
「切れ味は後で磨くとして、それほど悪くはないだろう、親父、いくらだ?」
ゼータが購入を決意して、値段を聞く。
「それでしたら、200エキューで結構です。そいつはうちの厄介者ですから」
「なら、もっと安くしてよ」
タバサに変わり、キュルケが自身の買い物を含め交渉を再開する。
「そいつはまけて150ですねぇ、うちも商売なので」店の親父も食い下がる。
「ふむ、親父試し切りついでに賭けをしないか?この石を空中に投げて、
デルフで切れたら先程の斧と含めて、500で売ってくれ」
そう言って、森に会った練習用の石を渡す。
「これをですか、まぁ実際できればすごいですけどね、出来なかったら700で買って下さいよ。」
グレープフルーツ程の大きさの石を見て、勝算を確信したのかその賭けに応じる。
「タバサ、キュルケ、それでよろしいか?」
「面白そうだし、いいわよ」
キュルケが認め、タバサも頷く。
「どうせなら、ただ切るんじゃなくて、アレをやれよ」
「そうだな、見世物なんだ、客を喜ばしたらどうだ」
観客が、ゼータに芸を要求する。
「アレか・・・まぁ、いいだろう」そう言って、石を上に放り投げる。
「ゼータ乱れ彗星」
それは、名の通り彗星群の雨であった。剣が彗星となって、石に降り注ぐ。
バラバラになった石が地面に零れ落ちた。
「さすがに少し重いな、親父これでいいか?」
ゼータは、デルフが完璧に馴染んでないのか自信の出来に納得しない。
(本当に、すごい・・・)
自身の使い魔の腕を見て、タバサが改めて評価を上げる。
「いや、凄いもんだ、どうぞ500で結構、いやぁ、すごい物を見せてもらった。」
かなりの戦士を見てきただけに、店主が本気で感心している。
「大したもんだ、俺はデルフリンガーだ、デルフでいいぜ相棒」
「馴れ馴れしい奴だ、私は剣士ゼータだ」
新しい主の腕に満足なのか、デルフが嬉しそうに自己紹介する。
そうして、500で砥石と武器を購入しルイズ達は店を出た。
一通り店を周り、全員は昼食をとっていた。
「アンタ達って、本当に非常識よね」
「ルイズ、この町で俺はまだ何もしていないぞ!」
ダブルゼータがルイズの言葉に文句を言う。
「違うわよ、一人でいろんな魔法を使えたり、木を振り回したり、
剣で石を粉々にしちゃうなんて、アンタ達って本当に非常識だわ。」
これまで見てきた三人の能力を見て改めて思う。
最初は自分だけが当りだと思っていたら、どうやら三人とも当りだったらしい。
「たしかに、皆さんすごいです。」
シエスタも同意する。
「そう言えば、あなた達の団長がいるって言ってたけど、やっぱりあなた達みたいなの?」
キュルケが興味本位で聞く。
「アレックス隊長は魔法が使えないが、ダブルゼータの力と、ゼータの技を併せ持っていた。
我々三人で互角といった所だ、ナイトガンダム殿にも引けを取らん」
誇らしげに、ニューが説明する。
「一人でアンタ達三人と互角だなんてどんな非常識よ、しかも、それが二人もいるなんて」
彼らのいた世界の凄さを、改めてルイズは感じた。
「午後はニューと杖を買いに行くから、アンタ達はここら辺にいてね」
「おう、解った」
ダブルゼータが、立ち上がったルイズ達に返事を返す。
「何で一番分からなそうなアンタが答えるのよ、シエスタちゃんと見張ってね」
「はっ、はい」
(それは無理だと思います。)
ルイズの申しつけだが、自身がその任をこなす事は無謀な事に感じた。
「行くわよ、ニュー」
ルイズが、ニューを連れて大通りに歩いて行った。
「ルイズはもう少し、俺達を信用してくれてもいいのにな」
ルイズが居なくなった後、ダブルゼータが信用の無い事に愚痴をこぼす。
「私達じゃなくて、あなただけよ、ルイズじゃないけど衛士に見つかると面倒よ、あなた達は珍しいんだから」
キュルケが間違いを指摘する。
「テメェは見るからに、トラブルメーカーだもんな」
デルフが鞘から口を出す。
「何だと、このナマクラ!」
「そんな事だから、信用ないのよ」
デルフにつかみかかろうとするダブルゼータを見て溜息をつく。
「あの皆さん、少し寄りたい所があるんですけどよろしいですか?」
