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#navi(ゴーストステップ・ゼロ)
明ける朝、ヒューはいつになく快適な気分で目を覚ました。
ポケットロンの目覚まし機能を使用してだが…、それにしたところで空気の違いは実感できる。
流石に科学文明が発達した世界と環境汚染がほぼゼロの世界では空気自体にかなりの違いが出ようというものだ。
ゴーストステップ・ゼロ シーン03 “洗濯メイドと隣のツエルプストー”
シーンカード:ミストレス(豊穣/母性。女性ゲストの協力。物理的な恩恵を被る。)
「さてと、ご主人様の言い付けを済ませてくるか」
目を覚ましたヒューは前日就寝前にルイズから言われた洗濯を済ませるべく、洗濯物を抱えてルイズの部屋を後に
する。
しかし、その足は寮の1階に到着した所で止めざるを得なくなった…、ランドリーの場所が分からないのである。
その上、この地はウェブはおろか電気が発明されているかどうかすらも怪しい場所なのだ、恐らくヒューが考えて
いる施設などあるはずがないだろう。
となると己の服はもとより、「これ」も自分の手で洗わなければならないという事か?
想像すると頭が痛くなって来た…、そんな事をトーキョーN◎VAでやったとしたら、まず間違いなく特殊な性癖
持ちという評判が立ってしまう。
(基本的に電脳化が進んだニューロエイジでは、殆どの物にトロンが仕込まれている為、洗濯にしても機械任せで
済むような状態だった。)
そういう風にヒューが廊下のど真ん中で所在無さ気に佇んでいると、背後から少女が声を掛けてきた。
「あの…、どうかなさいましたか?」
その声に振り向くと、そこにはメイド服を纏った少女が洗濯物を入れた籠を抱えて立っている。
「いや、ランドリー…じゃなくて、洗濯する場所が分からなくてね。
見た所、君も洗濯するみたいだし、ついでに案内してくれないか?」
「ええ、いいですよ、こちらです。」
「悪いね、そうそう俺はヒュー・スペンサー。
昨日からルイズお嬢さん、あーミス・ヴァリエールとか言った方が分かるかな?彼女の使い魔ってヤツを始めた
モンだ。
色々とこっちの常識を知らないんでね、迷惑はなるべくかけないつもりだがよろしく頼むよ。」
「まぁ、そうだったんですか。
ミス・ヴァリエールが召喚した平民の使い魔ってヒューさんの事だったんですね。
私はシエスタといいます、この学院で貴族の皆様のお世話をさせてもらっています。」
「と、女の子に重い物を持たせたままじゃ外聞が悪いな。
案内のお礼だ、代わりに持とう。」
そういうと、シエスタが何か言う前に鮮やかな手並みで自分とシエスタの籠を取り替える。
「え?ええっ?
い、いいですよ!貴族の使い魔の方にそんな事して頂く訳には「いいって、同じ平民の誼ってヤツさ」」
と言ってシエスタに悪戯っぽくウィンクして歩き始めると、シエスタも楽ができるのはそれはそれで嬉しいので
ヒューの横に並んで井戸端に向かう。
その道すがらヒューはシエスタからこの辺り、というかハルケギニア全体における常識を聞き出していた。
内心ちょっと暗澹とした気分になってしまったが。
(はぁ、なるほどね貴族っていうのは要するにメガ=コーポのエグゼクやクグツって考えれば良いのか。
連中がいない事にはインフラやら医療なんかの生活に必要なアレやコレやらが回らなくなっちまってる訳だ。
んで、この学院はこの国の貴族の坊ちゃん嬢ちゃん達を一人前にする為の学校、と。)
「あの、ヒューさんどうかなさいましたか?」
「ん?ああ、まあどこでも同じ様なモンだなと思ってね。」
「じゃあ、ヒューさんの故郷でも貴族の方々が…」
「どっちかっていうと、俺のいた所じゃあ金がモノをいったがね。
持ってるヤツでもピンキリさ、こっちだってそうだろう?」
「そうですね、評判が良い方もいれば…」
「人なんてそうそう変わらないて事さ。」
「あはは、そうかもしれませんね。
あ!着きましたよ、あそこが洗濯場です。向こうに見えるのが飲み水や洗顔用の水を汲む井戸になります。
道具やピッチャーは備え付けの物を使って頂いて構いません、部屋に持って行ったピッチャーは私達が部屋を掃除
した時に回収しますので、部屋に置いていて下さい。」
「悪いね色々と。」
「何言ってるんですか、ヒューさんも言ってたじゃないですか“同じ平民の誼”ってヤツですよ。」
「じゃあ誼ついでに、ソイツの洗い方も教えて貰えるかい?」
情けなさそうな表情を浮かべながら、シエスタが抱えている籠を見る。
「あ、これ。ミス・ヴァリエールの洗濯物ですね?なんでしたらこちらで洗っておきましょうか。」
「いいのかい?」
「ええ、これ位なら別に手間は変わりませんし。
それに、ええとヒューさん男の方でしょう?」
渡りに船と聞いて来るヒューに、ちょっと恥ずかしそうに応えるシエスタ。
「だ、だよな、普通男には洗わせないよな?