会話が切れた後、シエスタが行動方針を示す。
「私の母方の従妹がやっている店で、今日は休みだから顔を出そうかと思っていたんです。」
「どこなの?」
「ここからすぐ、近くなんです。」
「じゃあ、行きましょ」
キュルケが立ち上がる。
「でもニューさん達は、いいんですか?」
「問題ないでしょ、どうせ、しばらくは帰ってこないし。」
ウェイトレスに伝言を頼み、全員が歩き出した。
シエスタの言っていた店は、大通りをまたいだ少し裏通りにあり『魅惑の妖精』という名前の大衆酒場件宿屋であった。
「これは・・・」
「すげぇな、こりゃぁ」
ゼータとダブルゼータが感想を述べる。
「ジェシカ、この人たちが私がお世話になっている人達よ」
「あなたが、シエスタの言ってた人達ね、私はジェシカよろしくね」
黒髪の活発な印象の少女が自己紹介をする。
彼女の格好はフリルのついたエプロンドレスのウェイトレスの制服であったが、
ルイズやタバサには出来そうにない胸の谷間があった。
「貴族の方々も、むさ苦しい所ところですが、どうかお寛ぎ下さい。」
「そんなに、硬くならなくていいわよ、私はキュルケ、こっちはタバサよろしくね」
フランクにキュルケがジェシカに自己紹介をする。
「いいわ、今は準備中なの、聞いたけどシエスタを助けてくれたのって、あなた達?」
「違うわ、あれはフーケの仕業よ」
キュルケが知らないと言った素振りで否定する。
「まぁ、そう言う事にしてあげる、こちらに座って」
奥の方の空いた席に案内し、全員が談笑する。
約1時間後、準備中の門を開ける者がいた。
「すいません、今はまだ準備中です。」
ジェシカが客に準備中である事を伝える。
「徴税官が訪れたのに、もてなしも無いとは、この店も偉くなったなジェシカ」
小柄な男が皮肉をこめて、不満を漏らす。
「チュレル様、店長は不在でして・・・」
「なら、スカロンが帰るまで、ここで待たせてもらうとしよう」
そう言って手近な椅子に腰かける。
「誰、アイツ」
店の奥にいたキュルケが隣のシエスタに聞く。
「この辺りの徴税関だそうです。役人だから、だれも逆らえないんです。」
シエスタがキュルケの問いに答える。
「気に入らんな」
「だからって暴れないでね、ルイズじゃないけど役人に捕まるのは嫌よ」
キュルケがゼータとダブルゼータを制止させる。
「ごめんね、アイツの相手は私がするから」
ジェシカがチュレルに酒とツマミを運ぶ。
「先程は申し訳ありません、私がお相手いたしますわ」
そう言って、隣に腰かける。
「ジェシカはやっぱりいい娘だな、徴税関に対する態度が分っておる。」
近づきながら肩に手を回す。
「あの野郎・・・・」
硬く拳を握りながら、ダブルゼータが歯を食いしばる。
「やめてください、ここで暴れたらジェシカにも迷惑がかかります。」
シエスタが二人を制止させる。
「お前がいつも可愛い態度だと私も「お待たせいたしました」」
チュレルの声を、褐色の肌のウェイトレスが遮る。
「何やってんだ、あいつは・・・」
「キュルケ様・・・」
ダブルゼータとジェシカもそのウェイトレスに驚く。
それは、ここの店の制服に包んだキュルケと同じ格好をしたタバサであった。
「氷アイスお持ちしました。」
やはり、いつも通りの無表情でタバサが器に入った氷を置く。
「私達もチュレル様のお相手をさせて戴きますわ」
そう言いながら、腕に抱きつき自身の胸を押し当てる。
「ここの店は教育が行き届いてるのぉ、これはどの様なメニューだ」
喜色の顔を浮かべながら、出された料理の食べ方を聞く。
「それは、こうですわ」
そう言ってキュルケが、あいた方の手で、チュレルの顔を氷の器に押しあてる。
「何をする、冷たいではもごあこあ」
「当店自慢のサービスです。」
もう片方の腕をキュルケと同じように、タバサがロックする。
「もがはがあ・・・お前たちこんな事をして、ただで済むと思うなよ!」
杖を取り出し、魔法の詠唱をする。しかし、杖は手元から先がなかった。
「デルフ、切れ味もなかなかだ」
「そう言ってもらえると嬉しいぜ」
切断した杖の断面を見ながら、ゼータがデルフを褒める。
「貴様ら、こんな事をしてただで済むと思うなよ!私には「見つけたわよ!アンタ達!」」
扉をあけ、ルイズとニューが中に入ってくる。
「何だ小娘ひっこ「アンタは黙ってなさい!」」
ルイズが気迫で黙らせる。
「あれほど問題を起こすなと言ったのに、早速居なくなって、現在進行形で問題起こして!」
気のせいか、ルイズの髪が逆立っているようにも見える。
「小娘、私は徴税関のチュレンヌだぞ!」
無視されて、チュレンヌの矛先がルイズに向く。
「私は、ヴァリエール公爵家の三女、ルイズ・フランソワーズ・ルブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ!」
ルイズが自分の身分を淀む事無く言いあげる。
「ヴァ、ヴァリエール!も、申し上げございません、失礼しました!」
名前を聞いて、脱兎のごとく逃げ出す。
それには目もくれず、ルイズは店内に視線を固定する。
「さて、アンタ達また問題起こして・・・・」
大団円とはならず、ルイズの説教が20分ほど店内に響き渡った。
「ありがとう、シエスタ、みんなもまた来てね」
夕方になり、ジェシカがルイズ達との別れを惜しむ。
「騒がせてごめんね、ジェシカ」
「ジェシカ、あの服、また着たいわ」
キュルケはあの格好を気に入ったようだ。
「私は、もういい」
タバサはお気に召さなかった。
「ジェシカ、また来るぜ」
「ジェシカ殿、お元気で」
二人も別れの言葉を告げる。
「アンタ達、帰るわよ。日が暮れるわ」
ルイズが、帰宅を促しジェシカの店を離れた。
「あー、面白かった。」
シルフィードの上でキュルケが伸びをする。
「きゅいきゅい」
自分も連れてって欲しかったと言わんばかりに、不満の声を上げる。
「楽しかったじゃないわよ!言ってるそばから問題を起こして!」
ルイズが声を荒げる。
「すいません、ミス・ヴァリエール・・ところで、ニューさんの杖は見つかりました?」
シエスタがルイズの話題の矛先を変える。
「無かったわ、あの馬鹿ゴーレム、やたらと注文が多くて・・・後、シエスタ、そんない堅苦しくしなくていいわ、ルイズでいいわよ!」
「じゃぁ・・・はい、ルイズ様」
少し間をおいて、シエスタが答える。
「ルイズも寛大になったわね」
「アイツらよりも、シエスタの方が遥かにいいわ」
(あのトラブルメーカー達と会ってから、何かしら問題ばかり起こっている気がするわ)
さすがに、今日はもう何も起きないだろう・・・
「あら、学園が騒がしいですね」
音に気づき、シエスタが学園に目を向ける。
そこには、巨大なゴーレムが学園の塀を超える所だった。
「なによ、あれ・・・」
ルイズ達とほぼ変わらない高さの目線のゴーレムを見て、ルイズは唖然とした。
「多分、土くれのフーケ」
タバサが特徴から推測する。
「フーケってあの?」
自身が借りた名にキュルケが聞き返す。
「どうするのよ!逃げられちゃうわよ!」
ルイズが杖を向けて吠える。
「どうもできないわよ!あなたは飛べないし、シエスタもいるのよ」
キュルケがルイズの無謀な行いを制止させる。
迂闊に近づく事が出来ず、周辺を飛び回るのが、関の山である。
「ちっ!厄介なのに見つかったね」
(アイツ等が、帰ってくる前に完了したかったんだけどね)
心の中で、自身の手際の悪さに、土くれのフーケが舌打ちする。
学園を出た所で、自身のゴーレムを元の土に戻す。
「今よ!あれだけのゴーレムそう何度も作れないわ、見つけ出すのよ!ダバサ、シルフィードを下げて」
キュルケがダバサとシルフィードに指示を出し、降下させようとする。
「だめ、砂ぼこりで視界が見えない、迂闊に降りるのは危険」
大量の土が崩れ落ちて、周囲に多大な量の砂埃が舞う。
「魔法を戻すと同時に、着地した。おそらく、探す事は不可能」
タバサが、安全な少しは離れた路道に、シルフィードを降下させる。
「タバサ、大丈夫か」
「ゼータさん、土くれのフーケが現れたんです。」
シエスタが、状況を説明すると遅れて二人がやってくる。
「遅いわよ、ニュー!」
「ルイズなに八つ当たりしているの、ニューのせいじゃないでしょ!」
八つ当たり気味なルイズの罵声に、キュルケも怒りを覚える。