いや、安心したよ、下手するとこれがこっちでは当たり前なのかと思っちまうところだ。」
「あはは、流石にそれは無いですよ。
多分、ミス・ヴァリエールとしては使い魔の教育の一環として考えてたんじゃないですか?」
「かもな、けどまぁ何にしろ助かった、下手すると変態扱いされる所だ。
これのお礼と言っちゃ何だが、何か困った事があったら相談しな、大して力にはなれないだろうけど一応手助け
位はするよ。」
「そんな、大げさですよ。
ヒューさんも洗濯物があったら遠慮なく言って下さいね、ついでにやっておきます。
それから、乾いた洗濯物はお掃除のついでにお部屋に届けられる様になっているので安心してください。」
「ああ、分かった。
じゃあよろしく頼むよ。」
「はい、それじゃあお疲れ様でした。」
そう挨拶を交わした後、ヒューは井戸端からルイズの部屋に戻って行った。
寮の構造を確認しながらヒューがルイズの部屋に戻ると、御主人サマであるところのルイズはというと未だ夢の国の
住人だった。
ポケットロンで現在時刻を確認するとそろそろAM7:00になる、学生というのならそろそろ起こした方が良い
だろう。
「ルイズ、ルイズお嬢さん。
朝だ、そろそろ起きた方が良いんじゃないのか?」
とりあえず何度か声を掛けてみるが、反応は全く無しである。
次に肩をつかんでゆっくりと揺さぶってみるが、手を払った後に寝返りをする、まだ起きる気配はない。
しょうがないので、箪笥からハンカチを失敬して水で濡らした後、寝返りを打って露出したルイズのうなじにそれ
を軽く押し付ける。
「ひぃやあー!」
「おはよう、ルイズお嬢さん。
朝だぞ、そろそろ起きた方がいいんじゃないのか?」
うなじに冷えたハンカチを押し当てられたルイズは、その冷たさで一気に覚醒する。
うなじに手を当てながら目を白黒させているルイズに対するヒューはというと何でもなかったかのように、カーテン
を開いたりしている、無論ハンカチは押し当てる前に十分絞っているので証拠を残すようなヘマは無い。
「え?え?
あ、貴方誰よ!何で私の部屋に許可なく入っているのよ!」
「おいおい、昨日呼び出してくれた使い魔にたいしてずいぶんな言い草じゃないか、御主人サマ」
「え?あ、ああ。
そうか、そうだったわよね、確かヒューだったっけ?」
「そう、御主人サマの忠実なる使い魔。ヒュー・スペンサーだ、目が覚めたんなら顔を洗って着替えして学校に
行こうじゃないか?」
「言われなくても分かってるわよ。
じゃ、ヒュー着替えさせて。」
と言いベッドから立ち上がるルイズ、聞いていたヒューはというと呆然としていた。
「あー、すまん、よく聞こえなかったんだが…今、着替えさせろとか言ったか?」
「言ったわよ、何グズグズしてるの朝食が食べれなくなるでしょ。
早くして頂戴、着替えは箪笥の中にあるから、よろしくね。」
ヒューは、今日2度目の頭痛に苛まれていた。が、契約の一環と考え一先ずルイズの言う事を実行することにした、
まあ老人介護のバイトをしてると思えば別に大した事はあるまい、幸いルイズは彼のストライクゾーンの遥か彼方である事だし。
(大体、セカンド辺り)
そんなこんなで慣れない着替えの手伝いなどをさせられたヒューは朝から疲れ切っていた。
着替えを手伝わせたルイズも疲れてはいたのだが。
「つ、使えないわね、アンタ」
「しょうがないさ、生まれてこの方他人に服を着せるなんてやった事ないしな。
ま、脱がせるんだったらそこそこ慣れてるけど。」
「な、レディの前で何て事言うのよ!
何よその目は…」
「いやいや何でもありませんよ、ルイズお嬢様。
それよりも宜しいので?食事の時間があると思うんですが。」
そうしてヒューがドアを開くと同時にすぐ隣のドアも開く。
中から出てきたのは、燃えるような赤毛と褐色の肌をした、ルイズと何もかもが対極の位置にあるような少女だった
。
部屋から出てきたルイズはその少女を見るとあからさまに嫌そうな顔になる。
「あら、おはようルイズ」
「おはよう、キュルケ」
「へぇ、そちらが貴女の使い魔?」
ヒューを値踏みするように上から下までじっくりと観察する。
(ふうん、大体180サント位かしら。痩せてるっぽく見えるけど筋肉自体は普通に付いてるみたいね。
顔は…まぁ普通に合格点あげられるかな、ヴァリエールの使い魔にしては良い男じゃない。)
観察されている方はというと、少々居心地が悪い雰囲気を感じていた。なにしろ空気がギスギスしているのだ。
喧嘩の一歩手前というかそんな空気が周囲を取り囲んでいる、あまり得意ではないがこういう空気のままでは疲労
が溜まっていくだけなので緩和を試みてみる。
「よろしくお嬢さん、ヒュー・スペンサー、探偵だ。
お隣さんのよしみで主人共々これからも仲良くやっていける事を願ってるよ。」
地雷、だった。
キュルケはともかくルイズにとってヒューの今の台詞は到底、聞き逃せるモノでは無かった。
何か切れる様な音をヒューが聞いたのは決して間違いではなかっただろう。
朝食前のトリステイン魔法学院女子寮の廊下で、それはそれは大きな爆音が響き渡った。
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