「とりあえずは、学院に戻りましょう、明日になれば、今日の事を聞かれるわ」
キュルケが学院に戻る事を提案し、みんな無言で戻って行った。
(私、何もできないのに、ニューに酷い事を言っちゃった・・・)
自身が何も出来ず、挙句、ニューに当たってしまった、ルイズの表情は誰よりも暗かった。
「秘宝の一部、確かに領収いたしました。怪盗 土くれのフーケ」
壁が壊された宝物庫から見える。その文字は学院にとって何よりも屈辱だった。
「17おめぇ、使い手じゃないな」
魔剣 デルフリンガー
魔剣Xとは関係ない
HP +200 (攻撃力が上がる。)
「18いらっしゃいませ、魅惑の妖精にようこそ」
町娘 ジェシカ
今回、急遽出演する。
HP 50 (相手の動きを止める)
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ゼロの騎士団 PART1 始まりの地 トリステイン9 前編
虚無の日 トリステイン魔法学院
学院内の広場にいつものメンツが集まっていた。
「いい天気ね、町までは遠いから、雨とか降らないと本当に助かるわ」
キュルケが、同意を求める訳でも無くつぶやいた。
「本当ですね」
私服姿のシエスタがキュルケに応える。
「アンタ達が居なければ、もっと良かったんだけどね、何でシエスタもいるのよ……」
ルイズが、予定より増えた人数に不満を言う。
「いいじゃないかルイズ、シエスタも今日が休みだと言うのだし、皆で行っても構わないだろう。」
ニューが問題ないと言う風に、ルイズに応える。
「シエスタはいいけど……これだけの人数の馬は、どうやって借りるのよ!」
「……有料なのか?」
ダブルゼータが金銭に関わるかを問う。
「アンタって、何かそればっかりね……さすがに7人となると無理よ」
大人数の行動の難しさに頭を抱える。
「……大丈夫」
タバサが、可能性を提案する。
「どうするのだタバサ、二人で一つの馬にするのか?」
ゼータの答えに首を振る。
「……友達を呼ぶ、シルフィード」
タバサが名前を呼ぶと、遠くから、風の音とともに巨大な竜が飛んできた。
「すごいじゃないタバサ、これ風龍よ!」
キュルケが興奮する。
「すごい……」
ルイズも近くで見る、見事な風龍に言葉を失う。
(私も、こんなのが使い魔なら良かったのに……)
「ルイズ、私も、こんなのが使い魔なら良かったのに……なんて考えてないか?」
「なっ、考えてる訳ないじゃない!」
(……図星だな)
ルイズの考えが的中し、ニューは少し肩を落とす。
「成程、全員でこれに乗る訳か」
ゼータが納得する。
「違う、あなた達は別、定員オーバー」
タバサがニュー達三人を見る。
「きゅいきゅい」
そうだと言わんばかり、ゴーレムは同意する。
「仕方ない、我々は馬で行くか……」
シルフィードに乗りたいのを少し我慢しながら三人は厩舎に向かった。
トリステインの首都、トリスタニアは学院から約3時間で行ったところにある。
騎士の国アルガスでもある三人は、当然、馬の扱いにたけている。
おかげで、2時間で着いてしまった。
「2時間で着くとはねぇ……」
ルイズが3人の乗馬技術、特にゼータの腕を感心する。
「私だけなら、もう少し早く着く事が出来る。」
ゼータが当然と言わんばかりに応える。
「しかし、龍とは早いものだな」
自分達を追い越して、先に待っていた。
ニューはルイズ達を見て、更に乗りたい気持ちを強くした。
「ペガサスがあれば、俺達も空を飛べるのにな……」
ダブルゼータが事も無しに呟く。
「ペガサスって、ニューさん達の国っているんですか!?」
「実際に乗っていたよ、我々6人が乗っても大丈夫なくらい大きかった」
「普通いないわよ!どこにいるのよ、そんな巨大生物」
「たしか、アルガスの厩舎にいたような………」
ユィリィ姫が乗ってくる際には、そこに置いておく事をおぼろげに思い出す。
「なんて言うか、あなたの国ってすごいのね……」
ペガサスに対する扱いにキュルケも驚く。
「アンタ達の非常識は今に始まった事じゃないものね……武器屋に行くんでしょ?こっちよ」
ルイズが、自身が行く秘薬屋の近くの武器屋に向けて歩き出す。
少女達に付いていく、しゃべるゴーレム達を通行人達が物珍しそうに見ていたが、ルイズ達は慣れてしまった為にそれに気づかなかった。
「ここが武器屋よ、私も初めてはいるけどね」
「いらっしゃいませ、これは貴族様、どういったご用件で?」
胡散臭い風貌の店主がルイズ達を見るなり、態度を変える。
「この者達に、武器を買いたいの」
ルイズが貴族らしく、三人を紹介する。
「これは珍しい方で、どうぞ店内をご自由にご覧ください。御用の際には一声おかけ下さいね」
そうして、三人と少女達は店内を見回し始めた。
「店主よ、杖はないのか?」
ニューが店主に問う。
「お客さん、杖なんか、うちで販売したらお縄になってしまいますぜ」
「本当か?ルイズ」
「本当よ、杖は後で専門の店に行くわ、そこで注文するわ」
ルイズがそう答える。
「けど、杖は高いわよ、お金はどうするの?」
キュルケが、ルイズの支払い能力に疑問を示す。
「仕方ないから、家で払ってもらうわ、必要経費だし」
ルイズは、仕方ないと言った表情をする。
「あなたも結構大胆ね……ダブルゼータは、どんな奴にするの?」
キュルケが隣にいるダブルゼータに問う
「斧がいいな、出来れば片手の奴があればそれでいいのだが、良さそうな物はないな」
店に置いてある斧を手に持って、不満を示す。
「片手で扱うにしては、軽すぎる、親父、もっと重いものはないのか。」
「ダブルゼータさん、それ片手で扱うのじゃありませんよ」
長さは片手用には少し大きいくらいだが、明らかに両手で扱うはずの斧を軽々振り回す光景に、シエスタが指摘する。
「それを軽いと言われますと……これなんかどうでしょうか」
「何これ……使えるの?」
ルイズがそれを見て感想を口にする。
片刃の斧であり先程のサイズは変わらないが、柄の部分まで金属であり、刃の長さと厚さが2倍近くある。
重厚という形容がその斧の存在を表していた。
「この前偶然手に入れたのですが、ただでさえ人気のない斧なのに、そんな物扱える奴なんかそうはいないと思ったのですが……お客さんなら問題ないでしょう、500エキューでお売りいたしますよ」
店主が具体的な値段を掲示する。
「確かに、こんなの普通は使わないわよね、けど高くない300くらいじゃない?」
キュルケが、妖艶な態度で店主に迫る。
「いっ、いやぁこちらも商売なので、450ですかねぇ」
店主を相手に、キュルケが交渉を始める。
「ゼータさんはどんなのにするんですか?」
シエスタがゼータの要望を聞く。
「盾はこれでいいかな、後は剣だな……正直、良い物があまりないな」
剣を見ながら、自分の期待に、応えられる剣がないかを探す。
手には以前、自分の愛用していた物と似た盾と同じ形状の物を手に持っていた。
「ちなみにタバサ、予算はいくらだい?」
「必要経費だから、大丈夫」
タバサにしてみれば、仕事の危険を考えれば剣の予算くらいはこだわらない。
「大した物がねぇとは、てめぇの目は節穴か!」
「誰だ、でけぇ口叩く奴は!」
売り言葉に相手も確認せず、ダブルゼータがそれに応じる。
「ここだよ、木偶の坊!」
声の方を見回すと、そこには古びた一本の大剣が置いてあった。
「デルフ、てめぇ、ちったぁ黙ってろ!」
「うるせぇ、てめぇみたいなヘボにはそこのヘボ客がお似合いだよ!」
鞘を鳴らしながら、その剣は罵声を浴びせる。
「ずいぶん口の悪い、インテリジェンスソードね……」
そのやり取りを聞いて、ルイズは呆れる。
「インテリジェンスソード?何だい、それは?」
「意志を持った剣、マジックアイテムの一種」
ニューの疑問に、タバサが答える。
「このナマクラ馬鹿にしやがって、ここでへし折ってやる」
ダブルゼータがデルフと呼ばれた剣をつかみ取る。
「ん!なんだテメェは、ゴーレムでも人間でもねぇ「うるせぇ」痛っ、何しやがる」
端と端を掴んで、ダブルゼータが本当に二つに折ろうとする。
「やめなさいよ、そんなの弁償したくはないわ」
ダブルゼータの蛮行に、キュルケが呆れて制止に入る。
「痛ぁ、テメェ、訳分からねぇ力はあるけど「使い手」じゃねぇな、
そもそも、武器なんてデリケートな物てめぇには似合わねぇよ!
てめぇみたいな馬鹿力は、その辺の木でも振り回してろ!その方がお似合いだ!」
デルフが、ダブルゼータに噛みつく。
「もう、振り回したけどね」
「確かに、振り回していましたね」
ルイズとシエスタが、その姿を思い出して呻く。
「コイツの力で折れないなんて、なかなか丈夫そうだな」
ゼータが興味を持ち、デルフを握る。
「なんだ、おめぇもこいつと同じかよ、おめぇさん「使い手」じゃないが、かなりの腕だな、しかも、アイツと同じでよく分からねぇ何かを感じる」
デルフリンガーがダブルゼータの時とは違い高評価を下す。
「「使い手」とは何だ?」
ゼータがデルフに聞く。
「俺もイマイチ思い出せねぇんだ………けど、おめぇさんなら問題ねぇ俺を買え!」
デルフがゼータに購入を薦める。
「そんな物買うの、もっと良いのがあるんじゃない?」
口の悪さと見た目から、キュルケが否定的な意見を口にする。
「切れ味は後で磨くとして、それほど悪くはないだろう、親父、いくらだ?」
ゼータが購入を決意して、値段を聞く。
「それでしたら、200エキューで結構です。そいつはうちの厄介者ですから」
「なら、もっと安くしてよ」
タバサに変わり、キュルケが自身の買い物を含め交渉を再開する。
「そいつはまけて150ですねぇ、うちも商売なので」
店の親父も食い下がる。彼からしてみれば厄介払いが出来るのは有難かったがそれでも、商売人としての考えもあり、おいそれと売る訳にはいかなかった。
「ふむ、親父、試し切りついでに賭けをしないか?この石を空中に投げて、デルフで切れたら先程の斧と含めて、500で売ってくれ」
そう言って、森に会った練習用の石を渡す。
「これをですか、まぁ実際できればすごいですけどね、出来なかったら700で買って下さいよ」
グレープフルーツ程の大きさの石を見て、勝算を確信したのかその賭けに応じる。
「タバサ、キュルケ殿、それでよろしいか?」
「面白そうだし、いいわよ」
キュルケが認め、タバサも頷く。
「どうせなら、ただ切るんじゃなくて、アレをやれよ」
「そうだな、見世物なんだ、客を喜ばしたらどうだ」
観客が、ゼータに芸を要求する。
「アレか………まぁ、いいだろう」
そう言って、石を上に放り投げる。
「ゼータ乱れ彗星」
それは、名の通り彗星群の雨であった。剣が彗星となって、石に降り注ぐ。
バラバラになった石が地面に零れ落ちた。
「さすがに少し重いな、親父これでいいか?」
ゼータは、デルフが完璧に馴染んでないのか自信の出来に納得しない。
(本当に、すごい………)
自身の使い魔の腕を見て、タバサが改めて評価を上げる。
「いや、凄いもんだ、どうぞ500で結構、いやぁ、すごい物を見せてもらった」
かなりの戦士を見てきただけに、店主が本気で感心している。
「大したもんだ、俺はデルフリンガーだ、デルフでいいぜ相棒」
「馴れ馴れしい奴だ、私は剣士ゼータだ」
新しい主の腕に満足なのか、デルフが嬉しそうに自己紹介する。
そうして、500で砥石と武器を購入しルイズ達は店を出た。
一通り周り、全員は昼食をとっていた。
「アンタ達って、本当に非常識よね」
「ルイズ、この町で俺はまだ何もしていないぞ!」
ダブルゼータがルイズの言葉に文句を言う。
「違うわよ、一人でいろんな魔法を使えたり、木を振り回したり、剣で石を粉々にしちゃうなんて、アンタ達って本当に非常識だわ」
これまで見てきた三人の能力を見て改めて思う。
最初は自分だけが当りだと思っていたら、どうやら三人とも当りだったらしい。
「たしかに、皆さんすごいです」
シエスタも同意する。
「そう言えば、あなた達の団長がいるって言ってたけど、やっぱりあなた達みたいなの?」
キュルケが興味本位で聞く。
「アレックス隊長は魔法が使えないが、ダブルゼータの力と、ゼータの技を併せ持っていた。我々三人で互角といった所だ、ナイトガンダム殿にも引けを取らん」
誇らしげに、ニューが説明する。
「一人でアンタ達三人と互角だなんてどんな非常識よ、しかも、それが二人もいるなんて」
彼らのいた世界の凄さを、改めてルイズは感じた。
「午後はニューと杖を買いに行くから、アンタ達はここら辺にいてね」
「おう、解った」
ダブルゼータが、立ち上がったルイズ達に返事を返す。
「何で一番分からなそうなアンタが答えるのよ、シエスタちゃんと見張ってね」
「はっ、はい」
(それは無理だと思います)
ルイズの申しつけだが、自身がその任をこなす事は無謀な事に感じた。
「行くわよ、ニュー」
ルイズが、ニューを連れて大通りに歩いて行った。
「ルイズはもう少し、俺達を信用してくれてもいいのにな」
ルイズが居なくなった後、ダブルゼータが信用の無い事に愚痴をこぼす。
「私達じゃなくて、あなただけよ、ルイズじゃないけど衛士に見つかると面倒よ、あなた達は珍しいんだから」
キュルケが間違いを指摘する。
「テメェは見るからに、トラブルメーカーだもんな」
デルフが鞘から口を出す。
「何だと、このナマクラ!」
「そんな事だから、信用ないのよ」
デルフにつかみかかろうとするダブルゼータを見て溜息をつく。
「あの皆さん、少し寄りたい所があるんですけどよろしいですか?」
会話が切れた後、シエスタが行動方針を示す。
「私の母方の従妹がやっている店で、今日は休みだから顔を出そうかと思っていたんです」
「どこなの?」
「ここからすぐ、近くなんです」
「じゃあ、行きましょ」
キュルケが立ち上がる。
「でもニューさん達は、いいんですか?」
「問題ないでしょ、どうせ、しばらくは帰ってこないし」
ウェイトレスに伝言を頼み、全員が歩き出した。
シエスタの言っていた店は、大通りをまたいだ少し裏通りにあり『魅惑の妖精』という名前の大衆酒場件宿屋であった。
「これは……」
「すげぇな、こりゃぁ」
ゼータとダブルゼータが感想を述べる。
「ジェシカ、この人たちが私がお世話になっている人達よ」
「あなたが、シエスタの言ってた人達ね、私はジェシカよろしくね」
黒髪の活発な印象の少女が自己紹介をする。
彼女の格好はフリルのついたエプロンドレスのウェイトレスの制服であったが、
ルイズやタバサには出来そうにない胸の谷間があった。
「貴族の方々も、むさ苦しい所ところですが、どうかお寛ぎ下さい」
「そんなに、硬くならなくていいわよ、私はキュルケ、こっちはタバサよろしくね」
フランクにキュルケがジェシカに自己紹介をする。
「いいわ、今は準備中なの、聞いたけどシエスタを助けてくれたのって、あなた達?」
「違うわ、あれはフーケの仕業よ」
キュルケが知らないと言った素振りで否定する。
「まぁ、そう言う事にしてあげる、こちらに座って」
奥の方の空いた席に案内し、全員が談笑する。
約1時間後、準備中の門を開ける者がいた。
「すいません、今はまだ準備中です」
ジェシカが客に準備中である事を伝える。
「徴税官が訪れたのに、もてなしも無いとは、この店も偉くなったな、ジェシカ」
小柄な男が皮肉をこめて、不満を漏らす。
「チュレル様、店長は不在でして……」
「なら、スカロンが帰るまで、ここで待たせてもらうとしよう」
そう言って手近な椅子に腰かける。
「誰、アイツ」
店の奥にいたキュルケが隣のシエスタに聞く。
「この辺りの徴税関だそうです。役人だから、だれも逆らえないんです」
シエスタがキュルケの問いに答える。
「気に入らんな」
「だからって暴れないでね、ルイズじゃないけど役人に捕まるのは嫌よ」
キュルケがゼータとダブルゼータを制止させる。
「ごめんね、アイツの相手は私がするから」
ジェシカがチュレルに酒とツマミを運ぶ。
「先程は申し訳ありません、私がお相手いたしますわ」
そう言って、隣に腰かける。
「ジェシカはやっぱりいい娘だな、徴税関に対する態度が分っておる」
近づきながら肩に手を回す。その様子に表情は出さないがジェシカも嫌そうな事が簡易jられた。
「あの野郎…………」
硬く拳を握りながら、ダブルゼータが歯を食いしばる。
「やめてください、ここで暴れたらジェシカにも迷惑がかかります」
シエスタが二人を制止させる。
「お前がいつも、可愛い態度だと私も「お待たせいたしました」」
チュレルの声を、褐色の肌のウェイトレスが遮る。
「何やってんだ、あいつは………」
「キュルケ様………」
ダブルゼータとジェシカもそのウェイトレスに驚く。
それは、ここの店の制服に包んだキュルケと同じ格好をしたタバサであった。
「氷アイスお持ちしました」
やはり、いつも通りの無表情でタバサが器に入った氷を置く。
「私達もチュレル様のお相手をさせて戴きますわ」
そう言いながら、腕に抱きつき自身の胸を押し当てる。
「ここの店は教育が行き届いてるのぉ、これはどの様なメニューだ」
喜色の顔を浮かべながら、出された料理の食べ方を聞く。
「それは、こうですわ」
そう言ってキュルケが、あいた方の手で、チュレルの顔を氷の器に押しあてる。
「何をする、冷たいではもごあこあ」
「当店自慢のサービスです」
もう片方の腕をキュルケと同じように、タバサがロックする。
「もがはがあ………お前たちこんな事をして、ただで済むと思うなよ!」
杖を取り出し、魔法の詠唱をする。しかし、杖は手元から先がなかった。
「デルフ、切れ味もなかなかだ」
「そう言ってもらえると嬉しいぜ」
切断した杖の断面を見ながら、ゼータがデルフを褒める。
「貴様ら、こんな事をしてただで済むと思うなよ!私には「見つけたわよ!アンタ達!」」
扉をあけ、ルイズとニューが中に入ってくる。
「何だ小娘ひっこ「アンタは黙ってなさい!」」
ルイズが気迫で黙らせる。
「あれほど問題を起こすなと言ったのに、早速居なくなって現在進行形で問題起こして!」
気のせいか、ルイズの髪が逆立っているようにも見える。
「小娘、私は徴税関のチュレンヌだぞ!」
無視されて、チュレンヌの矛先がルイズに向く。
「私は、ヴァリエール侯爵家の三女、ルイズ・フランソワーズ・ルブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ!」
ルイズが自分の身分を淀む事無く言いあげる。
「ヴァ、ヴァリエール!も、申し上げございません、失礼しました!」
名前を聞いて、脱兎のごとく逃げ出す。
それには目もくれず、ルイズは店内に視線を固定する。
「さて、アンタ達また問題起こして……」
大団円とはならず、ルイズの説教が20分ほど店内に響き渡った。
「ありがとう、シエスタ、みんなもまた来てね」
夕方になり、ジェシカがルイズ達との別れを惜しむ。
「騒がせてごめんね、ジェシカ」
「ジェシカ、あの服、また着たいわ」
キュルケはあの格好を気に入ったようだ。
「私は、もういい」
タバサはお気に召さなかった。
「ジェシカ、また来るぜ」
「ジェシカ殿、お元気で」
二人も別れの言葉を告げる。
「アンタ達、帰るわよ。日が暮れるわ」
ルイズが、帰宅を促しジェシカの店を離れた。
「あー、面白かった。」
シルフィードの上でキュルケが伸びをする。
「きゅいきゅい」
自分も連れてって欲しかったと言わんばかりに、不満の声を上げる。
「楽しかったじゃないわよ!言ってるそばから問題を起こして!」
ルイズが声を荒げる。
「すいません、ミス・ヴァリエール……ところで、ニューさんの杖は見つかりました?」
シエスタがルイズの話題の矛先を変える。
「無かったわ、あの馬鹿ゴーレム、やたらと注文が多くて……後、シエスタ、そんない堅苦しくしなくていいわ、ルイズでいいわよ!」
「じゃぁ……はい、ルイズ様」
少し間をおいて、シエスタが答える。
「ルイズも寛大になったわね」
「アイツらよりも、シエスタの方が遥かにいいわ」
(あのトラブルメーカー達と会ってから、何かしら問題ばかり起こっている気がするわ)
さすがに、今日はもう何も起きないだろう……
「あら、学園が騒がしいですね」
音に気づき、シエスタが学園に目を向ける。
そこには、巨大なゴーレムが学園の塀を超える所だった。
「なによ、あれ……」
ルイズ達とほぼ変わらない高さの目線のゴーレムを見て、ルイズは唖然とした。
「多分、土くれのフーケ」
タバサが特徴から推測する。
「フーケってあの?」
自身が借りた名にキュルケが聞き返す。
「どうするのよ!逃げられちゃうわよ!」
ルイズが杖を向けて吠える。
「どうもできないわよ!あなたは飛べないし、シエスタもいるのよ」
キュルケがルイズの無謀な行いを制止させる。
迂闊に近づく事が出来ず、周辺を飛び回るのが、関の山である。
「ちっ!厄介なのに見つかったね」
(アイツ等が、帰ってくる前に完了したかったんだけどね)
心の中で、自身の手際の悪さに、土くれのフーケが舌打ちする。
学園を出た所で、自身のゴーレムを元の土に戻す。
「今よ!あれだけのゴーレムそう何度も作れないわ、見つけ出すのよ!ダバサ、シルフィードを下げて」
キュルケがダバサとシルフィードに指示を出し、降下させようとする。
「だめ、砂ぼこりで視界が見えない、迂闊に降りるのは危険」
大量の土が崩れ落ちて、周囲に多大な量の砂埃が舞う。
「魔法を戻すと同時に、着地した。おそらく、探す事は不可能」
タバサが、安全な少しは離れた路道に、シルフィードを降下させる。
「タバサ、大丈夫か」
「ゼータさん、土くれのフーケが現れたんです。」
シエスタが、状況を説明すると遅れて二人がやってくる。
「遅いわよ、ニュー!」
「ルイズ、なに八つ当たりしているの、ニューのせいじゃないでしょ!」
八つ当たり気味なルイズの罵声に、キュルケも怒りを覚える。
「とりあえずは、学院に戻りましょう、明日になれば、今日の事を聞かれるわ」
キュルケが学院に戻る事を提案し、みんな無言で戻って行った。
(私、何もできないのに、ニューに酷い事を言っちゃった……)
自身が何も出来ず、挙句、ニューに当たってしまった、ルイズの表情は誰よりも暗かった。
「秘宝の一部、確かに領収いたしました。怪盗 土くれのフーケ」
壁が壊された宝物庫から見える。その文字は学院にとって何よりも屈辱だった。
「17おめぇ、使い手じゃないな」
魔剣 デルフリンガー
魔剣Xとは関係ない
HP +200 (攻撃力が上がる。)
「18いらっしゃいませ、魅惑の妖精にようこそ」
町娘 ジェシカ
今回、急遽出演する。
HP 50 (相手の動きを止める)
#navi(ゼロの騎士団)
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